6 / 43
一章
やってしまったよ、やっちまったよ
しおりを挟む
ジーザス、こりゃどうしようもない。今から集中して魔力を解放したところで結果は変わらないだろう。
「……こ、これはその、うーん」
ごめん、神父様。言いづらいよね、わかるよ、その気持ち。
「……そう、ですね、日々、修練していれば、成人の頃には生活に不自由はないでしょう。適性も現段階では顕れてませんが、その頃には顕れてるでしょう」
おや、これからの修練でもどうにかなるの? それはちょっといいことを聞いたような気もする。けど、神父様、すごく言葉を絞り出したね。いや、子供にショックを与えないようにっていう配慮だろうけど、本当に申し訳ないことしたよ。
「ありがとうございます」
私は素直にお礼を告げれば、神父様はまだ何か言葉を紡ごうとしたけれど、すぐに言葉を飲み込み、私に笑顔を向ける。もしかして、いじらしいとかそういう風に思われたのだろうか。うん、そんなつもりではなかったんだけど。とりあえず、適性に関しては保留だね。今回は糸みたいな魔力を流してしまったわけだし。全部均一ではあるけど。成長するしたら、どれかしらが適性として出るのかな。それはそれで楽しみかもしれない。
そして、終わったこともあって私は父のもとへと行った。
「リタ、どうだった?」
「んーとね、てきせいでてないっていわれた」
「そうなのかい? 珍しいこともあるもんだな」
「めずらしいの?」
「そうだぞ、滅多にそんなことはないらしい。その場合、様々な才能を秘めてるだとか何とか言われてるらしいから、しょげる必要はないぞ」
そう詳しいわけじゃないし、行商から世間話程度に聞いたものだがと父は語る。なるほど、そうなのか。
そんな話をしていると全員の判定が終わったのだろう神父様の声が教会に響いた。
「これで、皆、終わりましたね。お疲れ様でした。集落の方達はもう少し私とお話ししましょう。そして、明日からは村の子達と一緒に魔法を学びましょう。当村の方々は明日からよろしくお願いします」
その言葉をもって解散となった。ちなみに神父様のお話とは大体村で親から子にされる魔法の注意事項だったり魔法の使い方の説明――取扱説明のことだ。それから、神父様の目の届く範囲で実践を繰り返し、使い方を学ぶ。神父様は何かあった際のストッパーらしい。暴発した際には怪我の治療と救急箱の役割もある。
「なあ、リタ、てきせいどうだったんだ」
「てきせいでてないって」
「なんだよ、むてきせいかよ。はずれじゃん」
「はずれってなにさ! わたしは“でてない”っていったの! “ない”なんていってないし」
ワクワクと目を輝かせて聞いてきたビトに答えたけど、あらかさまにがっかりした上で「はずれ」なんて言う。思わず、声を荒げれば、ぎょっとするビト。
「そもそも“はずれ”ってなに? それ、たにんがきめていいことなの? わたしはほんにんでもダメだとおもうよ。そこから、そのひとがどうれんしゅうをつみかさねるのかがたいせつなんじゃないかな。だって、わたしたちまだまほうつかったことないんだよ? なんでいきなりせいちょうのかのうせいをせばめるのさ」
「うえっ、あ、オレ、そんなつもりじゃ――」
たじたじになるビト。まだ言い足りなくて、口を開こうとするとクツクツと笑う声。バッと見れば、神父様が傍まで来てた。
「アデリタさんのいう通りですね。それにしても、まるで大人のような発言ですね。まぁ、大人でもアデリタさんのように考えられる人は少人数ですが」
「はぅ」
神父様ににこりとそう言われ、私は逃げたくなる。なんか、見透かされてそうなんだもん。
「リタは誰に似たのか頭がいいですからね。それによく本も読んでますし」
「そうですか。よくお勉強されてるのですね。よいことです」
父の言葉に神父様からの目線が切れる。グッジョブ、父。それから、神父様は何を思ったのか、丁度良い機会ですと言うと手をパンパンと叩き、皆の注目を集める。
「あまり村々で言うことはないのですが、いい機会なのでお伝えしておきます」
なんだろうと皆が首を傾げる中、神父様はきゅっと口角をあげ、口を開く。
「現在皆さんが受けられたのは王都では『仮適性』と呼ばれています」
ざわりと空気が揺れる。そうだよね、いきなりそんなことを言われても困るよね。その空気がわかっていながらも、神父様は丁寧に説明を重ねた。
曰く、主に貴族は成人する時に再度適性を見るのだそう。それは何故か、成長する際に適性が変化することがあるため。何故変化するのか、それは日々の修練によるものであると推察されている。今回適性に選ばれた属性でも修練をしていなければ、適性から外れる。逆にも然り。そのことは実績者からも読み取ることができるらしい。
では何故、村では二回も適性を見ないのか。見ないこともないのだけど、その余裕がないというのが大きい。希望するなら、受けられるという希望制になってるのも一つの要因である。それから、どうせ受けてもという気持ちや教会側も村々でやる意義がないということもあるだろうね。
冒険者になれば、その過程で適性を見ることがあるらしい。そりゃそうだね。嘘の申告でもされてたら、組んだりしたときに困るもんね。
「期待する属性でなかったからといって悲観しないで下さい。貴方達の可能性は広がっているのです」
神父様はそう締めくくった。まぁ、光とか闇は特殊だから、それ以外でってことだろうけど。
「……こ、これはその、うーん」
ごめん、神父様。言いづらいよね、わかるよ、その気持ち。
「……そう、ですね、日々、修練していれば、成人の頃には生活に不自由はないでしょう。適性も現段階では顕れてませんが、その頃には顕れてるでしょう」
おや、これからの修練でもどうにかなるの? それはちょっといいことを聞いたような気もする。けど、神父様、すごく言葉を絞り出したね。いや、子供にショックを与えないようにっていう配慮だろうけど、本当に申し訳ないことしたよ。
「ありがとうございます」
私は素直にお礼を告げれば、神父様はまだ何か言葉を紡ごうとしたけれど、すぐに言葉を飲み込み、私に笑顔を向ける。もしかして、いじらしいとかそういう風に思われたのだろうか。うん、そんなつもりではなかったんだけど。とりあえず、適性に関しては保留だね。今回は糸みたいな魔力を流してしまったわけだし。全部均一ではあるけど。成長するしたら、どれかしらが適性として出るのかな。それはそれで楽しみかもしれない。
そして、終わったこともあって私は父のもとへと行った。
「リタ、どうだった?」
「んーとね、てきせいでてないっていわれた」
「そうなのかい? 珍しいこともあるもんだな」
「めずらしいの?」
「そうだぞ、滅多にそんなことはないらしい。その場合、様々な才能を秘めてるだとか何とか言われてるらしいから、しょげる必要はないぞ」
そう詳しいわけじゃないし、行商から世間話程度に聞いたものだがと父は語る。なるほど、そうなのか。
そんな話をしていると全員の判定が終わったのだろう神父様の声が教会に響いた。
「これで、皆、終わりましたね。お疲れ様でした。集落の方達はもう少し私とお話ししましょう。そして、明日からは村の子達と一緒に魔法を学びましょう。当村の方々は明日からよろしくお願いします」
その言葉をもって解散となった。ちなみに神父様のお話とは大体村で親から子にされる魔法の注意事項だったり魔法の使い方の説明――取扱説明のことだ。それから、神父様の目の届く範囲で実践を繰り返し、使い方を学ぶ。神父様は何かあった際のストッパーらしい。暴発した際には怪我の治療と救急箱の役割もある。
「なあ、リタ、てきせいどうだったんだ」
「てきせいでてないって」
「なんだよ、むてきせいかよ。はずれじゃん」
「はずれってなにさ! わたしは“でてない”っていったの! “ない”なんていってないし」
ワクワクと目を輝かせて聞いてきたビトに答えたけど、あらかさまにがっかりした上で「はずれ」なんて言う。思わず、声を荒げれば、ぎょっとするビト。
「そもそも“はずれ”ってなに? それ、たにんがきめていいことなの? わたしはほんにんでもダメだとおもうよ。そこから、そのひとがどうれんしゅうをつみかさねるのかがたいせつなんじゃないかな。だって、わたしたちまだまほうつかったことないんだよ? なんでいきなりせいちょうのかのうせいをせばめるのさ」
「うえっ、あ、オレ、そんなつもりじゃ――」
たじたじになるビト。まだ言い足りなくて、口を開こうとするとクツクツと笑う声。バッと見れば、神父様が傍まで来てた。
「アデリタさんのいう通りですね。それにしても、まるで大人のような発言ですね。まぁ、大人でもアデリタさんのように考えられる人は少人数ですが」
「はぅ」
神父様ににこりとそう言われ、私は逃げたくなる。なんか、見透かされてそうなんだもん。
「リタは誰に似たのか頭がいいですからね。それによく本も読んでますし」
「そうですか。よくお勉強されてるのですね。よいことです」
父の言葉に神父様からの目線が切れる。グッジョブ、父。それから、神父様は何を思ったのか、丁度良い機会ですと言うと手をパンパンと叩き、皆の注目を集める。
「あまり村々で言うことはないのですが、いい機会なのでお伝えしておきます」
なんだろうと皆が首を傾げる中、神父様はきゅっと口角をあげ、口を開く。
「現在皆さんが受けられたのは王都では『仮適性』と呼ばれています」
ざわりと空気が揺れる。そうだよね、いきなりそんなことを言われても困るよね。その空気がわかっていながらも、神父様は丁寧に説明を重ねた。
曰く、主に貴族は成人する時に再度適性を見るのだそう。それは何故か、成長する際に適性が変化することがあるため。何故変化するのか、それは日々の修練によるものであると推察されている。今回適性に選ばれた属性でも修練をしていなければ、適性から外れる。逆にも然り。そのことは実績者からも読み取ることができるらしい。
では何故、村では二回も適性を見ないのか。見ないこともないのだけど、その余裕がないというのが大きい。希望するなら、受けられるという希望制になってるのも一つの要因である。それから、どうせ受けてもという気持ちや教会側も村々でやる意義がないということもあるだろうね。
冒険者になれば、その過程で適性を見ることがあるらしい。そりゃそうだね。嘘の申告でもされてたら、組んだりしたときに困るもんね。
「期待する属性でなかったからといって悲観しないで下さい。貴方達の可能性は広がっているのです」
神父様はそう締めくくった。まぁ、光とか闇は特殊だから、それ以外でってことだろうけど。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
69
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる