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夢か現実か・2

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ユイミの返信を待っていると、夜十一時を過ぎた頃、旦那が帰ってきた。
旦那が、お風呂に入っている間に、作った料理を温める。

食べ終わった後の食器類は、大きな音を立てないように注意しながら洗う。
子供達が起きたら困るからだ。

ようやく寝床についたのは、夜中の一時を回る頃。
旦那は布団に入るなり、すぐに寝息を立てて眠ってしまった。

相当疲れていたんだろうな…。

寝る前に、ユイミからの返信を確認すると…



私「え…?」



ユイミ«ちゃんと選択肢あるよー。寝ぼけてたんじゃないの?

私は、コーヒーを零すって言うの選択したけどね。

あ。そういえば最近、疲れてるって言ってたよね。もしかして疲れてるんじゃない?
今日は、早く寝なよー。おやすみ☆»



寝ぼけてた?…そう、なのかな?

確かに旦那は残業で帰りが遅くて、最近はずっと寝るのもこれくらいの時間で
眠かったけど…

それとも、やっぱり疲れてる…のかなぁ?



私「あっ!」



Bコネを閉じようとすると間違えて、あの恋愛アプリのアイコンを押してしまった!

…!

!?



私「…ん?」

藤堂「あ?」

私「わーーーーーーーーーーーーーーっ!!」



あのハイパーイケメンが、コーヒーカップを持って目の前に立っていた!



藤堂「何だよ?急に叫んでんじゃねぇ」



こ、こ、これは、いったい…



私「あのぉ、私は女子高生でしょうか?」

藤堂「は?それ以外、なにがあんだよ。」



眉間にシワをよせながら、藤堂先生が私を睨む。



私「ですよねぇ」



多分これは、アプリの中に入ったかも知れないって言うやつ?

ま、まさかね…。
いや、でもたった今、切り替わったって言うか、アプリ触った瞬間に…

やっぱり、ユイミが言ってるような、ただの恋愛アプリゲームではないみたい。
現実世界でもないっぽいし、二次元でもないし…

そうだ!リアル体験出来るから“二・五次元世界!”コレが一番しっくり来るかも。

…これって、私だけ…?私だけが、この二・五次元世界に来れたとかなのかな?

だとしたら、本当に凄い事だけど、このアプリ大丈夫なのかな…?変なのじゃなきゃいいけど。

でも、昔“ ゲームとか漫画の世界に入りたい”と一度は思った事があったっけ。
それが、まさか現実になるなんて…と言うか起こりうるなんて思ってもみなかった。

これが本当なら二度と戻れない高校生活を、もう一度楽しめるって事で
家事や子育てから解放されて、羽を伸ばせるって事っ!

そっか!

そうだよねっ!

もう余計な事、考えるの辞めよ!
私の頭じゃ、いくら考えても分からないし、何か変なアプリだったら
アンストすればいいんだから。

それに、例えゲームだったとしても、ハイパーイケメンと恋愛が出来るチャンスだしっ!

この世界にいる時は、何もかも忘れて…



私「楽しんでやる!ぬふふふ…」

藤堂「おい、大丈夫か?そ、そんなにコーヒー不味かったのか…」



はっ!
やばい。声に出てしまった。慌てて口を両手で押さえた!



私「いえ、あの…コーヒーオカワリ!」

藤堂「はぁ…やっぱりカフェインが、合わなかったか…」



アラフォーと言うこの歳で、また高校生活をおくれると言う事と
ハイパーイケメンと恋愛が出来ると言う設定の非現実的な状況に
私は、今はまでにないくらい心がウキウキになっていた。



私「藤堂先生!私、女子高生頑張るんで先生も担任頑張りましょう!」

藤堂「!……」



勢いで言い放つ私を見て、藤堂先生は無言のまま私を見ていた。

もしかして、呆れさせてしまったかな…?



藤堂「アンタ、ホント変なヤツだな。」



変なヤツ…確かに今までの行動、思い返せば変なヤツって言われても、おかしくはない。
だけど、藤堂先生こそ変なヤツだと思う。
コーヒーの事もそうだけど、爽やかイケメンを演じてるのだって十分変なヤツだよ。

何か理由があるんだろうけど。理由、聞いてみてもいいかな?



私「あの。初対面で聞くのもアレなんですけど、藤堂先生は、どうして猫被っ…
みんなの前では、言葉使いが違うんでしょうか?」

藤堂「あ?」

私「あ、いや。私には随分と言葉が乱暴だな、と。」

藤堂「朝の時点でバレてんのに、わざわざ使うことねぇだろ」



あ、そか。確かに。
でも、どうしてだろう?



藤堂「アンタの気にする事じゃねぇよ。ほら、コーヒー飲んだなら帰れ。
俺はまだ仕事あるから、構ってる暇ねぇの!」

私「えぇー?嫌ですよ。」

藤堂「いいから、帰れ」



早く仲良くなって、早くこのストーリーの展開、知りたいのに。

もし、ここで選択肢があるとしたら“素直に帰る”とか“もう少しいる”とか
それ系なんだろうな、きっと。

でも、私の場合は実際にゲーム内に入り込んでるから選択肢はない訳で…
どうしよう?素直に帰った方が、好感度上がるのかな?



藤堂「か、え、れ!」

私「はーい。」



仕方ない、帰るか。怒らせたりしたら、ハッピーエンド見られなくなるかもだし。

あれ?そう言えば、私はこのゲームの中では、どこに帰ればいいんだろう?
自分の家、どこなの?



藤堂「帰れっつったの聞こえな…」

私「あの、藤堂先生。」

藤堂「なんだよ?」

私「私の家は、どこでしょう?」

藤堂「はぁ?…アンタ、大丈夫か?」



げっ!今、思い切り変な事、言ってしまったよね。




私「な、なんでもないです!多分帰れます!
この頭の中にイップットされてるはずなのでっ!」

『バタン』

藤堂「…。」



きっと、呆れていたと思われる藤堂先生を、そのまま放置して化学室を出た。

そして気が付けば
多分、自分の家であろう、自分の部屋(多分)の中にいた。

無意識に電車に乗って、無意識に歩いて辿り着いてた。

うん。やっぱり私の考えは間違ってなかった、と思う。このヒロインの作られた設定は
私(?)の頭の中にイップットされていたんだ!

だからきっと、こう言う細かい設定と言うのは、あまり気にしなくて良さそう。

ベッドの上に横になると、カレンダーが目に入った。
数字に赤のペンで丸が付いている。

ヒロインよ…コレは、何?
たった今“ 細かい設定は気にしなくて良さそう”なんて思ったばっかりなのに、どういう事だろう?
まったく、頭の中から出てこないんだけど。

うーん…。今は、思い出さなくて良いやつとか、そのうち、思い出すやつとか?

だけど、赤で印が付いているのに忘れるものなんだろうか?

しかし、このカレンダーの赤の印が、実はとんでもなく重要な物だった事は
このゲームの中での数日後に明らかとなるのだった…。









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