【完結】守銭奴ポーション販売員ですが、イケメン騎士団長に溺愛されてます!?

古井重箱

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第10話 商人の俺にできること

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 ひたすら道を走って広場までたどり着いたものの、その先へはなかなか進めなかった。人垣ができていて、通りを塞いでいる。
 くそっ。
 これでは社屋に帰ることができない。
 海賊船の襲来によって、ゲルトシュタットの人々は半狂乱になっていた。

「逃げろーっ!」

 大きな荷物を抱えた露天商たちが、細い裏道に殺到している。危ないな。将棋倒しにならないといいのだが。
 
「行くぜっ!」
「おう!」

 冒険者たちは港へ向かうようだった。海賊討伐で成果を上げて、騎士団から報奨金を貰おうとしているのだろう。
 俺も腕に覚えがあれば、リヒターを助けられるのに……。
 いや。
 タラレバ言ってる場合じゃねぇ。
 商人の俺にだって、できることだってあるはずだ。

「おまえは、アルセーディア社の」
「ギル様?」

 ようやく広場を抜けると、大通りに甲冑を着込んだ男が立っていた。声に聞き覚えがある。俺が以前、ラブポーションの試供品を渡した騎士だ。

「いつぞやは、よきものをくれたな。助かったぞ」
「それはよかったです」
「アルセーディア社の社屋に向かっているのか?」
「はい」
「あの区画は港から近い。海賊の手が回っていることだろう」
「だったら尚更、逃げるわけにはいきません。仲間と商品を守らないと」
「……リヒター様がおまえの話ばかりする理由が分かったよ」

 ギルは魔法石を使い、俺の疲労を癒してくれた。

「おまえが倒れてしまったら、リヒター様が悲しむ」
「ギル様、ありがとうございます」
「無理はするなよ」

 俺の肩をぽんと叩くと、ギルは路地裏へ入っていった。海賊一味は街中にまで入り込んでいるらしい。
 アルセーディア社のみんなは無事だろうか。
 商人ギルドは用心棒を雇ってるとはいえ、相手は海賊だ。暗黒大陸の各地を回るあいだ、新型の武器を仕入れているかもしれない。
 俺は必死で道を突き進んだ。

「営業部長!」

 社屋に着くと、入り口の前に営業部長が立っていた。革鎧を着込み、さすまたを構えている。
 トレードマークの口ひげを指先で整えると、営業部長は俺に言った。

「ティノくん、逃げたまえ。私はかつて冒険者だった。だから多少、腕に覚えがある。でもきみは戦いに関しては素人だろう?」
「俺は会社を守りたいです」
「むう。見上げた愛社精神だな。それならば……囮になってくれるか?」
「はい。俺にできることがあれば、なんでもやります。だって悔しいじゃないですか。俺たち、毎日必死で商売をしてるのに、海賊なんかに稼ぎや仲間を奪われるだなんて」

 営業部長が「うむ」と重々しく頷いた。

「きみの覚悟、確かに受け取った」
「それで、どんな作戦なんですか?」
「海賊一味は現在、港エリアはもちろん、街中にまで散らばっている。相手の数は多く、各個撃破には時間がかかる」
「それで、囮を使って海賊を一箇所に集め、一気に始末しようというわけですね?」
「そうだ。ティノくん、マンモニウスの神殿に海賊たちを誘い込んでくれ」

 強欲の神マンモニウスを祀った神殿は、港エリアと商業エリアの境目にある。
 
「神殿には有事に備えて、大量のミストポーションが備蓄されてある」
「ミストポーションっていうと、吸い込むタイプのポーションですね」
「ああ。神殿に用意されているのは、強い麻痺効果がある代物だ。祭壇のくぼみにきみの販売員バッジをはめ込ば、ミストポーションが噴射される」
「分かりました」

 へえ。
 わが社の販売員バッジには、魔法方程式が仕込まれていたのか。知らなかったぜ。治安が悪いゲルトシュタットで商売をするために、いろいろ自衛してるんだな。
 営業部長は俺が巻き添えにならないよう、麻痺を予防する効果があるプレポーションの小瓶をくれた。俺は大事なそれを胸ポケットにしまい込んだ。

「これから黄金騎士団に伝令を出す。マンモニウスの神殿に兵を集めてくれるよう頼んでみる」
「部長。よろしくお願いします」
「しっ。誰か来たようだ……」

 俺たちの前に痩せた男が現れた。

「よう、ゲルトシュタット商人さん。稼いでる?」
「あんたは……」
「ご覧のとおり、海賊だよ。おまえたち、お宝を貯め込んでるんだろ? そいつを全部俺にくれよ」
「下がるんだ、ティノくん。この者はかなりの手練れだ」
「俺だけが逃げるわけにはいきません」
「ひひっ。仲がいいねぇ。二人揃って地獄に送ってやろうか?」

 男が舌なめずりをした。
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