東京ダンジョン物語

さきがけ

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第4話:無限の可能性

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地上に戻ってきた時、二人とも疲労困憊で立っているのがやっとだった。

転送ゲートから出て、受付で探索者証を提示する。職員は事務的に端末を操作し、二人の帰還を記録した。服は所々破れ、顔も土埃で汚れていたが、幸い大きな怪我はない。

外に出ると、午後の日差しが眩しかった。時計を見ると、2時を少し過ぎている。ダンジョンに入ってから、まだ5時間ほどしか経っていないのが信じられなかった。

「とりあえず、一度家に戻ろう」

「そうですね……」

二人はゆっくりと歩き始めた。普段なら15分の道のりが、今日はやけに長く感じる。

途中、自動販売機でスポーツドリンクを買い、二人で分け合った。冷たい液体が喉を通る感覚が、生きていることを実感させてくれる。

「悠真さん」

「ん?」

「さっきのミノタウロス……本当に危なかったですね」

「ああ。まさか10階層であんな強敵に遭遇するとは思わなかった」

「剣が折れた時は、もうダメかと思いました」

「俺もさすがに焦ったよ。でも、何とか切り抜けられて良かった」

美琴は小さく頷いた。あの瞬間、悠真が咄嗟に折れた剣を投げつけなければ、二人とも無事では済まなかっただろう。

 ◇ ◇ ◇

夕方5時。悠真の部屋で、二人は改めてテーブルを挟んで座っていた。

シャワーを浴びて着替えた後、美琴が用意してくれた夕食を前にしている。今日は親子丼だった。疲れた体に、温かい食事が染み渡る。

「いやー、今日は本当に大変だったな」

「本当に……でも、無事で良かったです」

「美琴こそ、怖い思いをさせてすまなかった」

「いえ、悠真さんが守ってくれましたから」

窓の外では、夕焼けが街を赤く染めていた。いつもと変わらない光景なのに、今日はやけく尊く感じる。

「それにしても、あのスキルストーン……一体何だったんでしょうね」

「さあ……でも、相当レアなのは間違いない。七色に輝くスキルストーンなんて、聞いたことがない」

「明日、一緒に色々試してみましょうか」

「そうだな。あと、武器も買わないと」

悠真は腰のベルトを見つめる。いつもそこにあった剣の鞘が、今は空っぽだった。3年間共に戦ってきた相棒を失ったのは、正直ショックだった。

「新しい剣、高いんですよね……」

「まあ、何とかなるさ。今日の素材を売れば、少しは足しになるだろう」

「でも、良い剣となると30万以上しますよね」

「うーん、確かにな。でも、中古品とか、型落ちのものを探せば、もう少し安く手に入るかもしれない」

悠真は楽観的に答えたが、内心では不安もあった。今日の収穫は悪くなかったとはいえ、良質な武器を買うには程遠い。

「私も明日、一緒に探すの手伝います」

「ありがとう。美琴は目利きがいいから助かるよ」

美琴は少し照れたように微笑んだ。

 ◇ ◇ ◇

「それより、あのスキルの方が気になりますね」

話題を変えるように、美琴が言った。

「無限複製……複製って名前がつくスキル自体、聞いたことがないです」

「確かに。今まで発見されたスキルの中に、複製系なんてあったかな」

「少なくとも、協会の公開リストには載ってないはずです。もしかして、未発見のスキルかもしれませんね」

「『無限』がつくのも気になるよな。何が無限なんだろう」

二人で推測を重ねるが、やはり実際に使ってみないことには分からない。

食事を続けながら、二人は今後の計画を話し合った。

「明日は日曜だけど、どうする?」

「そうですね……まずはスキルの検証をした方がいいんじゃないですか?」

「確かに。武器を買うにしても、新しいスキルがどんなものか分かってからの方がいいかもしれない」

「そうですよね。もしかしたら、戦闘スタイルが変わるかもしれませんし」

悠真は頷いた。美琴の言う通り、スキルの効果次第では、選ぶべき武器も変わってくる可能性がある。

「じゃあ、明日はここで色々試してみるか。部屋の中でできることは限られるけど」

「私もお手伝いします。どんなスキルなのか、すごく興味がありますし」

「助かるよ。じゃあ、明日も今日と同じくらいの時間でいいかな?」

「はい、8時頃にお邪魔しますね。朝から色々試してみましょう」

「ありがとう、助かるよ」

悠真はそう言って微笑んだ。

「とりあえず、明日の検証で分かることもあるだろう」

「はい。どんなスキルなのか、本当に楽しみです」

 ◇ ◇ ◇

夜も更けてきた頃、美琴が腰を上げた。

「そろそろ戻りますね」

「ああ、今日はありがとう。助かったよ」

「いえいえ。じゃあ、また明日」

「おやすみ」

美琴を見送った後、悠真は一人になった部屋で、今日の出来事を振り返った。

隠し部屋の発見。七色のスキルストーン。ミノタウロスとの遭遇。そして、新たに手に入れた「無限複製」というスキル。

ポケットから、例のスキルストーンを取り出してみる。いや、正確にはもうスキルストーンではない。スキルを吸収した後は、ただの透明な水晶玉になっていた。

「無限複製、か……」

何となく、このスキルには大きな可能性が秘められている気がした。うまく使いこなせれば、今まで以上に強くなれるかもしれない。

窓の外を見ると、夜空に星が瞬いていた。


――――― あとがき ―――――
第5話以降は、毎日20:00更新となります。引き続き読んで頂けると嬉しいです。
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