たそがれ色の恋心

空居アオ

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東京公演編

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「ああ、サインね。ヒランって考えること、おもしろいよね」

 ふんわり笑ってそんなこと言ったのはユーゴ。
 違う。俺が聞きたいのはケイの話じゃなくて。

「蘭堂と千花だけじゃないけど、あの舞台の戦う者同士って相棒みたいなもんで、絆が強いって聞いたことがあるよ」

 どことなく厳かとさえいえる面持ちで、的を射ているような、いないようなことを言ったのはニレちゃん。

「ヒランがちょうだいって言うから書いたけどさぁ。…あの舞台、楽しそうだよね」

 ハハハ、と笑うダイスケ。
 確かに楽しそうだけど、その感想はどうでもいい。

 ――タカヤの吐き出す息はだいぶ重かった。


   *


「ヒランはトージと仲いいけど」

 けど?

「一番気兼ねなく話せるのはショーマだろ」

 なんでもないことのように言ったのはカズヒロだ。
 トージともケイとも舞台で共演したことのあるカズヒロは、今ちょうどタカヤと同じドラマの撮影中である。
 カズヒロの言うショーマとは、先日ドラマのゲストに来た若手俳優仲間の一人だ。

「へえー」

 タカヤはカズヒロに気のない返事をする。

 今タカヤはドラマの撮影に入っていて、そこで真っ先に仲良くなったのがカズヒロだった。
 カズヒロとはケイの縁で一度舞台を観たことがあったため、お互い最初から気安かった。
 だから彼にケイと吾妻統司のことについて聞いてみようと思ったのだ。
 結果、ニレちゃんと似たような答えが返ってきた。

 実のところタカヤ自身も、結局あの二人の何を知りたいのか、よくわかっていない。
 ケイは吾妻統司のことを大親友だと言ってはばからないし、伝え聞くところによると吾妻統司のほうも同じスタンスだとか。
 役者同士が共演をきっかけに仲良くなることは珍しくもなんともなく、業界でも二人の仲の良さは知れ渡っている。
 今さらあの二人の何がこんなにも気になるのか、改めて考えてみると、タカヤは自分に首を傾げる思いだった。


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