『アルマンドの騎士1』“魂の伴侶、それは魂の片割れツインレイ”

大輝

文字の大きさ
5 / 26

第5章 実りの秋

しおりを挟む
【コリアンダーのサロン】

「へー、満月の夜にねー、ロマンチックな話しよねー」

満月の前の3日間は、激しい胸の痛みと共に、魂の共鳴のようなものを感じた、とも書いて有った。

私もそうだった…あの胸の痛みは、そういう事だったのか。

「はい、ヒーリングするわよ。鎧を脱いで」

〈鎧を脱いでベッドに横になるアッサム〉

「楽にしてね」

ここでヒーリングを受けると、気持ち良くて、いつも眠ってしまう。

私は、また夢を見ていた。

それは、起きているような、眠っているような状態で見る夢だ。

【天上界】

〈手を繋いで、雲の上をフワフワ浮くように飛ぶ2人〉

「もう、離れて居るのは嫌」

「ずっと一緒に居ようね」

「ずっと一緒に居たいわ」

【コリアンダーのサロン】

「終わったわよ、アッサム起きて」

「また、あの夢を見ていた」

「中間世の夢?」

「ああ」

魂の伴侶…それは、1つの魂が2つに割れたもの…

魂の片割れ、ツインレイと言う魂。

コリアンダーは、そう言うけれど…

「一度も会った事が無くて、離れているのにお互いのエネルギーを感じているなんて、きっと、シスター・ローズマリーが貴方のツインレイよ」

「え?」

ローズマリーが、宇宙にたった1人の魂伴侶だと言うのか?

「もう一度、師匠の所で良く調べて来るわね」

手紙のやり取りをするようになってから、彼女に惹かれているのは事実だけれど…

〈テーブルで、神託のカードを切るコリアンダー〉

「今日は、2枚引いてみて。何も考えないで直感で引くのよ」

私は、裏向けになっている神託のカードから、コリアンダーの言う通り、直感で2枚引いた。

〈コリアンダーは、カードの表を向けた〉

「永遠のカード。こっちは」

〈もう一枚の表を向けると、アッサムに差し出す〉

また、真実の愛のカードだ…

「真実の愛と永遠のカード。この組み合わせを引くとはね…」

呆れたように、コリアンダーは言った。

「こういうの引くようになったのって、中間世の夢を見るようになってからね」


〈この国で騎士になるには、7才でペイジになり14才頃にエスクワイアになり、20才で正騎士になるのが普通であった。

しかし、近年では、準貴族の身分を持つナイトの家柄に生まれた者は、エスクワイヤになり、18才になると、騎士学校に入って勉強するようになった。

アッサムもまた、騎士学校にて学んだ1人である〉

修道女の修練期は2年。

私が見習い騎士だった期間と1年重なっている。

騎士学校が有る西の村ルールに、修練院が有ったな…

修練期は、外に出る事は許されず、外部との接触は断たれているけれど、近くに居たのだな…

私は、まだ見ぬ彼女に、どんどん惹かれて行った。

【防具屋】

「スケイルメイル出来てますよ」

この前山で倒した、赤いドラゴンの鱗で作った鎧だ。

「どうです?」

「ああ、良く出来ている」

〈入り口から、コリアンダーが顔を出す〉

「あ、ここに居た。早く早くう」

「そんなに慌てて、いったいどうしたと言うのだ」

私は、コリアンダーに急かされギルドに戻った。

【ギルド・レ・シルフィード】

「あ、マスター。早く早く」

???

皆んなで何かを囲んでいる。

「もうすぐですよ」

「頑張れ」

ワイバーンの卵だ。

ヒビが入っている。

少しずつ中から、殻を破って出て来ようとしているようだ。

「頭が見えた」

「手伝ってあげちゃ、いけないの?」

「ダメダメ。自分で頑張らないと」

「タイムったら、意外と厳しいのね」

「自分で殻を破って出て来れないようじゃ、生き残れないからね」

「うわーっ、出て来た」

「カワイーイ」


ワイバーンには緑と赤が居るが、生まれたのは赤いワイバーンだ。

「タイムさん。名前は決めて有るんですか?」

「マスターの馬みたいに、女神の名前にしようかな?」

「こいつ雌か?じゃあ、卵産むな。沢山産んだら食っても良いよな」

バジルはまた卵を食べる事を考えている。

「こんなに小さいのに、雄か雌かわかるの?」

「もう少ししたら、わかるよ」

「あ、立ち上がった」

「キャーかわいい」

〈ヨチヨチ歩きでタイムに近づくワイバーンの子をタイムが抱く〉

「わー、タイムの事親だと思ってるのかしらね」

数日後、私は、騎士団に顔を出した。

【騎士団】

あの北の国境に遠征に行っていた騎士達も帰って来ていた。

私は、ルバーブと一緒に、新聞記者のチコリから取材を受けている。

「ルバーブさんがドラゴンと戦ったんですか?」

「いやいや、私は援護しただけで、戦ったのはアッサムだよ」

「いや、ルバーブが居なければ倒せなかった」

国境での夜襲の事を新聞に載せると、国民の不安をあおるので、話さない方が良いだろう。

「もうすぐ収穫祭ですね」

「ああ、我々騎士団は警備にあたる」

それからギルドの話しなどをすると、チコリはギルドまでついて来た。

【ギルド・レ・シルフィード】

「早速ですが、ワイバーンの子を見せて頂けますかね」

「良いよ。少し大きくなってきたからね」

そう言うと、タイムはワイバーンの子を抱いて来た。

「ほほう、ワイバーンて、子供の時はこんなに可愛い姿をしてるんですね、ハハア」

ワイバーンの子を見ていると、皆んなつい笑顔になる。

「それで、名前は何と言うんですか?」

「女の子だから、ルナにしたんだぁ」

〈ミントが来る〉

「皆さん。今日の依頼は葡萄の収穫の手伝いですよー」

「ルナはまだ目が離せないから、僕は留守番」

「私とコリアンダーさんは収穫のお手伝いで、マスターとバジルは警護をお願いします」

葡萄畑のそばは魔物が出るという事で、警護が必要だそうだが…


【南門】

「ギルド・レ・シルフィードのメンバーです。通して下さい」

今日の指揮官は、ミントのようだ。

行き先も、まだ聞いていなかった。

「どうぞお通り下さい」

「開門!」

【丘の上の葡萄畑】

〈葡萄を収穫するシスターの姿〉

ここは…

「ここは、修道院の葡萄畑です。男子禁制ですからね、マスター達は畑の周りの魔物を退治してて下さい」

「アッサム。ここに居るんでしょう?彼女」

〈1人の修道女が近づいて来る〉

「お手伝いありがとうございます」

「いえいえ」

「騎士様は、私達をモンスターからお守り下さるのですね」

「俺も居るぜ」

「シスターは、男性とお喋りしちゃいけないんでしょ?」

「それは、この国では修練期までです。正式にシスターになれば、お話しぐらいしましすよ。私達だって」

「そうなんですかー」

〈少し離れた高台に、修道院が見える。修道院を見ているアッサム〉

「申し遅れました。私、フェンネルと申します。今日は宜しくお願いしますね」

〈葡萄畑では、シスター達と一緒に、コリアンダーとミントが葡萄を収穫している。畑の外では、アッサムとバジルが魔物と戦っている〉

ここに居るはずだ。

〈修道院を見るアッサム〉

【修道院】

〈修道院の中を掃除している1人のシスターが居る〉

(あの方のエネルギーを、強く感じる…今日、来ているはずだわ)

【葡萄畑】

「ねえねえ、シスター・フェンネル。ここの修道院に、ローズマリーさん、て言うシスター居る?」

「ええ、居ますよ」

「今日は、どうしてるの?」

「今日は、ローズマリーは、修道院の中で別の仕事をしてるんです」

「そうなんだ…」

〈修道院を見るコリアンダー〉

(残念だわ…)

「収穫終わりました。マスター達。運ぶの手伝って下さーい」

私達は、収穫した葡萄を修道院まで運んだ。


【修道院】

「これで全部だな。あ、葡萄が落ちてる」

〈ふさから離れた葡萄を口に入れるバジル〉

「もう、バジルったら」

荷を下ろして帰ろうとした時、向こうの方を、1人の修道女が通りかかった。

私の心臓は、激しく打った。

彼女がこちらを見た時、一瞬時が止まったようになった。

姿を見たのは初めてだが、私にはわかった。

彼女がローズマリーだ。

そこに居る。

確かにそこに居るのに…

言葉を交わす事も無く、彼女は行ってしまった。

なんとももどかしかった。

しかし、私の魂はこう言った。

「やっと会えたね」

魂は、3000年ぶりの再会を喜んでいるようだった。

やはり彼女が私の魂の伴侶、ツインレイなのだと、この時確信した。

【修道院の一室】

〈忙しく仕事をするローズマリー〉

(涙が…溢れて来る…アッサム。貴方なのね)

(やっと…会えた…必ず見つけると約束してくれたのは貴方よ。それなのに、見つけたのは私)

(星のカーニバルの日、新聞で貴方の肖像画を見た時、私の魂の声が言ったの「この人よ」って)

(私ね、時々フワフワと雲の上で浮かんでいた時の事を思い出すのよ)

(貴方と手を繋いで浮かんでいるの)

(アッサム…泣いているのね)

(貴方のエネルギーが泣いているわ)

【アッサムの屋敷】

涙が…勝手に溢れて来る…

泣きたくないのに、勝手に…

魂が泣いている。

何故今迄会えなかったのだろうと…

何故3000年もの長い間、私達は巡り会う事が出来なかったのだろうと、魂が泣く。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

なほ
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模るな子。新入社員として入った会社でるなを待ち受ける運命とは....。

【完結】子爵令嬢の秘密

りまり
恋愛
私は記憶があるまま転生しました。 転生先は子爵令嬢です。 魔力もそこそこありますので記憶をもとに頑張りたいです。

処理中です...