【完結】亡国の王子、砂漠の王に求愛される 〜僕はお嫁さんじゃなくて、きみの戦友になりたいんだが〜

古井重箱

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第2話 悪夢のはじまり *

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 夕星館ゆうづつかんには窓がなかった。
 今、何時なのか分からない。先ほど、シュテッレに小腹を満たしておくように言われたから、いよいよ客が来るのだろう。
 僕は二階にある小さな部屋をあてがわれた。
 部屋の大部分を占拠しているベッドの上で、カルマン合金でできたアクセサリーを外せないか試してみる。
 しかし、首輪も腕輪もまるで僕の体と同化したかのように、ぴたりと嵌まっている。
 僕は疲労を覚え、ベッドに身を投げ出した。
 うとうとしかけた時、シュテッレの声が聞こえた。

「ウィルレイン王子。大広間においで」
「……嫌だと言ったら?」
「無理に連れていくまでさ」

 シュテッレの桃色の瞳が輝いた。
 僕の体はマリオネットのように操られた。自分の意志に反して、足が勝手に動いて階段を下りていく。

「さあさあ、みなさま。ご覧ください。今は亡きナシェル王国の王太子、ウィルレイン・ガーランドですよ」
「……ナシェル王国は終わっていない」

 大広間には、仮面をつけた男女が集まっていた。
 顔を隠しているものの、身につけているアクセサリーによって大金持ちであることが分かる。紫色の口紅を塗った女が、僕を指差して軽やかに笑った。

「わたくしは遠慮しておくわ。矜持ばかりが高い坊やが、ベッドの上で使いものになるとは思いませんもの」
「マダム・ヴァイオラ、そうおっしゃらず」
「シュテッレ。私が買おう」

 手を挙げたのは、白い顎髭を伸ばした老人だった。
 こんな年寄りに何ができるというのだ。
 僕が挑発的なまなざしを返すと、老人は皺っぽい口元に笑みを浮かべた。

「ユーディットとの二頭立てでいいかな?」
「はい。今宵はユーディットも空いております」
「では早速楽しもうじゃないか、亡国の王子様」

 シュテッレの魔法によって、僕は一階の部屋へ連れて行かれた。
 同時に指名されたユーディットという名の青年は、すでに半裸だった。

「私がいますから。大丈夫ですよ」

 ユーディットは優しく微笑むと、老人にかしずいた。
 そして、老人の下履きを取り、へその下に顔をうずめた。ちゅぱり、ちゅぱりという粘っこい音が僕の耳を犯す。
 初めて見る男同士の情交は生々しく、獣じみていて、僕には到底受け入れられそうになかった。
 顔を背けようにも、カルマン合金のアクセサリーに邪魔をされて動けない。僕の体は壁に固定されていた。
 老人がユーディットの衣類を剥ぎ取り、ベッドへと連れ込む。老人の下生えは真っ白なのに陰茎は黒々としており、幹が太い。おそらく回春剤を使っているのだろう。

「あ、あぁ……」

 乳首を舐め回され、ユーディットが艶かしい声を上げる。
 老人は大きく反り返った肉棒で、ユーディットの美しい顔を張った。

「ユーディット。王子様に男同士のやり方を教えて差し上げなさい」
「はい……」

 ユーディットが腰を浮かせた。
 隠された蕾が丸わかりになる。紅い蕾は縦に割れていた。
 ユーディットは老人から小瓶を受け取ると、指先に中身を垂らした。濡れた音を立てながら、ユーディットが秘所に指を突き入れる。

「んっ、ふ……っ。あぁっ」

 艶かしく蠢く細い腰を見ているうちに、僕の体がじんと熱くなっていった。
 これはいかなる事態であろうか。
 ユーディットと絡み合いたいということか? それとも、ユーディットのように辱められたいということだろうか。
 僕が唇を震わせていると、老人がニタリと笑った。

「王子様も男の子だねぇ。きみだって気持ちよくなりたいだろう?」
「下賤なやからめ。誰が僕への直言を許可した?」
「そうやって矜持ばかり高く保っていたら、きみの体はいつまで経っても寂しいままだよ?」

 老人がユーディットに後ろからのしかかった。
 不気味なほどに太い男根が、すべらかな裸体を貫く。

「あぁんっ! やぁんっ」
「ふふふっ。可愛いユーディット。今日もおしゃぶりが上手だねぇ」
「……旦那様。そこ、……そこぉっ! もっと、こすってぇ……っ!」
「どうだね、王子様。混ざりたくなったかな」

 僕は目を閉じて拒絶しようとした。
 すると、老人が中空に手をかざし、光でできた玉を呼び出した。
 輝く球体には、ナシェル王国の宮殿が映っていた。
 宮殿に押し寄せた者たちは、侍女を犯し、文官をなぶり殺にしていた。武官が抵抗しているものの相手の数に圧倒されている。
 僕の家臣たちは儚く散っていった。
 玉座の下には、男女の亡骸が転がっている。どちらも首がない。
 それが父と母の遺体であると気づいた時、僕は絶叫した。

「こんなのは……嘘だ!!」
「そうさ。これは幻影だよ。だから私と、楽しい遊びに耽ろう」
「……来るなっ。僕に触れるな!」
「ああ。そうするさ」

 老人はベッドの上でユーディットの体を穿ち続けた。
 美しい黒髪を揺らしながら悩ましい声を上げるユーディットを見つめているうちに、僕の下腹部は兆していった。
 老人がニイッと唇のはしを吊り上げる。

「今夜はそのまま過ごしたまえ」
「……下衆がっ!」
「ユーディット。さあ、隣の部屋に行こうか」

 男根を引き抜くと、老人は部屋を仕切っていたカーテンを開けて、隣室へと移動した。
 ユーディットは僕の方を見ると、申し訳なさそうに頭を下げた。細い体がカーテンの向こうへと消えていく。
 手足が動かない。
 カルマン合金のアクセサリーによって、僕の体は戒められていた。
 ペニスの興奮を一刻も早く鎮めたいのに、どうすることもできない。じゅわりと先端からこぼれた淫液が、僕の腰布にシミを作った。
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