上 下
6 / 6
「カムイの住処」

「カムイの住処」二話

しおりを挟む
「カムイの住処」二話

幾ら探しても、神楽の姿が無い。
何か手がかりは落ちていないかと、
俺はライトの光をくまなく当てる。

「…?。なんだこのトンネル。」

士別が指差した先には、
カムイコタントンネルがあった。

「ああ、このトンネルは
カムイコタントンネルだな。」

「うわー…なんか何かいそうな雰囲気…。」

「だな。」

俺はトンネル内にライトの光を当てるが、
まるでライトの光を謎の壁が
遮ってる様にトンネル内に光が届かなく、
中の様子が全くわからない。

「…おかしいな、光を当ててる筈なのに。」

「どんだけ暗いんだよ…!。」

とても暗かったが、
俺は少し、足を踏み入れてみた。

ゴーン…

どこからか、鐘の音が響いた。
おかしい、カムイコタンには
鐘なんてない筈なのに…。

ケタケタケタケタケタ…

誰かが走る音が
トンネル内でこだまする。

「士別。」

「俺じゃねぇよ?!。
俺達以外が、トンネルで走ってる…。」

「…。」

よく耳を澄ませて、聞いてみると、
その音はこちらに向かってきていた。

「士別、逃げるぞ。」

「えっ?!。」

俺は士別の手を引いて、
一目散に逃げ始めた。



俺達は、駐車場辺りのところまで
逃げてきた。

「いきなり美瑛が逃げるなんて…
何があったんだよ?。」

「俺は聞いたことがある、
鐘の音と共に、髪の長い女が現れて
こちらに向かってくるという話をな。」

「ぶっちゃけ言ってもいい?。
なんで幽霊って
髪なげぇやつ多いんだよ?。
しかも白いワンピとか
そういうの着てるやつ多いよな?。」

「怖さ壊してくるな、お前。」

「きっとそういう決まりがあるんだよ…!。
あれ、じゃあ男はどうなんの?。」

「男は素っ裸なんじゃないか?。」

「うっわ嫌だ!。
幽霊になりたくねぇよ!。」

「士別、お前そうやって
怖さを紛らわしたいだけだろ。」

「んな?!。」

「しかし…アレは少しまずいな。
アイツに追いつかれていたら、
取り憑かれていたかもな。」

「あんな危険なのが彷徨いてんのかよ!。」

あの時、視線の端に映った
うねっていた髪の毛は、アイツのものの
可能性がある気がしてきた。

「んで、結局神楽見つかんねぇじゃん…。」

「一旦、橋のところへ戻ってみるか。
何か手がかりがあるかもしれない。」

橋のところから、また捜索をして
手がかりが無いか調べてみる事にした。



橋のところに戻ってきたら、
何やら赤い足跡が森の奥の方へ
ポツポツと道路についていた。

「これは…神楽の
足の大きさによく似てるな。」

神楽はシンデレラみたいに足が小さい。
それぐらい特徴的で、
上川では結構知れ渡っていた。

「神楽を探し始めた時、
こんなの無かったよな…?。
なんでこんな都合良く…?。」

士別は疑問に思う様に、
その足跡を凝視してた。

「ていうか、この赤いのって何?
ペンキにしてはやけに黒っぽいし…。」

「士別、恐らくそれは血液だと思われる。」

「血液ぃ?!!。」

「動脈なら、鮮やかな赤だが、
静脈だと赤黒い血が出る。
この血は多分静脈から出たものだろう。」

「なんで知ってんだよ…。」

「前に上川さんから聞いた。」

「マジで何でも知ってんだなアイツ…。
流石医師免許持ってるだけあるな…。」

俺達は会話を交わしながら、
足跡を追っていた。

しばらく辿っていると、
続いている足跡の隣に、大きく口を開いた
化け物の様な岩がそこにあった。

「うっわ…めっちゃ不気味…。」

「これは…カムイコタンに住んでいたと
言われている、
魔神の頭と言われている岩だ。」

「何でこんなのが?!。」

「言い伝えによると、平和に暮らしている
アイヌの民を妬み、川を岩で堰き止めて
洪水が起こる様に仕向けた。
それを見た山に住むカムイが
阻止しようと魔神に戦いを挑んだが、
窮地に立たされた。そこへ知らせを聞いた
英雄神が応援に駆けつけて激闘となり、
遂には魔神が窮地に立たされて
英雄神に首を刎ねられた…と。」

「えぇ…じゃあ、胴体はどこにあるの?。」

「胴体も、どこかにあるが、
俺はどこにあるかは知らん。」

「胴体見つけてくっつけてあげないと。」

「復活するからやめろ。」

そして、また俺達は足跡を辿り始めた。
相当長く続いているみたいで、
だんだん足に疲れが募っていた。

「どこまで行ったんだ…神楽…。」

「マジそれな?。遠く行きすぎだろ。」

まだまだ赤い足跡は続いている、
それでも俺達は、それを追い続けた。



「カムイの住処」二話終了
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...