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05.
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俺たちは雑居ビルの2階にあるインド料理店にやって来た。
注文の品を待つあいだ、互いに自己紹介をする。
オアシスさんのお名前は、西園寺春彦というらしい。上品な語感がイメージに合っている。
「芸名みたいですね。俺の場合は父親が渓流釣りが好きで。それで俺に渓という字をつけたんです。安直ですよね」
「僕だって、春生まれだから春彦だよ。姉は夏生まれだから夏美で、弟は秋生まれだから秋彦」
「弟さんがいるんですね。西園寺さんって、お兄さんって感じだもんなぁ」
「渓太くんは何人兄弟?」
「兄と姉がいます。俺は末っ子です」
西園寺さんが柔らかく微笑んだ。
「それじゃあ、甘えるのは得意?」
「どうかな。自覚はないけど、年上の人といると落ち着きます」
「今夜は僕に甘えて。遠慮なんていらないから」
「ありがとうございます……」
ホールスタッフの女性がやって来て、テーブルの上にビリヤニが盛り付けられた大皿を置いた。
ビリヤニを口に運ぶ。美味しいものを食べると元気が湧いてきた。
「俺はまだ運命の相手と出会ってないだけかも!」
「そう、その意気だ。きみを泣かせた奴のことなんて忘れた方がいい」
「あ、その……俺はゲイなんですけど、驚きましたか?」
「ううん。僕もそうだから」
西園寺さんは目を伏せた。
「一部の人にしかカムアウトしていないけどね」
「無理にオープンにする必要はないですよ!」
俺はドキドキが止まらなかった。まさか西園寺さんがゲイだったなんて。思わず気になる質問を投げかけてしまう。
「西園寺さんは彼氏いるんですか?」
「いないよ。三年前に長年付き合っていたパートナーと別れてから、恋愛する気が起きなくてね」
西園寺さんは朗らかに笑った。
「四十にして惑わずって本当だよ。若い頃と違って孤独を飼い慣らすことができるようになった」
「大人ですね……。俺、寂しがり屋だからな」
「渓太くんのそういうところ、可愛いって思うよ」
甘い声で囁かれて、俺は狼狽した。
「や、やめてください。俺、面食いで惚れっぽいから、西園寺さんのこと好きになっちゃいますよ?」
「渓太くんは若い。僕みたいなおじさん、恋愛対象にはならないでしょ」
「いえ……。西園寺さん、清潔感にあふれてるし。スタイル抜群だし。一緒にいるとドキドキします」
さすがにぶっちゃけすぎたかな。照れ隠しに、俺はグラスビールを飲み干した。
西園寺さんの食べ方はとても綺麗だった。きっといいおうちに育ったんだろうな。俺はガサツなところがあるから、西園寺さんの気品に憧れる。
ちょっと待て。
俺、失恋したその日に、違う相手に心惹かれている。尻軽だな。ユウジさんは俺のそういう軽薄なところを見抜いていたのかもしれない。
「また会いたいって言ったら引きます?」
「大歓迎だよ。都内の美味しい店を制覇しよう」
「西園寺さんって食べ歩きが好きなんですね」
「うん。断然、色気より食い気」
この発言は、ごはん友達ならいいけど、恋人候補としては見られないよという意味だろうか。
まあ、そうだよな。こんなイケオジが俺みたいな地味男くんを選ぶわけがない。西園寺さんはお兄さん的存在! そのことを忘れないようにしよう。
俺は西園寺さんと連絡先を交換した。
注文の品を待つあいだ、互いに自己紹介をする。
オアシスさんのお名前は、西園寺春彦というらしい。上品な語感がイメージに合っている。
「芸名みたいですね。俺の場合は父親が渓流釣りが好きで。それで俺に渓という字をつけたんです。安直ですよね」
「僕だって、春生まれだから春彦だよ。姉は夏生まれだから夏美で、弟は秋生まれだから秋彦」
「弟さんがいるんですね。西園寺さんって、お兄さんって感じだもんなぁ」
「渓太くんは何人兄弟?」
「兄と姉がいます。俺は末っ子です」
西園寺さんが柔らかく微笑んだ。
「それじゃあ、甘えるのは得意?」
「どうかな。自覚はないけど、年上の人といると落ち着きます」
「今夜は僕に甘えて。遠慮なんていらないから」
「ありがとうございます……」
ホールスタッフの女性がやって来て、テーブルの上にビリヤニが盛り付けられた大皿を置いた。
ビリヤニを口に運ぶ。美味しいものを食べると元気が湧いてきた。
「俺はまだ運命の相手と出会ってないだけかも!」
「そう、その意気だ。きみを泣かせた奴のことなんて忘れた方がいい」
「あ、その……俺はゲイなんですけど、驚きましたか?」
「ううん。僕もそうだから」
西園寺さんは目を伏せた。
「一部の人にしかカムアウトしていないけどね」
「無理にオープンにする必要はないですよ!」
俺はドキドキが止まらなかった。まさか西園寺さんがゲイだったなんて。思わず気になる質問を投げかけてしまう。
「西園寺さんは彼氏いるんですか?」
「いないよ。三年前に長年付き合っていたパートナーと別れてから、恋愛する気が起きなくてね」
西園寺さんは朗らかに笑った。
「四十にして惑わずって本当だよ。若い頃と違って孤独を飼い慣らすことができるようになった」
「大人ですね……。俺、寂しがり屋だからな」
「渓太くんのそういうところ、可愛いって思うよ」
甘い声で囁かれて、俺は狼狽した。
「や、やめてください。俺、面食いで惚れっぽいから、西園寺さんのこと好きになっちゃいますよ?」
「渓太くんは若い。僕みたいなおじさん、恋愛対象にはならないでしょ」
「いえ……。西園寺さん、清潔感にあふれてるし。スタイル抜群だし。一緒にいるとドキドキします」
さすがにぶっちゃけすぎたかな。照れ隠しに、俺はグラスビールを飲み干した。
西園寺さんの食べ方はとても綺麗だった。きっといいおうちに育ったんだろうな。俺はガサツなところがあるから、西園寺さんの気品に憧れる。
ちょっと待て。
俺、失恋したその日に、違う相手に心惹かれている。尻軽だな。ユウジさんは俺のそういう軽薄なところを見抜いていたのかもしれない。
「また会いたいって言ったら引きます?」
「大歓迎だよ。都内の美味しい店を制覇しよう」
「西園寺さんって食べ歩きが好きなんですね」
「うん。断然、色気より食い気」
この発言は、ごはん友達ならいいけど、恋人候補としては見られないよという意味だろうか。
まあ、そうだよな。こんなイケオジが俺みたいな地味男くんを選ぶわけがない。西園寺さんはお兄さん的存在! そのことを忘れないようにしよう。
俺は西園寺さんと連絡先を交換した。
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