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16、絶体絶命にて。4
しおりを挟む順調だった。
余りにも順調過ぎた。
彼等は私の言う事を良く聞いていたし、クエストの難易度を下げる代わりに、稽古の時間を取れば、みるみる内に彼等自身の実力も伸びていた。
…私の元のパーティーの話もしていなかった。
それは、「秘密」だった。
いえば、溶けて消えてしまうような、「秘密の魔法の言葉」だ。
少なくとも、私にとっては。
ーーーーーーー
順調なある日の事だ。
もう、彼等と出会ってから、かなりの時間が経っていた。
彼等の中に、私も上手く溶け込めていたし、パーティー全体の能力も大分上がった。
ただ、私は、まだ仮パーティーだった。
正式メンバーへの打診はあった。
彼等の中から、ギルドの方から。
日に日に増えていく打診の中で、彼らからその話が上がる事は無くなった。
私からも。
私は上手く溶け込んでいた。
いつもの昼だった。
私達はクエストの帰路に着いていた。
いつもより、『少し高い難易度の森』だ。
慢心、飽き、警戒心の薄れ。
何がいけなかったのか。
…全てがいけなかったのだろう。
その生物と対峙した時、私はそう思った。
一瞬だ。
私と、リーダーの子。
それ以外は、最初の攻撃で、戦闘態勢を取れずに後ろの木に叩きつけられた。
リーダーの子も、腕の所々が裂け、剣を振るう事は難しそうであった。
私は頭を回した。
この子達を救うには、どうすればいいか。
優しかった、受け入れてくれた、素直だった、尊敬してくれたこの子達を救うには、どうすればいいのか。
今度は、『彼』一人の、『私』一人の犠牲では、済まないだろう。
私は頭を回して、一つの結論に辿り着いた。
…不可能だ。
私は、思わず腰に手を伸ばした。
右手に掲げた愛剣の、その鞘の隣。
あの短剣に。
手を伸ばして、触れて、そしてやめた。
私は、両手で愛剣を持って、怪物に目を据えた。
何回かの攻撃で、リーダーも倒れてしまっていた。
怪我をしたパーティーメンバーを背に隠し、私は巨大な影に剣を向けた。
ーーーーーー
怪我をしたパーティーメンバーを背に隠し、巨大なその影に剣を向けていた。
最早、打つ手はない。
逃げる事も出来ない。
絶体絶命のこの状況。
そこに現れたのは、少年の様な影。
その影は、目の端で捉えたと思えば、次の瞬間には無くなってしまっていた。
死を覚悟した状況であるにもかかわらず、思わず目で追ってしまう。
影が完全にいなくなったことを脳で理解した瞬間に降って来たのは、目の前の魔物の血の雨。
生暖かいそれが、意識を魔物へと戻させる。
しかし、そこに存在するのは、大きな肉塊だけであった。
横たわるそれを見て、私は膝から崩れ落ち、影の消えた方に手を合わせた。
「ああ…森の精よ…
私を、私達を助けて頂いたこの恩は、
この恩だけは、決して忘れはしません!」
私は出来る限り声を張り上げて、それから、あの短剣を地面に落とした。
そして、小声で声を漏らす。
「僕には、君みたいな魔法使いの大魔法は、いささか勿体なかったみたいだ。」
私は、目を覚ましたリーダーの子と一緒に、パーティーメンバーを運び出した。
みんなが目を覚ましたら、これまでの事を話そう。
「秘密の魔法」も、全部。
それで…最後にこう付け加えるんだ。
「高ランク冒険者のノウハウを学ぶってことで、正式なパーティーでも組んで見ない?」って。
反対されるかな、されるかもな。
今回で、辞める子もいるかも知れない。
それでも、これだけは話してあげよう。
「今は亡き親友の、大魔法を。」
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