薬師なモブのはずですが、呪われ王子が離してくれません

東川 善通

文字の大きさ
4 / 43
一章

魔法を独学で研究中。これ、できて大丈夫?

しおりを挟む
 あれからちょこちょこ魔法を使ってみてる私です。
 窓際に飾っている植木鉢に水をあげてみたり、床のごみを風魔法で吹き飛ばしてみたりしてました。で、気づいたんだけど、なんか、色がついてるのよ。何にって? 魔法とかに。
 例えば、水やり。これをすると土に水が染み込むのは当然なんだけどほんのり土が青みがかる。水魔法の強弱で青は濃くなったり、薄くなったりする。魔法と言うよりも水分量かなと思って試しに乾いた土の水分量を量れないか試してみた。そうすると乾いた土でも、色を見ることができた。かんなり薄かったけど。でも、地面に手をつき、意識すると表面上は乾いていても中に水分を保持していることが分かる。あ、これ、薬草とか育てるのに役立つんじゃね??
 ちなみに風魔法は使用した時はその風の向きとか強さが色でわかった。母が風魔法を使ったとき、意識して見ると他人のものでもそれを見ることができた。さらにこちらは発動のタイミング的なものが分かりやすかった。一ヶ所が色が濃くなる。そして、そこから流れ出すように風が吹き出すのだ。
 土魔法は使用される箇所が反応した。勿論、土人形ゴーレム(小さいのを作ってみた)の場合は全体が茶色の光を纏っていた。そして、なんか、土の成分分析って言えばいいのかな。栄養状態が分かるようになった。
 火魔法は危ないのであまり使用してないけど、熱感知ができた。母と手を繋いだ時とか、父にだっこされた時にそっと使っていると、まさにサーモグラフィーだったよ。

「かぁたん、ぐあい、わるわる?」
「え、そうなのか?」
「え、確かにちょっと熱っぽいって感じるけど、その程度よ?」
「“その程度”は甘くみない方がいい。ちょっと薬持ってこよう」

 ある日見た、母の体温が不自然に一点が高かったので声をかけた。本人はその程度と思ってるみたいだけど、燻ってる熱がある。父の判断はきっと間違いない。父が軽く母を診察し、薬を処方する。
 そして、案の定というか、次の日、母は寝込んだ。でも、早めに薬を飲んでいたおかげで大事に至ることはなかった。

「お手柄だ、リタ」

 ぐりぐりと頭を撫でてくれる父。そう、本当にお手柄だったみたい。なんせ、母の病は風邪とは違う熱病と呼ばれるもの。内部に熱が燻り、体の中から壊していくものだったらしい。初期症状は殆ど出ず、ちょっと熱があるな程度。放っておくと高熱が出て、死に至るそうな。元々、判別が難しい上に熱病ではと疑う頃には手遅れになっているということが多いんだって。そのせいで死者も多い。ただ、手遅れでも、運良く快復できる場合もある。けど、その場合は何らかの障害が残ってしまう事が多いみたい。しかも、この熱病が厄介なのはいつどういった時になるのかが解明されていないこと。原因を究明している研究者がいないわけではないけど、ある日突然高熱が出て発症することが多いせいもあって、何もかもが間に合ってない。虫を媒介にしているのか、自然発生的なものなのかすらもわかってないから大変だ。ただ、幸いというべきか、熱病はウィルス関係ではないようで、人から人への感染は報告されていない。もしかしたら、ファンタジー特有の魔力が何らかの原因で熱病になってるんじゃないかなと正直話を聞いていて私は思った。けど、何も知らないはずの幼児が疑問に思うのはおかしな話だと思うので、お口チャックした。
 母の容体も良くなり、私も少し成長すると家の中だけではと外に連れて行ってもらえるようになった。何度か抱っこしてもらって外に出たことはあったけど、こうして自分の足で外を歩くのは初めてかもしれない。

「こら、リタ、勝手に行くんじゃない。それに畑はそっちじゃないぞ」

 あまりの嬉しさに全く違うところに行こうとしていたよう。父に抱え上げられ、畑へと連行される。

「ふわぁ!」

 初めて連れてこられた畑はそれはもう輝いていた。あ、文字通りだよ。父が魔法をふんだんに使用していたせいか残滓がキラキラと輝いているのだ。

「リタ、あんまり遠くに行くんじゃないぞ」
「あい!」

 地面に下ろされ、目の見える範囲であれば自由にしていいぞと言われた私は父の畑を歩き回る。そんな私を父は誰に似たんだろうなと笑いながら、自分の仕事を始めていた。

「……よち」

 父は土の状態や薬草、野菜の状態を見ていて、私を見ていない。これはチャンスである。父から離れたところに移動した私は地面に手をつける。

「“たんちゃ”」

 くそう、探査もまともに発音できないのが悔しい。けれど、言葉はともかく、ちゃんと魔法は発動したらしい。脳裏に脳裏に地面内の状態が記される。

「うーん、みじゅの与えしゅぎかな」

 自然にできたものか、はたまた水のやり過ぎたのか。地面内部に水の溜まった空洞があった。しかも、だいぶ、土が削られたのか地上に近くなってる。地震や地殻変動が起こったら、陥没しそう。危ないね。でも、私が言ったところで子供の戯れ言で済まされそうだな。父なら耳を傾けてはくれるだろうけど、結果的にはそんなことはあり得ないと捉えられる可能性もある。でも、下手に放置しておけば、陥没したことに気づかず、父が落下してしまう可能性もある。

「……うーん、ちかたにゃい」

 また、連れてきてもらった時には手遅れというのは嫌だ。ぱらりとまた少し地上に近づいた気配を感じた。

「“じちん”」

 ぐらぐらと小さく地面が揺れる。父がうおっなんだ!? と驚いている声が聞こえた。

「リタ」
「とぉたん、あにゃ、ある」

 地震に慌てた父がこちらに駆け寄ろうとするが、私は冷静に父に地面に空いた穴を指摘する。

「な、なんだ、これは」

 初めてみたのか、驚く父は穴をしげしげと観察する。私は穴に落ちないように父の傍に行く。

「一体、どうしてこんなものが」
「……おみじゅ、きらきら」
「こら、リタ、そんなにのめり出すんじゃない、危ないだろ」

 首を傾げる父に私はしょうがないと穴の中に手を伸ばす。父はそんな私にすぐ気づき、抱き抱える。そして、水に削られる土を見て、水で削られたのかと眉を顰める。そして、一時しのぎではあるだろうがと出来ていた空洞を土魔法を使って、埋める。

「定期的にチェックしておかないとダメだな。それにあの水はどこから出てきたんだ?」

 よしよし、ここまで疑問に思っていれば、大丈夫でしょ。一仕事を終えた私はうんうん首を傾げる父の腕の中で睡魔と戯れた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【12月末日公開終了】これは裏切りですか?

たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。 だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。 そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?

転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜

具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、 前世の記憶を取り戻す。 前世は日本の女子学生。 家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、 息苦しい毎日を過ごしていた。 ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。 転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。 女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。 だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、 横暴さを誇るのが「普通」だった。 けれどベアトリーチェは違う。 前世で身につけた「空気を読む力」と、 本を愛する静かな心を持っていた。 そんな彼女には二人の婚約者がいる。 ――父違いの、血を分けた兄たち。 彼らは溺愛どころではなく、 「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。 ベアトリーチェは戸惑いながらも、 この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。 ※表紙はAI画像です

『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』

鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、 仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。 厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議―― 最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。 だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、 結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。 そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、 次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。 同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。 数々の試練が二人を襲うが―― 蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、 結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。 そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、 秘書と社長の関係を静かに越えていく。 「これからの人生も、そばで支えてほしい。」 それは、彼が初めて見せた弱さであり、 結衣だけに向けた真剣な想いだった。 秘書として。 一人の女性として。 結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。 仕事も恋も全力で駆け抜ける、 “冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。

モブ転生とはこんなもの

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。 乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。 今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。 いったいどうしたらいいのかしら……。 現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。 他サイトでも公開しています。

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない

ラム猫
恋愛
 幼い頃に、セリフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セリフィアはそれを喜んで受け入れた。  その後、十年以上彼と再会することはなかった。  三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セリフィアはその場を離れた。  しかし治療師として働いているセリフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。  それどころか、シルヴァードはセリフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。 「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」 「お願い、セリフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」 ※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。 ※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

処理中です...