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第14話 共闘
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僕は力の限り吠えた。
レヴィウス様!
あなたはここにいてはダメです! 安全なお城へと帰ってください!
僕が牙を剥いて威嚇しても、レヴィウス様は動じなかった。
「きみも七色水晶を探しに来たのか?」
ワンと返事をすると、レヴィウス様は申し訳なさそうに微笑んだ。
「すまんが、俺にも譲れない願いがある。七色水晶を手に入れてこの命を長らえたい。そしてまた、あの子と海の見える丘で……」
レヴィウス様はそこで言葉を切った。
前方から真っ黒な毛皮を持った熊が現れたのだ。熊は赤い爪を生やしていて、敵意を剥き出しにしている。
レヴィウス様が剣の柄を握り直す、ちゃきっという音が聞こえた。
僕はその音を合図に、熊に向かって走り出した。
熊の足元に噛みつき、動きを止める。熊は最初、何が起きたのか分からないといった様子で固まっていたが、やがて痛みを感じたのだろう。僕に向かって長い爪を振るいはじめた。
僕は熊の周りを全力疾走して、奴を撹乱した。
シュマックは火の玉に姿を変えて中空を飛び回り、熊の毛皮をちりちりと焼いた。
「グゥゥッ! オォォッ!」
熊が苛立ちの声を上げる。
よしよし。そのまま頭に血が上った状態でいてくれ。僕はスピードが速くて重心が低い。僕の体を捉えきれず、熊の攻撃が空振りに終わる。
体勢が崩れた熊の胴体を、レヴィウス様が払った。血しぶきの代わりに黒いモヤが周囲に広がる。
そうか。こいつは闇から生まれた生き物なんだな。それならば遠慮はいらない。
僕は熊の足元を執拗に攻めた。レヴィウス様も容赦のない一閃を繰り出して、熊の腕を切り刻んでいった。
熊は僕とレヴィウス様、どちらを攻撃すべきか迷っているらしい。雄叫びを上げて怒り狂った。
僕はわざと動きを緩めて、熊の前方に横たわった。
熊がこれ幸いとばかりに僕の体に齧りつこうとする。がら空きになった熊の胴体を、レヴィウス様が再び斬りつけた。
「ア、アグゥゥッ」
断末魔を上げると、熊は黒いモヤになり、やがて虚空へと消えていった。
僕は大きく息を吸い込んだ。
ハッハッと舌を出して呼吸を整えていると、レヴィウス様の優しい声が降ってきた。
「共闘してくれたのか」
僕はアオーンと鳴いたあと、ちぎれんばかりに尻尾を振った。レヴィウス様の手が僕の頭に伸びてくる。僕はレヴィウス様の手の匂いを嗅いだ。石鹸とお日様が混ざり合ったいい匂いがする。
「きみは……俺の味方だと思っていいのか?」
クーンと鼻を鳴らして、お腹を見せる。恭順のポーズを示したことによって、レヴィウス様は僕のことを信用してくれたようだった。
「こんなに強い聖獣を誰が派遣してくれたのだろう?」
僕はアズリールです、レヴィウス様。
そう語りかけたかったけれども、お優しいレヴィウス様のことだ。僕の正体が分かったら、ブランシェール学院に帰れと言うことだろう。僕は素性を明かさずにレヴィウス様に同行することにした。
「きみは神話に出てくる聖獣ラピステルに似ているな。そう呼んで構わないか」
僕はワンと元気よく鳴いた。
「ラピステルよ。きみの力を貸してくれ。俺にはどうしても諦められないことがある」
僕はレヴィウス様の露払いを務めることにした。
獣の匂いを嗅いで、相手の気配が濃くなったら何度も吠えて危険を知らせる。
コンビを組むのは初めてだったけれども、僕たちは連携プレーで魔獣を片付けていった。
やがて、ダンジョンの入り口が見えてきた。帰らずの森の最奥部はこの中にあるらしい。
僕は暗闇の中を、嗅覚を頼りに進んでいった。背後からレヴィウス様の息遣いを感じる。
レヴィウス様のお命を守らなくては。
僕は最後の戦いに備えた。
レヴィウス様!
あなたはここにいてはダメです! 安全なお城へと帰ってください!
僕が牙を剥いて威嚇しても、レヴィウス様は動じなかった。
「きみも七色水晶を探しに来たのか?」
ワンと返事をすると、レヴィウス様は申し訳なさそうに微笑んだ。
「すまんが、俺にも譲れない願いがある。七色水晶を手に入れてこの命を長らえたい。そしてまた、あの子と海の見える丘で……」
レヴィウス様はそこで言葉を切った。
前方から真っ黒な毛皮を持った熊が現れたのだ。熊は赤い爪を生やしていて、敵意を剥き出しにしている。
レヴィウス様が剣の柄を握り直す、ちゃきっという音が聞こえた。
僕はその音を合図に、熊に向かって走り出した。
熊の足元に噛みつき、動きを止める。熊は最初、何が起きたのか分からないといった様子で固まっていたが、やがて痛みを感じたのだろう。僕に向かって長い爪を振るいはじめた。
僕は熊の周りを全力疾走して、奴を撹乱した。
シュマックは火の玉に姿を変えて中空を飛び回り、熊の毛皮をちりちりと焼いた。
「グゥゥッ! オォォッ!」
熊が苛立ちの声を上げる。
よしよし。そのまま頭に血が上った状態でいてくれ。僕はスピードが速くて重心が低い。僕の体を捉えきれず、熊の攻撃が空振りに終わる。
体勢が崩れた熊の胴体を、レヴィウス様が払った。血しぶきの代わりに黒いモヤが周囲に広がる。
そうか。こいつは闇から生まれた生き物なんだな。それならば遠慮はいらない。
僕は熊の足元を執拗に攻めた。レヴィウス様も容赦のない一閃を繰り出して、熊の腕を切り刻んでいった。
熊は僕とレヴィウス様、どちらを攻撃すべきか迷っているらしい。雄叫びを上げて怒り狂った。
僕はわざと動きを緩めて、熊の前方に横たわった。
熊がこれ幸いとばかりに僕の体に齧りつこうとする。がら空きになった熊の胴体を、レヴィウス様が再び斬りつけた。
「ア、アグゥゥッ」
断末魔を上げると、熊は黒いモヤになり、やがて虚空へと消えていった。
僕は大きく息を吸い込んだ。
ハッハッと舌を出して呼吸を整えていると、レヴィウス様の優しい声が降ってきた。
「共闘してくれたのか」
僕はアオーンと鳴いたあと、ちぎれんばかりに尻尾を振った。レヴィウス様の手が僕の頭に伸びてくる。僕はレヴィウス様の手の匂いを嗅いだ。石鹸とお日様が混ざり合ったいい匂いがする。
「きみは……俺の味方だと思っていいのか?」
クーンと鼻を鳴らして、お腹を見せる。恭順のポーズを示したことによって、レヴィウス様は僕のことを信用してくれたようだった。
「こんなに強い聖獣を誰が派遣してくれたのだろう?」
僕はアズリールです、レヴィウス様。
そう語りかけたかったけれども、お優しいレヴィウス様のことだ。僕の正体が分かったら、ブランシェール学院に帰れと言うことだろう。僕は素性を明かさずにレヴィウス様に同行することにした。
「きみは神話に出てくる聖獣ラピステルに似ているな。そう呼んで構わないか」
僕はワンと元気よく鳴いた。
「ラピステルよ。きみの力を貸してくれ。俺にはどうしても諦められないことがある」
僕はレヴィウス様の露払いを務めることにした。
獣の匂いを嗅いで、相手の気配が濃くなったら何度も吠えて危険を知らせる。
コンビを組むのは初めてだったけれども、僕たちは連携プレーで魔獣を片付けていった。
やがて、ダンジョンの入り口が見えてきた。帰らずの森の最奥部はこの中にあるらしい。
僕は暗闇の中を、嗅覚を頼りに進んでいった。背後からレヴィウス様の息遣いを感じる。
レヴィウス様のお命を守らなくては。
僕は最後の戦いに備えた。
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