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一章

秘密の特訓場で発見してしまった

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 基礎的授業を終え、私は父から村の中であれば自由にしていいという許可を得た。真面目にいい子にしていた甲斐があったというものだ。

「ここが私の楽園パラダイス!!」

 村の少し外れにあるボロ屋敷。塀の崩れたところがあったので、そこから侵入。ちゃんと探索サーチで人の有無は調べてある。数日様子を確認して、その結果誰も住んでない場所だと確定させたわけ。勿論、近所のお婆ちゃんとかお爺ちゃんに話も聞いて、ずっと空き家だということも調査済み。まぁ、廃墟具合が酷いから子供たち皆、お化け屋敷と言って近づかないわけだけど。
 まぁ、そのおかげで教会では出来なかったレベルの魔法の練習と研究ができるわけだけど。フッフッフ。

「ま、あまりポンポン使えてたら怪しまれるもんなぁ」

 父の手伝いとかはそっとやってるけど、それ以外でやってしまうとおかしいと思われても仕方がない。あれだけ細々とした糸だったんだもん。そりゃそうだ。
 ちなみにお屋敷の中までは入らないよ。お庭をお借りするだけです。庭だけで十分な広さあるからね。
 さて、今日は何をしようかな。母に作ってもらった大きめのバッグからちょろまかした薬草や買ってもらった聖水を並べてどうするか考える。こういう時間は実践しているときも楽しくて仕方がない。




 いつものように実践やら研究をしているとポツリ。頭の上に何かが落ちてきた。なんだろうと思っても空を見上げる。見事な曇天。

「あぅっ」

 眉間にばしゃり。これはヤバいと思って、片付けを始めるけれど、ポツポツと地面が黒く濡れていく。

「ご、ごめんなさーい」

 そう言って私は屋敷の軒下に避難する。
 ザーザーと降りだした雨。通り雨だったらいいな。

 ――ぁ……ぅ……

 え、ガチでお化け屋敷だった?? いやいや、お化けなんてあるはずないじゃないか。ははは。

「“探索サーチ”」

 思わず魔法を発動させちゃったのはわざとじゃないよ、ホントだよ。何も反応がないのがベストだけどそれだと余計に不気味だから、物理的な反応があるとまだ嬉しいかな。

「……あ、あった」

 屋敷の中に一つ。それも私がいる傍の部屋に反応があった。もしかして、誰かいる? 泥棒? いや、泥棒だったら見張りとかもいるだろうし、複数反応があるか、反応が動いててもおかしくないのだけど。一つの反応はそこから動かない。
 誘拐されて連れてこられた? いや、それも泥棒の場合と同じく見張りとかいるでしょう。じゃあ、一体、何?
 そっと対象の部屋の窓のところまでいく。

「見えない」

 カーテンが引かれていた。そりゃそうだ。
 なんとかして、見えないかなとカーテンの隙間から覗いてみる。

「暗くて見にくい」

 曇天というか雨雲のせいか、室内は暗くよく見えない。ただ、正直なところ、それだけではない気がするのだけど。兎にも角にも見にくい。

「うーん、あ、男の子?」

 髪は短めに見えた。けど、なんだろう、もやっとする。首を掻き毟るようにしている姿は明らかに苦しんでいる様子。見張りはいなかった。どうしようかと悩む。

「“探索サーチ(広範囲)”」

 ぶわっと魔法の範囲を広げて再度調べる。村の範囲ではいつも通りの人の動き。この屋敷の周りには誰もいないよう。魔法で監視してる?

「“解析スキャン”」

 地面に手をついて、屋敷の範囲を取り敢えず調べてみる。けれど、使われた痕跡はない。大丈夫かな。

「お邪魔しまーす」

 雨に濡れないように軒下を伝い、玄関まで周る。不用心なことに玄関のドアは鍵がかかっていなかった。人っぽいのは彼一人だけだったけど、気持ち的に声をかけながら入る。靴が汚れた人間が通ったのか、絨毯は汚れまくっていた。壁も手をついたのか汚れが付着している。

「まるでお化け屋敷みたいだな」

 雨雲のせいで屋敷の中は全体的に暗い。お化けは出ないよね。出たら、聖水ぶつけてやる。ガキだけど、持ってっからね。投げつける練習しておいた方がいい?
 まぁ、冗談はさておき、探索サーチをしながら、目的の場所に進む。
 ガチャ。

「……いや、どういうことよ」

 ガチャガチャ。目的地だけ鍵がかかってた。しかも、外鍵っぽい。さて、どうしようか。

「……ぁ、……けて」

 助けてと言われた気がした。そんなことを言われたら、やるっきゃないじゃないか。
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