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73聖剣教の闇

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俺達は途中現れた教会異端審問官を倒しながら地下道を更に進んでいた。 

ルナやリナちゃんの手前、軽く気絶させるに留めた。 

「こっちでゆ」 

地下道から教会の中に侵入するとリナちゃんが先導してくれた。 

「リナちゃん__まずお父さんの事情を聞いてから__どうするか決めるね」 

俺はリナちゃんに心づもりを再確認する。 

お父さんが償いきれない罪を重ねていれば処す。だが、娘であるリナちゃんの目の前で__というのは流石に俺も心に何か棘が刺さる。 

「お父さんは悪人です。信者からお金を騙しとって、その上あんな__」 

「でも、もし事情があれば__俺は騎士団に突き出してどうするかは国に預けたい」 

「どんな事情があっても許されないゆ」 

リナちゃんはその幼い顔の唇をキッと固く結んだ。 

覚悟はできているようだ。正直__事情があったとしても__許されることじゃない。 

俺は半分リナちゃんのお父さんを処すことを心に決めていた。 

「いたぞ!」 

「侵入者だ」 

どうやら見つかったようだな。俺達は教会の広間に出て来たところを見つかった。 

「ほう__侵入者がここまで来たか__だが、娘のリナを連れて来たことを感謝しよう、ふふ」 

「感謝の証は一体何なんだ? 何か褒美でもくれるのか?」 

目の前には聖職者らしい衣を来た男がいた。 

「リナ。その男に何かされなかった? お父さんは心配していたよ」 

「う、嘘でゆ。お父さんの心配してたのは、聖女の私で、娘の私じゃないゆ! 私がいないと聖剣教へのお布施も減るっていつも言っているの聞いたゆ!」 

リナちゃんの言葉に眉をピクリと動かす男。 

「リナ、私はお前のことを思って__どうもその男が何か吹き込んだようだね」 

「リナちゃんは俺達に助けを求めて来ただけだ。貴様の悪行を止めるために。それにリナちゃんと貴様は理解しあえてないし、貴様はただリナちゃんを利用してただけだろ?」 

「あくまで逆らうと言うのですね。この我が教団の精鋭テンプル騎士団の相手になるならやってみなさい」 

リナちゃんのお父さんは手で指図すると控えていた騎士風の男たちが襲いかかって来た。 

「うぎゃっ!」 

「そ、そんな」 

「がはっ!!」 

「ば、馬鹿な」 

たちまち剣で切り伏せる。 

リナちゃんの前だから、手加減した。命に別状はないだろう。 

こいつらが罪を重ねたという証拠はない。ただの狂信者という可能性があった。 

「ば、馬鹿な!」 

自分の配下の精鋭達が次々と打ち倒されていく様を見て、目を見開く男。 

「ぐはっ! 神のためにぃ! 聖剣教のためにぃ! 聖女様のためにぃ!」 

確実に命を奪っていなかったため、重症の身体を引きずり、なお立ち向かう者もいる。 

そんな男たちの意識を絶って行く。アリス達は黙って見ている。 

俺に任せるつもりだろう。こいつらは俺の敵じゃない。 

「ば、馬鹿な!」 

「お父さん__罪を償って」 

「わ、私はお前のために__あの惨めな貧乏な生活からお前を救いたくて」 

「そんなの私は望んでないゆ。お父さんとお母さんがいればそれでいい」 

親子のすれ違い。それは良くあるが、この男の場合。 

「__そこまでだ」 

突然声を上げたのは__人質と思しき子供に刃物を突きつけて、いつの間にか近付いて来た、黒づくめの騎士が一人。 

「その物騒な剣を捨てろ。さもなくば__言うまでもないだろう? この子供の首が落ちる」 

「サラちゃん!」 

「た、助けてリナちゃん。お、お父さんとお母さんがぁ!」 

どうもリナちゃんの友達か何かか? 

「よくやったジャック、いいタイミングだ。これでこの男を無力化できるだろう」 

「セオ様、こういったことは我らにお任せ下さい。先日の王国のスパイもこの方法で無力化しました」 

王国のスパイを無力化? つまり。 

「そのスパイはどうしたんだ?」 

俺は聞いた。返答次第でこの騎士への扱いは異なる。 

「もちろん、拷問して、人質にしていた子供の首を目の前で落としてやった。泣き叫んで笑えたな。もちろん、慈悲深くその男にも後を追わせて首を落としてやったがな」 

「あとな、その子の両親はどうしたんだ?」 

「まあ、知らんが貴族の趣味の拷問部屋に送った。昨日だったか__死んだかな」 

「ほう、なら__死ね」 

そう言うと俺は例の指パッチンでこの黒騎士の頭を撃ち抜いた。 

「は?」 

「え?」 

「な?」 

息も絶え絶えの騎士達とリナちゃんのお父さんセオが間抜けな声を上げる。 

「ば、馬鹿な! 魔法も使わず、唐突に何故ぇ!」 

黒騎士は頭を失い、突然崩れ落ちた。 

空気弾で頭を爆散させたからだ。前に子供を人質に取られていてはこうするよりない。 

何より、殺しても構わないヤツだということが判明して気兼ね無く殺せた。 

「な! そ、そんな馬鹿なぁ! サラちゃんのご両親を? そ、そんなことは聞いてない!」 

「無様だな。何をこんなヤツに狼狽えている。つくづく努力が足らんヤツだ。これはお前への意欲増進のための罰だ」 

突然、新たに現れた男の声がした。広間の奥には扉があった。 

そこから現れたのは__。 

「__テオ兄貴」 

「お前に兄と言われる言われるいわれはないな」 

俺達の前に現れたのは、俺の兄、いや俺も同感、そう兄とは思いたくないが、テオだった。 

リリーを殺したヤツ。俺の心臓の鼓動が跳ね上がった。 

冷静でいられるはずがない。 

そして__。 

「グ、グレース!!」 

「お、お母さん!」 

テオが現れたと同時に広間に放り投げたのは__一人の女性の首だった。 

コロコロと転がり、教会の祭壇にあたり止まる。 

「セオ、最近の貴様はたるんでいる。これはその罰だ。まあ、年増だったが中々いい味だったぞ」 

「グ、グレース、何故? 何故ですテオ様? わ、私はこれまでこの教団に全てを捧げていたのに! 何故妻を! そ、そんな。こんな酷い」 

「酷い? お前な。お前が俺に報告して来た金の回収不能な信徒共は大概もっと残酷な死に方をしているぞ。一瞬で首を刎ねてやったんだ。俺は優しいだろ?」 

「そ、そんな! 金が取れない信者は地方の村で余生を過ごすしているのじゃ?」 

「な、訳がないだろ? お前、そんな建前と現実の区別がつかなかったのか?」 

「う、うわぁあああああああああ!」 

リナちゃんのお父さんが絶唱を上げる。 

シエナの言う通りだったな。 

事情を聞く必要はあるな。リナちゃんのお父さんは死ぬべき人間じゃない。 

ただし、テオ、テメエは殺す。 

俺の憎悪が燃えたぎる中、リナのお父さんセオさんの叫び声とリナちゃんの鳴き声が響いた。 
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