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いち

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頭から【死】が消えない時はないか?
打ち消しても打ち消しても脳内で再生される自分の【死】

例えばこの首にまとわり付く縄
そうだ、部屋を汚さぬ様に下にバケツを置こう。

勢いよく首に縄が絡みつく
なるだけ衝撃は大きめの方がダメージがあって運良ければ首の骨など折れてくれたらしめたもの。

違う、生きないと。


自分の亡骸を発見し何か感じるであろう家族を思い出しても振り払えない映像。

悲しむだろうか。
私はざまぁみろと思うかも知れない。

触れられぬ形になった後で。
それは苦しいだろうか。
後悔するのだろうか。

勝手なモラハラ主人を置いて。
反抗期で言葉の交わせない子ども達を置いて。

いや、もう解き放たれたい。
皆、自分の事ばかり考えてるじゃないか。
どうして自分ばかり周りの顔色ばかり見て生きてるのか。

勝手に生きても良いじゃないか。
そもそも誰にそう言われた訳でも無い癖に勝手に空気を読んで、無駄に頑張って。

誰も得はしない。
替えはバカ程居る。
ただ、自分が惨めになっただけだ。

よくある話だ。

生きないと、いけないのか?


ずっと憂鬱には生きて来た。
家庭環境にも恵まれなかった。

それでも何とか騙し騙し生きて来た。
それが何故今なのか。


キッカケはパート先の先輩の一言だった。

先輩は女性の中の唯一の社員で私は派遣だ。
彼女は勤務中、ずっと社内紙を読んでいる。
仕事を任せるとあからさまに嫌な顔をするから誰も任せたがらない。

対して自分は恵まれない愛情への未練がヘラヘラと何でも承る。

自分が悪い。
自分のせいで仕事量は倍以上違う。

勝手に頑張るから悪いと彼女は言う。

その通りだ。
分かって居るのにでも誰かが困ると思うと頑張ってしまう。

どこで勤務しても同じ事。

サボる人の側でがむしゃらに働く馬鹿が自分だ。

馬鹿の極み。
頭が弱い。

皆、そう思うのだろうな。

それでもいつか報われると信じていた。
うさぎと亀は矢張りコツコツ頑張る亀が勝つのだと。

何故そんな話を聞かせたのだろう。
大人は、残酷だ。

亀は亀のまま。
うさぎが亀の甲羅に乗っていても亀は気がつかない。

ゴール前でピョンだ。

そして全てが奪われる。

分かっていても亀はコツコツ歩むのだ。
低脳め。
涙が出る。

仕事から帰り、受験前の息子に勉強を頑張ってるかと聞き、探られるとやる気を失うと叱られる。

精一杯の笑顔を作り、安心したと伝え場所を移動したフリして様子を見ると漫画だの、ゲームなどを出してくる。

注意をすると偶々だと。
少しだと。
そう云う監視がやる気を潰すのだと。

3ヶ月、そっとしておいた。

結局、隠して遊ぶ癖は抜けずに頬を打つ形になった。

何度信じてそっとしておいても嘘をつく。
暴力を振るわれると云う事を聞く。

何が正義かを見失う。
ふと、職場の先輩に溢す。

すると自分の子どもは品行方正だったから分からないと教えて貰う。

正義感の強い、国家公務員殿だそうだ。
素晴らしい。

苦しい。

自分は子ども達に胸を張れる様、仕事で手を抜いた事もない。
子ども達に嘘をつかぬ様、誠実であろうとした。

先輩は仕事は適当にサボり。
子どもは優秀なエリートに育つ。

僻ましい?
そんか気持ちも湧かない。

ただ、一生懸命やってる自分の無意味さに呆れただけだ。

幼少期に虐待を受けようとも、
愛に飢えて育とうとも、それなりにもがいて生きて来た。

未来を信じて。
いつか、幸せと感じる日を信じて。

真面目に生きてこそ。
人を支えてこそ。

明るい未来、優しく時間があると信じて。
嗚呼、馬鹿馬鹿しい事よ。

ずっと見ないフリをしていた。
本当は少し分かっていた。

いつも自己愛が強い人ほど報われる。

そして我々は食い物にされる。

武士道はとうの昔に滅びてたのだ。
時代を読み間違えた敗北だ。









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