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21、エルフの集落。4
しおりを挟む「思ったより、熱かったみたいですね。」
貼りついた笑顔のまま、リグは唐突に言い放った。
「っ…」
それを受けたシルビアは、顔を真っ赤に染めて、声にならない声を漏らす。
最早、不敵な笑みを浮かべた面影はない。
(あっ、図星だったみたいだ。
紅茶を飲んだ時にちょっと顔をしかめてたんだよね。
相当熱かったみたいだ。)
リグが心の中で状況を整理している間、シルビアも深呼吸を繰り返して、平常心を保とうと試みる。
(それにしても、ちょっと意外だったな。
リアクションも大きいし、思ったよりも簡単に丸め込めれるかも知れない。
よっし、一回かまして見ますか。)
「認識阻害魔法と、幻覚魔法、でしたよね。」
真っ赤な顔色を戻したシルビアが、リグに向き合い直して頷く。
「それじゃあ…」
リグが右手で指を鳴らすと、魔法の解除が行われる。
ブラウンだった目の色が、みるみるうちに真っ黒に変化していった。
「ほお…固有スキル持ちか。」
真面目くさった顔で、感嘆の声を漏らすシルビアに、リグは思わず吹き出した。
「何故笑う!
愚弄する気か!」
再び顔を赤くして剣を構えるシルビアに、リグは手を両手に上げて、そしてさらに大きな声で笑い出す。
「いや…だってっ、紅茶で火傷しそうだった人が、真面目くさった顔で…ふふっ、はっはは!
無理っ我慢出来ない!」
シルビアは蒸発しそうな程の熱を顔に持ち、そして、リグに向かって、でたらめに斬りかかる。
リグは、笑い声が止むまで、それを華麗にかわし続けた。
ーーーーーーーーー
「すみません、悪かったです。
僕が悪かった。」
一通り笑い終わったリグは、シルビアに対して頭を下げていた。
しかし、シルビアは顔を背けて謝罪を受け入れようとはしない。
(全く、まるで大きな子供だな。
…煽った僕も同類か。)
リグは思わず苦笑を漏らした。
それから、徐にドラさんが入った鞄とは違う方の荷物を取り出す。
「シルビアさん。
『手土産』です。
今回はこれで仲直りということで、どうですかね?」
顔を背けていたシルビアは、リグの方を見やったが、すぐにまた背けてしまった。
ただ、気になっている様子でチラチラと覗いて来る。
(流石に、やり過ぎたかな…)
リグは袋から『手土産』を取り出して、わざとらしく大声でひとりごとをこぼす。
「あーあ、折角苦労して、ミラーフィッシュの鱗までとって来たのにな~。」
それを聞いて、シルビアは振り向いて声を出す。
「ミラーフィッシュって、あのAランクの!?」
振り向いたシルビアに、リグは楽しそうに笑いを漏らして、シルビアは少し恥ずかしそうに顔をうつむかせた。
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