【完結】イケオジ彼氏は平凡な俺がお気に入りのようです

古井重箱

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04.

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「お疲れ様でした!」

 クローズ作業を終えた俺は、店舗をあとにした。
 このまま終わりたくない。ユウジさんに会って、どういうことなのか確かめたい。
 俺は通りを小走りになって突き進んだ。やがて、<サフィール>の看板が見えてきた。

「あれ? さっきの店員さん?」
 
 <サフィール>のドアが開いて、レイさんが現れた。呼吸が乱れている俺を不思議そうに見つめている。
 レイさんの後ろからユウジさんがやって来た。
 ユウジさんは俺を見るなり、「ウザっ」とつぶやいた。

「もしかして追いかけて来たのか?」
「だって俺、ユウジさんのことが……」
「いちいち説明するのが面倒くせーから、レイを連れて店を訪れたんだけど。俺の気持ち、全然伝わってないんだな」

 俺はすがるようなまなざしをユウジさんに向けた。

「こちらの方は、ユウジさんの恋人?」
「そうだよ」
「俺はユウジさんにとって、つなぎの相手だったの?」
「鏡見ろよ。自分が一軍になれないことぐらい分かれ」
「平凡な俺だって、誰かの特別になりたいんだよ!」

 思わず声を荒げてしまった。周囲から迷惑そうな視線が飛んでくる。
 俺は消えてしまいたくなった。イケメンに執着して、人前で泣き出しそうになっている自分がとても情けない。

「いい加減に理解しろ。おまえは俺に選ばれなかったんだよ」
「ユウジさん……」
「もう二度と連絡してくるな」

 ユウジさんは冷たい声でそう告げると、レイさんと腕を絡めた。そして、颯爽とした足取りで去っていった。
 俺はふたりの後ろ姿が小さくなるまでその場に立ち尽くした。傷ついた心がじくじくと痛みを訴える。気持ちの波は荒ぶるばかりで、凪ぐことはない。
 目に浮かんだ涙の粒を指で払った瞬間、見知った人物が近づいてきた。
 え? オアシスさん?
 仕事帰りなのだろうか。黒いチェスターコートを着て、ビジネスバッグを携えている。

「どうしたの。きみ、もしかして泣いてる?」
「あの……俺」
「僕でよければ話を聞くよ」

 オアシスさんに優しい言葉をかけられて、俺の涙腺は崩壊した。

「俺、好きだった人にフラれちゃって」
「そう……」
「高望みしすぎたから当然なんですけどね! 俺みたいな地味野郎がイケメンを狙おうだなんて、図々しいにもほどがある」
「人を好きになるのは尊いことだよ。僕なんてもう何年も恋から遠ざかってる」
「えっ? オアシスさん、カッコいいのに」
「オアシスさん?」

 聞き返されて、俺は真っ赤になった。

「俺が勝手につけたニックネームです。都会のオアシスみたいに素敵な方だから、オアシスさん」
「そんな風に思われていただなんて。調子に乗ってしまうな」
「あの……、もう少し話に付き合ってもらってもいいですか?」
「いいよ。ここだと他の人の邪魔になるから、店に入ろうか」

 オアシスさんに促されて、俺は道を歩き始めた。
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