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学園編 1年目
南部首長長男の波乱2
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「オレがシャワー浴びたら悪いのか」
ダンスへは連れて行かなかったカカココを教室へ迎えに行き、シャワーを浴びに来た。
思わぬ形でジンに出会い、悪意なんてない問い掛けに対して、突き放すように返した。
これ以上、コイツとも仲良くは出来ない
距離を置いてくれればと思った。八つ当たりもあった。なのに、「お前に会えて嬉しい」とか言うので軽く動揺してしまう。そうだった、コイツは妙にポジティブで、かつ鈍い所がある男だ。
オレの言動を深くは受け取らなかったのだろう。
「そうか」
冷たい声で返したかったのに、思った以上に声が小さくなった。喉が震えて声が出てこない。
オレは慌てて、でも出来る限り平静を保って立ち去った。
ジンといると調子が狂う
教室に戻ると、先に剣術を選択していた生徒達が既に帰って来ていた。シャワー室の中で一時限分費やしたのか、だからあそこにジン達が居たのか。
何事もないようにいつもの席で次の授業を待った。
ダンスクラスに出ていた連中も戻って来て、わざとらしく近くを通る数人がニヤニヤと下卑た笑いを見せて来たり、いつもは前後ともに埋まる席に誰も座らなかったり、教室でも差別行為を続行するらしい。
窓際の席は人気なので、空いてると気付いた剣術授業に行っていた、事情を知らない生徒で結局埋まったのだが、彼らにわざわざ耳打ちまでしている。
馬鹿馬鹿しい
悪態を心の中で吐き、全てを無視する。
むしろ遠ざかってくれるならば有難いくらいだ。
いくら名ばかりの公爵と思っていても、直接ちょっかいを出せるのはファクシオンだけだろうから。
授業が始まり、そして何事もなく終わった。素早く立ち上がり教師よりも早く教室を出た。
廊下にはまだ誰も居なかった。更に人のあまり来ない場所を選んで進み、2年教室へ続く階段を上がった。ここは教師くらいしか使用しない。
踊り場で振り返ると、案の定、下にジンがいた。目立つと思ったのか、ドラゴとフィルは置いて来たのだろう。1人だった。密かに安堵する。
「ジン、話がある」
「……気付いてたのか」
「…うん。早く上がってきてくれ」
教室に居る時から視線を感じていたし、追いかけてくる気配も察知していた。
ジンが踊り場へ来ると、階下からは死角になる端の方へ移動する。
「話って」
「……これから、学園ではオレに構わないで欲しい。オマエの友人達にもそう伝えてくれ」
「…はい分かりましたって俺が言うと思う?」
「思うと言ったら、言ってくれるか」
ジンの眉が寄り、苦いものでも食べたような顔になった。ふっと笑いが漏れる。ゆらゆらと揺れるカカココが、頭へと小さく頭突きしてきた。
不安と心配を目一杯に張り付けている顔を見て、息を深く吸い込み、背筋を伸ばしてジンと向き直る。
「ファクシオンを筆頭に、クラス内で差別され始めた」
口にした瞬間、心臓がドクリと嫌な動きをした。鉛が沈められたかのように腹が重くなる。平常心を装うが、心はいやに騒がしい。
差別を受けている事を認めること、そしてそれを口にすることだけで、これほど屈辱的だとは。
続けて言うつもりだった言葉が飛んでしまい、息が詰まるようだ。
「イルラ」
大きな手に腕を優しく掴まれた。
「あんま噛み締めるな。血が出てる」
逆の手で口端を撫でられた。気付かない内に唇を噛み締めていたらしい。歯を浮かすとチリチリと痛んだ。口の中に少しだけ血の味もする。
でもオレよりもジンの方が痛そうな顔をしていた。その顔を見て心が軽くなる。
オレの痛みを、オレ以上に感じてくれる他人が居る。この思いは不謹慎だろうか。
ジンはジャケットの胸ポケットからハンカチを取り出し、そっと唇に当ててくれた。オレはそのまま、手を入れ替えるようにハンカチを受け取った。
「差別は頭が悪い奴がするんだよ。世界頭の悪さランキングがあったら、是非ファクシオンには胸を張って出て頂きたいな。きっと良いところまで行けるぜ」
「ふ…、悪意しかないな、そのランキング。……それ、本人に言うなよ」
変な悪口に少し笑ってしまったが、ジンは至って真面目な顔をしていたので急に不安になった。本人に言うなど愚行はしないだろうが、念のために釘を刺すとやっと少し笑った。目が笑ってないので怖い。
「分かった、言う時は世界頭の弱さ決定戦にしておく」
「……ダメだからな。何も言うな」
どこまで冗談か分からなくなってくる。
「お前を不当に扱われて黙ってられねぇよ。…どうしてどいつもこいつも、自分の功績でもない身分で偉そうに他人を虐げられるんだ。自分の功績でも、許される事じゃねぇのに」
悔しげに歪められた顔から、低めた声から、本気の怒りを感じた。途端に空気が重くなり、飢えた獣に見つかった獲物のように、身動きが取れなくなる。
目の前にいて、意味などないのに息を殺してしまう。
カカココまで凍り付いている。
ハッとジンが我に返り、虚空を睨みつけていた赤褐色の目がやっとコチラを向いた。いつもの彼の目だ。
「ちょっと待て。まさかお前、自分が差別を受けてるから俺達に構うなと言ってるのか?俺達を巻き込みたくないから?」
「そうだ。何か用があるなら部屋で頼む」
「この状況で孤立するのは良くないだろ」
「いや、良い」
「イルラ、孤立したらあいつらは調子づくだけだ。味方が居る事を示した方が良い」
「嫌だ」
「イル…」
ハンカチでジンの口を押さえた。
「男爵家が公爵家相手に何が出来る」
「…家は、関係ねぇだろ」
「アイツがそう思うと思うか?これは"家"の話だ」
押し黙ったジンからハンカチを離す。しまった、血の付いた方を押し付けてしまった。でもジンの口周りは汚れてないからセーフだろう。
「…地図の上で、ウォーリア男爵領とカプソディア辺境伯が住む領地は隣接しているな。カプソディア辺境伯は、自分の領地にさえ圧政を敷き、周辺地域の伯爵以下へ圧力を掛けて搾取。搾取出来ないと判断した家は数ヶ月と持たずに取り潰しになり、辺境伯やその関係者の領地へと変わっている。その資金力のせいで貴族社会での影響は大きいと聞いた」
「……それが?」
「カプソディア辺境伯とオンザウェル公爵は、数年前に辺境伯が病で臥せるまでは親交が深かったと聞いた。もし今回の件が飛び火でもして、オマエの家に何かあったら…オレは責任を取れない」
「辺境伯はこんな事に口出さねぇよ。…いくらバカだからと、お前の味方したからって家まで巻き込むような事はしないだろ」
「本当にそう良い切れるか?アイツの親は親バカでも有名だぞ。似た者親子とも。そしてこれは例え話だ。相手はオマエではなく、ハンスかもしれないし、テオドールかもしれないし、もっと立場の弱い子爵や男爵家の者かもしれない」
「…」
「オンザウェル公爵家が出張って来たら、オマエも、オマエの周りも、何をされるか分からない。オレにはそっちの方が耐え切れない」
「それは」
「オレは端くれと言っても公爵の地位があるから、ククルカを好き勝手にする力はオンザウェルにもない。だから代わりに、冤罪でも作り上げてオマエやハンスを狙うかもしれない。そしてククルカは、それを止めるだけの力も、繋がりも、ない」
「……そうはならないかもしれないだろ」
「それはつまり、なるかもしれないって事だろ」
未来はどちらにどう転ぶか、ある程度の予測しか出来ない。いや、転んだ先を想定して準備しておく事しか出来ないんだ。
ハンカチを握り締める。手触りの良い生地だ。無地の、灰色がかった綺麗な青一色。そこに違和感のある、血の赤黒い小さな点々。その赤が自分を啓示してるように思えた。
染みは消し去りたくなるものかもしれない。
「…オレを庇ったせいで、関係ない人間が巻き込まれるのは、オレ自身が差別を受けるより辛い。何も出来ないからだ」
微温湯に入っていた事を自覚して、それがどれだけ有難い事だったか分かった。
オマエが気にしないでくれたから、オレも捻くれたまま学園生活を送らずにすんだ。
きっと捻くれたまま過ごしていたら、疑心暗鬼のまま相手に噛み付いていたら、もっと早くにオレはクラスで孤立していた筈だ。
いや、もっと酷い目に遭っていたかもしれない。
感謝している。だからこそオレの為に動かないで欲しい。だから、
「だからもう構わないでくれ。1人で居るのは平気だ。オレは授業さえ受けられれば良い。流石に教師達まで差別に加担する事はないだろう」
「…1人で居るのは彼奴の思う壺にしかならないだろ。せめて、ロキ先生には言った方が良い。担任だし。あの人は差別を見過ごしたりしねぇよ」
「それでも別の誰かが犠牲になるより良い。…教師には言いたくない」
「イルラ!」
オレの駄々に流石にジンが声を張り上げた。オレは大袈裟なほどに頭(かぶり)を振った。
「言いたくない。村へ、母に、万が一でも知られたくない。それに解決する訳じゃないのは、オマエだって分かってるだろ。寧ろ告げ口をしたともっと酷い報復に遭うかもしれない、耐える事さえ出来ない弱者とククルカ自体の悪評を立たされるかもしれない。言って聞くヤツなら初めからこんなバカをやらかす訳ないだろ!」
言葉が止まらず、口調はどんどん強くなり、最終的に怒鳴りつけてしまった。
ジンは怒るでも、呆れるでもなく、悲しそうな顔をしている。
ごめん、心配してくれてるのに、ごめん
釣られて悲しくなって来て、目の奥がツンとした。深く静かに呼吸して、込み上げてくる衝動を受け流す。
「……貴族社会において、ククルカの力は小さい。アイツの言う通り、同格ではないのかもしれない」
「そんなわけ」
「オマエもククルカの名を知らなかっただろ。でもオンザウェルの名前は知っていた。そう言うものだ」
「……っ」
悔しそうに奥歯を噛んだのが分かった。こうやって正面から見詰めると、本当に男前で良い顔をしてるんだなと思う。どんな表情も様になると言ったら、喜ぶだろうか。今言ったら、今度こそ呆れられるかもしれない。
「…部屋では、今まで通り相手してくれたら嬉しい。でも、それ以外の場所では、何があっても無視して欲しい。ハンス達にも言ってくれ、…時々話しかけてくれるんだ。オマエらが寄って来なければ、他のヤツらも近寄って来なくなる」
「……1人で、我慢するなよ」
「…部屋では我慢しない」
「………」
「ジン、どうか、頼む。3年だ、たった3年。オレは耐えられる」
母が村で耐えた期間を考えれば3年くらいなんて事ない。その時の母よりも、今のオレは年上なのだから。
ひと時でも微温湯を与えてくれたオマエと、オマエの従魔達と、オマエが大事にしてる友人達を、オレは傷付けたくないんだ。下手かもしれないが、オレにはこうやって守ることしか出来ないんだ。
ジンは何か言いたそうに唇を薄く開けたり、閉じたりして、最終的に硬く目を瞑って頭を振った。
顔を洗うように掌で強く目を擦ると、無言のまま、やっと頷いてくれた。
オレはホッとして、握り締めたままのハンカチへやっと意識が戻った。血で汚した上に、くしゃくしゃだ。
「ハンカチ、すまん。後でキレイにして返す」
「…お守り代わりになるなら持ってて。俺はあんま傍に居てやれねぇみたいだし」
「……でも、…うん、持っておく。ありがとう。………さっきは嫌な態度を取って悪かった」
「…うん?嫌な態度?」
「シャワー室の前で」
「ああ…全然気にしてねぇよ。怖い時に猫が引っ掻くようなもんだろ」
「…そんな可愛いもんじゃない」
「可愛いよ。不安な時、気が立つタイプって居るだろ。お前はそうかなって。そういう時、お前も猫みたいに引っ掻いてくるけど、強がりだって分かるから。俺は可愛いと思う」
「………」
なんで母と似たような事を言うんだコイツ。
理由も分からず顔が赤くなりそうになる。図星を突かれて恥ずかしいのか、それだけオレを見てくれていた事が嬉しいのか。
顔を俯かせて押し黙った。ジンはオレの様子に気付いて慌てたように、顔を覗き込んでくる。
「ごめん、分かったような口きいて。つか猫と一緒にして。嫌だった?」
俯いた理由を勘違いしていた。
褐色の肌は赤らんでも分かりにくいからバレてないようだ。オレは首を振った。
「………いや…気にしてないなら、いい。先に教室へ戻ってくれ。さっき言ったこと、頼むぞ」
「……嫌だけど、わかった。嫌だけど」
「嫌なのは分かったから早く行ってくれ。次の授業が始まる」
渋々と階段を降りて行く姿を見送り、壁に凭れ掛かった。カカココがするすると首を伸ばして顔を覗き込んでくる。
両手でハンカチを握り締め、微笑む。
「…大丈夫だ。きっと」
祈るような、誓うような、曖昧な言葉はカカココを安心させるものではなかったけど、言い聞かせるしかない。自分にも。
『辛い目に遭っても我慢しそうで。悲しくても隠しそうで。向き合う大事さを知ってるから、逃げる選択肢を選ばずに、傷だらけになるんじゃないかって』
母の言葉が頭の中を巡る。違う、これは違う。誰も傷付かない為の最良の選択なんだ。
だってまだ戦える。ある意味できちんと逃げている。
言い訳に言い訳して母の悲しそうな顔を頭から追い払う。遠くでオレの幸福を願ってくれている母を苦しめたくない。
「…差別なんて、すぐ飽きるかもしれないしな」
それは薄っぺらい希望でしかない事を分かっていながら口にして、教室へと戻った。
.
.
.
あれから2ヶ月が経とうとしている。
ダンスの特練クラスには参加出来ていない。一度だけ妨害なく参加出来た時に、女子が派手に転んでオレに怪我をさせられたと喚き、ダンス教師の侯爵夫人に「これだから野蛮人は」と小さな声で謗られた。
彼女自身が異民族に偏見があるのか、それともファクシオンに先手を打たれたのか分からない。
何にせよ、ダンスクラスでオレと踊る人間は居なくなり、教師は上っ面は普通に接してくるが、それが余計に薄気味悪い。
積極的に参加する意思もなくなり、妨害行為は絶えず行われるので、参加出来ていない。
教室でも時折、授業中に突然身体に痛みが走ったり、必要な資料がなくなったりと、陰湿な暴力や嫌がらせが見られるようになった。
ジンはオレとの約束を守ってくれていた。何があっても黙って見ているだけだし、ハンス達も同じく関わろうとして来ない。
教室で度々嫌がらせをされるのは、ジン達が離れたせいだろうとジン自身が言った。オレもそう思う。
ドラゴンを連れている男は、例え男爵とは言え畏怖対象だ。実力を隠していようと本能で分かる。ジンが普通じゃない事を。
おまけに2体目のフィルも畏怖を強める要因だ。狼型の魔物は、主人には忠実だがテリトリーを害する者に牙を剥く事を厭わない。フィルは良く躾けられているが、時にはテリトリーの危機や主人の怒りに反応して命令なしに相手へ飛び掛かる狼型が居るらしい。あの牙に咬まれたら即死だってありえるのだから、誰だって怒りを買いたくない。
ジンと言う防波堤が崩れた、ようにクラス内では映るんだろう。その所為でジンまで差別に加担しているような噂が立っている事には、申し訳なさしかない。
当の本人は相変わらずハンスかテオドールとしか行動していないし、他のクラスメイトとは当たり障りない話しかしていない。差別的な話題が出ると、いつの間にか消えてるとも聞く。どちらとも明言しないのは、アイツらしい逃げ方だと思う。
「…あ」
ある日、移動教室から帰って来た時、出した覚えのない教科書が出ていて、一瞬嫌がらせかと警戒した。教科書を退けると銀紙に包まれた小さなチョコが置いてあった。ジンかな、と思ったが、わざわざ机に置く必要はない。部屋で会えるからだ。
「?」
一応、中身を確認するが、やっぱりただのチョコだった。高級品で滅多に口にする事がないから、はっきりチョコと言えないが、甘くて程良い硬さで美味しいモノであるのは確かだ。これは嫌がらせではないだろう。
「ハンス、それチョコ?」
女子生徒の声が後ろからして、思わず振り返った。
「そうっす。親父が新作の感想欲しさに送り付けて来たんす。いるっすか?」
「良いの?ありがとう」
「あ、アニーいいな…」
「ジャンヌ嬢もどうぞ」
「あ…は、はしたなくてごめんなさい。頂きますわ…」
「いえいえそんな」
ハンスの営業っぽいにこやかな声が聞こえて、差し出された袋の中に小さな銀包が見えた。
手元の銀紙を見下ろす。
少し、勘違いしていた。本当は、ハンスはジンが言わなくとも、ジンがオレに近付かなければ自然と関わらないんじゃないかと思っていた。
だけど、構うなと伝えられてるだろうオレに、わざわざ差し入れをくれた。人の優しさが染みる。
それから、度々小さな差し入れが机や引き出しなどに隠されるようになり、常に気を張った日々の中の密やかな楽しみになった。
「今日は飴があったんだが、少し独特な味がした。不味くはないんだ。ハンスにアレは何の飴だったか聞いてくれないか」
寮に帰ってから、その日あった差し入れをジンへ報告して礼を伝えて貰ってた。
深夜まで居ない日が前より減って、夕食を共に部屋で取るようになったジンは、話を聞いて首を傾いだ。
「それ、ハンスじゃねぇな」
「え…」
差し入れに見せかけた嫌がらせの類だったか。
「テオドールだ。騎士塔の購買に、筋肉栄養剤の飴があったからって、俺も貰ったんだよ」
「テオドールが、オレに?…なんで」
ハンス以上にテオドールとは縁はなかった。
「心配してたからな。あいつも剣士って事で騎士塔で肩身狭いらしい。それより辛いだろうけど、気持ちが分かるって」
「……そうか」
「礼、伝えとくな」
「うん…」
人の優しさと、人の汚い所を、交互に与えられて、心はいつも落ち着かない。
あまりにも落ち着かなくて眠れない時、何をどう察してるのか、ジンはオレのベッドへ入り込んでくる。
何をするでもなく、背中合わせに寝たり、添い寝をしたり、それだけの事なのにストンに眠りに落ちる。
このままなら卒業まで頑張れそうだ。
またオレは良くない楽観をしていると、その時は気付けなかった。
ダンスへは連れて行かなかったカカココを教室へ迎えに行き、シャワーを浴びに来た。
思わぬ形でジンに出会い、悪意なんてない問い掛けに対して、突き放すように返した。
これ以上、コイツとも仲良くは出来ない
距離を置いてくれればと思った。八つ当たりもあった。なのに、「お前に会えて嬉しい」とか言うので軽く動揺してしまう。そうだった、コイツは妙にポジティブで、かつ鈍い所がある男だ。
オレの言動を深くは受け取らなかったのだろう。
「そうか」
冷たい声で返したかったのに、思った以上に声が小さくなった。喉が震えて声が出てこない。
オレは慌てて、でも出来る限り平静を保って立ち去った。
ジンといると調子が狂う
教室に戻ると、先に剣術を選択していた生徒達が既に帰って来ていた。シャワー室の中で一時限分費やしたのか、だからあそこにジン達が居たのか。
何事もないようにいつもの席で次の授業を待った。
ダンスクラスに出ていた連中も戻って来て、わざとらしく近くを通る数人がニヤニヤと下卑た笑いを見せて来たり、いつもは前後ともに埋まる席に誰も座らなかったり、教室でも差別行為を続行するらしい。
窓際の席は人気なので、空いてると気付いた剣術授業に行っていた、事情を知らない生徒で結局埋まったのだが、彼らにわざわざ耳打ちまでしている。
馬鹿馬鹿しい
悪態を心の中で吐き、全てを無視する。
むしろ遠ざかってくれるならば有難いくらいだ。
いくら名ばかりの公爵と思っていても、直接ちょっかいを出せるのはファクシオンだけだろうから。
授業が始まり、そして何事もなく終わった。素早く立ち上がり教師よりも早く教室を出た。
廊下にはまだ誰も居なかった。更に人のあまり来ない場所を選んで進み、2年教室へ続く階段を上がった。ここは教師くらいしか使用しない。
踊り場で振り返ると、案の定、下にジンがいた。目立つと思ったのか、ドラゴとフィルは置いて来たのだろう。1人だった。密かに安堵する。
「ジン、話がある」
「……気付いてたのか」
「…うん。早く上がってきてくれ」
教室に居る時から視線を感じていたし、追いかけてくる気配も察知していた。
ジンが踊り場へ来ると、階下からは死角になる端の方へ移動する。
「話って」
「……これから、学園ではオレに構わないで欲しい。オマエの友人達にもそう伝えてくれ」
「…はい分かりましたって俺が言うと思う?」
「思うと言ったら、言ってくれるか」
ジンの眉が寄り、苦いものでも食べたような顔になった。ふっと笑いが漏れる。ゆらゆらと揺れるカカココが、頭へと小さく頭突きしてきた。
不安と心配を目一杯に張り付けている顔を見て、息を深く吸い込み、背筋を伸ばしてジンと向き直る。
「ファクシオンを筆頭に、クラス内で差別され始めた」
口にした瞬間、心臓がドクリと嫌な動きをした。鉛が沈められたかのように腹が重くなる。平常心を装うが、心はいやに騒がしい。
差別を受けている事を認めること、そしてそれを口にすることだけで、これほど屈辱的だとは。
続けて言うつもりだった言葉が飛んでしまい、息が詰まるようだ。
「イルラ」
大きな手に腕を優しく掴まれた。
「あんま噛み締めるな。血が出てる」
逆の手で口端を撫でられた。気付かない内に唇を噛み締めていたらしい。歯を浮かすとチリチリと痛んだ。口の中に少しだけ血の味もする。
でもオレよりもジンの方が痛そうな顔をしていた。その顔を見て心が軽くなる。
オレの痛みを、オレ以上に感じてくれる他人が居る。この思いは不謹慎だろうか。
ジンはジャケットの胸ポケットからハンカチを取り出し、そっと唇に当ててくれた。オレはそのまま、手を入れ替えるようにハンカチを受け取った。
「差別は頭が悪い奴がするんだよ。世界頭の悪さランキングがあったら、是非ファクシオンには胸を張って出て頂きたいな。きっと良いところまで行けるぜ」
「ふ…、悪意しかないな、そのランキング。……それ、本人に言うなよ」
変な悪口に少し笑ってしまったが、ジンは至って真面目な顔をしていたので急に不安になった。本人に言うなど愚行はしないだろうが、念のために釘を刺すとやっと少し笑った。目が笑ってないので怖い。
「分かった、言う時は世界頭の弱さ決定戦にしておく」
「……ダメだからな。何も言うな」
どこまで冗談か分からなくなってくる。
「お前を不当に扱われて黙ってられねぇよ。…どうしてどいつもこいつも、自分の功績でもない身分で偉そうに他人を虐げられるんだ。自分の功績でも、許される事じゃねぇのに」
悔しげに歪められた顔から、低めた声から、本気の怒りを感じた。途端に空気が重くなり、飢えた獣に見つかった獲物のように、身動きが取れなくなる。
目の前にいて、意味などないのに息を殺してしまう。
カカココまで凍り付いている。
ハッとジンが我に返り、虚空を睨みつけていた赤褐色の目がやっとコチラを向いた。いつもの彼の目だ。
「ちょっと待て。まさかお前、自分が差別を受けてるから俺達に構うなと言ってるのか?俺達を巻き込みたくないから?」
「そうだ。何か用があるなら部屋で頼む」
「この状況で孤立するのは良くないだろ」
「いや、良い」
「イルラ、孤立したらあいつらは調子づくだけだ。味方が居る事を示した方が良い」
「嫌だ」
「イル…」
ハンカチでジンの口を押さえた。
「男爵家が公爵家相手に何が出来る」
「…家は、関係ねぇだろ」
「アイツがそう思うと思うか?これは"家"の話だ」
押し黙ったジンからハンカチを離す。しまった、血の付いた方を押し付けてしまった。でもジンの口周りは汚れてないからセーフだろう。
「…地図の上で、ウォーリア男爵領とカプソディア辺境伯が住む領地は隣接しているな。カプソディア辺境伯は、自分の領地にさえ圧政を敷き、周辺地域の伯爵以下へ圧力を掛けて搾取。搾取出来ないと判断した家は数ヶ月と持たずに取り潰しになり、辺境伯やその関係者の領地へと変わっている。その資金力のせいで貴族社会での影響は大きいと聞いた」
「……それが?」
「カプソディア辺境伯とオンザウェル公爵は、数年前に辺境伯が病で臥せるまでは親交が深かったと聞いた。もし今回の件が飛び火でもして、オマエの家に何かあったら…オレは責任を取れない」
「辺境伯はこんな事に口出さねぇよ。…いくらバカだからと、お前の味方したからって家まで巻き込むような事はしないだろ」
「本当にそう良い切れるか?アイツの親は親バカでも有名だぞ。似た者親子とも。そしてこれは例え話だ。相手はオマエではなく、ハンスかもしれないし、テオドールかもしれないし、もっと立場の弱い子爵や男爵家の者かもしれない」
「…」
「オンザウェル公爵家が出張って来たら、オマエも、オマエの周りも、何をされるか分からない。オレにはそっちの方が耐え切れない」
「それは」
「オレは端くれと言っても公爵の地位があるから、ククルカを好き勝手にする力はオンザウェルにもない。だから代わりに、冤罪でも作り上げてオマエやハンスを狙うかもしれない。そしてククルカは、それを止めるだけの力も、繋がりも、ない」
「……そうはならないかもしれないだろ」
「それはつまり、なるかもしれないって事だろ」
未来はどちらにどう転ぶか、ある程度の予測しか出来ない。いや、転んだ先を想定して準備しておく事しか出来ないんだ。
ハンカチを握り締める。手触りの良い生地だ。無地の、灰色がかった綺麗な青一色。そこに違和感のある、血の赤黒い小さな点々。その赤が自分を啓示してるように思えた。
染みは消し去りたくなるものかもしれない。
「…オレを庇ったせいで、関係ない人間が巻き込まれるのは、オレ自身が差別を受けるより辛い。何も出来ないからだ」
微温湯に入っていた事を自覚して、それがどれだけ有難い事だったか分かった。
オマエが気にしないでくれたから、オレも捻くれたまま学園生活を送らずにすんだ。
きっと捻くれたまま過ごしていたら、疑心暗鬼のまま相手に噛み付いていたら、もっと早くにオレはクラスで孤立していた筈だ。
いや、もっと酷い目に遭っていたかもしれない。
感謝している。だからこそオレの為に動かないで欲しい。だから、
「だからもう構わないでくれ。1人で居るのは平気だ。オレは授業さえ受けられれば良い。流石に教師達まで差別に加担する事はないだろう」
「…1人で居るのは彼奴の思う壺にしかならないだろ。せめて、ロキ先生には言った方が良い。担任だし。あの人は差別を見過ごしたりしねぇよ」
「それでも別の誰かが犠牲になるより良い。…教師には言いたくない」
「イルラ!」
オレの駄々に流石にジンが声を張り上げた。オレは大袈裟なほどに頭(かぶり)を振った。
「言いたくない。村へ、母に、万が一でも知られたくない。それに解決する訳じゃないのは、オマエだって分かってるだろ。寧ろ告げ口をしたともっと酷い報復に遭うかもしれない、耐える事さえ出来ない弱者とククルカ自体の悪評を立たされるかもしれない。言って聞くヤツなら初めからこんなバカをやらかす訳ないだろ!」
言葉が止まらず、口調はどんどん強くなり、最終的に怒鳴りつけてしまった。
ジンは怒るでも、呆れるでもなく、悲しそうな顔をしている。
ごめん、心配してくれてるのに、ごめん
釣られて悲しくなって来て、目の奥がツンとした。深く静かに呼吸して、込み上げてくる衝動を受け流す。
「……貴族社会において、ククルカの力は小さい。アイツの言う通り、同格ではないのかもしれない」
「そんなわけ」
「オマエもククルカの名を知らなかっただろ。でもオンザウェルの名前は知っていた。そう言うものだ」
「……っ」
悔しそうに奥歯を噛んだのが分かった。こうやって正面から見詰めると、本当に男前で良い顔をしてるんだなと思う。どんな表情も様になると言ったら、喜ぶだろうか。今言ったら、今度こそ呆れられるかもしれない。
「…部屋では、今まで通り相手してくれたら嬉しい。でも、それ以外の場所では、何があっても無視して欲しい。ハンス達にも言ってくれ、…時々話しかけてくれるんだ。オマエらが寄って来なければ、他のヤツらも近寄って来なくなる」
「……1人で、我慢するなよ」
「…部屋では我慢しない」
「………」
「ジン、どうか、頼む。3年だ、たった3年。オレは耐えられる」
母が村で耐えた期間を考えれば3年くらいなんて事ない。その時の母よりも、今のオレは年上なのだから。
ひと時でも微温湯を与えてくれたオマエと、オマエの従魔達と、オマエが大事にしてる友人達を、オレは傷付けたくないんだ。下手かもしれないが、オレにはこうやって守ることしか出来ないんだ。
ジンは何か言いたそうに唇を薄く開けたり、閉じたりして、最終的に硬く目を瞑って頭を振った。
顔を洗うように掌で強く目を擦ると、無言のまま、やっと頷いてくれた。
オレはホッとして、握り締めたままのハンカチへやっと意識が戻った。血で汚した上に、くしゃくしゃだ。
「ハンカチ、すまん。後でキレイにして返す」
「…お守り代わりになるなら持ってて。俺はあんま傍に居てやれねぇみたいだし」
「……でも、…うん、持っておく。ありがとう。………さっきは嫌な態度を取って悪かった」
「…うん?嫌な態度?」
「シャワー室の前で」
「ああ…全然気にしてねぇよ。怖い時に猫が引っ掻くようなもんだろ」
「…そんな可愛いもんじゃない」
「可愛いよ。不安な時、気が立つタイプって居るだろ。お前はそうかなって。そういう時、お前も猫みたいに引っ掻いてくるけど、強がりだって分かるから。俺は可愛いと思う」
「………」
なんで母と似たような事を言うんだコイツ。
理由も分からず顔が赤くなりそうになる。図星を突かれて恥ずかしいのか、それだけオレを見てくれていた事が嬉しいのか。
顔を俯かせて押し黙った。ジンはオレの様子に気付いて慌てたように、顔を覗き込んでくる。
「ごめん、分かったような口きいて。つか猫と一緒にして。嫌だった?」
俯いた理由を勘違いしていた。
褐色の肌は赤らんでも分かりにくいからバレてないようだ。オレは首を振った。
「………いや…気にしてないなら、いい。先に教室へ戻ってくれ。さっき言ったこと、頼むぞ」
「……嫌だけど、わかった。嫌だけど」
「嫌なのは分かったから早く行ってくれ。次の授業が始まる」
渋々と階段を降りて行く姿を見送り、壁に凭れ掛かった。カカココがするすると首を伸ばして顔を覗き込んでくる。
両手でハンカチを握り締め、微笑む。
「…大丈夫だ。きっと」
祈るような、誓うような、曖昧な言葉はカカココを安心させるものではなかったけど、言い聞かせるしかない。自分にも。
『辛い目に遭っても我慢しそうで。悲しくても隠しそうで。向き合う大事さを知ってるから、逃げる選択肢を選ばずに、傷だらけになるんじゃないかって』
母の言葉が頭の中を巡る。違う、これは違う。誰も傷付かない為の最良の選択なんだ。
だってまだ戦える。ある意味できちんと逃げている。
言い訳に言い訳して母の悲しそうな顔を頭から追い払う。遠くでオレの幸福を願ってくれている母を苦しめたくない。
「…差別なんて、すぐ飽きるかもしれないしな」
それは薄っぺらい希望でしかない事を分かっていながら口にして、教室へと戻った。
.
.
.
あれから2ヶ月が経とうとしている。
ダンスの特練クラスには参加出来ていない。一度だけ妨害なく参加出来た時に、女子が派手に転んでオレに怪我をさせられたと喚き、ダンス教師の侯爵夫人に「これだから野蛮人は」と小さな声で謗られた。
彼女自身が異民族に偏見があるのか、それともファクシオンに先手を打たれたのか分からない。
何にせよ、ダンスクラスでオレと踊る人間は居なくなり、教師は上っ面は普通に接してくるが、それが余計に薄気味悪い。
積極的に参加する意思もなくなり、妨害行為は絶えず行われるので、参加出来ていない。
教室でも時折、授業中に突然身体に痛みが走ったり、必要な資料がなくなったりと、陰湿な暴力や嫌がらせが見られるようになった。
ジンはオレとの約束を守ってくれていた。何があっても黙って見ているだけだし、ハンス達も同じく関わろうとして来ない。
教室で度々嫌がらせをされるのは、ジン達が離れたせいだろうとジン自身が言った。オレもそう思う。
ドラゴンを連れている男は、例え男爵とは言え畏怖対象だ。実力を隠していようと本能で分かる。ジンが普通じゃない事を。
おまけに2体目のフィルも畏怖を強める要因だ。狼型の魔物は、主人には忠実だがテリトリーを害する者に牙を剥く事を厭わない。フィルは良く躾けられているが、時にはテリトリーの危機や主人の怒りに反応して命令なしに相手へ飛び掛かる狼型が居るらしい。あの牙に咬まれたら即死だってありえるのだから、誰だって怒りを買いたくない。
ジンと言う防波堤が崩れた、ようにクラス内では映るんだろう。その所為でジンまで差別に加担しているような噂が立っている事には、申し訳なさしかない。
当の本人は相変わらずハンスかテオドールとしか行動していないし、他のクラスメイトとは当たり障りない話しかしていない。差別的な話題が出ると、いつの間にか消えてるとも聞く。どちらとも明言しないのは、アイツらしい逃げ方だと思う。
「…あ」
ある日、移動教室から帰って来た時、出した覚えのない教科書が出ていて、一瞬嫌がらせかと警戒した。教科書を退けると銀紙に包まれた小さなチョコが置いてあった。ジンかな、と思ったが、わざわざ机に置く必要はない。部屋で会えるからだ。
「?」
一応、中身を確認するが、やっぱりただのチョコだった。高級品で滅多に口にする事がないから、はっきりチョコと言えないが、甘くて程良い硬さで美味しいモノであるのは確かだ。これは嫌がらせではないだろう。
「ハンス、それチョコ?」
女子生徒の声が後ろからして、思わず振り返った。
「そうっす。親父が新作の感想欲しさに送り付けて来たんす。いるっすか?」
「良いの?ありがとう」
「あ、アニーいいな…」
「ジャンヌ嬢もどうぞ」
「あ…は、はしたなくてごめんなさい。頂きますわ…」
「いえいえそんな」
ハンスの営業っぽいにこやかな声が聞こえて、差し出された袋の中に小さな銀包が見えた。
手元の銀紙を見下ろす。
少し、勘違いしていた。本当は、ハンスはジンが言わなくとも、ジンがオレに近付かなければ自然と関わらないんじゃないかと思っていた。
だけど、構うなと伝えられてるだろうオレに、わざわざ差し入れをくれた。人の優しさが染みる。
それから、度々小さな差し入れが机や引き出しなどに隠されるようになり、常に気を張った日々の中の密やかな楽しみになった。
「今日は飴があったんだが、少し独特な味がした。不味くはないんだ。ハンスにアレは何の飴だったか聞いてくれないか」
寮に帰ってから、その日あった差し入れをジンへ報告して礼を伝えて貰ってた。
深夜まで居ない日が前より減って、夕食を共に部屋で取るようになったジンは、話を聞いて首を傾いだ。
「それ、ハンスじゃねぇな」
「え…」
差し入れに見せかけた嫌がらせの類だったか。
「テオドールだ。騎士塔の購買に、筋肉栄養剤の飴があったからって、俺も貰ったんだよ」
「テオドールが、オレに?…なんで」
ハンス以上にテオドールとは縁はなかった。
「心配してたからな。あいつも剣士って事で騎士塔で肩身狭いらしい。それより辛いだろうけど、気持ちが分かるって」
「……そうか」
「礼、伝えとくな」
「うん…」
人の優しさと、人の汚い所を、交互に与えられて、心はいつも落ち着かない。
あまりにも落ち着かなくて眠れない時、何をどう察してるのか、ジンはオレのベッドへ入り込んでくる。
何をするでもなく、背中合わせに寝たり、添い寝をしたり、それだけの事なのにストンに眠りに落ちる。
このままなら卒業まで頑張れそうだ。
またオレは良くない楽観をしていると、その時は気付けなかった。
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