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一章

とうとうこの日がやってきた!!

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 とうとうだよ! 待ちに待ったこの日が来ましたとも!!
 六歳になった私は両親に連れられて、教会を訪れた。教会には既に同い年の少年少女が数人。まぁ、小さな村だし、こんなものだ。そして、私から遅れて大きな荷物を持った子が数人やってきた。引率なのか若いお兄さんが付き添っていた。

「本年もよろしくおねがいします」

 お兄さんの言葉に神父様も同じ様に返し、判定の儀に移った。
 判定の儀では基本的にランダムで名前が呼ばれる。そして、その呼ばれるまでの間、集落の子供と村の子供の交流時間になる。集落の子達は本日と合わせて三日ほど村に滞在する。判定と合わせて先に魔法について学ぶのだ。それを集落に持ち帰り、修練する。定期的に行く神父様たちに見てもらい、高めたり、修正をしたりして大人になる。勿論、途中で冒険者になって集落を出ていく人もいる。

「あたし、適性、水だった」
「オレ、火だったぞ。カッコいいだろ」
「いいなぁ、うちは土がいいなぁ、父ちゃんの手伝いもしたいし」
「ボクは風がいい!」

 そんな風に言葉を交わしている。両親たちも土いじりが好きだからこの子はこうじゃないかなんて、話をしている。私はそんなことよりも判定の儀の方が気になってしょうがない。そっと、今、判定をしている子の傍に行く。邪魔しないようにはもちろんするよ。そんな私を村の子達はあー、いつものかと思ってるに違いない。

「えっと、あの子」
「リタはいつもあんなんだ。魔法大好きで兄ちゃんとか大人が魔法使ってるとこジッと見てんだもん」

 面白くねぇとかなんとか後ろの方から聞こえてきたけど、現場で見るのとただ聞くのだけじゃ全然違うんだよ。ちょっと文句を心の中で言って、私は目の前のことに集中する。
 水晶が台座にあって、それを挟むように向かい合わせで神父様と対象の子が立っている。そして、神父様は子供と一緒に水晶に手を翳した。

「“ステータスオープン汝を示せ”」

 待って、なんか、今、「ステータスオープン」って聞こえた。え、それで見れちゃうの?? マジか。ゲームみたいに見れるのかな。帰ったら試してみよ。それとも、水晶とかそういう道具が必要な感じなのかな。まぁ、色々試してみるのもアリか。
 そんな考察をしている中、神父様の言葉で魔法が発動したらしく子供の手からスーッと四色の色が水晶に流れていく。若干、赤色が強いなぁ。

「そうですね、適性としては火ですね。他の属性は多少苦労しますが使えないことはないですよ」

 水晶を覗き込んだ神父様がそういう。うん? もしかして、水晶が子供の魔力を吸って、配分を写し出すとかそういう感じなのか。
 「吸収ドレイン」が出来る水晶なのかな。そもそも、「吸収ドレイン」でその色を見ることが出来るのか。
 うーんと悩んでいると目の端にある人物が映った。ちょうどいいや。試してみよう。

「ビト」
「あ、なんだよ」

 声をかけたのは赤髪短髪のつり目の少年。さすがゲームの世界、モブでも顔が整ってる。成長したらよりカッコよくなるだろうな。そんなビトは少し不機嫌そうに言葉を返してきた。なんで、不機嫌なんだろ。私にはわからなかった。

「ちょっとだけ、てをこうしてて」
「は? なんでだよって、おい」

 ビトの手を握り、手のひらをこちらに向けるようにする。真っ赤な顔で抵抗するけど、私は無視。私の手をそれと平行になるようにする。

「“吸収ドレイン”」

 ビトにバレないように口の中でそう唱える。するとビトの手のひらから私の手に魔力が流れる。赤が強い。確か、適性は火だとか言ってたな。

「……うっ」
「リタ!! だいじょうぶか、かおいろわるいぞ」
「だ、だいじょうぶ、きにしないで」
「いや、むりだろ、ラモンさん、よぶか?」
「いい、ほんと、へいき、いすにすわってたら、なおるよ」
「……ぜってぇ、むりすんなよ、むりしたら、ラモンさんにいいつけるからな!」

 失敗した。とりあえず、ビトには魔力を吸収したのはバレてないみたいだし、具合も悪くなさそう。ただ、吸った私は悪くなったわけだけど。やっぱり、他人の魔力だから体に合わなかったんだろうなぁ。長椅子に寝転がり、私は魔力の相性についても考える。
 ちなみにラモンさんというのが父だ。母はイネス。

「……ワード設定がされてるのかな」

 多分、『汝を示せ』ってのがスイッチかな。ただ、吸収された魔力はどこに行くのだろう。悪いことに使われてなければいいけど。

「“吸収ドレイン”」

 自分の手と手を宙で向い合わせにしてそう呟く。まぁ、自分のだから出来ないだろうなぁ。

「……ふといな」

 出来ちゃったよ。それになんか、全体的に凄く太い。え、どゆこと。いや、これ、そのまま判定されたらヤバくない??

「タイミングと意識でなんとかできるかな」

 蛇口を捻る感じで、と、お、少なくなった。よし、この調子。どのくらいがいいかなぁ。キュッと閉めすぎはダメだろうな。中間よりも下よりがいいかな。
 光と闇はゼロに出来ないかな。聖女とかそんなのに祀り上げられても嫌だしなぁ。
 複数の蛇口をイメージするのでいけるかな。
 量を見ながら調整してみようと心がけるも全体的に量が減るだけで、均一。どれかを絞ってどれかを出すというのは中々難しい。
 それを瞬時にともなると今の私では無理そうだ。

「さて、どうしたものか」

 一部を閉めれば一部が全開になってしまう。なんか、別のゲームをやってるみたいだ。

「アデリタ・メディシナ、前へ」

 うーん、やっぱり、上手くいかないなぁ。

「アデリタ・メディシナ!」
「うわぁ、はい!」
「早く、こちらに来なさい」

 響き渡った声に驚き、飛び起きた。その時に感覚的に何かをキュッとした気がするけど、それどころじゃない。神父様に呼ばれていたらしく、私は慌てて神父様のもとへと向かった。

「体調は大丈夫なようですね」
「え?」
「ビト君から聞きました。具合が悪いのであれば、明日にでもと思いましたが、ここまで走れるほどのようですから、問題なさそうですね」
「あー、すみません」
「いえ、構いません。では、手を水晶に向けて」

 言葉を交わし、儀式に移る。私は水晶に手を向けるとそれを確認して、神父様も手を翳す。

「“ステータスオープン汝を示せ”」

 神父様の言葉に水晶が反応して、淡く光る。そして、そんな水晶に私の手から絹糸のように細い六本の魔力が流れ込んでいた。
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