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北風のプゥくん

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 びゅおぉぉぉぉーーーう!!

 北風のお父さんが大きな一息を吹くと、落ち葉は一気に吹き飛び、人々は飛ばされないように帽子を押さえたり、寒そうにコートのえりを立てたりしました。

 「うわぁ!お父さん、スゴいや!」

 北風の坊やのプゥくんは目をキラキラさせてとびはねています。

 「私たちは、次の季節のために、いろんなものを吹き飛ばしたり、乾かしたりするんだよ~。」

 「プゥもしっかり練習をして、一人前になるんだぞ~」

 と、お父さんが言いました。

 「うん、僕もお父さんみたいに上手に出来るようになるぞ~!」

 プゥくんはそう言うと、両手をブンブンとふりまわして、野原をかけまわります。

 そして思い切り、息を吸い込むと

 フーーーゥゥゥーー

 と、はきました。

 「あははは、そんな息じゃあ、僕らだって飛ばせやしないよ。」

 見ると花粉と枯れ葉たちがフワフワサラサラと舞いながらプゥくんをからかいます。

 「なにぉー!もう一度!」

 とプゥくんはムキになって今度は強めに

 プーーーーゥゥゥ!と吹きました。

 「そのちょうし、そのちょうし」
 
 と言いながら花粉と枯れ葉は風に乗って、とんで行きました。

 「わぁい」

 プゥくんは少しうれしくなりました。
 しばらく歩いてから

 「よーし、もう一度!」

 とプゥくんは息を吸って、

 フプゥーーーーーゥゥゥゥ!

 「まだまだそれじゃ、私たち美味しくなれないわ」

 畑から白菜さんたちが言いました。

 「私たちは寒ければ寒いほど甘くなって太るのよ。」

 プゥくんはおどろいて

 「え?そうなの!?よーーし!」と言うと

 思い切り息を吸って、

 プゥーーーーゥゥゥゥゥーーー!!!!!

 「そうそう、そのちょうし!」

 白菜さんたちはうれしそうに風にふかれています。

 その顔をみてプゥくんはますますやる気になってズンズンと進みます。


 そこへ男の子がお父さんと凧あげをしているところにつきました。

 男の子は凧が上手く飛ばせずに困っていました。
 
 「よーし!僕の出番だ!」

 プゥゥーーーーーゥゥゥゥウ!

 プゥくんが息を吹きかけたとたんに凧は空に舞い上がり、どんどん高く空を泳いでいきます。

 「わぁーい、上がったぞ~。!!」

 男の子とプゥくんは嬉しくなりました。

 
 次は女の子たちが羽子板をして、遊んでいました。
 
 「今日は、全然続かないわ。」
 
 一人の子がつぶやきました。

 「いよーし、僕の出番だ!」

 プゥくんは張り切って息を吸いこんで

 ププーーーーゥゥゥゥゥウウ!!

 「あら、これなら上手に飛ばせるわ!」

 プゥくんは右へ左へと羽根の動きに合わせて

 プゥ!!プゥ!!プゥ!!

 と息を吹きかけるのに大忙しです。

 ぜぇはぁと息が切れるので、二人が上達したところでスルリとプゥくんは逃げ出しました。


 走って少しつかれてしまったプゥくんは、近くの建物の上にこしをかけて、

 やれやれ、フゥ~~

 とため息をつきました。

 すると、近くを通りかかった社長さんの髪の毛が

 フワリ、フワリ、

 あっ!!

 風に乗って飛び上がり、そのまま飛んで行ってしまいました。

 周りにいた部下たちはビックリぎょうてん!
 社長も大慌てで飛んでいくかつらを追いかけます。

 部下たちもそれに続いてゾロリゾロリと走ります。

 プゥくんも(大変だぁ!)とそれを追いかけます。
 風はクルクルとかつらは枯れ葉のように舞い上がり、遠くへ飛ばされ、とうとう川にポチャンと落ちてしまいました。

 川に落ちたかつらはどんどん遠くへ流されて行きました。

 社長は、

 「わしの!わしの大事なかつらがぁ!」

 と橋の上から手を伸ばしましたが、全然届きません。

 社長も部下もみんなで川を見つめています。

 プゥくんもシュンとなって、ため息をつきました。

 するとその風で、社長の頭の一本の毛が、風でヒョロリと動きました。

 それがあまりに可笑しくて、一人の部下がブッっと吹き出してしまいました。

 続いて、部下みんなが笑い出しました。

 社長は恥ずかしそうにつるつるの頭を撫でて、

 「ははは、何だか、スッキリしたわぃ。」

 と言うと、部下たちが

 「みんな、気がついてましたよ。」

 と言ってまた笑いました。

 みんなの笑顔を見て、シュンとしていたプゥくんもすぐに元気になりました。


 「そろそろ、おうちにかえろう~」

 そう言ってプゥくんはうちに帰りました。

 うちに帰るとお父さんが

 「プゥ、ずいぶんと大きくなったなぁ」

 と言って頭を撫でてくれました。

 たくさん北風を吹かせてプゥくんの体はずいぶんと大きくなっていたのです。

 「まだまだ、頑張るぞ~。」

 そうつぶやきながら、プゥくんは眠りにつきました。

 夢の中で大きな大きなプゥくんが朝も昼も晩も、お父さんと一緒に北風を吹かせていました。

 「お父さん、僕、こんなに大きくなったよ。」

 



 
 
 

 

 


 

 
 
 

 

 

 


 

 
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