9 / 26
第9章 森の異変
しおりを挟む
【満の家】
「おい、光居るか?」
「団殿か」
「その呼び方やめてくれー、何だか照れるぞ」
「ならば、くりきんとん殿」
「だから、殿を付けるなって」
「では、七都のように「くりきんとーん!」と呼べば良いのか?」
「そうそう、そうやって呼び捨てに、って!俺の名前はくりがねだんだ!栗金団と書いてくりがねだんて読むんだ!はぁ…親友のお前にまでこれを言うか?俺は」
「くりきんとーーーん!」
「だから、違うだろ!!俺のあだ名を叫びながら来るな!ったくう、アンドーナツのくせに」
「二人で何してんの?満は?」
「ここよ」
「ところで団、私に何か用が有ったのではないのか?」
「おう、そうだった、って、今「だん」て呼んだか?お前昔からそう呼んでたぞ。思い出したのか?」
「いや、少しも…」
「ま、まあええわい。そんな事より、ブラマンジェ武術大会に備えて稽古しようぜ。今じゃ皆んな、武器に魔法石を付けてるからな。俺達も探しに行くか?」
「それなら、森に行けば有るんじゃないの?」
「そうね、あの森には妖精が居るって言い伝えが有るものね」
「それがな、最近あの妖精の森に、物凄げえ瘴気が出てるらしいぞ」
「あーら、それは心配ね。私も一緒に行こうかしら?」
「餡先生」
「満ちゃんの具合はもう良いみたいね。光君、そろそろ療養所に帰って来て」
「(お兄ちゃん帰ってしまうのかしら?)」
「すまぬ、帰らねばと思っていたところだ」
「おいおい、魔法石はどうすんだよ?森へは行かねえのか?」
「精霊が心配だ」
「お前、そんなもん本当に居るって信じてんのかよ?」
「あら、居ないと思ってるの?」
「餡先生は見た事有るのか?」
「まだよ。でも、居ると思うわ。あの森に行くと感じるもの」
「どうすんだよ?」
「精霊の森へ行くなら、私も一緒に行くわ。貴方達だけじゃ心配だもの」
「よっしや!そんじゃ行くか!」
「そんな所に今の満は連れて行けないよ。私は残る」
「すまぬな七都。満を頼んだぞ」
「任せなさいって」
「お兄ちゃん。皆んな、気をつけてね」
【妖精の森】
〈森に入ると薄暗く肌寒い〉
「ひゃー、寒ーーーっ。もう春なのに、どうなってんだ?」
「まだお花も咲いてないわね」
「霧で遠くが見えんな、気をつけて進むのだぞ」
「おっち、痛ててて」
〈団が何かにつまずいて転ぶ〉
「何だこりゃ?木の根っこか?ゴホッ」
「それは毒よ」
「この森に毒を持った植物なんて有ったか?」
「有るとしたら、毒キノコぐらいのはず…でも、これはおかしいわ」
「ゲホッ、ゲホッ」
「もっと先へ行ってみましょう」
「って、おい、餡先生。俺の治療とかしてくれないのかよ?」
「あん、まあ大丈夫よ。行きましょう」
「大丈夫って」
〈森の中を進む3人〉
「どこもひどい有様だな」
「ゲホッ、何だ?この臭いは?」
「あの時と同じだ」
「ええ、そうね」
「あの時?」
「フィナンシェ姫に取り付いた物の怪が、このような臭いを」
「そう、これは薬品の臭いだわ」
「強烈な臭いだな。だけど、何だってこんな所で薬品の臭いなんだ?」
「精霊の木が心配だわ。急ぎましょう」
【精霊の木】
「ここだけは、かろうじて無事だったな」
〈大きな木の根元で何か光っている。その光は今にも消え入りそうだ。光に近づきひざをつく光の神〉
「どうしたと言うのだ、この有様は?」
「貴方は…光の…神様…ですね」
「うむ」
「お久し…ぶり…です」
「久しいな」
「何か居るのか?」
「精霊よ」
「え?本当に居たのか?何で俺だけ見えないんだよ!って餡先生が見えるのはわかるけどよ、何で光に見えるんだ?」
「私の所で修行したからよ。ね、光君」
〈餡は軽く光にウィンクする〉
「あ、ああ、まあそんなところだ」
「死んでるのか?」
「肉体を持たないから、死ぬっていうのはちょっと違うけど…だいぶ弱ってるわね」
「助かりそうか?」
「どうかしら?」
「死なねえなら、どうなるんだ?」
「消滅する」
「それじゃあ死ぬのと変わらねえじゃねえか。何とかならねえのかよ?」
「何とかしましょう」
〈餡と光の神二人でヒーリングを始める。しばらく続けると弱々しかった精霊の光が元気を取り戻して行く〉
「人間達が来て、森の生き物を捕まえたのです。動物も、虫達も、鳥も捕まりました」
「森の生き物を捕まえてどうするつもりなのだろうか?」
「「細胞を採取する」と言っていました。植物からも」
「何だか嫌な予感がするわね」
「そして、瓶に入った物を撒き散らして行ったのです」
「化学薬品ね」
「この木だけは何としても守らなければと思いました」
「そなたがエネルギーを送り続けたのだな?」
「はい」
「それでこんなに消耗したのね」
【猫茶屋】
「婆ちゃん、七都はどこ行ったニャ?」
「満ちゃんの家に行くって言って出て行ったよ」
「満の家か(神様も居るのニャ)」
「猫まんま、行きたいんだろ?行っといで」
「でも、七都も居ないし、婆ちゃん一人じゃ大変なのニャ」
「おや、ありがとよ。大丈夫だから行っといでよ」
「だけどニャあ」
「ほら、このお菓子持って行っておやり」
「ありがとニャ。行って来るニャ!」
〈千代子婆ちゃんのお菓子の入った包みを持って駆け出す猫魔〉
【精霊の木】
「魔法石はどうなったのか、聞いてみろよ」
「魔法石ですか?それも彼らが持ち去りました」
「何だって、なあ光」
「魔法石も持ち去ったそうだ」
「ちくしょう、許せねえな。俺が手に入れようと思ったのによ」
「こんな物が欲しいのか?」
「だ、誰だ?!」
〈振り返ると魔法石を手にした男が立って居た〉
「貴族じゃねえか」
「これは治癒の魔法石。こっちは毒の魔法石だ。どっちが欲しい?」
「毒の魔法石だって?この森の魔法石は治癒の魔法石だろ?毒の魔法石なんてどこで見つけたんだ?」
「こんな物が無くても毒ならいくらでも有るぞ。好きなだけ食らうが良い」
〈そう言うと貴族の男は化学薬品の入った瓶を投げた〉
「うわっ!何しやがる?!ゲホッ、ゲホッ」
「吸い込まないで!」
「んな事言っても、ゲホッ、ゲホッ」
「息を止めるのよ」
「無茶言うなよ」
「喋らないで」
「無駄な抵抗だな。フハハハハハ」
【満の家】
「あら猫魔ちゃん、いらっしゃい」
「あー猫魔、店番は?」
「婆ちゃんがこれ持って行けって言ったニャ」
「わあ、ありがとう」
「そっか、皆んなで食べよう」
〈家の中を見回す猫魔〉
「どうしたの?食べないの?」
「猫魔が食べないわけないじゃない」
「光はどこニャ?」
「お兄ちゃんなら団ちゃんと森へ行ったわよ」
「そうそう。精霊石を探すんだって」
「そうにゃのか…」
〈猫魔はお菓子を口に入れる〉
「餡先生も一緒よ。なんでも凄い瘴気が出てるとかで」
「それは本当にゃのか?」
「うん、そんな事言ってたよね?」
〈クルッと向きを変えて走る猫魔〉
「あ、猫魔…行っちゃった」
【精霊の木】
〈化学薬品の瓶を投げまくる貴族〉
「ゲホッ、ゲホッ、くそう…」
「早く解毒を」
「このままじゃ、解毒剤が足りなくなるわ」
「光。ちゃっちゃとやっつけちゃってくれよ」
〈剣を構える光の神〉
「(光の天使は居らぬ、このまま戦えるか?)」
「何だ?その剣は。魔法石も無い剣で私に立ち向かおうと言うのか?愚か者よの」
「(だが、戦うしかあるまい。このままでは大切な者達の命が…)フッ」
「何がおかしい?これから死んで行くと言うのに、何を笑っている?」
「(大切な者…か。いつの間にかそんな存在になっていた)」
「おかしな奴だ。まあ良い、この手で地獄へ送ってやる」
「あいにく、私は地獄には入れんよ」
「あはは、それもそうよね」
「何の事だ?」
「(地獄はきっと、他の神様が守ってるんだわ。地獄の番人?)フフフ」
「そこの女、何故笑う?ええい、どいつもこいつも!気に入らん、気に入らん!死ね!!」
「つぇーーい!!」
「私の服を切ったな。この高価な服を」
「キンキラキンなだけじゃねえか」
「黙れ!」
〈貴族は栗金団に向かって化学薬品の瓶を投げつける〉
「団!」
〈栗金団に覆いかぶさる光の神。その背中に瓶が激突して割れて飛び散る〉
「ば、馬鹿野郎!何で俺を庇うんだよ?!」
「親友…なのだろう?」
「光君?」
〈光の神の意識が遠のいて行く〉
「(ほんに、肉体という物が有ると、厄介…だ…な)」
「光!!」
「神様に何をしたにゃ?!!」
「猫まんまちゃん」
「神様って、何の事だ?」
「許さないニャ!!お前だけは!お前だけは!!!」
「あ、猫魔が…変身してるのか?!」
「お前のような奴は、天の神様が許してもこの俺が許さない」
「「ニャ」って言わないのか?」
「だから、そこは突っ込まないであげて」
「「だから」って何だよ?」
「猫魔君、相手は人間よ。殺しちゃいけないのよ」
「わかってる。行くぞ!」
「おのれ化け猫め」
「秘技雛あられ!!」
〈雛あられが舞い貴族の体に張り付き埋め尽くす〉
「うっ、ぐおっ、ぐわあーーー!!」
「やっつけちまった」
「あら、早かったのね」
「殺さなかったニャ。ありがとう餡先生」
「お礼?どうして?」
「餡先生に言われなかったら殺してたかも知れないニャ」
「自分でコントロール出来ないほどの強い力、って言ってたわね」
「けどよ、さっきの猫魔カッコ良かったぜ。でも、何で雛あられなんだ?」
「きっと安藤千代子さんのお菓子を食べたのね」
「そうなのニャ。そんな事より、光のか…光は大丈夫なにゃのか?」
「解毒剤を飲ませたから。これが最後だったの。もしこの解毒剤が無くなってたらと思うと、恐ろしいわ」
「猫魔お前さっき、光の事神様とか言ってなかったかか?」
「うえっ?!そ、それは…」
「猫まんまちゃんは、天上界から来たのよね?」
〈猫魔に軽くウィンクする餡〉
「そ、そうなのニャ」
「へえ、天上界ね。妖魔なのに魔界じゃないのか?」
「魔界は別の所に有るニャ」
「そっか、何だか良くわかんねえけどよ、良い妖魔だから天上界に住んでんだな」
「魔界の奴らが人間界に出て来たりしたら、大変な事になるニャ」
【天上界】
「ああ、忙しい、忙しい。地上の事も気になるわね。光の神…私が居なくて大丈夫かしら?」
〈ふわふわと飛んで聖域に入って行く光の天使〉
【女神の泉】
「おっ、天使が来た」
「光君、またここに来てたの?」
「ここに来りゃ満が見れるからな」
「あ、そうだ。そんな事より女神様。やはり魔界の門が開かれた形跡が有りました」
〈水面に魔界の門が映し出される〉
「やはりそうでしたか」
「考えたくはないのですが、逃げ出した者も居るかと」
「探し出して魔界に戻さなくては」
「はい、女神様」
「まさか、あの者の仕業ではないでしょうね?」
「まさか?!あいつは封印して有りますし、地獄の番人が居るのですから心配無いと思いますけど…」
【精霊の木】
「あの貴族どっかで見た気がするんだよな…」
「確か、ザッハトルテ公爵家の肖像画に居たんじゃないかしら?」
「公爵家の奴か…あいつまだ死んでねえんだろ?」
「雛あられが消えないうちに、どっかに捨てて来るニャ」
「二度と来れないぐらい遠くに捨てて来いよ」
「何が目的なのか、聞いておけば良かったわ」
「ああ、魔法石取っとけば良かったぜ」
「私はこれからこの死の森を蘇らせます。そしたらまた魔法石も出来るでしょう」
「そうね、でも、無茶してエネルギーを使い果たしたりしないでよ」
「わかっています」
「また妖精と話してんのか?なあ、そろそろ帰ろうぜ」
【魔界の門近く】
〈暗闇でいくつもの目が不気味に光っている〉
「おい、光居るか?」
「団殿か」
「その呼び方やめてくれー、何だか照れるぞ」
「ならば、くりきんとん殿」
「だから、殿を付けるなって」
「では、七都のように「くりきんとーん!」と呼べば良いのか?」
「そうそう、そうやって呼び捨てに、って!俺の名前はくりがねだんだ!栗金団と書いてくりがねだんて読むんだ!はぁ…親友のお前にまでこれを言うか?俺は」
「くりきんとーーーん!」
「だから、違うだろ!!俺のあだ名を叫びながら来るな!ったくう、アンドーナツのくせに」
「二人で何してんの?満は?」
「ここよ」
「ところで団、私に何か用が有ったのではないのか?」
「おう、そうだった、って、今「だん」て呼んだか?お前昔からそう呼んでたぞ。思い出したのか?」
「いや、少しも…」
「ま、まあええわい。そんな事より、ブラマンジェ武術大会に備えて稽古しようぜ。今じゃ皆んな、武器に魔法石を付けてるからな。俺達も探しに行くか?」
「それなら、森に行けば有るんじゃないの?」
「そうね、あの森には妖精が居るって言い伝えが有るものね」
「それがな、最近あの妖精の森に、物凄げえ瘴気が出てるらしいぞ」
「あーら、それは心配ね。私も一緒に行こうかしら?」
「餡先生」
「満ちゃんの具合はもう良いみたいね。光君、そろそろ療養所に帰って来て」
「(お兄ちゃん帰ってしまうのかしら?)」
「すまぬ、帰らねばと思っていたところだ」
「おいおい、魔法石はどうすんだよ?森へは行かねえのか?」
「精霊が心配だ」
「お前、そんなもん本当に居るって信じてんのかよ?」
「あら、居ないと思ってるの?」
「餡先生は見た事有るのか?」
「まだよ。でも、居ると思うわ。あの森に行くと感じるもの」
「どうすんだよ?」
「精霊の森へ行くなら、私も一緒に行くわ。貴方達だけじゃ心配だもの」
「よっしや!そんじゃ行くか!」
「そんな所に今の満は連れて行けないよ。私は残る」
「すまぬな七都。満を頼んだぞ」
「任せなさいって」
「お兄ちゃん。皆んな、気をつけてね」
【妖精の森】
〈森に入ると薄暗く肌寒い〉
「ひゃー、寒ーーーっ。もう春なのに、どうなってんだ?」
「まだお花も咲いてないわね」
「霧で遠くが見えんな、気をつけて進むのだぞ」
「おっち、痛ててて」
〈団が何かにつまずいて転ぶ〉
「何だこりゃ?木の根っこか?ゴホッ」
「それは毒よ」
「この森に毒を持った植物なんて有ったか?」
「有るとしたら、毒キノコぐらいのはず…でも、これはおかしいわ」
「ゲホッ、ゲホッ」
「もっと先へ行ってみましょう」
「って、おい、餡先生。俺の治療とかしてくれないのかよ?」
「あん、まあ大丈夫よ。行きましょう」
「大丈夫って」
〈森の中を進む3人〉
「どこもひどい有様だな」
「ゲホッ、何だ?この臭いは?」
「あの時と同じだ」
「ええ、そうね」
「あの時?」
「フィナンシェ姫に取り付いた物の怪が、このような臭いを」
「そう、これは薬品の臭いだわ」
「強烈な臭いだな。だけど、何だってこんな所で薬品の臭いなんだ?」
「精霊の木が心配だわ。急ぎましょう」
【精霊の木】
「ここだけは、かろうじて無事だったな」
〈大きな木の根元で何か光っている。その光は今にも消え入りそうだ。光に近づきひざをつく光の神〉
「どうしたと言うのだ、この有様は?」
「貴方は…光の…神様…ですね」
「うむ」
「お久し…ぶり…です」
「久しいな」
「何か居るのか?」
「精霊よ」
「え?本当に居たのか?何で俺だけ見えないんだよ!って餡先生が見えるのはわかるけどよ、何で光に見えるんだ?」
「私の所で修行したからよ。ね、光君」
〈餡は軽く光にウィンクする〉
「あ、ああ、まあそんなところだ」
「死んでるのか?」
「肉体を持たないから、死ぬっていうのはちょっと違うけど…だいぶ弱ってるわね」
「助かりそうか?」
「どうかしら?」
「死なねえなら、どうなるんだ?」
「消滅する」
「それじゃあ死ぬのと変わらねえじゃねえか。何とかならねえのかよ?」
「何とかしましょう」
〈餡と光の神二人でヒーリングを始める。しばらく続けると弱々しかった精霊の光が元気を取り戻して行く〉
「人間達が来て、森の生き物を捕まえたのです。動物も、虫達も、鳥も捕まりました」
「森の生き物を捕まえてどうするつもりなのだろうか?」
「「細胞を採取する」と言っていました。植物からも」
「何だか嫌な予感がするわね」
「そして、瓶に入った物を撒き散らして行ったのです」
「化学薬品ね」
「この木だけは何としても守らなければと思いました」
「そなたがエネルギーを送り続けたのだな?」
「はい」
「それでこんなに消耗したのね」
【猫茶屋】
「婆ちゃん、七都はどこ行ったニャ?」
「満ちゃんの家に行くって言って出て行ったよ」
「満の家か(神様も居るのニャ)」
「猫まんま、行きたいんだろ?行っといで」
「でも、七都も居ないし、婆ちゃん一人じゃ大変なのニャ」
「おや、ありがとよ。大丈夫だから行っといでよ」
「だけどニャあ」
「ほら、このお菓子持って行っておやり」
「ありがとニャ。行って来るニャ!」
〈千代子婆ちゃんのお菓子の入った包みを持って駆け出す猫魔〉
【精霊の木】
「魔法石はどうなったのか、聞いてみろよ」
「魔法石ですか?それも彼らが持ち去りました」
「何だって、なあ光」
「魔法石も持ち去ったそうだ」
「ちくしょう、許せねえな。俺が手に入れようと思ったのによ」
「こんな物が欲しいのか?」
「だ、誰だ?!」
〈振り返ると魔法石を手にした男が立って居た〉
「貴族じゃねえか」
「これは治癒の魔法石。こっちは毒の魔法石だ。どっちが欲しい?」
「毒の魔法石だって?この森の魔法石は治癒の魔法石だろ?毒の魔法石なんてどこで見つけたんだ?」
「こんな物が無くても毒ならいくらでも有るぞ。好きなだけ食らうが良い」
〈そう言うと貴族の男は化学薬品の入った瓶を投げた〉
「うわっ!何しやがる?!ゲホッ、ゲホッ」
「吸い込まないで!」
「んな事言っても、ゲホッ、ゲホッ」
「息を止めるのよ」
「無茶言うなよ」
「喋らないで」
「無駄な抵抗だな。フハハハハハ」
【満の家】
「あら猫魔ちゃん、いらっしゃい」
「あー猫魔、店番は?」
「婆ちゃんがこれ持って行けって言ったニャ」
「わあ、ありがとう」
「そっか、皆んなで食べよう」
〈家の中を見回す猫魔〉
「どうしたの?食べないの?」
「猫魔が食べないわけないじゃない」
「光はどこニャ?」
「お兄ちゃんなら団ちゃんと森へ行ったわよ」
「そうそう。精霊石を探すんだって」
「そうにゃのか…」
〈猫魔はお菓子を口に入れる〉
「餡先生も一緒よ。なんでも凄い瘴気が出てるとかで」
「それは本当にゃのか?」
「うん、そんな事言ってたよね?」
〈クルッと向きを変えて走る猫魔〉
「あ、猫魔…行っちゃった」
【精霊の木】
〈化学薬品の瓶を投げまくる貴族〉
「ゲホッ、ゲホッ、くそう…」
「早く解毒を」
「このままじゃ、解毒剤が足りなくなるわ」
「光。ちゃっちゃとやっつけちゃってくれよ」
〈剣を構える光の神〉
「(光の天使は居らぬ、このまま戦えるか?)」
「何だ?その剣は。魔法石も無い剣で私に立ち向かおうと言うのか?愚か者よの」
「(だが、戦うしかあるまい。このままでは大切な者達の命が…)フッ」
「何がおかしい?これから死んで行くと言うのに、何を笑っている?」
「(大切な者…か。いつの間にかそんな存在になっていた)」
「おかしな奴だ。まあ良い、この手で地獄へ送ってやる」
「あいにく、私は地獄には入れんよ」
「あはは、それもそうよね」
「何の事だ?」
「(地獄はきっと、他の神様が守ってるんだわ。地獄の番人?)フフフ」
「そこの女、何故笑う?ええい、どいつもこいつも!気に入らん、気に入らん!死ね!!」
「つぇーーい!!」
「私の服を切ったな。この高価な服を」
「キンキラキンなだけじゃねえか」
「黙れ!」
〈貴族は栗金団に向かって化学薬品の瓶を投げつける〉
「団!」
〈栗金団に覆いかぶさる光の神。その背中に瓶が激突して割れて飛び散る〉
「ば、馬鹿野郎!何で俺を庇うんだよ?!」
「親友…なのだろう?」
「光君?」
〈光の神の意識が遠のいて行く〉
「(ほんに、肉体という物が有ると、厄介…だ…な)」
「光!!」
「神様に何をしたにゃ?!!」
「猫まんまちゃん」
「神様って、何の事だ?」
「許さないニャ!!お前だけは!お前だけは!!!」
「あ、猫魔が…変身してるのか?!」
「お前のような奴は、天の神様が許してもこの俺が許さない」
「「ニャ」って言わないのか?」
「だから、そこは突っ込まないであげて」
「「だから」って何だよ?」
「猫魔君、相手は人間よ。殺しちゃいけないのよ」
「わかってる。行くぞ!」
「おのれ化け猫め」
「秘技雛あられ!!」
〈雛あられが舞い貴族の体に張り付き埋め尽くす〉
「うっ、ぐおっ、ぐわあーーー!!」
「やっつけちまった」
「あら、早かったのね」
「殺さなかったニャ。ありがとう餡先生」
「お礼?どうして?」
「餡先生に言われなかったら殺してたかも知れないニャ」
「自分でコントロール出来ないほどの強い力、って言ってたわね」
「けどよ、さっきの猫魔カッコ良かったぜ。でも、何で雛あられなんだ?」
「きっと安藤千代子さんのお菓子を食べたのね」
「そうなのニャ。そんな事より、光のか…光は大丈夫なにゃのか?」
「解毒剤を飲ませたから。これが最後だったの。もしこの解毒剤が無くなってたらと思うと、恐ろしいわ」
「猫魔お前さっき、光の事神様とか言ってなかったかか?」
「うえっ?!そ、それは…」
「猫まんまちゃんは、天上界から来たのよね?」
〈猫魔に軽くウィンクする餡〉
「そ、そうなのニャ」
「へえ、天上界ね。妖魔なのに魔界じゃないのか?」
「魔界は別の所に有るニャ」
「そっか、何だか良くわかんねえけどよ、良い妖魔だから天上界に住んでんだな」
「魔界の奴らが人間界に出て来たりしたら、大変な事になるニャ」
【天上界】
「ああ、忙しい、忙しい。地上の事も気になるわね。光の神…私が居なくて大丈夫かしら?」
〈ふわふわと飛んで聖域に入って行く光の天使〉
【女神の泉】
「おっ、天使が来た」
「光君、またここに来てたの?」
「ここに来りゃ満が見れるからな」
「あ、そうだ。そんな事より女神様。やはり魔界の門が開かれた形跡が有りました」
〈水面に魔界の門が映し出される〉
「やはりそうでしたか」
「考えたくはないのですが、逃げ出した者も居るかと」
「探し出して魔界に戻さなくては」
「はい、女神様」
「まさか、あの者の仕業ではないでしょうね?」
「まさか?!あいつは封印して有りますし、地獄の番人が居るのですから心配無いと思いますけど…」
【精霊の木】
「あの貴族どっかで見た気がするんだよな…」
「確か、ザッハトルテ公爵家の肖像画に居たんじゃないかしら?」
「公爵家の奴か…あいつまだ死んでねえんだろ?」
「雛あられが消えないうちに、どっかに捨てて来るニャ」
「二度と来れないぐらい遠くに捨てて来いよ」
「何が目的なのか、聞いておけば良かったわ」
「ああ、魔法石取っとけば良かったぜ」
「私はこれからこの死の森を蘇らせます。そしたらまた魔法石も出来るでしょう」
「そうね、でも、無茶してエネルギーを使い果たしたりしないでよ」
「わかっています」
「また妖精と話してんのか?なあ、そろそろ帰ろうぜ」
【魔界の門近く】
〈暗闇でいくつもの目が不気味に光っている〉
0
あなたにおすすめの小説
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!
クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。
ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。
しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。
ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。
そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。
国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。
樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【土壌改良】で死の荒野がSランク農園に!食べただけでレベルアップする野菜で、世界最強ギルド設立
黒崎隼人
ファンタジー
「え? これ、ただのトマトですよ?」
「いいえ、それは食べただけで魔力が全回復する『神の果実』です!」
ブラック企業で働き詰めだった青年は、異世界の名門貴族の三男・ノアとして転生する。
しかし、授かったスキルは【土壌改良】という地味なもの。
「攻撃魔法も使えない役立たず」と罵られ、魔物すら寄り付かない死の荒野へ追放されてしまう。
だが、彼らは知らなかった。
ノアのスキルは、現代の農業知識と合わせることで、荒れ果てた土地を「Sランク食材」が溢れる楽園に変えるチート能力だったことを!
伝説の魔獣(もふもふ)をキュウリ一本で手懐け、行き倒れた天才エルフを極上スープで救い出し、気づけば荒野には巨大な「農業ギルド」が誕生していた。
これは、本人がただ美味しい野菜を作ってのんびり暮らしたいだけなのに、周囲からは「世界を救う大賢者」と崇められてしまう、無自覚・最強の農業ファンタジー!
《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。
ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」
その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる