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5.結果
しおりを挟む港湾部にある巨大な倉庫。
その倉庫内にある、簡易的な事務所のような場所に、意識のない早乙女ミヤビを運び込んだ。
猿轡を噛ませたが、あえて目隠しはしない。
そこに、倉庫の奥からサングラスにスーツ姿の男たちが集まってきた。
「悪りぃな。急な招集で。」
「滅相もありません。若のお呼びとあれば、我々は何処にでもかけつけますよ。」
若はやめろ。くすぐったい。とアキトが顔を顰める横で、僕は彼らに頭を下げる。
「皆さん、ご無沙汰してます。僕の仕事にご協力いただき、ありがとうございます。」
「いえ、若とフユキさんを全力でサポートすることが、我々に与えられた使命ですので。」
滅相も無い。と笑う男たち。
「で?万事うまく行ったか?」
「はい。首尾よく。先程からテレビにラジオに新聞にと、センセーショナルな話題を提供できたようですよ。」
そんな話をしていた時だった。
「…んうぅ……っ!?むぐぅっ!?」
早乙女が起きたらしい。
まぁ、きっちり拘束しているので、身動きなんて取れるはずもないんだけど。
「…目が覚めたみたいだな。」
「だね。さて。今から君がどうなるか…説明してあげるよ。
君は書き置きを残して失踪。行方不明扱いになる。
…実際は、海外の好事家に売られるんだけどね。」
すると彼女は、なけなしの矜持を掻き集めたのだろう。
射殺しそうな目で睨んできた。
「お前の親父が黙ってねぇ。って言いたそうだな。だが残念だ。早乙女財閥は、ついさっき解体された。」
「信じられない…だろうね。けど事実だよ。君の実家は、君の事なんて考えてる余裕はなくなってるだろうね。」
スマホのニュース記事を見せると、途端に青ざめ、がたがたと震えだした。
「俺の力を使えば、お前の実家くらい簡単に潰せる。
…俺は、日本最大を誇る任侠一家『九頭龍組』の跡取りだからな。」
「実際、後目を継いだようなもんだよね。」
「組長は伯父上だぜ?子供がいねぇから、俺に鉢が回ってきただけだ。ちなみに、フユキの親父が閣僚なのは知ってるよな?」
「君のお父上は、裏でかなり悪どいことをしていたみたいだね。薬物、銃火器、情報、そして人間…随分とまぁ色々と密輸入してるらしいじゃないか。」
「政界への発言力も大きいお前の親父は、表社会にとっても裏社会にとっても、迷惑な存在でしかなかったからな。どう対処しようかと、それこそ政府関係者だけじゃない。暴力団からも相談されてたよ。
ま。お前が色々とやらかしてくれたおかげで、早乙女を潰すいい口実が出来た。感謝しねぇとな。」
アキトはさも楽しそうに、くくくっと笑う。
「甘い期待はしない方がいい。今から君は、全ての尊厳を奪われるんだから。
…さて、そろそろかな。
なんだか身体が熱く感じない?
ほら、汗が滲んでる。呼吸も浅くて、運動した後みたいだね。」
僕の言葉一つ一つに、早乙女の身体が反応していく。
「なのに、肌の感覚は敏感になっていく。
触れた床の冷たさも心地よくて、身体が跳ねて震えてるよ?」
「…お前、生徒会室でコーヒー飲んでたよな。覚えてるか?」
真っ赤に震えながら、恐ろしい考えに至ったのだろう。縋るような目でこちらを見ている。
そんな彼女に、小さな黄色い錠剤を見せつけながら
「理解したらしいな。あのコーヒーにはクスリを混ぜた。…お前がいやらしい雌に変わるように…な。
くくっ…たっぷり愉しんでこいよ。」
連れて行け。とアキトが命じると、スーツの男が彼女を軽々と抱え、事務所の奥へと消えていった。
それを確認して、口を開く。
「…プラシーボ効果って恐ろしいよね。」
「嘘は言ってねぇがな。クスリを混ぜたのは事実だ。」
「ただのサプリメントだけどね。」
思い込みというのは恐ろしい。
サプリメントを媚薬と勘違いして、実際に発情してしまうくらいなのだから。
…そう思い込むよう、言い回しを考えて仕向けたのだけれど。
「で?この後の彼女は?輪姦されることはないでしょ?」
「あぁ。ちょっと玩具で攻めて気絶させる程度だな。あいつらにも後が面倒臭いから、絶対手を出すなと言付けてる。だが…とある政府高官が欲しがってて、そいつに渡すことになるだろう。」
「…それってもしかして、早乙女を敵対視してた、あの人?」
「知ってたのか。かなりの嗜虐趣味の持ち主でな…俺も気乗りしねぇが、早乙女潰しで手を借りた以上、チャラにするには渡すしかねぇ。」
…好事家に売られるところは間違ってないな。
まぁ、たっぷり絶望して、死ぬより辛い目にあいそうだから…
これで、大貫ユカリとその兄弟の無念も晴れるかな…?
「とりあえずは、一件落着ってことでいいよな?」
「…まぁ、いいんじゃない?」
僕らは2人並んで、アキトの車に乗り込んだ。
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