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6.真実
しおりを挟む早乙女財閥解体のニュースが世間を駆け巡ったあの日から3日。
今回の主役である早乙女ミヤビは、失踪…とはならず、親の没落で子供に影響が出るのは良くないと善意で申し出た、とある政府高官に引き取られることになった。
…だが、学校は転校。彼女はほぼ軟禁状態で可愛がられているらしい。
…流石に僕たちももう手が出せないので、不憫には思うけれど。
そして僕は今、アキトの部屋にいる。
「結局、全部アキトを頼っちゃったね。」
「気にするな。俺が好きでやったことだ。」
「あ。そういえば、大貫の兄弟たちに与えた罰って何?僕、内容聞いてないんだけど。」
あ。言い忘れてた。とアキトが言う。
「あいつらなら、近所の教会で1ヶ月ボランティアの刑にした。」
「…ボランティア?」
「実家の縄張りに、ボロッボロの教会があってな。神父1人じゃ行き届かないとこも多いんで、あいつらに掃除やら雑用やら修復やらをさせてるぞ。」
…まぁ、未遂だったし…いいのかな…?
「あいつら根は真面目だし、若い奴が頑張ってる。って人が集まるようになったらしい。一種の地域活性化ってとこだな。」
「…まあ、世間が平和なら、僕は何も言わないよ。下手に関わるのも面倒だし。」
大きくあくびをしながら、やる気なく答える僕。
「つーかな?フユキ…お前って…」
「…何?」
「…いや。なんでもない。」
くくっと笑うアキト。
………?
「…なんだよ。気になるんだけど。」
「…じゃあ言うが、もし。もしもだ。今回の早乙女に関する一連の流れをな。
お前の姿が見えず、お前の視点でしか物事を見ることができない人間がいたら?と思ってな。」
「………は?」
ちょっと何言ってるかわからない。
詳しく説明して欲しいんだけど。
「だからな?例えば挿絵のない小説のように、文字情報だけでしか眺められない人間がいたら、お前のことをどう思うんだろうなって。」
「…全然よくわからないんだけど。」
説明されても理解できない。
本当に訳のわからないことを言うよな…
するとアキトは軽々と僕を抱き上げ、大きな鏡の前へ僕を連れて行った。
「見てみろ。確かにお前は、黒髪ロングのポニーテールで、声も透き通った高めの声だ。俺好みの小柄で華奢な体型のくせして胸はでかい。尚且つ制服マニア垂涎の超有名女子高校の美少女生徒会長だ。
…だが、一人称は僕で、普段の口調も男っぽいし?男相手にも喧嘩売れるくらいの腕っ節を持ってる。
男だと勘違いされても仕方ないだろ?」
「…?いや、だから、どこからどう見ても僕は女だから…」
「見えねぇ奴がいたら。の話だって。大体、名前も紛らわしいしな。音だけ聞けば男だぜ?」
「…字面を見ればわかるだろ?」
「氷山冬姫…な?お前が『エル』って呼ばれて、なるほど。と感心したもんだ。」
『エル』の本当の由来。
それは読んで字の如く、某ディズニー映画に登場する主人公の姉の名前『エルサ』から。
…氷の山の冬の姫って…いや、実際は女王だったか?
生徒会のメンバーが面白がってつけた通り名なのだが、僕的には非常に迷惑してて…
とにかく、全校生徒に知られている『某死神漫画の探偵』という話は、『エル』という名だけを聞きつけた誰かが広めた偽情報だ。
…僕としてはとてもありがたいんだけど。
「…暁人までその名前で呼ばないでよね…」
「くくっ。悪い。」
笑いながら、暁人は僕を背後から抱き締める。
「…誕生日…だな。」
「…そうだね。」
「18歳の誕生日に、お前を俺の女にする『約束』。」
「嫁じゃなかったっけ?」
「それは卒業したら。だ。…冬姫はいいのか?極道の女になるんだぜ?」
「別に?だって暁人だし。それに、実家がそうなだけで暁人が跡を継ぐのはだいぶ先の話だし。まだ教師は続けるんでしょ?僕だって、『約束』してから3年待ったんだから…」
高校受験の前に暁人に告白されて3年。
お互いの親も公認で、その時提示されたのが『僕が18の誕生日を迎えるまでは手を出さない』という約束。
その代わり、僕が卒業した日に籍を入れることになっている。
もちろん、主婦にならずに進学するつもりだし、家族も暁人も賛成してくれてる。
くるりと暁人に向き合って、その首に腕を絡めた。
「…今更、やめるなんて言わないでよね?」
「…言うかよ馬鹿。俺だって、今日を待ってたんだからな…覚悟しろよ。」
『約束』の夜は、どうやら長くなりそうだ。と思いながら、僕は全てを暁人に委ね、そして、暁人に堕ちていった
[了]
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