342 / 560
Part 2
* EPILOGUE *
また、年が暮れようとしている。
一年が、アッと言う間に過ぎ去っていった。
今年は、行事がたくさんあり、何度もセシルに会うことができた。
最初は一週間程度だったが、それでも、四六時中護衛をする、という名目と大義名分があった。
いつでも、セシルの側にいられた。
美しいセシルのドレス姿を王宮でも見られて、ダンスまで一緒に踊れた。
あぁ……、あの時の光景が、すぐにでも頭に浮かんできてしまう。
麗しいほどのセシルが、あまりに美しかったから……。
次は一カ月程だった。その時も護衛の立場だったが、それでも、デート (らしきもの) もできた(付き人付きで)。
何度も、一緒に食事ができた。セシルの隣も座れた。
一緒にいる時は、たくさん喋った。
普通のお喋りだっただろ?
今、考えても、セシルの領地の話題がたくさんだったが、ギルバートにとっては、興味深い話ばかりだ。
政ごとの話など、仕事以外で滅多にしないギルバートでも、セシルの新しい政策や、計画、今している事業だって、話を聞いているだけで、つい、興味心が沸いてくる話題ばかりだ。
なにも、ギルバートがセシルにゾッコンだから、セシルの話すこと全部、喋ること全部、好きでいるなんて言っているのでは断じてない(クリストフは、あると思うけどなあ、と密かに思っている)。
ただ、話題が新鮮で、知らないことばかりで、ギルバートは、いつも、セシルの話に釘付けになってしまうのだ。
豊穣祭は――短いものでも、今年も、セシルのあの眩しいほどに美しい姿を見ることができた。
今年も、セシルから『祝福』 を授かることができた。
状況に流されているのかもしれないが、なんだか、セシルに『祝福』 を授かると、次の一年、本当に強く進んで行けそうな気になってしまうから不思議だ。
きっと、領民達だって、みんなそう感じているのだろう。
セシルに会えた。月日が離れ、数か月を挟んでも、セシルに会えた。
だが、来年は、そうだとは言い切れない。
そして、来年こそ――ギルバートの猶予期間が、切れてしまう年なのだ。
モタモタしていたら、それこそ、知らぬ間に、そして、アッと言う間に、また次の一年が過ぎ去ってしまうことになってしまう。
「時間は限られている。有効に使わなければ、ダメではないか」
ええ、全くその通りです、レイフ兄上。
ギルバートも、その点は、全く異論なく賛成です。
だから、今のギルバートには――もう、行動に移すしか、選択肢は残されていない。
次の一年だって、アッと言う間に過ぎてしまう。
次の一年を、ただセシルに会う為の理由付けを探しているようでは、ギルバートの猶予期限が、アッと言う間に切れてしまうことは、間違いなかった。
――――結婚……。
そんなこと、今まで、一度だって考えたことはなかった。
王族として、王子として、(無理矢理) 結婚させられることになるその時まで、できる限り延ばしに延ばして、縁談なんて、耳にも貸さないつもりだった。
今までだって、そうしてきた。
なのに、今は――セシルが欲しくて堪らない。セシルを望んで、自分の側にずっといて欲しいと、強く願っている。
ずっと、セシルの側にいられたのなら――そればかり、その強くて抑えようがないほどの渇望と熱望ばかりが、体中を焼き尽くすかのように熱い。
――――結婚って、普通、どうやって、申し込むべきなのだろうか……。
貴族の結婚など、大抵、親同士が決めた政略結婚、見合い話、縁談ばかりだろう。
ラッキーなカップルは、恋愛結婚もできるのだろうが、それは、お互いに恋愛をしている話だ。
ギルバートは――セシルと恋愛関係にあるのではない。
むしろ、悲しいかな……。全くの他人でしかない。
とほほ……。
だから、結婚の申し込みなど、どうやってやるのか、考えにも及ばない。
ギルバートの身近で結婚しているカップルなど、実の兄の国王陛下くらいである。
同じ騎士団では、団長達は年配過ぎるし、残りの副団長のうち一人も、すでに結婚している。
ギルバートよりも年上であるから、不思議はないが、まさか、その副団長に向かって、
「結婚を申し込むのは、どうしたらいいですか?」
なんて、聞けるはずもない。
あまりに情けなさ過ぎるだろう……。
でも、誰かかしらに聞き回れることもできない。
そんな安易で軽率な行動をしてしまったら、すぐさま、セシルの身元がバレてしまい、“ギルバートの思い人”ということで、狙われる可能性がでてきてしまう。
だから、簡単に聞き回れる事情でもない。
それなら、一体、誰に聞けばいいのだろうか?
そんなことを考えていく度に、ギルバートは眠れなくなってしまった。明日だって早いし、仕事だってあるのに。
困ったものだ。
結局、どうやって結婚を申し込んで良いのか、自分で答えが見つからないまま、眠ることもできず、朝方なんとか眠りに落ちたようだった。
それもすぐに、目覚めの時間がやって来て、睡眠不足の身体を引きずって、ギルバートは、いつものように自分の仕事場にやってきていた。
夜勤の護衛からの報告や、朝の引き継ぎを終え、執務室に戻って来る。
第三騎士団団長のハーキンのせいで、今日この頃は、大抵、午前中は、団長が片すはずの書類整理に追われてしまっている。
重い頭を使おうが、今日は、仕事も、全然、はかどらない。気が乗らない。
煮詰まった時は――――
ああ、そうだった。
以前、セシルと何気ない会話で、セシルが子供達に教えている、考えや頭の整理法という話題を、ギルバートは思い出していた。
「子供達というのは、想像力豊かで、感性も強いですから、一度、考え事をすると、すぐに脱線してしまったり、問題への答えが見つからなくて、腹を立てたりすることが多いのですよ。その時に、頭の整理の仕方と言いますか、自分の考えを整理する方法を、教えているんですのよ」
説明してくれた時は、結構、簡単な方法なのだなと、ギルバートも思い出していた。
1) まず初めに、目的やゴール。何をしたいのか?
2) 次に、そのゴールを達成するには、何が必要なのか?
3) 必要なものを満たす為には、どうすればよいのか? 全部、思いつくままに書き写すこと。
4) 必要なものを満たす為に誰が関わって来るのか? 手伝ってくれる人。反対する人。問題になりそうな人、色々だ。
5) 相手や、関わってくる人の懸念、心配事、または問題もしっかりと提示。相手目線から考慮して、懸念を打ち払えなければ、話にもならない。
それを順々に考えて行って、分からない部分は深く考え過ぎずに、分かるところを埋めてみましょう。
そうしたら、自分で見逃している部分、忘れている部分、考えもしなかった点などが上がってくることもあるし、他の人が見つけてくれる時もある、とセシルは話していた。
一年が、アッと言う間に過ぎ去っていった。
今年は、行事がたくさんあり、何度もセシルに会うことができた。
最初は一週間程度だったが、それでも、四六時中護衛をする、という名目と大義名分があった。
いつでも、セシルの側にいられた。
美しいセシルのドレス姿を王宮でも見られて、ダンスまで一緒に踊れた。
あぁ……、あの時の光景が、すぐにでも頭に浮かんできてしまう。
麗しいほどのセシルが、あまりに美しかったから……。
次は一カ月程だった。その時も護衛の立場だったが、それでも、デート (らしきもの) もできた(付き人付きで)。
何度も、一緒に食事ができた。セシルの隣も座れた。
一緒にいる時は、たくさん喋った。
普通のお喋りだっただろ?
今、考えても、セシルの領地の話題がたくさんだったが、ギルバートにとっては、興味深い話ばかりだ。
政ごとの話など、仕事以外で滅多にしないギルバートでも、セシルの新しい政策や、計画、今している事業だって、話を聞いているだけで、つい、興味心が沸いてくる話題ばかりだ。
なにも、ギルバートがセシルにゾッコンだから、セシルの話すこと全部、喋ること全部、好きでいるなんて言っているのでは断じてない(クリストフは、あると思うけどなあ、と密かに思っている)。
ただ、話題が新鮮で、知らないことばかりで、ギルバートは、いつも、セシルの話に釘付けになってしまうのだ。
豊穣祭は――短いものでも、今年も、セシルのあの眩しいほどに美しい姿を見ることができた。
今年も、セシルから『祝福』 を授かることができた。
状況に流されているのかもしれないが、なんだか、セシルに『祝福』 を授かると、次の一年、本当に強く進んで行けそうな気になってしまうから不思議だ。
きっと、領民達だって、みんなそう感じているのだろう。
セシルに会えた。月日が離れ、数か月を挟んでも、セシルに会えた。
だが、来年は、そうだとは言い切れない。
そして、来年こそ――ギルバートの猶予期間が、切れてしまう年なのだ。
モタモタしていたら、それこそ、知らぬ間に、そして、アッと言う間に、また次の一年が過ぎ去ってしまうことになってしまう。
「時間は限られている。有効に使わなければ、ダメではないか」
ええ、全くその通りです、レイフ兄上。
ギルバートも、その点は、全く異論なく賛成です。
だから、今のギルバートには――もう、行動に移すしか、選択肢は残されていない。
次の一年だって、アッと言う間に過ぎてしまう。
次の一年を、ただセシルに会う為の理由付けを探しているようでは、ギルバートの猶予期限が、アッと言う間に切れてしまうことは、間違いなかった。
――――結婚……。
そんなこと、今まで、一度だって考えたことはなかった。
王族として、王子として、(無理矢理) 結婚させられることになるその時まで、できる限り延ばしに延ばして、縁談なんて、耳にも貸さないつもりだった。
今までだって、そうしてきた。
なのに、今は――セシルが欲しくて堪らない。セシルを望んで、自分の側にずっといて欲しいと、強く願っている。
ずっと、セシルの側にいられたのなら――そればかり、その強くて抑えようがないほどの渇望と熱望ばかりが、体中を焼き尽くすかのように熱い。
――――結婚って、普通、どうやって、申し込むべきなのだろうか……。
貴族の結婚など、大抵、親同士が決めた政略結婚、見合い話、縁談ばかりだろう。
ラッキーなカップルは、恋愛結婚もできるのだろうが、それは、お互いに恋愛をしている話だ。
ギルバートは――セシルと恋愛関係にあるのではない。
むしろ、悲しいかな……。全くの他人でしかない。
とほほ……。
だから、結婚の申し込みなど、どうやってやるのか、考えにも及ばない。
ギルバートの身近で結婚しているカップルなど、実の兄の国王陛下くらいである。
同じ騎士団では、団長達は年配過ぎるし、残りの副団長のうち一人も、すでに結婚している。
ギルバートよりも年上であるから、不思議はないが、まさか、その副団長に向かって、
「結婚を申し込むのは、どうしたらいいですか?」
なんて、聞けるはずもない。
あまりに情けなさ過ぎるだろう……。
でも、誰かかしらに聞き回れることもできない。
そんな安易で軽率な行動をしてしまったら、すぐさま、セシルの身元がバレてしまい、“ギルバートの思い人”ということで、狙われる可能性がでてきてしまう。
だから、簡単に聞き回れる事情でもない。
それなら、一体、誰に聞けばいいのだろうか?
そんなことを考えていく度に、ギルバートは眠れなくなってしまった。明日だって早いし、仕事だってあるのに。
困ったものだ。
結局、どうやって結婚を申し込んで良いのか、自分で答えが見つからないまま、眠ることもできず、朝方なんとか眠りに落ちたようだった。
それもすぐに、目覚めの時間がやって来て、睡眠不足の身体を引きずって、ギルバートは、いつものように自分の仕事場にやってきていた。
夜勤の護衛からの報告や、朝の引き継ぎを終え、執務室に戻って来る。
第三騎士団団長のハーキンのせいで、今日この頃は、大抵、午前中は、団長が片すはずの書類整理に追われてしまっている。
重い頭を使おうが、今日は、仕事も、全然、はかどらない。気が乗らない。
煮詰まった時は――――
ああ、そうだった。
以前、セシルと何気ない会話で、セシルが子供達に教えている、考えや頭の整理法という話題を、ギルバートは思い出していた。
「子供達というのは、想像力豊かで、感性も強いですから、一度、考え事をすると、すぐに脱線してしまったり、問題への答えが見つからなくて、腹を立てたりすることが多いのですよ。その時に、頭の整理の仕方と言いますか、自分の考えを整理する方法を、教えているんですのよ」
説明してくれた時は、結構、簡単な方法なのだなと、ギルバートも思い出していた。
1) まず初めに、目的やゴール。何をしたいのか?
2) 次に、そのゴールを達成するには、何が必要なのか?
3) 必要なものを満たす為には、どうすればよいのか? 全部、思いつくままに書き写すこと。
4) 必要なものを満たす為に誰が関わって来るのか? 手伝ってくれる人。反対する人。問題になりそうな人、色々だ。
5) 相手や、関わってくる人の懸念、心配事、または問題もしっかりと提示。相手目線から考慮して、懸念を打ち払えなければ、話にもならない。
それを順々に考えて行って、分からない部分は深く考え過ぎずに、分かるところを埋めてみましょう。
そうしたら、自分で見逃している部分、忘れている部分、考えもしなかった点などが上がってくることもあるし、他の人が見つけてくれる時もある、とセシルは話していた。
あなたにおすすめの小説
取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので
モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。
貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。
──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。
……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!?
公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。
(『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)
【完結】竜人が番と出会ったのに、誰も幸せにならなかった
凛蓮月@騎士の夫〜発売中です
恋愛
【感想をお寄せ頂きありがとうございました(*^^*)】
竜人のスオウと、酒場の看板娘のリーゼは仲睦まじい恋人同士だった。
竜人には一生かけて出会えるか分からないとされる番がいるが、二人は番では無かった。
だがそんな事関係無いくらいに誰から見ても愛し合う二人だったのだ。
──ある日、スオウに番が現れるまでは。
全8話。
※他サイトで同時公開しています。
※カクヨム版より若干加筆修正し、ラストを変更しています。
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました
斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。
白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。
その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。
それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。
やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり――
白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。
身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。
思い込み、勘違いも、程々に。
棗
恋愛
※一部タイトルを変えました。
伯爵令嬢フィオーレは、自分がいつか異母妹を虐げた末に片想い相手の公爵令息や父と義母に断罪され、家を追い出される『予知夢』を視る。
現実にならないように、最後の学生生活は彼と異母妹がどれだけお似合いか、理想の恋人同士だと周囲に見られるように行動すると決意。
自身は卒業後、隣国の教会で神官になり、2度と母国に戻らない準備を進めていた。
――これで皆が幸福になると思い込み、良かれと思って計画し、行動した結果がまさかの事態を引き起こす……
好感度0になるまで終われません。
チョコパイ
恋愛
土屋千鶴子(享年98歳)
子供や孫、ひ孫に囲まれての大往生。
愛され続けて4度目の転生。
そろそろ……愛されるのに疲れたのですが…
登場人物の好感度0にならない限り終わらない溺愛の日々。
5度目の転生先は娘が遊んでいた乙女ゲームの世界。
いつもと違う展開に今度こそ永久の眠りにつける。
そう信じ、好きなことを、好きなようにやりたい放題…
自覚なし愛され公女と執着一途皇太子のすれ違いラブロマンス。
転生したので前世の大切な人に会いに行きます!
本見りん
恋愛
魔法大国と呼ばれるレーベン王国。
家族の中でただ一人弱い治療魔法しか使えなかったセリーナ。ある出来事によりセリーナが王都から離れた領地で暮らす事が決まったその夜、国を揺るがす未曾有の大事件が起きた。
……その時、眠っていた魔法が覚醒し更に自分の前世を思い出し死んですぐに生まれ変わったと気付いたセリーナ。
自分は今の家族に必要とされていない。……それなら、前世の自分の大切な人達に会いに行こう。そうして『少年セリ』として旅に出た。そこで出会った、大切な仲間たち。
……しかし一年後祖国レーベン王国では、セリーナの生死についての議論がされる事態になっていたのである。
『小説家になろう』様にも投稿しています。
『誰もが秘密を持っている 〜『治療魔法』使いセリの事情 転生したので前世の大切な人に会いに行きます!〜』
でしたが、今回は大幅にお直しした改稿版となります。楽しんでいただければ幸いです。
わたしさえいなければ、完璧な王太子だそうです。
ふらり
恋愛
人並外れた美貌・頭脳・スタイル・武勇を持つウィンダリア王国の25歳の王太子は、完璧な王太子だと言われていた。ただし、「婚約者さえいなければ完璧な王太子なのに」と皆が言う。12歳の婚約者、ヴァイオレット・オルトニーは周囲から憐みの目を向けられていた。
「私との婚約は、契約で仕方なくなのかい? もう私に飽きてしまっている? 私は今でも君にこんなに夢中なのに」
13歳年下の婚約者少女に執着溺愛する美貌も能力も人間離れした王太子様と、振り回される周囲のお話です。小説家になろうにて完結しております。少しずつこちらにもあげていくつもりです。ファンタジー要素はちょっぴりです。