薬師なモブのはずですが、呪われ王子が離してくれません

東川 善通

文字の大きさ
3 / 43
一章

幼少期からの魔法練習って異世界転生の醍醐味だよねー

しおりを挟む
 皆、聞いて!! この世界、あのクソゲーの世界だったよ!!! いや、薄々とそんな感じがしてた。してましたとも。
 そうだとわかったのは第五王子の三歳の誕生日を祝う式典があるだのという両親の言葉からだ。『キミガオ』では攻略対象は五人。全員当然ながら王子様。つまり、一応国民には王子の名前が公表されている。それが側妃の子だろうと王妃の子であろうともだ。私が暮らす村にもそういう名前だけは流れてきていた。そして、私の中にもなんとなーく記憶にあったんだよ。王子の名前。全員最後に“シオ”がつく。何故かは知らない。
 まぁ、でも、そうだとしても私が暮らしてるの村だし、関係ないかもね。両親、というか父親が薬師だったから。主人公の出身で薬師なんてのはなかったはずだし、ましてや村娘であるのもなかった。孤児はあったのにね。なので、私は多分モブだね。
 王子様とか見られないけど、まぁ、いいんじゃないかな。ストーリー外だろうから大騒動とかに巻き込まれるわけでもないし、私は私の人生を自由に歩けるというわけだ。その上、魔法があるわけで、早く六歳の適性検査の日にならないかな。




「まほ、つかいちゃい」
「あらあら、ダメよ。もう少し我慢してちょうだい」
「そうだぞ、下手に使うと危ないからな」

 我慢ができず、両親に訴えてみたがダメだった。魔法適性がわかってから初めて魔法を使うんだって。
 ちなみに母は魔法適性が火で火の扱いが上手い。父の魔法適性は土で植物を育てるのが上手い。ただ、適性はあくまで適性でしかない。五段階評価の通信簿で言えば、五や四をもらえている状態というだけ。決して他の属性が使えないというわけでもない。その証拠に母は風魔法を使って洗濯物を乾かしているし、父は水やりを水魔法で補っている。
 つまり、基本的に強弱はあれど誰でも四属性を扱うことはできる。ただ、そこから外れた聖魔法と呼ばれる光魔法や呪魔法と呼ばれる闇魔法の適性はこの世界でも珍しい。無適性の人は基本的には扱えず、光魔法を扱える人は闇魔法を扱いにくく、闇魔法を扱える人は光魔法を扱えづらいという。扱いづらいというのは寿命を削って使用する、ないしは使用する魔力量が通常の数倍必要であったり、発動までに時間を要するなど抵抗が強いことを指す。
 また、これらの六属性以外にも無属性というものがある。無属性に関しては適性云々はない。誰でも使用できるどれにも適さない魔法のことを指す。身体強化、索敵や遠視などは騎士や冒険者がよく利用する無属性の魔法だ。また、専門性が強いものであれば、魔法適性の判定なんかがそうだ。
 ちなみにこれらは魔法に興味を持ち出したことを知った両親が行商が来たときに買ってくれた『子どもでも分かる魔法の基本』と言う本に書いてあったこと。両親は私が文字を読めていることを知らないため、ペラペラ捲って描かれているイラストを見ているのだと思っているはずだ。
 で、魔法適性というのは六歳時に教会で判定するものらしく、まだ幼い私は魔法を教えてもらえない。
 ちなみに教える先生は神父様らしい。小さい村には当然ながら学校はない。親も共働きだったりで教えている余裕などない。でも、魔法は教えておかないと暴発などの危険がある。じゃあ、どうするかとなり、村単位で教会を設置。魔法適性の判定と合わせて指導する形に収まったらしい。集落とかは近くの村まで出てきてもらうか、神父様が訪問する形になるみたい。
 さて、ダメだと言われた私ですが、ここで諦めて六歳まで過ごすかと思う? 思わないよね。思わないんだよ。
 つまり、どうするのかと言うと、内緒でやっちゃおうと思います! ある意味、異世界転生の醍醐味っちゃ醍醐味だよね。勿論、危なくならない程度でやるよ。

「まずは手の中で発現させてみましょう」

 外からそんな声が聞こえる。丸い球体をイメージしてという言葉が続いて聞こえる。
 そう、お隣が教会なのです。盗み聞きじゃないよ。聞こえてくるんだもん。しょうがないよね。
 そして、普段から手のかからない子を演じてるので、両親はそれぞれの仕事をやっているわけで。誰かに見つかるということはないのです!!
 それでは、いざ!




 待って、ねぇ、待って。おかしいんだけど。四属性は問題なく発現できた。いや、これも正直おかしいかも知れないけどさ。

「あかり、ちゅけて」

 手の中にまん丸の光の玉が現れる。これは光属性持ってますね。

「あかり、くるんれ」

 ナニかにくるまれるようにして光の玉が今度は真っ黒になる。これ、闇属性ではないかな。闇属性だよね。

「ばいばい」

 ポッと音をたてて玉は消えた。
 さて、どういうことだろう。ぺたんと床に座り、私は首を捻る。本にはまずこの二つの属性を普通には扱えないって書いてたはずだ。扱えにくいのであれば、どちらかを使うときに何らかの違和感なんかがあっても不思議じゃないんだけど。うーん、抵抗を感じるのもなく怖いくらいにすんなり扱えたな。
 実は幼少期の時は皆平等に全属性が扱えるけど、魔法適性を判定するときに固定化されるとか、そういうのだろうか。私が持ってる本ではそこまで書いてなかったから、判断がつけづらいなぁ。
 ま、いっか。ない頭で考えててもしょうがないし、毎日ちょっとずつ何ができるか挑戦してみよっと。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【12月末日公開終了】これは裏切りですか?

たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。 だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。 そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?

転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜

具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、 前世の記憶を取り戻す。 前世は日本の女子学生。 家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、 息苦しい毎日を過ごしていた。 ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。 転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。 女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。 だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、 横暴さを誇るのが「普通」だった。 けれどベアトリーチェは違う。 前世で身につけた「空気を読む力」と、 本を愛する静かな心を持っていた。 そんな彼女には二人の婚約者がいる。 ――父違いの、血を分けた兄たち。 彼らは溺愛どころではなく、 「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。 ベアトリーチェは戸惑いながらも、 この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。 ※表紙はAI画像です

『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』

鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、 仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。 厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議―― 最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。 だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、 結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。 そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、 次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。 同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。 数々の試練が二人を襲うが―― 蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、 結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。 そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、 秘書と社長の関係を静かに越えていく。 「これからの人生も、そばで支えてほしい。」 それは、彼が初めて見せた弱さであり、 結衣だけに向けた真剣な想いだった。 秘書として。 一人の女性として。 結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。 仕事も恋も全力で駆け抜ける、 “冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。

モブ転生とはこんなもの

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。 乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。 今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。 いったいどうしたらいいのかしら……。 現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。 他サイトでも公開しています。

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない

ラム猫
恋愛
 幼い頃に、セリフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セリフィアはそれを喜んで受け入れた。  その後、十年以上彼と再会することはなかった。  三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セリフィアはその場を離れた。  しかし治療師として働いているセリフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。  それどころか、シルヴァードはセリフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。 「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」 「お願い、セリフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」 ※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。 ※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

処理中です...