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第二章
その頃焔将邸の女官たちは
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「あの焔将さまが声を上げて笑われていた⁉」
焔将と未令にお茶を出した女官は、膝をガクガク震わせながら控えの間へ戻った。
祥文帝の実弟にして陰の支配者とも囁かれるあの冷徹な焔将が、さも楽しげに笑っていた……。
この話を聞いた他の女官たちも、お互い信じられないといった面持ちで顔を見合わせた。
「な、なにかの間違いなんじゃないの?」
「ほんとはお怒りになられていたけれど、笑っているように見えただけとか?」
「そ、そうよ。まさか声を上げて笑われるなんて……」
するとお茶を出した女官は、
「間違いないわよ。ほんとに愉しげに笑ってらしたんだから」
「うそ……」
これには一同みな沈黙した。
ここで女官として働いていて、今まで焔将のそんな姿を見た者は一人もいなかった。
邸でもいつも威儀を正し、ねぎらいの言葉はくれるけれども微笑まない。
そんな威厳に溢れた焔将が笑うなんて……。
しかもとても愉しげだったとか……。
「未令さまって一体何者なの?」
「詳しいことは何も。今日突然のことだったし、まさか側妃をお迎えになるなんて思いもしなかったもの」
「それはそうよ。どなたもお迎えにならないのかと皆が思っていたわよ」
「どうも火の血族、時有のお孫さんらしいわよ」
「えーっ! あの時有さまの!」
「そうみたいよ。あとは何もわからないけれど」
「でも可愛らしい方だったわよ」
「まぁそうね。初心なお方だわ。薄衣を着せてお部屋にお通ししても、よく分かってらっしゃらないみたいだったし」
「……………」
再び一同沈黙し、互いに顔を見合わせあった。
「ま、まぁ焔将さまがお気に召されたのなら何よりよ」
「そ、そうね。あの焔将さまを笑わせることができるなんて、未令さまは貴重なお方だわ」
「もしかしたらそのままご正妃になられるかもしれないし」
そうして三度頷きあい、新しく迎えた側妃、未令を女官一同一丸となって支えていくことを誓い合った。
焔将と未令にお茶を出した女官は、膝をガクガク震わせながら控えの間へ戻った。
祥文帝の実弟にして陰の支配者とも囁かれるあの冷徹な焔将が、さも楽しげに笑っていた……。
この話を聞いた他の女官たちも、お互い信じられないといった面持ちで顔を見合わせた。
「な、なにかの間違いなんじゃないの?」
「ほんとはお怒りになられていたけれど、笑っているように見えただけとか?」
「そ、そうよ。まさか声を上げて笑われるなんて……」
するとお茶を出した女官は、
「間違いないわよ。ほんとに愉しげに笑ってらしたんだから」
「うそ……」
これには一同みな沈黙した。
ここで女官として働いていて、今まで焔将のそんな姿を見た者は一人もいなかった。
邸でもいつも威儀を正し、ねぎらいの言葉はくれるけれども微笑まない。
そんな威厳に溢れた焔将が笑うなんて……。
しかもとても愉しげだったとか……。
「未令さまって一体何者なの?」
「詳しいことは何も。今日突然のことだったし、まさか側妃をお迎えになるなんて思いもしなかったもの」
「それはそうよ。どなたもお迎えにならないのかと皆が思っていたわよ」
「どうも火の血族、時有のお孫さんらしいわよ」
「えーっ! あの時有さまの!」
「そうみたいよ。あとは何もわからないけれど」
「でも可愛らしい方だったわよ」
「まぁそうね。初心なお方だわ。薄衣を着せてお部屋にお通ししても、よく分かってらっしゃらないみたいだったし」
「……………」
再び一同沈黙し、互いに顔を見合わせあった。
「ま、まぁ焔将さまがお気に召されたのなら何よりよ」
「そ、そうね。あの焔将さまを笑わせることができるなんて、未令さまは貴重なお方だわ」
「もしかしたらそのままご正妃になられるかもしれないし」
そうして三度頷きあい、新しく迎えた側妃、未令を女官一同一丸となって支えていくことを誓い合った。
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