どうせ明日も晴れている。

とりむねにく

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何も出来ない人間は

《第51話》悪魔の正体

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 神田君とあった翌日の夕方、八十幸高校の近くのコンビニに車を停め、俺はある人物に電話をした。

 「もしもし、ボス。やはりあんたの言った通り、被害者は未成年だ」

 ボスは俺の頼れる上司であり、俺が救い、俺を救ってくれた人だ。

 「あのタコが前に戦った悪魔とは格が違う」

 今回のやつはかなりヤバい。正直俺一人でなんとかなる仕事じゃないかもしれない。

 蒸し暑い車の中で1人考える。

 「・・・あっあぁ、そろそろ切りますね。あと多分、今回の敵の正体もボスの思ってる通りだと思います」

 そう言って俺は電話を着ると、車の窓をコンコンとノックする音が聞こえた。

 「やぁやぁ、唯野のおじさんじゃない?元気してた?」

 そのぺにょっとした喋り方にいかにもな清楚で優等生風の少女が来た。そう、彼女こそボスの娘である西条茜だった。

 「やぁ、久しぶり会いたかったよ」

 「そう・・・私もよ」

 そう言うと彼女はポケットからシュッとナイフを取り出し、俺の首に突きつけた。


 「おいおいおいおい、なんの真似だー?」

 俺は手を上げてなんかそれっぽいセリフを棒読みで読む。

 「私の計画を進めるには貴方の存在は邪魔なの・・・唯野人成・・・」

 さっきまでのぺにょっとした声からは一転、ドスの効いた声でそう言った。

 「いきなり正体を表したねぇ・・・西条茜・・・いや、悪魔の商人」

 俺はそう言うとナイフを取上げ、逆に首に突きつけた。

 「お父さんが心配していたよ」

 「あれは西条茜の父、私の父では無い」

 つかの間の沈黙。夕日が車の中を照らし、蝉の声がとても煩い。

 「八十幸に君の存在はいらないよ、もちろん君の弟子の一 一にのまえ はじめもね」

 俺はナイフと首の距離をさらに縮める。

 「はじめをどこにやった・・・?」

 「おおー怖いねぇ・・・まぁ、アレだよ、天の会の本部、あの組織にとって彼女もまた見過ごせない存在だからね、私が提供してあげたのさ」

 天の会か・・・また厄介な連中に・・・

 「つまりあいつは今頃殺されてるかもってことか?」

 彼女は指パッチンをして、「ご名答☆」と答えた。

 「はぁ~悪魔となりゃやることも陰湿というか、自分の手を汚したくないってか・・・」

 「まぁまぁ、その話題はそこまで、生きてたらまた会えるさ」

 強烈なムカつきを覚えるが一は自分でなんとかできるはずだ。今は西条茜のことを第一に考えよう。

 「とりあえず、彼女の身体でも返してもらおうかな」

 「残念ながらそれはできない」

 「何故だ」

 「私は上位の商人だ。前の矢上原のようには行かないし、実態がないと契約出来ないじゃないか」

 「このっ・・・!」

 俺は首元のナイフを刺そうとしたが、

 「おおっと、レディに乱暴は禁物だよ?」

 と言われ止まった。

 「これは私の体じゃない、貴方なら分かるはずだ」

 あくまでこれはボスの娘の体だ。傷つけたくない。俺は冷静に考え、ナイフを自分のカバンにしまい、色々質問していくことにした。

 「なぜ未成年ばかり狙う?」

 そう聞くと彼女はニヤッとした顔つきになり、次のように続けた。

 「それはね・・・未成年の方が心が折れやすいし、心の隙間に入り込めやすい。私たちは心が折れた人間と契約する。子どもは契約者にもってこいなのさ」

 ふざけんなと怒鳴りそうになったがなんとか耐えた。

 「そんなことする目的は?」

 「私の体の完全復活。契約した人間を櫻口舞弥や、神田輝幸なんかに倒してもらってその倒されたやつの力を私が吸収し、完全体に復活する」

 「・・・」

 ムカつくが俺は拳を握りしめて怒りを抑えて冷静にいることしかできることがない。

 「ま、契約した時点で私ならいつでも吸収できるんだけど、それじゃつまんないでしょ?」
 
 「だからあいつらに戦わせてるってか・・・なるほど、俺達には勝ち目がないってことか」

 車のハンドルをガンッ!と殴った。

 「ま、そうなるねぇ~おっと、喋りすぎた。今くまの子殺されかけてるよ?」

 彼女は俺にスマートフォンを突きつけた。そこには八十幸中学校グラウンドの様子が映し出されていた。

 「どけ、今からそこに向かう」

 俺は西条茜の形をした悪魔を外に突き出し、車のエンジンをかける。

 「ま、行っても君は何も出来ないけどね~」

 彼女は俺にそういうとコンビニの中に入っていった。

 「黙ってろ・・・俺は絶対・・・絶対・・・二人ともぶん守ってやるッ!」

 夕焼けの通学路、俺は爆速で車を走らせた。
 

 
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