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学園編 3年目
夏季休暇 北部2-3
しおりを挟む「じゃあ」
馬車に乗り込んで席順をジンが指定した。踏ん張りの利く、テオドール、ギルバート、イルラの順に並んで貰い、向かいにロキ、ジン、ハンスで座る。わざわざ席を指定された事で5人は首を傾いだ。
「どこに行く事になったんだ」
ロキは、ガリストを先頭にピーチ達がギルドから出て来る姿を窓から眺める。馬車が微かに揺れた。ガリストが御者台へと上り、ウマ爺の隣に腰を下ろしたのだ。後方からは微かな口笛のような音が聞こえ、ドコドコと地面を蹴る獣の足音が近付いて来る。
「氷海。ちょっと移動に時間が掛かるから、かなり飛ばすよ。馬車に取り付けてる保護結界があるから、そこまで揺れはないと思うけど、念の為深めに腰掛けて両端の4人は何かに掴まってて。で、お前は」
ジンは向かい合うギルバートを見た。
「両サイドの2人が危なさそうだったら押さえ込んでやって。防御魔術の『不動』習得してるだろ。でもお前の身を優先で」
ギルバートは両端の2人を一瞥して頷いた。並び順の謎も解けた。ジンを挟んだ2人の方が吹っ飛ぶ確率が高い。筋肉の少ないハンスは軽く、ロキは身体能力が高くないからだ。
ゴンゴンとジンの後ろの御者台へ続く小窓が鳴った。手の甲で窓を叩き返すと、ゆっくりと馬車が動き出す。
「あれ、ドラゴとフィルは?」
先程から全く姿が見えない上に、ジンは出る時に声を掛けた様子もなく、気になったハンスが尋ねた。
「ついて来てるよ。アイツらも友達が居るから、そっちと一緒」
ジンが後ろを指を差す。それぞれ近い窓から後方を覗き込むと、輝く黄金の毛を震わせて大きな猪が走っている。フィルがその真横を並走し、ドラゴは頭の上に乗っていた。猪の背に跨るエドワードが、偉そうに風を浴びているドラゴの後ろで笑っている。その後ろにチラチラとカミラとピーチの頭も見えた。
「…氷海ってのは、Eランクの狩場なのか?」
誰よりも早く顔を戻したギルバートがジンへと尋ねる。氷海は無限に広い、そう言い表される程に広い。広いが故にランクにバラつきがあるのだろうかと全員が思った。比較的、安全な氷海に連れて行かれるのだろうと。
ジンは至って平然とした様子で微笑んだので、「ああ、やっぱり」と馬車内の空気が軽くなった。
「いや、氷海にEはない。AからSSのランクになる」
一瞬静まり返った後、わっと5人が喋り出した。
「登録者以外立ち入り禁止じゃないのか」
「俺、帰るっす」
「俺ら死にに行ってね?大丈夫?」
「……そんな所、素人が行って良いのか」
「そのランクの幅はどうやって決まるんだ」
それぞれ言いたい事を言うので纏まりがない。ジンは全然面白くないのに「はは」と小さく笑った。ジンもそこまで乗り気ではないのだ。
「うん、本来は立ち入り禁止。て言うか、行きたくても近付けない。今回はS級が2名、A級が3名、B級1名に、SS級とA級の従魔3頭で行くガチガチの布陣だから大丈夫だろうって事らしい。まあ、決めるのはガリストだからな。ボスが良いと言えば良いんだよ、禁止区域への立入も……どう言うつもりかは、俺も分かんねぇけど」
5人を見て気が変わったと、突然氷海行きを言い出した。危ない目に合わせる必要なんてないと言い返したがガリストは聞く耳を持ってくれず、結局『ウォーリア家にお前のことバラしてやろうか』と脅される形で押し切られた。
意味のない事はしない男だ。何らかの思惑があるのだろうが、ジンには全く思い付かない。
馬車の速度は更に上がる。揺れが北部に来た時よりも強いが、まだ踏ん張る程ではない。ただ窓の外の景色は目紛しく変わっていく。ジンはポケットへ入れていた依頼書の写本を取り出し、中央で広げる。
「これが今回の討伐依頼。氷凍の鯨 竜。ランクはA。氷海の狩場ランクは天候や周囲の状況で変わる。今回は観測隊からの情報で、狩場もAだと言われてる。…絶対に安心だって言えないし、お前らが嫌なら、船にさえ乗らなければ」
「船?」
ハンスが途中で反応した。その顔には「もしかして」と言う期待がありありと浮かんでいて、ジンは自分の期待は叶わないと悟ったがつい微笑んでしまった。
「そう、船だ」
.
.
.
「砕氷船っす!!」
目的地に到着し、いの一番に馬車を降りて駆け出したのは、帰りたがっていたハンスだった。
浮馬の最高速度で駆け抜けた数時間。通常であれば数日掛かる距離を、それも山の狭間や洞窟など様々な狩場を突っ切る凸凹道を、ノンストップで駆けて来た。揺れもあり、障害物をスレスレに避けたりと、車内は流石に叫び声が上がる場面も多々あった。海に面した凍土に出てからは、景色が白く変わらないからか、同速度であるが揺れもなく、静かになったが、ジン以外の顔には疲労がはっきりと浮かび、身体をぐったりと席に沈み込ませていた。
しかしハンスは着いた途端に元気を取り戻し、飛び出していくものだからジンが後ろを追い駆けて行った。道らしい道などない足元は滑りやすいのだ。船が気になるのか、ギルバートもちゃっかりと後に続く。疲労を引きずる面々は遅れて馬車から降りた。
ギイギイと音を立て、辺鄙な港に2隻の砕氷船が繋がれている。
「うっわ…!さっぶ!!」
テオドールが震えながら叫んだ。氷を撫でた海風が吹き付けて来る。目玉さえ凍りそうな寒さに瞬き、肩を竦めた。
「イルラ、カカココは大丈夫か?」
腕を摩りながら、自分の後に降りたイルラへ尋ねる。耳を隠して目深くニット帽を被り、マフラーを口元まで巻き、着膨れしたイルラがコクリと頷いた。カカココは革袋ごとイルラの服の下に入れている。流石に寒過ぎて出て来れないが、時折蠢くので起きていると分かった。
「火熱結晶球やカイロもたくさん貰った。オレもカカココもあったかい」
「そか、そんなら良かった。マジで今が夏って思えねぇな…」
安心したようにテオドールが頷いた。テオドールも火熱結晶球や懐炉はふんだんに持ち合わせているし、北部衣装は本当に風も冷気も通さず暖かい。その代わり、露出している顔が痛い程に寒い。そんな中でも鼻先を赤くしながらハンスは目をキラキラさせて、砕氷船についてアレコレと語っていた。逆だろ、と思うが、ジンも楽しそうににこにこと相槌を打ってハンスの話を聞いている。その隣でギルバートも一緒になって砕氷船の説明に頷いていた。
「先生方。どうだ、行けそうか」
ガリストがロキへと近付いて来る。ガチガチに装備しているガリストは、ギルドで見た時よりも更に逞しく見えた。言葉は少ないが質問の意図は単純だ。現場は慌ただしく、ガリスト達以外にも何人かの登録者達の姿がチラホラと見える。緊張感が場を支配していて、更に氷海は延々と続くかのような白い畏怖を与えて来る。ガリストは怖気づいてないかと聞いているのだ。
「私はな。お前達はどうだ」
ロキは首肯を見せ、テオドールとイルラへと顔を向けた。
「俺は行きてぇかな、イルラは?」
「行く」
「…坊主はホントに大丈夫か?甲板にも暖が取れる場所は作ってあるが、あまりに寒いようなら船室に入ると良い」
随分ともこもこしたイルラの姿にガリストは困惑したが、力強く頷く姿に「そうか…」と薄く笑った。すぐに目線はジンへと向く。
「まあ、寒さ以外はそれ程心配ねぇさ」
「Aランクの魔物だと聞いたが」
すかさずロキが切り込んだ。
「ああ、全然心配ねぇ。オイ!ジン!船長と段取り話し合っておけ!」
ガリストが叫ぶとジンは振り返って片手を上げた。ハンスの肩を叩き、ギルバートへ後を頼み、砕氷船の周りで動き回る船員達の方へと向かう。顔馴染みの船長はすぐに見つかり、ルートや目撃情報などを確認する。時間にして数分だった。
「では出航だ!!船員配置へ!!」
「イエッサー!!」
鐘のように響く船長の声で一斉に声が上がる。散っていた船員達が各々荷物を抱え、ぞろぞろと船に上がって行く。その後ろを付いて行きながら、ジンは軽く口笛を鳴らした。冷気を引き裂いて、後方からドラゴとフィルが人の波を縫ってあっという間にジンの傍らへと現れる。
「グラスは元気だったか」
「元気だ!今日もピカピカしていた、ピカピカだ!」
「ピカピカしてたか、絶好調みたいで良かったな。ところでドラゴ、お前に頼みがあるんだけど」
甲板に出るとピーチが先頭になり、ハンス達を誘導し始めた。囲むように後方にエドワードとカミラがつく。ジンは少し列から離れた位置で立ち止まり、ドラゴへ身体を向け直す。
「ハンス達を守って欲しい」
ご機嫌なドラゴはきょとんとした顔で動きを止めた。
「守る?なんでだ」
「何でって…俺は離れるから、何かあった時守ってやれないだろ。俺の代わりに守ってやってくれ」
「ジン離れる?何する?」
「討伐だ」
「……オレ様は!!!」
一際大きな声が甲板に響いた。数秒前のジンの頼み事などすぐに頭から吹き飛んだらしい。
「うん、分かってる。お前も狩りの方が好きだよな。でも今回だけ皆を守っててくれないか。お前が守ってくれたら、俺はすごく安心出来るからさ」
「………」
ドラゴは短い両手をぷらんとぶら下げ、5人を見た。その丸みのある横顔が何を考えてるかは分からないが、目付きは真剣だ。一生懸命ドラゴなりに何か考えてると思うと妙に愛らしく思えたので、ついつい眺めていたら急に振り返った。
「骨付きの肉はうまい。アップルパイもだ」
了承してくれたらしい。
「分かった。美味い骨付き肉とアップルパイを用意するよ」
「こんがり焼け!」
「今日は焼く気分か。分かった。ありがとな、お前は本当に最強で、最高にかっこいい誇り高きドラゴンだ」
「当たり前だ!!!」
ふんっと鼻先を鳴らして勇ましげにドラゴは5人の元へと向かった。
守って欲しいと言う気持ちは本当だが、もうひとつ、ドラゴを討伐から遠ざけたい理由があった。単純にレヴィアタンの素材回収率を上げる為だ。ドラゴは強過ぎて稀素材や希少部位を容易く破壊してしまう。今回のレヴィアタンは希少種の上に巨大だ。ガリストからも直々に「出来る限り素材を回収したい」と言われているので、元々ドラゴは下げるしかなかった。
揺れる翼に感謝しつつ、ジンはそのまま一度船内へと入る。顔馴染みの船員や登録者達が居る中に、乗船する前から気になっていた気配があった。着替えもしなければならないので、ジンはついでにフィルと共にその気配へと向かう。
通路へ入ると、目的の気配は一際目立つ姿で目に飛び込んで来る。真っ白な毛皮の外套を羽織った女性。銀色の刺繍が入った純白のスカートのように膨らむ腰布に、同色のミトラ。聖女を彷彿とさせる鎧。手に握られた長杖。毛先が青い、金の髪。
「テミス」
名を呼ぶと彼女は振り返り微笑んだ。ガリストが言っていたもう1人のSランク冒険者。相変わらず女神のように麗しい人だ。ふわふわの白い襟巻がよく似合う。
「ジン君、お久しぶりですね」
「久しぶり。この依頼受けてたんだな」
テミスはシヴァの件がひと段落した後から、中央にはあまり寄り付かなくなった。大神殿がある中央はテミスにとって危険が多いからだ。まともに顔を合わせるのはいつ振りだろうか。
「ふふ、ジン君がご友人とここに来ると小耳に挟みまして。折角ならご一緒したく馳せ参じました」
「………俺がこの依頼を受けるって聞いたのか?いつ?」
「あら、失言だったみたいです。どうぞ聞き流して下さいませ」
口元を隠してころころと笑う顔立ちに、似てないのにシヴァの面影が過った。それだけで、たったそれだけの事で、追及する気が失せてしまい小さく笑うと「良いよ」と答えた。
「じゃあ俺、着替えて来るよ。合流するならボスは甲板に居るぜ」
「ご一緒しても?」
「は?」
「ですから、お着換え、ご一緒しても?」
清らかな声が発する言葉に片眉を上げた。貞淑なテミスの言葉とは思えない。近場にいた船員や通りすがりにテミスを眺めていた男達が途端に騒めき出す。
「良いけど…」
その男達が(良いのかよ!!!)と全力で心の中で突っ込む声など聞こえるはずもなく、ジンとテミスは連れ添って奥の船室へと歩き出した。
「ふふ、お年頃ですものね。お着換えの最中は後ろを向いておきますわ」
「いや、そんな所気にしてないよ。見てても良いし。ただ、普段そんな事言わねぇだろ。なんか用でもあんのかなって」
船室のドアを開けてテミスを振り返る。道を譲り、入るように無言で促す。自然な動作に目をぱちくりとさせた後、テミスはまた「ふふ」と笑ってジンの前を通って中へと入った。その後ろをフィルも堂々と通って入って行く。先程からじりじりと寄って来る通路の男達を尻目にジンはドアを閉めた。瞬時に壁やドアに張り付いた男達だが、残念ながら音が聞こえる事はない。
男達の気配を感じつつ、ジンは念の為に指を鳴らして『防音壁』を展開し、中の声が漏れないように対策した。そうでなくとも聞こえ難いとは思うが。テミスも防音結界に気付いたのか、どこともなく壁を見ている。前言通り、ジンはテミスを気に留めずに着替えを始めた。
茶化していたテミスの方が少し驚き、すぐに背中を向ける。そのまま両手で持ち直した杖を弄りながら『用』を語り出した。
「あの子、今、とても頑張っていますよ」
ギイギイと鳴る船体の音の中、テミスの声は透き通るようにジンに届く。上を脱ぎ捨てた状態でジンは止まった。白うさぎのように見える後ろ姿を見て、再びシヴァが頭を過った。まだ耳をくすぐる『ジン君』と呼ぶ声。眩しいほどに鮮明な思い出。自覚もなくジンは微笑んだ。
「そう…そうだろうな、あいつはいつも頑張ってた」
「ええ、ですがきっと、貴方が思う以上にもっともっと頑張っております。エレヴィラス様に並ぶに相応しい男になってみせますと息巻いているそうで、やる気があり過ぎてヘリオスが困り果てていたくらいです」
テミスの声は丸く柔らかで温かみがあった。親心なのか、明確な愛情を感じる声。すぐにその声に影が乗る。反省と言う名の影だろう。
「あんなに強い子だったとは。……本当に私達の目は節穴でした」
「いや、俺も出会った当初は良い印象なかったから。俺も節穴だよ」
着替えを再開し、ジンは狩猟用の装備品を身に着けていく。滅多に使わない『空間収納』に装備品を入れて来ていた。中央では袖なしの黒いインナーを着るが、北部では七分袖だ。そこに手首まで覆う分厚めの革の手袋をする。少しだけ腕が見えるが気にする程でもない。残りの細かい装備品を身に着ける。テミスは壁を見たまま、思いを染み込ませたような呟きを漏らした。
「…そうでした、あの子は、変わられたんでしたね」
「これからもどんどん変わるよ。吸収率が良いから、あの人。…だからこそ、教皇がちょっと心配だけど」
シヴァのような優秀な人材であれば、何の企みがなくとも大神殿へ呼ばれただろうが。アポロンと教皇の元々の繋がりを考えるとその腹の内が善良なものとは思えない。テミスも同様なのか、清楚な顔の眉間に似合わない皺を薄く刻んだ。
「そうですね…ヘリオス達も警戒しているようですが、今の所大きな動きは見られないようです。強いて言うなら、シヴァ個人への接見や職務内容を間接的ですが管理してるようで…アポロン側の神官達もシヴァに接触出来ていないようです」
「…接触しようとしてるって事?」
「ええ、ヘリオスがシヴァの後ろ盾になった事を流石に把握したようで…。ヘリオス自身も直接面会などは出来ない状況らしいのですが、元々大神殿にはヘリオスの使者が入り込んでいましたから、やり取りは恙無く行えているそうです」
「…そう」
マントを取り出す。闇を溶かしたような漆黒のマント。王子からの賜り物。前は周囲に合わせる目的と、氷海は流石にほんの少し肌寒さを感じるので、北部衣装に似た獣毛の付いた毛皮のマントを使っていたのだが、正直、賜り物のあまりの着心地の良さと使い勝手の良さが手放せず、今回も装備する事に決めた。すっかり相棒と化しているマントをバサリと背に羽織る。毛皮のマントと違い、重みは殆どない。だが裾はストンと重いコートのように落ちる。外気温は遮られ、中の体温は外に逃げない。首元を弄りながら、ジンはふと思いついたままに口を動かす。
「守ってるとも、隔絶しようとも思える動きだな」
外と中を遮断する理由はそう多くはないだろう。教皇の動きは不可解だが、アポロンとの接触がないのはシヴァにとっても助かる事ではなかろうか。
「ヘリオスも似たような事を仰っていました。教皇は最早、枢機卿達とも綿密な関係性を築こうとしておらず、随分と内に籠っているそうですが…大神殿の神官達にはとても良くしているらしく、シヴァも例外ないようで………本当に何をしようとしているのか、見当がつきません」
「…そんな中、シヴァ先輩はちゃんと頑張ってるって事な」
「……はい、貴方には知っていて貰いたいと思いましたので、伝えに参りました。あの子の頑張りとその熱意を。神官見習いの期間は外界との接触は手紙すら認められませんから…」
「うん、ちゃんと伝わった。ありがとう」
「…貴方も変わりましたね。シヴァとの出会いは貴方にも良いものを与えてくれましたか?」
「……うん。とても良いものを貰ったよ」
「それは、ふふ、良かったです。あの子が聞いたらとても喜ぶでしょうね」
深く頷いたジンにテミスは安堵したように微笑んだ。自分以外にも彼を気にしている人が居ると言う状況が嬉しいのかもしれない。シヴァの話が出来る人間は他には居ないだろうし、ヘリオスとも易々と会うことは出来ないだろうから。
ほくほくと頬を緩めるテミスの顔を、母の顔と言うのかもしれない。それはジンの勝手な願望でしかないが。ほんのりと胸の中が暖かくなり、頬が緩んだ。
彼女が喜ぶかも分からない、ともすれば自責の念を呼び起こすかもしれない。『母』になる事から逃げた人だから。
「…準備出来たよ。行こう、テミス」
「はい、参りましょう」
素知らぬ顔で目線を逸らす。腰鞄をベルトへと通して、テミスの背中に声を掛けた。扉を開くと張り付いていた男達が倒れ込んで来たが、まるで見えていないようにその背中を踏みつけて外へと出る。流石にテミスは狼狽え、男達はジンに文句を言うが振り返りもせずにジンは颯爽と甲板へと向かって行った。
「……こういう所は変わってらっしゃらないんですね」
置いて行かれたテミスが呆気に取られつつ、ぽつりと呟いた。
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