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第七章
突破
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康夜が先ほどの火の演舞で着ていた緋色の衣装のまま肩で息をしている。演舞が終わってすぐ走ってきたのだろう。
「どうしてこんなところに」
でも落ち合う場所はここではないし、まだ時有の救出もできていない。
戸惑っていると康夜は
「わたしも行く」
いうやトンネルの回廊を走り出す。
「待って。危険だよ」
まだまだ血族が守りを固めている。どんな技が繰り出されてくるのかわからない。
いくら力が遣えるといっても経験の浅さは否めない。相手の方が一枚も二枚も上手のはずだ。
「でも、行くから」
未令が止めるのを聞かず走っていく。
戸惑ったように涼己を見ると、涼己は「時間がない、このまま行くぞ」という。
康夜の後を追って走り出したとたん、再び術者が現れた。
康夜も参戦するのかと思いきや、あまりその気はないようで涼己と未令がなぎ倒していくのを静観している……。
次々に現れる術者を倒しつつ、右に左にと曲がりくねるトンネルを行く。
方向感覚はすでにない。
角を曲がるたび術者が飛び出してきて、そのたび涼己と未令は応戦した。
そうしてどれほど走っただろう。
突き当り、廊下が左右に分かれている。
父の捕らわれている水牢に入った時の記憶では右に有明の幽閉されている水牢がある。
が、涼己はこっちだと左側の廊下を指す。
「予定通り先に時有を出す」
水牢のある入り口にはまた見張りがついていた。
「今度は、金の血族と水の血族だ」
涼己がそういい終わらないうちに水が押し寄せ、その水に乗り二人の水の術者が飛び出してきた。
さきほどと同じ戦い方だ。
水の術者は水の勢いのまま涼己と未令とに切りかかった。
切りかかられる瞬間、辺りはもやがかかったように水の膜で覆われ視界を奪われる。
それでも水を切り裂いて振り下ろされる刀の波動を感じる。
未令は落ち着いて薙刀を前へと突き出した。一撃目は外したが、術者はバランスを崩し廊下に膝をつく。
再び地を蹴り、跳びあがった術者の行動を未令は読んでいた。
跳びあがった瞬間、無防備に開いたみぞおちを狙って薙刀を繰り出す。
不意をつかれた術者は呻いて回廊に崩れた。
すると回廊の先からいきなり長い刃物が次々に飛び出してきた。
すでに決着をつけていた涼己はすぐさま刃物を避け横に飛ぶ。
未令は水で衣服の裾が濡れ、動きの鈍くなった康夜の腕をつかんで間一髪のところで刃物をかわした。
刃物が伸び縮みするゴムのように回廊の先へと戻っていく。
「次が来る前に行くぞ」
涼己の合図とともに未令は康夜をその場に残して廊下の先へと地を蹴った。
一息に水牢の入り口まで迫り、廊下の左右に立っていた金の血族の術者を一撃のもとに倒す。
「誰だ!」
水牢を守っている水の血族の術者四人が一斉に声を上げた。
涼己は間髪入れず刀を振るうと一番近くにいた術者に飛び掛った。未令も間を置かず薙刀を繰り出す。
攻撃を受け、水牢へ向けられていた力が集中力を失い、部屋を囲っていた水の覆いが音を立てて崩れ落ちた。
陸の孤島のように部屋が現れ、異変を感じたのか。
扉が開き中から一人の男が出てきた。
祖父の時有だろうとは思ったが顔を確かめる余裕は今の未令にはなかった。
涼己と未令から直接攻撃を受けていない二人の女術者が、両手を上に向かって広げたかと思うと、空間に無数の水の粒が現れた。術者が手を未令たちのほうへと押し出す。
無数に浮いていた水滴が一斉にこちらに飛んできた。
たかが水滴。
そう思ったと同時に涼己が叫んだ。
「よけろ!」
「どうしてこんなところに」
でも落ち合う場所はここではないし、まだ時有の救出もできていない。
戸惑っていると康夜は
「わたしも行く」
いうやトンネルの回廊を走り出す。
「待って。危険だよ」
まだまだ血族が守りを固めている。どんな技が繰り出されてくるのかわからない。
いくら力が遣えるといっても経験の浅さは否めない。相手の方が一枚も二枚も上手のはずだ。
「でも、行くから」
未令が止めるのを聞かず走っていく。
戸惑ったように涼己を見ると、涼己は「時間がない、このまま行くぞ」という。
康夜の後を追って走り出したとたん、再び術者が現れた。
康夜も参戦するのかと思いきや、あまりその気はないようで涼己と未令がなぎ倒していくのを静観している……。
次々に現れる術者を倒しつつ、右に左にと曲がりくねるトンネルを行く。
方向感覚はすでにない。
角を曲がるたび術者が飛び出してきて、そのたび涼己と未令は応戦した。
そうしてどれほど走っただろう。
突き当り、廊下が左右に分かれている。
父の捕らわれている水牢に入った時の記憶では右に有明の幽閉されている水牢がある。
が、涼己はこっちだと左側の廊下を指す。
「予定通り先に時有を出す」
水牢のある入り口にはまた見張りがついていた。
「今度は、金の血族と水の血族だ」
涼己がそういい終わらないうちに水が押し寄せ、その水に乗り二人の水の術者が飛び出してきた。
さきほどと同じ戦い方だ。
水の術者は水の勢いのまま涼己と未令とに切りかかった。
切りかかられる瞬間、辺りはもやがかかったように水の膜で覆われ視界を奪われる。
それでも水を切り裂いて振り下ろされる刀の波動を感じる。
未令は落ち着いて薙刀を前へと突き出した。一撃目は外したが、術者はバランスを崩し廊下に膝をつく。
再び地を蹴り、跳びあがった術者の行動を未令は読んでいた。
跳びあがった瞬間、無防備に開いたみぞおちを狙って薙刀を繰り出す。
不意をつかれた術者は呻いて回廊に崩れた。
すると回廊の先からいきなり長い刃物が次々に飛び出してきた。
すでに決着をつけていた涼己はすぐさま刃物を避け横に飛ぶ。
未令は水で衣服の裾が濡れ、動きの鈍くなった康夜の腕をつかんで間一髪のところで刃物をかわした。
刃物が伸び縮みするゴムのように回廊の先へと戻っていく。
「次が来る前に行くぞ」
涼己の合図とともに未令は康夜をその場に残して廊下の先へと地を蹴った。
一息に水牢の入り口まで迫り、廊下の左右に立っていた金の血族の術者を一撃のもとに倒す。
「誰だ!」
水牢を守っている水の血族の術者四人が一斉に声を上げた。
涼己は間髪入れず刀を振るうと一番近くにいた術者に飛び掛った。未令も間を置かず薙刀を繰り出す。
攻撃を受け、水牢へ向けられていた力が集中力を失い、部屋を囲っていた水の覆いが音を立てて崩れ落ちた。
陸の孤島のように部屋が現れ、異変を感じたのか。
扉が開き中から一人の男が出てきた。
祖父の時有だろうとは思ったが顔を確かめる余裕は今の未令にはなかった。
涼己と未令から直接攻撃を受けていない二人の女術者が、両手を上に向かって広げたかと思うと、空間に無数の水の粒が現れた。術者が手を未令たちのほうへと押し出す。
無数に浮いていた水滴が一斉にこちらに飛んできた。
たかが水滴。
そう思ったと同時に涼己が叫んだ。
「よけろ!」
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