49 / 92
49猫耳少女ルナの気持ち
しおりを挟む
「助けを! 僕が助けを呼ばないと!」
自分に言い聞かせながら限界を超えても尚も走り続ける。
敏捷度では定評のある猫耳族だが、長距離走は種族として向いていない。
それでも通常の人族より身体能力に優る彼女は通常の3倍の速度で走っていた。
「誰か! 誰でもいいから!」
彼女の願いはある意味届いた。
誰でもいいという意味なら。
だが運命は残酷なもので、彼女が出会ったのは人族ではなく、地竜だった。
「そ、そんな!」
嗅覚に優れた猫耳族の戦士ルナの不覚。
彼女はあまりの疲労で地竜の接近に気づかなかった。
その距離10m。
普段ならその敏捷力で地竜の目と聴覚、嗅覚の届かない場所にたちどころに移動できるのに今の彼女にはもうそんな体力は残っていなかった。
地竜がルナを発見するとずるりと舌なめずりする。
食べる前に以前食べた猫耳族の味を思い出しているかのようだった。
ルナの頭にはついこの2日間に起きた事が走馬灯のように蘇った。
「ルナ、お前は女だ。まだ若い。負けた時はむごい目にあう。逃げろ! そして人族の助けを呼んで来てくれ。俺達は時間を稼ぐ!」
「そ、そんな! 僕も戦士です! 子供の頃から鍛錬して来ました! 今戦わなかったら、僕はいつ里のために働くんですか?」
ルナは自分の身に何が起きるのかを十分に理解した上で言った。
女だてらに戦士となった限りは敗北した時にどういう扱いを受けるか位の想像は出来た。
「ルナ! 良く聞け! では誰が助けを呼びに行けるんだ? お前より早く走れる者がいるか? 魔物にあったらどうする?」
「そ、それは……」
戦士長の意見は正論だった。
無駄に命を捨てるより救援を呼びに行った方が猫耳族が助かる可能性が高い。
猫耳族を取り囲んでいる盗賊と思しき一味は100人近いと見積もられている。
猫耳族の戦士は10名、戦士以外の男を加えても30名程度の戦力だ。
敗北は必須。
彼らは時間を稼ぐ事しかできない。
「頼む、ルナ! 危険なのはお前も同じだ! 猫耳族存続のため、包囲網を突破して援軍を呼んで来てくれ! 突破口は作る。もちろん3日は持ち堪えてみせる!」
「わ、わかり……ました。戦士長に従います」
妥当な判断ではある。
しかし、そううまく3日以内に援軍を呼んで来る事は不可能だろう。
戦士長の真の考えは盗賊に穢されて惨めに殺される位なら誇り高く魔物に喰われた方がマシという事だ。
だが戦士長の命令は絶対だ。
ルナは見事盗賊の包囲網を突破して丸1日走り続けた。
そして出会ったのが地竜という訳である。
「せ、せめて戦士らしく……」
そう思ったが、足に力が入らない。
もう限界だった。
このまま地竜に喰われるのか?
はんば諦めたかけた時それは起きた。
グシャ
「え?」
唐突に地竜は真っ二つになった。
そして。
「大丈夫か? 怪我はない?」
「お、お願いだ。た、助けて。みんなを。里のみんなを!」
「任せろ。俺が何とかする」
人族の男がルナに声をかけた。
『俺が何とかする』
それを聞いた途端、ルナの張り詰めた糸は切れて気を失ってしまった。
次に気がつくとすっかり疲労は回復していた。
「ぼ、僕は猫耳族の戦士ルナ。僕の村が人族に襲われてしまって。僕も必死に戦ったけど。お願いだ。助けを呼んで欲しい! その為なら何でもするよ!」
「案内してくれ。すぐに何とかする」
「ひ、一人や二人では無理だよ。僕達猫耳族の戦士も10人いたけど、あいつらは100人以上いて、酷いことを、う、うく」
「ルナさん。俺達は最果てのダンジョンをクリアしたんだ。だから任せて欲しい。いや、信じて欲しい」
真っ直ぐに見つめる超絶イケメン(ルナにはそう見えている)の男性に声をかけられて。
あん!
ルナの子宮の下の方がじゅんとしてしまった。
「じゃあ、案内を頼む。アリスは魔法で何とかついて来てくれ」
そう言ってルナを抱きかかえる。
お姫様抱っこで。
「ひゃ、ぼ、僕、里の戦士なのに、こ、こんな!」
そして更に大事なところがびしょびしょになってしまう。
ルナは恥ずかしさのあまりに顔を真っ赤にする。
そしてアシュフォードのダンジョンに猫耳族を助けるために進むノア。
「(かっこいい)」
ルナの心配をよそに気遣ってくれるノア。
既にルナは戦士である事を忘れて乙女になっていた。
「ノ、ノア様?」
「安心しろ。ルナ」
イケメンがルナの頭に手をやると、やはりルナは顔を赤くする。
もう、パンツがびしょびしょだからだ。
そして猫耳族が囚われている空間で声をかけられる。
「行くぞ、ルナ!」
「はい。お願いします」
はい。私、もう何度もいってます。
こんな時にかっこいいノア様を見て何度もいってしまっている自分に羞恥する。
もう挿れて!
ルナは密かにそう思うのであった。
自分に言い聞かせながら限界を超えても尚も走り続ける。
敏捷度では定評のある猫耳族だが、長距離走は種族として向いていない。
それでも通常の人族より身体能力に優る彼女は通常の3倍の速度で走っていた。
「誰か! 誰でもいいから!」
彼女の願いはある意味届いた。
誰でもいいという意味なら。
だが運命は残酷なもので、彼女が出会ったのは人族ではなく、地竜だった。
「そ、そんな!」
嗅覚に優れた猫耳族の戦士ルナの不覚。
彼女はあまりの疲労で地竜の接近に気づかなかった。
その距離10m。
普段ならその敏捷力で地竜の目と聴覚、嗅覚の届かない場所にたちどころに移動できるのに今の彼女にはもうそんな体力は残っていなかった。
地竜がルナを発見するとずるりと舌なめずりする。
食べる前に以前食べた猫耳族の味を思い出しているかのようだった。
ルナの頭にはついこの2日間に起きた事が走馬灯のように蘇った。
「ルナ、お前は女だ。まだ若い。負けた時はむごい目にあう。逃げろ! そして人族の助けを呼んで来てくれ。俺達は時間を稼ぐ!」
「そ、そんな! 僕も戦士です! 子供の頃から鍛錬して来ました! 今戦わなかったら、僕はいつ里のために働くんですか?」
ルナは自分の身に何が起きるのかを十分に理解した上で言った。
女だてらに戦士となった限りは敗北した時にどういう扱いを受けるか位の想像は出来た。
「ルナ! 良く聞け! では誰が助けを呼びに行けるんだ? お前より早く走れる者がいるか? 魔物にあったらどうする?」
「そ、それは……」
戦士長の意見は正論だった。
無駄に命を捨てるより救援を呼びに行った方が猫耳族が助かる可能性が高い。
猫耳族を取り囲んでいる盗賊と思しき一味は100人近いと見積もられている。
猫耳族の戦士は10名、戦士以外の男を加えても30名程度の戦力だ。
敗北は必須。
彼らは時間を稼ぐ事しかできない。
「頼む、ルナ! 危険なのはお前も同じだ! 猫耳族存続のため、包囲網を突破して援軍を呼んで来てくれ! 突破口は作る。もちろん3日は持ち堪えてみせる!」
「わ、わかり……ました。戦士長に従います」
妥当な判断ではある。
しかし、そううまく3日以内に援軍を呼んで来る事は不可能だろう。
戦士長の真の考えは盗賊に穢されて惨めに殺される位なら誇り高く魔物に喰われた方がマシという事だ。
だが戦士長の命令は絶対だ。
ルナは見事盗賊の包囲網を突破して丸1日走り続けた。
そして出会ったのが地竜という訳である。
「せ、せめて戦士らしく……」
そう思ったが、足に力が入らない。
もう限界だった。
このまま地竜に喰われるのか?
はんば諦めたかけた時それは起きた。
グシャ
「え?」
唐突に地竜は真っ二つになった。
そして。
「大丈夫か? 怪我はない?」
「お、お願いだ。た、助けて。みんなを。里のみんなを!」
「任せろ。俺が何とかする」
人族の男がルナに声をかけた。
『俺が何とかする』
それを聞いた途端、ルナの張り詰めた糸は切れて気を失ってしまった。
次に気がつくとすっかり疲労は回復していた。
「ぼ、僕は猫耳族の戦士ルナ。僕の村が人族に襲われてしまって。僕も必死に戦ったけど。お願いだ。助けを呼んで欲しい! その為なら何でもするよ!」
「案内してくれ。すぐに何とかする」
「ひ、一人や二人では無理だよ。僕達猫耳族の戦士も10人いたけど、あいつらは100人以上いて、酷いことを、う、うく」
「ルナさん。俺達は最果てのダンジョンをクリアしたんだ。だから任せて欲しい。いや、信じて欲しい」
真っ直ぐに見つめる超絶イケメン(ルナにはそう見えている)の男性に声をかけられて。
あん!
ルナの子宮の下の方がじゅんとしてしまった。
「じゃあ、案内を頼む。アリスは魔法で何とかついて来てくれ」
そう言ってルナを抱きかかえる。
お姫様抱っこで。
「ひゃ、ぼ、僕、里の戦士なのに、こ、こんな!」
そして更に大事なところがびしょびしょになってしまう。
ルナは恥ずかしさのあまりに顔を真っ赤にする。
そしてアシュフォードのダンジョンに猫耳族を助けるために進むノア。
「(かっこいい)」
ルナの心配をよそに気遣ってくれるノア。
既にルナは戦士である事を忘れて乙女になっていた。
「ノ、ノア様?」
「安心しろ。ルナ」
イケメンがルナの頭に手をやると、やはりルナは顔を赤くする。
もう、パンツがびしょびしょだからだ。
そして猫耳族が囚われている空間で声をかけられる。
「行くぞ、ルナ!」
「はい。お願いします」
はい。私、もう何度もいってます。
こんな時にかっこいいノア様を見て何度もいってしまっている自分に羞恥する。
もう挿れて!
ルナは密かにそう思うのであった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる
国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。
持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。
これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
【完】BLゲームに転生した俺、クリアすれば転生し直せると言われたので、バッドエンドを目指します! 〜女神の嗜好でBLルートなんてまっぴらだ〜
とかげになりたい僕
ファンタジー
不慮の事故で死んだ俺は、女神の力によって転生することになった。
「どんな感じで転生しますか?」
「モテモテな人生を送りたい! あとイケメンになりたい!」
そうして俺が転生したのは――
え、ここBLゲームの世界やん!?
タチがタチじゃなくてネコはネコじゃない!? オネェ担任にヤンキー保健医、双子の兄弟と巨人後輩。俺は男にモテたくない!
女神から「クリアすればもう一度転生出来ますよ」という暴言にも近い助言を信じ、俺は誰とも結ばれないバッドエンドをクリアしてみせる! 俺の操は誰にも奪わせはしない!
このお話は小説家になろうでも掲載しています。
俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~
風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる