3 / 3
3.社会保障一体型ファンクラブ「国民年金」
しおりを挟む
昼で学校は終わり、午後は公園で友達と缶蹴りして遊んでいたが、すっかり夕方になってしまった。友達と別れて家に帰る。
「ただいま~」
「おかえり隆康、手洗って宿題するんだぞ。」
「わかってるよ父さん。」
俺の家は父子家庭だ。父さんは王都から苺王子県を結ぶ大手私鉄、苺王子電鉄の役員をやっている。母親とは俺が幼い時に、別の男と浮気した事が原因で離婚し、そこからは俺と二人暮らしだ。
この国では、会社員の場合は週に20時間を上限に労働することが法律で定められている。父さんのように朝自宅を出て、8時から正午まで仕事して、昼下がりの時間には家に帰る生活をしている人が多い。
国王陛下は同担(国民)の1日の過ごし方について、“仕事に4時間、通勤に往復2時間、自由時間12時間、睡眠6時間”がふさわしい。自由な時間を大事にする思想だと、以前情報番組の論客として出演した時に言っていたような気がする。
宿題を終わらせ居間に降りてくると、夕ご飯が既に準備されていた。
「夕ご飯の準備してってたまには言ってくれてもいいのに…」
「2人分だから1人ですぐできるしいいよ。宿題の邪魔しても良くないだろ?」
父さんはなんでも1人でやってしまう癖がある。そんな器用な父さんを俺は少しばかり尊敬している。
今日の夕ご飯は鯵と鰹の刺身、赤だし、ご飯だ。鯵の刺身は俺の大好物だ。
現在時刻午後6時半、テレビを付けると、6時から4チャンでドッキリ番組をやっていたらしく、お笑い芸人の宮之上草村麻呂が、昇降機床抜けドッキリに引っかかっていた。
ほどなくして、タレントとして出演していた国王陛下が、同じく昇降機床抜けドッキリに引っかかった。泥まみれの滑り台を滑り落ち、情けない顔でクサヤ入りの水溶き片栗粉の池に突っ込んだ。
「ぶっはははは、オモロイ顔」
「ほんっと、無茶するなぁ」
「……はっ!!国王陛下への手紙の内容考えないと」
俺は夕ご飯を食べ終わると自分の部屋に行き、国王陛下への手紙の内容を考えた。
国王陛下はファンクラブを運営しており、その名も“国民年金”である。国民年金は社会保障一体型ファンクラブとして、月ごとに会費を徴収し、それを年金や王室運営費、定刻鐡道などの王立施設の運営・維持費に充てている。
国民年金には全国民が加入し、働き始めると会費の支払義務が発生する仕組みとなっている。
年金は月ごとの会費に加えて、他の税金から一部上乗せして積み立てる、積立方式で運用されている。
会費を納めれば、返礼品として国王陛下からの手書き風のメッセージカードが、来月分の振込用紙、そして意見書と書かれた用紙と一緒に送付される。
俺みたいな子どものうちは、国王陛下からのメッセージカードと意見書だけが毎月送られてくる。
俺はその意見書の内容をどうしようか考えていた。多くの人は国王陛下に日頃からの感謝のお言葉を書く。
俺もいつもはそんな感じだ。しばらく考えたところで、朝の出来事を思い出した。
「そういえば、女子の反応で国王陛下に嫉妬したなぁ。」
俺は異性に振り向いてもらうにはどうすればよいか、意見書に書いた。ごく稀に、国王陛下から直筆で返信が来るらしいが、どうだろうか。
意見書を書き終えた俺は、風呂場に直行した。
「ただいま~」
「おかえり隆康、手洗って宿題するんだぞ。」
「わかってるよ父さん。」
俺の家は父子家庭だ。父さんは王都から苺王子県を結ぶ大手私鉄、苺王子電鉄の役員をやっている。母親とは俺が幼い時に、別の男と浮気した事が原因で離婚し、そこからは俺と二人暮らしだ。
この国では、会社員の場合は週に20時間を上限に労働することが法律で定められている。父さんのように朝自宅を出て、8時から正午まで仕事して、昼下がりの時間には家に帰る生活をしている人が多い。
国王陛下は同担(国民)の1日の過ごし方について、“仕事に4時間、通勤に往復2時間、自由時間12時間、睡眠6時間”がふさわしい。自由な時間を大事にする思想だと、以前情報番組の論客として出演した時に言っていたような気がする。
宿題を終わらせ居間に降りてくると、夕ご飯が既に準備されていた。
「夕ご飯の準備してってたまには言ってくれてもいいのに…」
「2人分だから1人ですぐできるしいいよ。宿題の邪魔しても良くないだろ?」
父さんはなんでも1人でやってしまう癖がある。そんな器用な父さんを俺は少しばかり尊敬している。
今日の夕ご飯は鯵と鰹の刺身、赤だし、ご飯だ。鯵の刺身は俺の大好物だ。
現在時刻午後6時半、テレビを付けると、6時から4チャンでドッキリ番組をやっていたらしく、お笑い芸人の宮之上草村麻呂が、昇降機床抜けドッキリに引っかかっていた。
ほどなくして、タレントとして出演していた国王陛下が、同じく昇降機床抜けドッキリに引っかかった。泥まみれの滑り台を滑り落ち、情けない顔でクサヤ入りの水溶き片栗粉の池に突っ込んだ。
「ぶっはははは、オモロイ顔」
「ほんっと、無茶するなぁ」
「……はっ!!国王陛下への手紙の内容考えないと」
俺は夕ご飯を食べ終わると自分の部屋に行き、国王陛下への手紙の内容を考えた。
国王陛下はファンクラブを運営しており、その名も“国民年金”である。国民年金は社会保障一体型ファンクラブとして、月ごとに会費を徴収し、それを年金や王室運営費、定刻鐡道などの王立施設の運営・維持費に充てている。
国民年金には全国民が加入し、働き始めると会費の支払義務が発生する仕組みとなっている。
年金は月ごとの会費に加えて、他の税金から一部上乗せして積み立てる、積立方式で運用されている。
会費を納めれば、返礼品として国王陛下からの手書き風のメッセージカードが、来月分の振込用紙、そして意見書と書かれた用紙と一緒に送付される。
俺みたいな子どものうちは、国王陛下からのメッセージカードと意見書だけが毎月送られてくる。
俺はその意見書の内容をどうしようか考えていた。多くの人は国王陛下に日頃からの感謝のお言葉を書く。
俺もいつもはそんな感じだ。しばらく考えたところで、朝の出来事を思い出した。
「そういえば、女子の反応で国王陛下に嫉妬したなぁ。」
俺は異性に振り向いてもらうにはどうすればよいか、意見書に書いた。ごく稀に、国王陛下から直筆で返信が来るらしいが、どうだろうか。
意見書を書き終えた俺は、風呂場に直行した。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
妻を蔑ろにしていた結果。
下菊みこと
恋愛
愚かな夫が自業自得で後悔するだけ。妻は結果に満足しています。
主人公は愛人を囲っていた。愛人曰く妻は彼女に嫌がらせをしているらしい。そんな性悪な妻が、屋敷の最上階から身投げしようとしていると報告されて急いで妻のもとへ行く。
小説家になろう様でも投稿しています。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる