『ペガサスが舞い降りる日』“僕の人生を変えた恋人”

大輝

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第22章 秋初戦

僕の人生を変えた恋人22

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コユキの秋初戦は、9月21日阪神競馬場で、関西TVローズS(G2)芝1800m?3歳牝馬限定戦だ。

春より成長して逞しい馬体になったなあ。

ファレノプシスは、女の子らしい馬体だったけど、コユキは男の子みたいだ。

毛色もだいぶ白くなって綺麗だな。

ジョリーちゃんは、最初黒っぽくて、少しずつ白くなって行くと、顔が恐竜みたいだったけど、本当はとっても可愛い顔で、優しい表情する仔だった。

コユキは、デビューの頃には白っぽくなってたからな。

恐竜みたいじゃなかったね。

ファレノプシスって、良い名前だよな~

胡蝶蘭より先に彼女、馬の方を思い出してしまう。

好きだったんだ。

僕が彼女を見たのは、ラストランのエリザベス女王杯。

3番人気だった。

この仔確か強いはずなのに、どうして1番人気じゃないんだろう?

って、思ったんだ。

勿論応援したよ。

実は、トゥザヴィクトリーも好きなんだけど、彼女は2番人気。

彼女を好きになったのはもっと後だから、その時応援してたのは、ファレノプシスだけだった。

最終コーナーで先行馬を捉えにかかると、直線ではゴール前粘るフサイチエアデールを交わして、半馬身差で勝ってくれた。

秋華賞以来約2年ぶりの勝利で引退の花道を飾ったんだ。

そう、彼女は、桜花賞と秋華賞を勝っているんだよな。

牝馬二冠だ。

コユキも、秋華賞を勝ってほしいな。

その前にローズだけどね。

「秋華賞トライアル?」

「うん。3着以内の馬に秋華賞の優先出走権が与えられるんだ」

「帰りに宝塚見に行こう。今、何をやってるのかしら?」

お姉さん嬉しそうだけど…

また連れて行かれるのか?

検索してみるかな?

「花組公演、エリザベート愛と死の輪舞(ロンド)だって」

「出演は?」

「明日海りおさん、蘭乃はなさん」

「ふふーん、楽しみだわ」

「早くチケット取らないと、千秋楽だよ。宝塚ファンは毎日見るからね」

「誠人さんに頼んでおくわね」

来年は、姫ちゃんと怪獣君のデビューなんだけど、名前は決まったのかな?

「怪獣君は、カイジュウクンのままにする?」

やっぱりか。

はあ…

「それともハルクン?」

「ハルクン?」

「春風牧場期待の男の子だから、ハルクン」

良ーく考えて決めてよ。


2014年9月21日日曜日。

僕は、お姉さんと一緒に阪神競馬に来ている。

今日のコユキは、どんな競馬を見せてくれるのかな?

前哨戦だから、無理をする必要は無いね。

ここでひと叩きか。

コユキは、叩き良化型ではないけどね。

あの気性だから、鉄砲が利く。

「鉄砲?」

「鉄砲駆け」

「どういう意味?」

「休み明けだと、体が出来ていなかったり、レース感が戻っていなかったりで、凡走する馬も居るけど、復帰初戦から力を出せる馬を「鉄砲が利く」って言うんだよ」

「コユキは、鉄砲が利くのね」

「うん。気が強くて、気力で走るとこ有るからね」

【馬主席】

「おや、誰やったやろ?葉月さんでしたかいな?」

「こんにちは」

ハハア、金成オーナーだ。

「マグレで桜花賞勝ちはったようやけど、そうそうマグレも続きまへんでっしゃろなー。今日は、勝たしてもらいまっせ」

「お互い頑張りましょう」

「ほなな」

頑張るのは馬だけどね。

オークス馬カミノクインは、関東馬だから紫苑Sから秋華賞に向かうみたいだ。

桜花賞馬とオークス馬の直接対決は、牝馬三冠の最後の一冠秋華賞だね。

あ、紫苑は13日だっけ?

もう終わってる。

勝ったのかな?

僕って、人の事は気にしない性格だからな。

結果まだ知らなかった。

【パドック】

ローズステークスの出走馬が、パドックに入って来た。

コユキは、12番だ。

あれ?

何だかいつもより大人しい気がするぞ。

大丈夫か?

いつもチャカチャカした馬が大人しいと、心配になるよね。

気性が大人になったのかな?

それにしても、あのコユキがこんなに大人しいなんて…

それでも、気分良く外外を歩いて、前の馬早く歩いてよ、って感じだ。

体調は良いみたいだな。

周回を重ねても、いつものように速歩になったり、尻っ跳ねしたりしない。

こうなると、少し心配になってくる。

コユキ、走る気有るのか?

「コユキ、元気無いのかしら?」

「気持ちの問題じゃないかな?」

止まれがかかって、ジョッキーが乗った。

コユキが一変した。

大丈夫だ。

気合が乗った。

これだから女の子の気持ちは、わからないよな。

馬も人間も同じだね。

【スタンド】

本馬場入場。

「コユキ、来た。どう?」

「キャンターにおりる時も、いつもみたいにうるさいところを見せなかったね」

何だかまた心配になってきたけど…


「1番人気よ」

「桜花賞馬だからね」

オークス馬は居ないし、1番人気になるのは当然だろうけど、またマークされるよな。

まあ、ここで無理をしないで、余力を残すぐらいで本番に向かえると良いね。

スムーズに枠入りしてゲートが開いた。

コユキは、珍しく好スタートからすんなりと後方に付けた。

カネノカンムリがハナを奪って、単騎の逃げだ。

「今日のカネノカンムリは、大逃げじゃないわね」

「でも、単騎で逃げるとしぶといよね」

馬群は縦長で、3、4コーナー中間まで進んだ。

「動いた」

4コーナー手前から、コユキが捲り気味に上がって行った。

直線入り口では団子状態。

コユキは、一気に先頭に立つと、そのまま押し切った。

「強かったわね」

「あんまり大人しいから心配したけど、ここでは力が違ったね」

桜花賞がフロックじゃないって、証明出来た。

あ、メールだ。

「コユキ強かったね~*\(^o^)/*」って、凛ちゃんからだ。

「本番が楽しみだね(^ν^)」と返した。

未勝利を勝っただけで大騒ぎしてたのに、もう皆んな、重賞を勝っても驚かなくなったな。

「菱ちゃん。今日は何食べたい?」

「うーん、明石焼き」

「じゃあ、行きましょうか」

【たこ焼き屋】

「こっちでは、玉子焼きって言うのね」

「うん」

「お出しにつけて食べるのが、美味しいわね」

生ビールと明石焼き、美味しい。

やっぱり関西に来ると、食べ物が楽しみだよね。

「明日、宝塚楽しみだわ」

あ、お姉さんは、それも楽しみね。

そして翌日。

スポーツ新聞にコユキの記事が出ていた。

「女王の貫禄、軽くひと捲り、だって」

「こっちは、視界良好」

でも、秋華賞の2000mの距離を不安視する記事も有るな。

「大丈夫かしら?」

「オークスは、一杯になって負けたわけじゃなくて、前が壁になったからね。あの気性だから、長い所は得意ではないと思うけど、僕はマイラーではないと思うよ」


【宝塚大劇場】

やっぱり、女性ばっかりだけど…

いい加減僕も慣れないとな。

阪神競馬場のレースの帰りは、このパターンになりそうだもんね。

男役の人、カッコいいよね。

あんな男は、普通居ないよな。

居たらおかしい。

あんなにカッコいい男が居たら、女性は好きになるんだろけど…

舞ちゃんと凛ちゃんは、どうして僕みたいなのが良いんだろう?

舞ちゃんは、今は、樫野さんの事が好きなのかな?

優しくて、良い人だもんね。

樫野さん、プロポーズしてたけど…

結婚か…

僕もそろそろ考えないといけないのかな?

子供好きだし。

でも相手が居ない。

凛ちゃん?

まだ付き合ってる感じじゃないよな。

そうだよ。

凛ちゃんの事、どうしよう?

凛ちゃんだと、舞ちゃんと一緒に居る時みたいに緊張しないで、自然体で居られるんだよな。

彼女と付き合うなら、写真の人、ペルソナの事は、ちゃんと忘れないとね。

【葉月家】

「俺も見に行きたかったな。テレビで見たけどさ、コユキの捲り」

慎二は仕事が有るから、中々関西までは行けないもんね。

「秋華賞には行けると良いなあ。牝馬三冠の最後の一冠。コユキの戴冠を見ないとな」

もう勝った気でいるな。

春より強くなっているけど、オークス馬が出て来るからね。

彼女も紫苑Sを快勝している。

距離不安も無いし、良い勝負になるね。

内弁慶のコユキ。

今度は京都だから、借りを返してくれるかな?

「口取りの写真」

ああ、凛ちゃんのブログの写真だね。

最初は、ウィナーズサークルに連れて行かれる時「え?どうして?」って戸惑ってだけど、もう慣れたね。

桜花賞を勝ってから、取材も多くなって、写真を撮られる事にも慣れたみたいだ。

「あ、弟の写真も載ってるぞ」

「怪獣君」

「ダービー勝ってくれるかな?」

「勝ってほしいね」

でも、コユキの弟だからって走るとは限らないんだよな。

兄弟で活躍した馬も居るけどね。

僕の好きだった仔は、ダイワメジャーとダイワスカーレットの兄妹。

ドリームジャーニーとオルフェーヴルの兄弟。

上の仔が好きだと下の仔も応援したくなる。

そんなファンの期待に応えて、頑張れ怪獣君。


「まあでもさ、お前トゥザヴィクトリーが好きだったじゃない」

「うん、好き」

「あいつの弟走らなかったよな」

「馬っぷりは良かったんだけどね」

怪獣君は、コユキと全然違うタイプだ。

コユキが牧場に居た頃は、他の馬の後ろを走っていて気がつくと皆んな追い抜いているような仔だったけど…

怪獣君は、いつも先頭を走っている。

彼のヤンチャ振りはコユキ以上だしね。

あ、メール。

凛ちゃんからだ。

「秋華賞には応援に行くからね(*^^*)」だって。

「おお、来るのか。口取りの写真は賑やかな方が良いからな」

「慎二は、口取りする気満々だよ(^◇^;)」と返した。

「牧場の皆んなもそうだよ(^_^)」と返って来た。

コユキ、頑張らないと。

「凛ちゃんが来るなら、俺も行こうかな?」

慎二の奴、彼女居るのに、またあんな事言ってる。

しばらくすると、また凛ちゃんからメールが来た。

え?

「早く逢いたい」

何か…

この字を使われると、ドキッとするよな。

「俺も会いたい」

あ、うわ!

慎二が勝手にメール送っちゃった。

「嬉しい、本当?」と返って来た。

「違う違う!今のは慎二(^^;;」と返した。

「そんなに激しく否定しなくたって良いじゃない(♯`∧´)」と返って来た。

これは、どうしよう?

悩んでる間に、また凛ちゃんからメールだ。

「良く考えたら、俺って言うからおかしいなと思ったわよ」と送って来た。

「僕も早く皆んなに会いたいよε-(´∀`; )」と返しておこう。

はあ…

でも、凛ちゃんが、早く会いたいなんて言ってくれたの初めてだな。

ずっと僕の事好きでいてくれたのに、舞ちゃんに遠慮してたし…


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