『ツインソウル物語3』“初恋”

大輝

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第15章 冬休みにお見合い?

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【川原家の和室】

お正月の三が日は、東京の家でゆっくりした。

お婆ちゃんのおせちは、やっぱり美味しいな。

「昆布巻き、作るの大変なのよ」

「何言ってるの、子供の頃はいっぺん(1度)も手伝わなかったのに」

「兄貴の方が料理得意だもんね」

僕の伯父、お袋の兄はコックになりたかったぐらいだからな。

「大鍋に昆布を入れて水に浸して何日かすると、鍋の蓋が持ち上がるほど膨れてくるのよ」

ここんちの大鍋って、半端なくデカイんだけど、これしか知らないから普通だと思ってたよな。

「サケのカマを水で洗って、少し塩分を落として、柔らかくなった昆布で巻いたら、かんぴょうで結んで、味はつけないで煮るのよ」

昆布とサケの味だけで、凄く美味しい昆布巻きが出来る。

うちは皆んなこれが好きで、何人家族?って言うぐらい作るんだ。

まあ、お婆ちゃんの料理はいつも山ほどだけどね。

お爺ちゃんが居なくなっても、たくさん作る癖は治らないな。

「璃子ちゃんが、新年のご挨拶に来てるわよ」

璃子の家とは、どっちが自分の家だかわからないような感じで育ったんだ。

勝手に上がり込むなんて当たり前なのに、何改まってるんだ?

【玄関】

へー、着物着てるのか。

こうやって見ると、中々様になってるよな。

「おばちゃん、母がこれ食べて、って」

「ありがとう。何で上がらないの?」

「うん、ちょっと、お客様が見えるの」

「じゃあ、うちのも持って行って」

【鐘城家のリビング】

「そう言えば、璃子ちゃんにお見合いさせる、って瑠璃ちゃんが言ってたな」

「ふーん、って、お見合い?」

「だって、今年27でしょう。そろそろ結婚して孫の顔を見せてもらいたいのよ」

そうか…

「響もちゃんと考えてる?」

「結婚?全然考えて無かった」

アイツ、それで着物着てたのか。


【高梨家】

「え?お見合い?それで着物着なさい、って言ったの?」

「もう振袖も着れない年よ。だから、訪問着作ったんだけど…」

「アハハ、それは無理よね」

「そろそろ留袖も作らないと」

「もう、ママ。黒留は既婚者でしょう?まだ色留で良いわよ」

「結婚したら必要になるから、作っておくのよ」

〈いつもニコニコの璃子のママ瑠璃〉

まだ、相手も決まってないのにねー。

「あ、お客様見えたみたい」

はあ、お見合いか…

しょうがないわね。

逃げ出すわけいかないし…

【響の部屋】

璃子がお見合いね…

そう言えば、前に、30迄には子供を産みたい、って言ってたな。

そうだよな…女性は子供を産むから大変だな。

結婚したら、教師辞めるのかな?

辞めないまでも、相手がこっちの人なら、帰って来るんだろうな。

そしたら、あの町で僕1人になるのか。

町の人は皆んな良い人だけど、やっぱり寂しいよな。

行くまでは、1人で行く気でいたんだけど…

今は、璃子の居ない中町学園なんて、考えられないよな。

まあ、まだ結婚すると決まったわけじゃないけどね。

【璃子の部屋】

「奥山町の上町に有る神社って、縁結びの神様なのよね」

〈嬉しそうに話す瑠璃〉

「え?そうなの?知らなかった」

「今度お参りしときなさいね」

「うーん」

神社は、あれから行ってないな…

「出雲大社にも行って来なさい。近いんでしょう?」

「まあ、島根だからね」

縁結びの神様ね…

【帰りの電車】

璃子のヤツ、お見合いの話ししないな。

どうなったんだろう?

まあ、そうすぐには返事はしないだろうけど…

「上町の神社にお参りに行け、って、母がうるさくて」

「お前、あれ以来神社嫌いだもんな」

「うん」


前に神主さんの息子さんに、しつこく言い寄られて大変だったんだ。

僕が恋人のフリ頼まれて、その人と会ったんだよな。

フリだよ、フリ。

本当に璃子と付き合ってたわけじゃないからね。

「響は、お寺嫌いよね」

「そうだな、嫌悪感が有る」

遠い昔に、何か嫌な事が有ったような…

しかし、何も無い。

涼子さんが言う魂の記憶なのかも知れないな。

最近良くデジャビュを感じるけど、もうお寺のデジャビュとか嫌だぞ。

【神社入り口の階段】

そんなわけで、神社に付き合わされている。

学校は8日からだから、もう少しゆっくり出来るぞ。

【川の畔のお稲荷さん】

担任を持っている先生は、休みも忙しくて大変だろうけどね。

中町学園は、生徒数も少ないし、東京に居た頃よりずっとのんびり出来る。

それに、こっちの人は皆んなのんびりしていて、時の流れが違うようにさえ感じるよな。

【境内】

同じ生きるなら、僕は今の生き方の方が自分に有っている気がする。

やっぱり、あのお婆ちゃんの孫だから、のんびりが良いのかも知れないな。

「ねえ、明日関金に行ってみない?」

「え?行くのか?」

「だって、響のお婆ちゃんの故郷、近いのに行こうよ。倉吉からバスで行けるのよ」

「璃子は、倉吉行った事有るけど、僕はまだ行ってないからな」

「何よ、その言い方。あ、私が一本木先生と行ったから、気に入らないんだ」

「だって、いつもなら2人で行くだろう?」

「アハハ、焼きもちね」

「違うよ。何か、僕と行くより先に他の人と行ったのが引っかかるだけだよ」

「そういうのを「焼きもち」って言うのよ」

何とでも言ってろ。

【中町のバス停】

結局関金に行く事になった。

倉吉迄バスで行って他のバスに乗り換える。

【関金町】

「わあ、素敵。天女の湯どころだって」

璃子は、天女ってところに惹かれたみたいだ。

お婆ちゃんは、上ん茶屋下ん茶屋とか言うけど、上ん茶屋が温清楼、下ん茶屋が鳥飼旅館だ。

温清楼は、今はやめてしまったけど、復活計画が有るみたいだぞ。

温清楼には曽祖父、お婆ちゃんの父親が育てた盆栽が飾られていたそうだ。

玄関に入ると、真正面に飾って有ったんだって。

見てみたかったな。

曽祖父と温清楼の親父さんは、2人で一対のお宮の唐獅子、って言われていたらしい。

早く復活してくれよ。

お婆ちゃんの話しに出て来る温泉が無くなってしまったら、つまらないもんな。

地蔵院も、関のえぐ芋も見たし、帰ろうかと思ったらバスが無い。

しかも、この季節だ。

雪だよな…

【鳥飼旅館】

お婆ちゃんがこっちに居た頃、一番賑やかだった、って言ってたのが、下ん茶屋の鳥飼旅館だ。

いつも芸者さんが来ていて、賑やかだったそうだ。

安来節、曽祖母は上手だったそうだけど、お婆ちゃんが歌うと「おまい(お前)の安来節はいけん。そりゃ、流行歌だ」って言われたんだって。


「何だかアットホームな感じで良いわー。テレビの温泉特集で見るみたいに、女将さんが気取ってないのが良いわよねー」

璃子のヤツ、ニコニコだな。

【客室】

しかし、予約無しで良く部屋が空いてたな。

「さっき通った時、泊まるならここって思ったの」

天女の湯どころ、って言うのがすっかり気に入ってしまったようだ。

おじさん茹でダコ事件は、ここじゃなかったよな。

あれは、ともえ旅館の話しだ。

この隣だったらしいけど、今はもう無いみたいだな。

お風呂から出て着替えていたら、おじさん達が「あれはどこの娘だ?」「田野倉のお転婆娘か」なんて言ったもんだから、お婆ちゃん入り口の階段に座って「もういっぺん言ってみい」って…

おじさん達、温泉から出られなくて「うー」「あうーっ」って、茹でダコになって唸ってた、って話しね。

お婆ちゃんの若い頃の話しは、筋の通らない事には啖呵を切ったとか、武勇伝ばっかりだもんな。

「今は芸者さんは居ないみたいだな」

「あら、残念そうね」

「お婆ちゃんが子供の頃は、実家の庭の飛び石を左褄取って歩いてた、って言ってた」

「さっき、ご挨拶に伺ったお宅よね。昔とは雰囲気が変わったのかしら?」

「建て替えたらしいよ。曽祖父の築山も、今は無いみたいだ。裏の竹藪も無くなっちゃったって」

「あら、残念ね。鳥取大震災の時には有ったんでしょう?」

「うん。地割れしたり、郵便局の前の道を人が這ってるのが見えた、って言ってたな」

竹藪は根が張っているから、助けてくれたんだと、僕は思っているんだけどね。

大伯母から頂いた袋を開けてみた。

「うわ~、さい味噌(金山寺味噌)だ~」

「美味しそうね」

関金の大伯母のが一番美味しいんだよな。

【廊下】

「ここの温泉飲めるのね」

「そうみたいだね」

温泉は2階に有る。

掛け流しで、男湯は檜風呂だ。

【温泉暖簾前】

「ああ、スベスベで気持ち良かったわ」

温泉飲んでみたけど、飲みやすかったな。

【客室】

部屋に戻ると、布団を敷いてくれていた。

だけどこれ…

くっつき過ぎだろ。

寝る時は、引っ張ろう。


「お布団2つ並んで、新婚旅行みたいね」

やっぱりか。

そんな事より、お見合いの話しはどうなったんだよ。

僕は、話したくない事も有るだろうと思うから、こっちからは聞かないんだけど…

いつもなら、聞かなくても自分から話すのに、今回はどうしたんだ?

「何黙り込んでるのよ?」

「いや…」

「あ、そうだ、出雲大社にも行かなくちゃ」

「はあ?」

「行け、行け、ってうるさいのよ」

「おばちゃんか」

「うん「縁結びの神様お参りして、早く良い人と巡り会って結婚して」だって」

はあ、うちのお爺ちゃん、出雲大社の帰りに、倉吉でお婆ちゃんと会ったんだよな。

御利益有るみたいだけど…

「お前、結婚したら教師辞めるのか?」

「辞めたくないな。夫になる人が、どうしても辞めてくれ、って言うなら、仕方ないけど」

相手次第だよな。

「響は、結婚したら辞めてほしい?」

「え?」

「あ、えっと、そういう意味じゃなくて、仕事持ってる人だったら、って事よ」

家庭に入ってほしいのかしら?

今の学校は、結婚しても移動は無いのよね。

あの学校なら、2人とも残っても上手くやっていけそうだけど…

「結婚の事、全然考えてなかった。相手も居ないしな」

もう、私の事は全然見えてないんだから。

良いわよ。

〈ふくれて、ソッポを向く璃子〉

何か怒ってるか?

怒らせるような事言ったかな?

そろそろ寝るか。

この布団引っ張って。

窓に近いと寒そうだけどな。

「何してるのよ」

「いやあ、あんまりくっつき過ぎだからな」

「何よ今更。そんなに離れなくたって良いじゃない」

今更だけど、璃子も女性だったんだよな、って。

しかも、結婚を考えなきゃいけない年頃のな。

「そっちは、寒いわよ~」


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