東京ダンジョン物語

さきがけ

文字の大きさ
14 / 37

第14話:伝説の始まりは、小さな豆から

しおりを挟む
一方、美琴も上野の買取所に到着していた。

上野の買取所は、他の店舗とは違い、近代的な造りだった。

ガラス張りの外観で、中の様子がよく見える。最新の設備が導入されているらしく、鑑定装置も他店より大きく立派だ。

美琴は深呼吸をしてから、店内に入った。

「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか」

若い女性係員が、笑顔で迎えてくれた。美琴は悠真から預かった4個目の魔石を差し出す。

「Bランク魔石の買取をお願いします」

「承知いたしました。少々お待ちください」

鑑定は他店よりも詳細だった。装置が魔石を様々な角度から分析し、データが次々と表示されていく。

「品質Aランクですね。大変良い魔石です」

係員が満面の笑みを浮かべた。

「106万円でお買取りさせていただきます」

「ありがとうございます」

美琴は安堵の息をついた。これで4個すべての売却が完了した。

正午少し前、二人は約束通り上野駅構内のカフェで合流した。

「お疲れ様でした」

美琴が微笑みながら言う。

「美琴こそ。無事に終わってよかった」

悠真がスマートフォンの電卓アプリを開いて、合計金額を計算する。

「105万、103万、108万、106万……合計422万円」

「予想以上でしたね」

「ああ。これで種シリーズが余裕を持って買える」

二人はサンドイッチとコーヒーを注文し、軽い昼食を取った。緊張から解放されたせいか、いつもより美味しく感じる。

「午後は秋葉原ですね」

「協会本店か。行ったことある?」

「一度だけ。すごく大きな建物でした」

 ◇ ◇ ◇

午後1時、電車で秋葉原へ移動した。

駅を出ると、電気街特有の喧騒が二人を包む。看板やネオンサインが所狭しと並び、様々な店舗が軒を連ねている。アニメグッズの店、パソコンショップ、メイドカフェ。観光客も多く、外国語が飛び交っていた。

「協会本店はこっちですね」

美琴がスマートフォンの地図アプリを確認しながら先導する。

大通りから一本入った場所に、探索者協会の本店がそびえ立っていた。10階建ての近代的なビルで、ガラス張りの外壁が太陽光を反射している。

「確かに大きいな」

「本店ですからね。全国の探索者協会の中枢です」

自動ドアをくぐると、広々としたロビーに出た。床はきれいに清掃され、天井には明るい照明が並んでいる。正面には大きな案内板があり、各階の施設が記されていた。

1階:総合案内、カフェテリア
2階:一般装備品売り場
3階:武器・防具売り場
4階:消耗品売り場
5階:レアアイテム売り場
6階~8階:協会事務所
9階:VIPラウンジ
10階:展望レストラン

「レアアイテム売り場は5階か」

二人はエレベーターホールへと向かった。3基あるエレベーターのうち、一番早く来たものに乗り込む。

中には、明らかに上級探索者と思われる屈強な男たちも乗っていた。全身を高級な装備で固め、腰には見るからに高価そうな剣を下げている。

「……あれ、ミスリル製かな」

一人が小声で呟いた。彼らの会話から、かなりの実力者であることが窺える。

 ◇ ◇ ◇

5階に到着すると、フロア全体がレアアイテム売り場になっていた。

壁際にはガラスケースがずらりと並び、中には様々な貴重品が展示されている。魔法の指輪、特殊な護符、レアな素材。どれも一般の探索者には手が届かない高額商品ばかりだ。

「すごい品揃えですね」

美琴が目を輝かせながら見回す。

「いらっしゃいませ。何をお探しですか?」

若い女性係員が、にこやかに近づいてきた。紺色の制服に身を包み、胸には「主任」のバッジが付いている。

「種シリーズを購入したいんですが」

「種シリーズですね。こちらへどうぞ」

案内された先には、小さなショーケースがあった。照明に照らされて、6種類の種が美しく展示されている。それぞれが透明な容器に入れられ、プレートには効能と価格が記されていた。

係員が一つずつ説明を始める。

「『力の種』の価格は55万円です」

指先で容器を示しながら、続ける。

「『知力の種』は52万円、『守りの種』は53万円、『素早さの種』は51万円、『体力の種』は54万円、『魔力の種』は50万円、『運の種』は55万円となっております」

悠真は頷きながら聞いていた。

「各1個ずつ購入します」

「承知いたしました。合計で370万円になります」

悠真は現金で支払った。大金のやり取りだが、この世界では珍しくない。上級探索者なら、一度の探索でこれ以上の収入を得ることもある。

係員は白い手袋をはめ、慎重に種を一つずつ取り出した。それぞれを専用の小箱に入れ、緩衝材で保護する。

「大切にお使いください」

「ありがとうございます」

小箱を受け取り、二人は店を後にした。

 ◇ ◇ ◇

エレベーターで1階に降りる間、美琴が小箱の一つを手に取った。

「本当に大豆みたいですね。色も形も、質感まで」

「確かに。知らない人が見たら、ただの豆だと思うだろうな」

1階のカフェテリアで、二人は一息ついた。アイスコーヒーを飲みながら、今後の計画を話し合う。

「帰ったらすぐに複製作業ですね」

「ああ。それから効果を確かめよう」

「そうですね。きちんと測定して、記録を取らないと」

美琴はノートを取り出し、実験計画を書き始めた。

午後2時半、二人は電車で西新宿へと向かった。

車内は買い物客で混雑していた。大きな紙袋を抱えた家族連れ、デートを楽しむカップル、友人同士で談笑する学生たち。

美琴は隣に座ると、思案顔で口を開いた。

「見た目も味も大豆にそっくりなら、豆料理として調理できるはずです」

「なるほど、それなら食べやすいな」

「煮豆、炒り豆、豆ご飯……いろいろ作れそうです」

「まずは力の種から試してみよう」

「そうですね。効果を確認してから、他の種も使っていきましょう」

電車が揺れる中、二人は具体的な調理法について話し合った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!

ちゃりネコ
ファンタジー
ソロキャン命。そして異世界で手に入れた能力は…Awazonで買い物!? 夢の大学でキャンパスライフを送るはずだった主人公、四万十 葦拿。 しかし、運悪く世界的感染症によって殆ど大学に通えず、彼女にまでフラれて鬱屈とした日々を過ごす毎日。 うまくいかないプライベートによって押し潰されそうになっていた彼を救ったのはキャンプだった。 次第にキャンプ沼へのめり込んでいった彼は、全国のキャンプ場を制覇する程のヘビーユーザーとなり、着実に経験を積み重ねていく。 そして、知らん内に異世界にすっ飛ばされたが、どっぷりハマっていたアウトドア経験を駆使して、なんだかんだ未知のフィールドを楽しむようになっていく。 遭難をソロキャンと言い張る男、四万十 葦拿の異世界キャンプ物語。 別に要らんけど異世界なんでスマホからネットショッピングする能力をゲット。 Awazonの商品は3億5371万品目以上もあるんだって! すごいよね。 ――――――――― 以前公開していた小説のセルフリメイクです。 アルファポリス様で掲載していたのは同名のリメイク前の作品となります。 基本的には同じですが、リメイクするにあたって展開をかなり変えているので御注意を。 1話2000~3000文字で毎日更新してます。

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。 ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!? 俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。 第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。 「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」 信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。 賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。 様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する! 異世界ざわつき転生譚、ここに開幕! ※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。

職業・遊び人となったら追放されたけれど、追放先で覚醒し無双しちゃいました!

よっしぃ
ファンタジー
この物語は、通常1つの職業を選定する所を、一つ目で遊び人を選定してしまい何とか別の職業を、と思い3つとも遊び人を選定してしまったデルクが、成長して無双する話。 10歳を過ぎると皆教会へ赴き、自身の職業を選定してもらうが、デルク・コーネインはここでまさかの遊び人になってしまう。最高3つの職業を選べるが、その分成長速度が遅くなるも、2つ目を選定。 ここでも前代未聞の遊び人。止められるも3度目の正直で挑むも結果は遊び人。 同年代の連中は皆良い職業を選定してもらい、どんどん成長していく。 皆に馬鹿にされ、蔑まれ、馬鹿にされ、それでも何とかレベル上げを行うデルク。 こんな中2年ほど経って、12歳になった頃、1歳年下の11歳の1人の少女セシル・ヴァウテルスと出会う。凄い職業を得たが、成長が遅すぎると見捨てられた彼女。そんな2人がダンジョンで出会い、脱出不可能といわれているダンジョン下層からの脱出を、2人で成長していく事で不可能を可能にしていく。 そんな中2人を馬鹿にし、死地に追い込んだ同年代の連中や年上の冒険者は、中層への攻略を急ぐあまり、成長速度の遅い上位職を得たデルクの幼馴染の2人をダンジョンの大穴に突き落とし排除してしまう。 しかし奇跡的にもデルクはこの2人の命を救う事ができ、セシルを含めた4人で辛うじてダンジョンを脱出。 その後自分達をこんな所に追い込んだ連中と対峙する事になるが、ダンジョン下層で成長した4人にかなう冒険者はおらず、自らの愚かな行為に自滅してしまう。 そして、成長した遊び人の職業、実は成長すればどんな職業へもジョブチェンジできる最高の職業でした! 更に未だかつて同じ職業を3つ引いた人物がいなかったために、その結果がどうなるかわかっていなかった事もあり、その結果がとんでもない事になる。 これはのちに伝説となる4人を中心とする成長物語。 ダンジョン脱出までは辛抱の連続ですが、その後はざまぁな展開が待っています。

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

処理中です...