【完結】ワンコ系オメガの花嫁修行

古井重箱

文字の大きさ
14 / 31

第14話 共闘

しおりを挟む
 僕は力の限り吠えた。
 レヴィウス様! 
 あなたはここにいてはダメです! 安全なお城へと帰ってください!
 僕が牙を剥いて威嚇しても、レヴィウス様は動じなかった。

「きみも七色水晶を探しに来たのか?」

 ワンと返事をすると、レヴィウス様は申し訳なさそうに微笑んだ。

「すまんが、俺にも譲れない願いがある。七色水晶を手に入れてこの命を長らえたい。そしてまた、あの子と海の見える丘で……」

 レヴィウス様はそこで言葉を切った。
 前方から真っ黒な毛皮を持った熊が現れたのだ。熊は赤い爪を生やしていて、敵意を剥き出しにしている。
 レヴィウス様が剣の柄を握り直す、ちゃきっという音が聞こえた。
 僕はその音を合図に、熊に向かって走り出した。
 熊の足元に噛みつき、動きを止める。熊は最初、何が起きたのか分からないといった様子で固まっていたが、やがて痛みを感じたのだろう。僕に向かって長い爪を振るいはじめた。
 僕は熊の周りを全力疾走して、奴を撹乱した。
 シュマックは火の玉に姿を変えて中空を飛び回り、熊の毛皮をちりちりと焼いた。

「グゥゥッ! オォォッ!」

 熊が苛立ちの声を上げる。
 よしよし。そのまま頭に血が上った状態でいてくれ。僕はスピードが速くて重心が低い。僕の体を捉えきれず、熊の攻撃が空振りに終わる。
 体勢が崩れた熊の胴体を、レヴィウス様が払った。血しぶきの代わりに黒いモヤが周囲に広がる。
 そうか。こいつは闇から生まれた生き物なんだな。それならば遠慮はいらない。
 僕は熊の足元を執拗に攻めた。レヴィウス様も容赦のない一閃を繰り出して、熊の腕を切り刻んでいった。
 熊は僕とレヴィウス様、どちらを攻撃すべきか迷っているらしい。雄叫びを上げて怒り狂った。
 僕はわざと動きを緩めて、熊の前方に横たわった。
 熊がこれ幸いとばかりに僕の体に齧りつこうとする。がら空きになった熊の胴体を、レヴィウス様が再び斬りつけた。

「ア、アグゥゥッ」

 断末魔を上げると、熊は黒いモヤになり、やがて虚空へと消えていった。
 僕は大きく息を吸い込んだ。
 ハッハッと舌を出して呼吸を整えていると、レヴィウス様の優しい声が降ってきた。

「共闘してくれたのか」

 僕はアオーンと鳴いたあと、ちぎれんばかりに尻尾を振った。レヴィウス様の手が僕の頭に伸びてくる。僕はレヴィウス様の手の匂いを嗅いだ。石鹸とお日様が混ざり合ったいい匂いがする。

「きみは……俺の味方だと思っていいのか?」

 クーンと鼻を鳴らして、お腹を見せる。恭順のポーズを示したことによって、レヴィウス様は僕のことを信用してくれたようだった。

「こんなに強い聖獣を誰が派遣してくれたのだろう?」

 僕はアズリールです、レヴィウス様。
 そう語りかけたかったけれども、お優しいレヴィウス様のことだ。僕の正体が分かったら、ブランシェール学院に帰れと言うことだろう。僕は素性を明かさずにレヴィウス様に同行することにした。

「きみは神話に出てくる聖獣ラピステルに似ているな。そう呼んで構わないか」

 僕はワンと元気よく鳴いた。

「ラピステルよ。きみの力を貸してくれ。俺にはどうしても諦められないことがある」

 僕はレヴィウス様の露払いを務めることにした。
 獣の匂いを嗅いで、相手の気配が濃くなったら何度も吠えて危険を知らせる。
 コンビを組むのは初めてだったけれども、僕たちは連携プレーで魔獣を片付けていった。
 やがて、ダンジョンの入り口が見えてきた。帰らずの森の最奥部はこの中にあるらしい。
 僕は暗闇の中を、嗅覚を頼りに進んでいった。背後からレヴィウス様の息遣いを感じる。
 レヴィウス様のお命を守らなくては。
 僕は最後の戦いに備えた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *不定期連載です。

黒とオメガの騎士の子育て〜この子確かに俺とお前にそっくりだけど、産んだ覚えないんですけど!?〜

せるせ
BL
王都の騎士団に所属するオメガのセルジュは、ある日なぜか北の若き辺境伯クロードの城で目が覚めた。 しかも隣で泣いているのは、クロードと同じ目を持つ自分にそっくりな赤ん坊で……? 「お前が産んだ、俺の子供だ」 いや、そんなこと言われても、産んだ記憶もあんなことやこんなことをした記憶も無いんですけど!? クロードとは元々険悪な仲だったはずなのに、一体どうしてこんなことに? 一途な黒髪アルファの年下辺境伯×金髪オメガの年上騎士 ※一応オメガバース設定をお借りしています

処理中です...