『ショパンへのオマージュ』“愛する姉上様”

大輝

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第14章 学内コンクールヴァイオリン部門

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【オルフェウス学院 星の教室】

今日から学内コンクールが始まっている。

朝10時から、夜9時まで第一次予選が行われるんだ。

コンクールは、無料で誰でも聞ける。

僕は、普通科で授業が有るので、休み時間と放課後しか聞きに行けないんだけどね。

涼太、頑張ってくれよ。

昼休みになった。

僕と健人は、急いでランチを済ませて、小ホールへと走った。

【小ホール】

「涼太は?」

「今弾いてる」

「間に合った」

課題曲のバッハの無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番だ。

高等部1年から3年の約200人の中から、第二次予選に進めるのは、半分ぐらいかな?

午後の授業が始まる。

教室に戻らないと。

【エントランス】

「涼太残るかな?」

「去年は、セミファイナルまでだった」

「1年でそれって、結構凄くない?」

「そうだな、1年で残った人は少なかったよ」

そして、2日目…

僕と健人、は放課後小ホールに向かった。

【小ホール】

涼太の演奏は昨日だったけれど、他の人達の演奏も気になる。

1年生でも素晴らしい演奏をする人も居るし、3年生はさすが慣れた感じだ。

2日間で、第一次予選が終わった。

「結果を聞くまで帰らないぞ、腹減ったけどな」

「結果発表出たよ」

「涼太は?」

「第一次通過」

「よっしゃ!」

「良し!」


そして、第二次予選が始まった。

残れたのは、97人だ。

ここからは、観客がもう少し聞きたいと思った演奏者に投票出来る。

但し、オルフェウスの生徒や関係者は投票出来ない。

第二次予選では、指定された曲の中から1曲選んで演奏するんだけど、涼太が選んだ曲は、フランクのヴァイオリンソナタだ。

「晴香の伴奏だぞ、頑張れよ」

「大丈夫だよ。あんなに練習したんだから」

そうだ、僕達が遊んでいる間も、2人はずっと練習してたんだ。

「おい、なんだか凄い拍手だぞ」

「うん」

97人のうち、どれだけ残れるんだろう?

40人ぐらいだろうか?

第二次予選終了だ。

「涼太は、どうだ?残れたのか?」

「残ってる」

「おお!」

「やったな」

晴香のピアノも良かったし、セミファイナルが楽しみだ。

【城咲家のキッチン】

〈フレデリク、ニコロ、アマデウスがご飯を食べている〉

僕もお腹空いたな。

コンクールが始まってから、いい加減な物しか食べてないからな…

クロワッサンが有った。

僕は、パンはあまり好きではないけれど、パイ生地のものは好きだな。

「コラコラ、アマデウス。それは、ニコ君お兄ちゃんのご飯だろ…そっちは、フーちゃんお兄ちゃんのだよ」

アマデウスが来てから、悪ガキのニコロが良い子に見える。

フレデリクも、1人(?)の頃はヤンチャだったけど、お兄ちゃんになって良い子になった。


【オルフェウス音楽院大ホール】

セミファイナルが始まっている。

ここからは、大ホールで行われる。

残れたのは、38人。

その中から、ファイナルに進めるのは、10人ぐらいだ。

ここまで来ると、どの人の演奏も、もう少し聞いてみたくなる。

自由曲。

涼太が演奏するのは、ベートーヴェンのヴァイオリンソナタ第6番。

「次、涼太の番だ。ベートーヴェンだよな。俺この曲好きだ」

「前は、クラシック全然興味なかったのにな」

「今は、城咲先生のCD持ってる」

演奏が始まった。

晴香のピアノ…随分良くなってきたな。

あ、姉上が居る。

晴香が心配で聞きに来たんだな。

こっちに来るなよ。

学校で一緒っていうのは、なんか嫌だよな…

「城咲先生ニコニコして聞いてるぞ」

健人が小声でそう言った。

涼太の演奏が終わった。

「星、俺、感動した」

「フッ」

セミファイナルが終わった。

3年生の演奏も良かったな。

「おい、涼太残ってるぞ、10人の中に入ってる」

「良し!」

今年は、本選に進めた。

涼太のコンチェルトが聞けるな。


【城咲家のキッチン】

〈料理を作る星〉

今日の朝食は、薄焼き卵のトーストと、サラダにミルクティー。

「ああ、美味しそう。ゆで卵のより、こっちの方が好きだわ~」

2人でテーブルに運んで食べた。

【オルフェウス音楽院大ホール】

いよいよファイナルだ。

ファイナルは、指定されたコンチェルトの中から選んで演奏する。

チャイコフスキー、ブラームス、メンデルスゾーンのコンチェルトの中から涼太が選んだのは、メンデルスゾーンのヴァイオリンコンチェルトだ。

オケの中に桜井さんが居る。

そう言えば、彼女の演奏を聞くのは初めてだな。

3年生の弾いたチャイコフスキーも良かったし、1年生のブラームスも良かった。

涼太の演奏が始まる。

姉上が来て僕の隣りに座った。

何で隣りが空いてるかな…

涼太の演奏が始まった。

コンチェルトを聞くのは、初めてだな。

僕は音楽家じゃないから、人の演奏を批評したりするのは、あまり好きじゃないんだ。

だから、良い物は良い。

好きな物は好きと言うだけ。

涼太の演奏が終わった。

「良かったよな、星。な?」

「うん、良かった」

ヴァイオリンコンクールが終わった。

涼太は、3位入賞だ。

1位と2位は、3年生だった。

明日からチェロ部門が始まる。

そして、10月1日からピアノ部門だ。

今度は、晴香の番だな。

涼太が言っていた。

姉上に習うようになってから、音が綺麗になってきたと。


【城咲家のリビング】

「星君。フルーツタルト焼いたの~食べましょう」

ああ、良い匂いがする。

「はーい」

キッチンに取りに行っくと…

【キッチン】

「あらあら、アッ君。これは、あなたは食べられないわよ」

バターの匂いに、猫達が皆んな集まって来ている。

「あ、アマデウスが嘗めてる」

「ダメよ~」

「僕が紅茶入れるから…ダージリンで良い?」

「その前にアッ君お願~い」

「コラコラ、アマデウス」

僕は、アマデウスを肩に乗せてお湯を沸かした。

紅茶は、空気をたっぷり含んだ水で沸かさないと。

ポットのお湯じゃ、ダメダメ。

【リビング】

「このタルト、意外と美味しい」

「「意外と」とは何よ~」

姉上は、少し笑いながらそう言った。

「美味しい」

「フフフ」

【レッスン室】

フランクのヴァイオリンソナタを、チェロで弾いてみる。

姉上のピアノが入って来る。

フランクのソナタ~誰にでも弾ける~チェロで~もフルートで~もな~んで~も弾~ける~♪

フランクが終わると、姉上のショパンだ。

スケルツォ第2番。

姉上のショパンも、モーツァルトも、ドビュッシーも、みんなみんな大好きだ~。


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