奇夜に結ぶ鬼

蓮華空

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 東の空がうっすらと明るくなってきた早朝。辺りは未だ、蒼の世界に包まれていた。
 瀬菜は、布団から起き上がると、一つ溜息を付き着替えを済ませ、庭まで散歩に出る事にした。
 田舎の空気は、朝がまた格別にいい。空には、薄い雲がかかっているが、今日もきっと良い天気だろう。しかし、頭の中は、今朝のように晴れ渡ってはいなかった。
 昨夜は結局、あまり眠れなかった。胸の内に、ぽっかり穴の開いたような空虚感。こんな気持ちになるのは、久し振りかもしれない。
 瀬菜は池の縁に座り込みぼんやりと煌く水の中で優雅に泳ぐ鯉の姿を見つめていた。

「……恋がしたいな~」

 そんな言葉が口を付き、慌てて口を塞ぐ。

(私……、今、なんて言った??恋? 鯉を見てたら、恋ってか?――アホか!)

 自分で言った事に、一人突っ込みを入れながら両手で自身の顔を挟み、擦る。しかし、気づけば手が唇に触れていた。昨夜からの妙な感情の発端はこれだ。どうしても、昨夜の紅砂を想う。キスなんかしたのは、一体何年ぶりだろう。いや、日頃から軽い挨拶程度のキスはたくさんする。しかし、昨夜のような濃厚で優しげなのはほとんど無い。

 昨夜のは、強引な成り行きであったが、とても静かだった。そして優しかった。された瞬間は、このぉ~!と思ったが、紅砂の静かな表情が気持ちを和らげ次第に心地よくなっていった。
 瀬菜は過去の出来事からセックスに関して臆病になっていた。自分は遺伝子上、女ではない。染色体はXY。外観は女性であるが、体内には未熟な卵巣と精巣の両方を持っている。膣は途中3センチほどで塞がり、基本的にセックスが出来ない。だから、瀬菜は恋する事を放棄した。

(それなのに、今のこの気持ちはなんだろう……。私の心は、どうしてあの時あんなに穏やかになったのだろう?)

 静かに目を閉じていた紅砂の顔を思い出す。すると、それまでさざ波のように揺れていた自身の臆病な心が落ち着いてゆく。あの時の心境――、今は、過去の事など気にする必要がない、という安心感。それが瀬菜に、新たなる感情を吹き込んだようだ。

「いかん!いかん!こんな事では!しっかりしなくては……」

 頭をぶるぶる振って気持ちを落ち着ける。自分らしくない想いに囚われているのを必死で振り払う。

(私は、正式には女ではないのだ!何で今頃になって恋について考えているのだ、馬鹿馬鹿しい……)

「もう~、私のバカバカバカ!」

 と、自身の頭をポカポカやっていると、

「おはようございます。お早いですね」

 と、背後から声をかけられた。

(ゲっ!その声は――)

 瀬菜は恐る恐る振り返り、精一杯の愛想笑いを作りながら、

「おはようございます……。当主の方こそ、お早いですね~」

 と、挨拶をした。
 紅砂は、にっこりと笑い、

「昨夜は良く眠れましたか?」

「ええ、それなりに~」

 と、答えながら腹の中では、あんたのせいで全然だよ!と答えてる。

「それは、良かった」

「……」

 会話は途絶え、紅砂の穏やかな微笑みだけが不気味に続いた。

(私…、この人の沈黙の微笑みが怖い……。早くどっか行ってくれないかな~?)

「刈谷さん」

「はい!」

 突然の呼びかけに心臓が飛び出そうになる。しかも、名前を呼ぶ時、それまでの穏やかな笑みは消え、急に真剣な顔になるものだから余計だ。

「な、なんでしょう…?」

「昨夜の話の続きですが、どうしてもお願いしたい事があります」

「いや…、ですから、それは…」

 昨夜もその答えは出した筈だ。もう一度言ってやろうかと思ったが、目の前の紅砂に先ほどまでの余裕がない。それどころか、この願いを絶たれたら、後がないといったような切実な雰囲気がある。
 瀬菜の口から断る単語が消えた。
 それで、つい、訊いてしまった。

「なんですか?お願いって…?」

「あなたの血を分けてください」

「は?何で?」

 思いもよらない頼みごとに、あっけに取られている瀬菜を尻目に紅砂は手を引いて、

「ここでは、まずいのでこっちに来て下さい」

 と、母屋に向かおうとするのを、

「や、や…ちょっと、あなたの部屋は、もういやですよ!」

 と、念を押す。あの部屋に行ったらまた昨夜の事を意識してしまう。
 紅砂は、ピタリと止まり、少々申し訳なさそうな顔で、

「僕の部屋がダメとなると、もっと悲惨なところになると思いますけど……」

「だから、ここで話してくださいよ!」

「そうは言っても、ここでは~~」

 と、宙を仰いだ。何に警戒していると言うのだろう。

「まあ…、今だったら大丈夫そうですね。でも、なるべく誰にも聞かれたくないので近くに寄ってください」

「はい」

 渋々応じたが、紅砂の言う近い距離間が分からない。とりあえず、紅砂の手が届かない位置で止まった。でもさっきより、微妙に離れている。

「……もう少し、普通に隣に来てもいいでしょうに……」

 と、少々不機嫌に言いながら、紅砂の方から瀬菜の傍らに寄った。そして、手に持っていた袋から鯉の餌を取り出し瀬菜に渡すと、自身も鯉に餌をやり始めた。
 瀬菜も同じようにした。

「実は、結鬼の霊体を捕らえるのにあなたの血が必要なのです」

 そう小声で語りかける。

「何故、私の血なんですか?」

「あなたが実に良いバランスの半陰陽だからです。その血は、結鬼に大きなダメージを与えることが出来る」

「……いや、でも、結鬼って本当にいるんですか?」

「いますよ。あなたは見たでしょう」

「ですが、あれが結鬼だとうい証拠はないです。犠牲者でも出てるんですか?」

「ええ、四鵬がそうですよ。彼は隠してるけど……」

 瀬菜は目を丸くして驚いた。
 四鵬が、結鬼の犠牲者??まさか――!

「ちょっと、それこそ証拠はあるの?」

 紅砂は意味深に笑った。その笑みに、この人こそあの幽霊のような結鬼より怖い気がした。

 紅砂の視線が、不意に上空を仰ぐ。

「何を見てるのよ?」

 と、瀬菜が問うと、紅砂が瀬菜の口を塞ぎ、

「奴が戻ってきた」

 と、言った。

「何よ、奴って?」

「……結鬼」

「ーー!?」

 紅砂が突然、瀬菜を抱え込んで直ぐ近くにあった倉庫に滑り込んだ。

「この家には、奴が入れないよう結界が張ってあるが、こちらの動きが丸見えなんでね、この倉庫に入った。ここなら、奴が覗き見できないよう工夫してある」

「……」

 いつに無く、真剣な眼差しの紅砂であったが、本当かどうか分かったもんじゃない。

「とかなんとか言って、また変な事するんじゃないでしょうね!」

 瀬菜が疑いの目で見つめた。紅砂は小首を傾げて、

「変な事って、どんな事?」

 と、聞き返した。

「えっちな事」

 その返答に、紅砂が目をしばたたく。
 
「あなたとは……出来ませんよ」

「わ、分かってるわよ!そ、りゃあ、最後までは無理だけどさ~、でも……、触るじゃない!」

 瀬菜は頬染めた。

「あなただって、四鵬に触るじゃないですか?」

 紅砂が面白そうに訊いた。

「私のは、『芸術的な美の追求』!」

「僕は単に結鬼封じに役立つ体かどうか確認しただけですが……」

 すると瀬菜の頬が、むぅ~と膨れ出す。
 頬はまだほんのりと赤い。

「……でも、触り方がえっち。キスもしたし!」

「あれは……、あなたが騒がしくするからです」

 故意ではない、といった風に紅砂が顔をそらせながら言った。そして、何かを思い出したかのように向き直ると、瀬菜に、

「ああ、そうだ、何ならここで血を頂いてもいいですか?それと僅かの期間ですがあなたの想いを頂く事になります。その代わり僕の正体を知ることが出来る」

「それが交換条件?」

「ええ、一石二鳥だと思いますので…」

「私の想いってのは何?どうなるって言うの?」

 瀬菜が問い返すと紅砂は薄く微笑み。

「それは体感してみるっていうのは如何でしょう?」

「詳しく教えてくれないの?」

「伝えられて解ることでもない。感じるものですから…」

 瀬菜は僅かに考える素振りを見せたが、探偵の性分からかリスクについて考えるより好奇心が増した。言われて解らない感覚とはどういった感覚か?

「どうです?」

「うーん……、あなたの正体も気になるけど~、なんか気が乗らないわね~」

「そうですか」

 と、答えながら急激に瀬菜を抱き寄せる。

「ちょ…ちょっと、何、するのよ!」

 紅砂は後ろから強く抱きしめながら、不気味な気を発していた。

「……否、という答えはね……どの道ここまで来たら認められないですよ」

 その台詞と共に熱い吐息が瀬菜の首筋にかかり、紅砂の瞳が真紅に染まった。

(えーー?!この瞳の色はーー!!昨夜と同じ?!――やはり見間違えでは無かったのか?!)

 そう思った刹那、紅砂が首筋に牙を立てる。全身を駆け巡る鈍い痛み――、しかし、痛みの後に来たものは……?!

「はぁ、あぁぁぁぁぁぁあ!」

 突然襲ってきた快楽に、瀬菜は我慢できずに喘ぎ声を発した。
 紅砂が、瀬菜の口を塞ぐ。

 瀬菜の体は仰け反り強張っていく。全身が熱を帯びたように熱い。

(これが、絶頂というものなのだろうか?
止まらない――!この快楽!!)

 次から次へと襲ってくる快楽の本流に、瀬菜の目から涙がこぼれる。
 紅砂が血を嚥下していく音が聞こえる。

 ――ごくり、――ごくり――

 どれくらい時間が経ったのだろう?分からないけど、紅砂がゆっくり離れた頃には、体に一切の力が入らなかった。急激な血の損失による貧血もあったが、何より、紅砂が吸血している間の壮絶な快楽による疲労のほうが大きかった。瀬菜は息も絶え絶えに、そのまま紅砂にもたれかかった。

「何よ、正体って……、あんたこそ化け物じゃない?」

 まだ、頭の中が白泥としている。不思議な事に、人間ではないというのにちっとも紅砂が怖くない。

(初めて会った時は、怖いと思ったのに……。どうしてだろう……)

「そうですよ。元を正せば僕も結鬼。結鬼の完全体です」

 答えると同時に紅砂は咽た。
 瀬菜が顔を上げ様子を見ると紅砂の顔色が悪い。なんだか気持ちが悪そうだ。

「どうしたの?血を吸って精が付くんじゃないの?」

「いえ、あなたの血は完全体の僕にとっても毒なんです」

「じゃあ、何で吸ったのよ?」

「どんなものかな~と思って……」

「はぁ~?!バカじゃないの!あんた?」

「そうですね、だから、もう一回」

 自身で毒と言いながらも、紅砂はもう一度瀬菜の首筋に牙を立てた。
 何を考えているのか分からない。

「あ、あぁぁぁ!」

 瀬菜が思わず悶える。今度は、先ほどより短くすんだ。だが、さらに紅砂のダメージが強くなったようだ。瀬菜の肩に頭を乗せたまま、しばらく動かない。ふぅ~、と吐息が漏れたのは、どれくらい経ってからか?

「今のように、僕も吸っている間は、大変、心地よい。……あなたが感じていたように、僕も気持ちがいいのです。だが、あなたの血は後がひどい……」

(だったら、止めなよ……)

 と、瀬菜が心の中で呟く。

「あなた、何のためにこんなことするの?毒なんでしょ、私の血?」

「必要な事だからだよ」

 そう言って、ぐったりと瀬菜を抱えたまま、ずるずると座り込む。
 瀬菜も同時に座った。紅砂は、かなり辛そうだ。だが、ちらりと顔を上げ、瀬菜を見て微笑む。薄暗い物置の中で前髪の間から見える真紅の瞳が本気で綺麗だと思った。

「今なら、僕は何も出来ませんよ。後でこのお礼もしたいと思いますが、まずは、またお怒りでしょうから、今のうちに殴るなり蹴るなり好きなようにして下さい」

 しかし、こんなぐったりした奴に、一体何が出来るというのだろう。

「何言ってるのよ。そんな弱った状態のあんたをぶったたいてもつまらないじゃない……。何でこんなバカなことしなくちゃいけないの?」

「……四鵬に憑いている結鬼。あれは実体がないから、人間や僕のような同じ結鬼でも、奴らを捕らえる事は出来ないんだ」

「捕らえるつもりなの?」

「ああ、結鬼には、凝固体、幼体、完全体の三つの形態があるのですが、僕は完全体、四鵬に憑いている奴は幼体なんです。他の幼体なら放って置いても構わないのですが…」

 紅砂はここで言葉を濁した。

「それは、四鵬が犠牲者だから?四鵬を助けるため?」

「いや、彼は別にどうでもいい」

「は??」

「あいつは元から人じゃないから、基本、今のところどうでもいい……本人は知らないだろうけど……」

「へ?四鵬は一体何なの??」

「あいつは合いの子。結鬼と人間のね」

「えー!じゃあ、龍一も蘭武ちゃんも?」

「二人は違う、祖先を辿れば同じだけどね」

「そう…なんだ…」

(ん?…でも、何で四鵬だけ違うの??)

 小さな疑問に首をかしげる瀬菜を横目で楽しげに見つめながら、紅砂はもう一度瀬菜に腕を回し引き寄せた。

「ちょっと、何?」

 声が上ずり、期待に体が震えだす。

「あなた、まだ元気そうなのでもう少し取っても平気かな~?と思って…」

「でも、あんたが辛いんじゃないの?……あ…、あぁぁぁ!!」

 抵抗する間もなく、また吸われた。再度やってくる快楽に身をこがしながら、今度は瀬菜も紅砂にすがりつく。

 ――あぁ……気持ちいい!

 だが、何故か心地良さと同時に襲ってくる胸の内の侘しさ、切なさ……、これは一体なんなのだろう?なんでこんな感情が襲ってくるのか――?
でも…、でも…、快感と共にやってくる切なさが、

 儚くも愛しい――。

 紅砂がゆっくり離れた。だが、今度は瀬菜の方がそれを許さず紅砂を抱きしめる。と、言うよりすがりつく。

(どうしちゃったんだろう……、私……?離れたくない――)

 ゆっくりと顔を上げ、紅砂の顔を両手で包む。
体の奥で、まだ先ほどの余韻が残っていた。快楽が過ぎ去り、止め処なく広がって行く侘しさと切なさよ。



 ――この人は内面にこんな想いを背負っているのか――?



 その想いが、愛しさを呼ぶ――。



 ああ、もう体が命ずるままでいい――。



 瀬菜は紅砂の唇に勢いよく唇を重ねた。紅砂もそれを受ける。舌を互いに絡め合いながら紅砂を押し倒し、ねじ切るように激しく唇を押し付ける。息遣いも荒く紅砂の肌を求め、手は彼の胸をまさぐり彼の作務衣を引きずり下ろす。紅砂も瀬菜の腰に手を回し、彼女のシャツをめくり上げ脱がしていく。肌と肌を密着させ、お互い愛撫を重ねる。紅砂が乳房に触れだすと瀬菜の口から喘ぎ声がこぼれた。

「あぁぁぁ……」

 悶えながらも瀬菜は、紅砂を求め激しくキスをする。
 唇を重ねながら、紅砂が囁く。

「あなたの染色体はXY、しかし、男性フォルモンの分泌は少なく、その点では恐らく女性と変らない。膣が途中で塞がっていなかったら、気づかなかったでしょうね」

「そうよ…。その時まで分からなかったの。16歳の時の初体験でようやく…ね。……ショックだった」

 哀しげに瀬菜が呟く。
 
「その時の彼とは?」

 紅砂は唇を重ねたまま問いかける。

「さよならよ。後で私の遺伝子が男って分かったし、セックスもまともに出来ないしね」

「勿体無いことを…、愛を高め合うには挿入するだけが目的とは限らないのに……ねぇ?」

 そう問いながら、瀬菜の首筋に唇を這わせていく。

「う…」

 瀬菜は気持ち良さに身をくねらし紅砂の唇を求めた。

「これはいい傾向ですね。あなた、僕を求め出した」

「え?」

 そう言って、ニヤリと意味深げに笑うともう一度首筋から血を吸った。

「くうぅぅぅ」

 どうして後から苦痛を伴うのに、この男は私の血を吸うのか?
紅砂が離れ、彼女の問いかけが聞こえたかのように、

「どうして血を何度も吸うのか?って思ってるでしょ」

「ええ、私はいいけど…あなたは辛いでしょ?」

「ええ、ですが辛くなれば辛くなるほどいい。そうすればあの幼体にとっても毒が強くなる」

 では、さっきからこの反復する作業は毒を強めるための作業だというのか?

「それにはあなたの想いが必要なんです。染色体は男性。それなのに、男性と女性両方の生殖器を持ち、女性的な想いが籠もっている血がね。僕を求め出したあなたの血……、これは奴を苦しめるのに、うってつけですよ」

 そう言って紅砂は微笑んだ。

「あなた、最初から私にこんな事するつもりだったの?」

 紅砂は、くすりと笑い。

「ええ、ずっと探していたんですよ。あなたのような方を…でも中々見つからなくて困っていた。そしたらあなたの方から僕の前に現れた。……鴨ねぎでしたね」

 瀬菜は唖然とした。

(あたしは丁度いいタイミングでこの人の前に現れちゃったのか?)
 
 紅砂はくるりと体位を変え、瀬菜の上に重なった。
鼻先がぶつかり合う距離から、ルビーのような瞳を熱っぽく潤ませ囁いた。

「改めて…、あなたを抱いてもいいですか?」

「え?!な…なんで!!」

 口ごもる瀬菜に紅砂は言った。

「吸血の後はどうしても性欲が増す。あなたの血は毒に等しいからそんな風にならないかと思ったのですが、そうでもないらしい……。」

「でも、私は……」

 ――膣が塞がっているのだ……

 紅砂は瀬菜を抱きしめたまま耳元で囁いた。

「挿入できる場所はもう一つあるでしょう」

「えーー!!でもそこは……」

 瀬菜の戸惑いも問答無用で覆いかぶさり、瀬菜は快楽の本流へと流されていった。




 濃厚な交わりの後、二人が倉庫を立ち去ると、その中で小さな影がもぞもぞと動き出した。

 ふぅ~、と息をついたところをみると、二人がいる間もじっとそこで隠れて居たらしい。

「まったく~あのやろうぉ!おでがいるっつーのに、おでのすみかで、ちちくりあいやがってぇー、ふてぇ~やろうだ!」

 と、たどたどしく憤る幼げな声が聞こえた。
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