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紅砂を追って、東シナ海の海流を南西へと逆方向に泳ぎ、コンラッドは家路島列島最南端の父島へと上陸した。
この島は一切、人の気配がしない。それもそのはず、父島は年に何度か高い噴煙を上げ続けている活火山だ。
コンラッドが上陸した地は、500年ほど前の大爆発で溶岩が流れ出し、子島と陸続きになってできた新しい大地であった。
彼は辺りを見回して紅砂の気配を探るが、居所が掴めない。この陸地に居ることだけは分かるが、この地の風は読みにくい。本来なら結鬼の鋭敏な神経を尖らせ、集中すれば風の動きから距離的にも容易に居場所が確認できるはずだ。しかし、分からない。
溶岩原が続く地を歩きながら、コンラッドは前方の噴煙を上げている丘をみた。
憤怒嶽と呼ばれる父島の怒れる丘。
今は静けさを保った憤怒嶽の裾には、黒々とした溶岩がしばしばガラスのような光沢を放ち、月明かりを反射して神秘的な青白い世界を作り出していた。
この月明かりが齎す蒼の世界と、潮騒の音が穏やかに木霊する自然に、コンラッドは自分の居場所を見失った。
自分は何のために、この地を訪れたのか?
アドリエンの目的など、自分はどうでもいいことなのだ。
珍しく一人、アドリエンの目の届かぬ辺境の地まで来たのだ。だったら、アドリエンの命令を無視し逃げても良いのだ。
そんな思いが脳裏を過ぎる。
だが、体はそんな自分の意に反して父島の風をコントロールしようと集めていた。
コンラッドの口元に笑みが浮かぶ。
自身の矛盾した行動に思わず自嘲したのだ。
前方に聳える憤怒嶽から吹き降ろしてくる風を掴み、海から引き寄せた湿度の高い風と混ぜ合わせ、身の回りで回転を加えながら、一気に上昇する。
コンラッドは上空から紅砂の姿を探した。
憤怒嶽を超えると次に聳えるのは、父島の最高峰、花之悲壮岳だ。標高1995mに達し、冬には南国に位置しながら積雪も見られ、島の雨量も多いことから亜熱帯から冷帯まで多種多様な植物が息づいている。加えて、ここは神の地として神聖視された島のため、人の出入りはほとんどない。お陰でありのままの自然が壊されることなく今も温存している。
コンラッドは花之悲壮岳も超え、その麓に降り立った。
父島には四つの山々が対角を為す様に聳えている。
コンラッドが降りた地は、その山々に覆われた中心部、原生林と深い谷が特徴的な地であった。
彼は谷の中央に出来た黒く輝く池のほとりをしばらく歩いてみた。
山々に囲まれ、麓から見上げた空は、四方からの圧迫により興醒めするほど狭くつまらない空だと彼は思った。
コンラッドは苛立たしげにブーツの刃物を飛び出させると、辺り一帯の木々を切り付け始めた。 自然のままに伸び行く木々が鬱陶しいのだ。
すると、紅砂の気配を乗せた風が南から吹きつけた。
コンラッドの眉根が寄り、彼の内部から黒い霧が立ち上る。
紅砂に対して恨みがあるのは、アドリエンであって彼自身ではないはずだ。それなのに何故、自分の内部で紅砂に対する憎しみが膨れ上がるのか、疑問に思いながらもコンラッドは、風に誘われるまま地を蹴り、紅砂の気配の元へと飛び立った。
フランス──パリから東へ30kmほど離れた、公園を思わせる住宅街にやって来た龍一は、ジーナという名の少女と、彼女が産んだヴァンパイアの子供を連れ、弟子であり大切な友人であるルークの家に転がり込んだ。
幸いな事にルークは開業医をやっている。
そこでジーナの容態を診てもらった後、早々に龍一はルークの家を後にした。
彼はしきりに、「何があった?この娘の両親は?子供はどうした?」と色々質問してきたが、何も聞かずに診てくれるよう頼んだ。本当の事を大切な友人に話すわけにはいかない……。この娘とヴァンパイアの子供を狙っているのは、これもまたヴァンパイアなのだ。
アドリエンは銃も持っていた。彼を危険に巻き込むわけにはいかない。
龍一はルークから車を借り、ジーナとヴァンパイアの子供を乗せ、パリ郊外の田舎町を走っていた。とりあえず、ジーナは子供を大事そうに抱えながら安心したように寝息を立てていた。
もうすぐ、夜が明けようとしている。辺りはまだ薄暗かったが、龍一は何も無い農地の横にある木の下に車を止めると、自身も少し休息を取るためシートを横に倒した。
腕時計を見、今から1時間ほど眠れたらいいだろう……。そんな事を考えながら、目を閉じる。
すると突然、──ベタ!という何かが車に張り付く気配を感じ、龍一は目を開いた。
車のフロントガラスにニットのパイロット帽を被った3歳くらいの幼児が張り付いている。
「うわぁぁ!!」
思わず驚きの声を出す。
幼児は、じっと車内を見ている。
幼児の独特な色合いの瞳に、懐かしさを感じたが、誰だったか思い出す間もないまま、ふくよかで小さな口から不思議な呪文が聞こえてきた。
「りゅういち~~、高位けっきを産んだ、きんぱつへきがんの超絶美少女ぱいぱいちゃんはどこだ?」
「は?」
言ってる意味がさっぱり分からない……。分かる事は、この子は何故、龍一の名前を知っているのかという疑問だ。
「らえんが言ってたんだぞ~、きんぱつ美少女ぱいぱいちゃんが、おでを待ってるてぇ~」
「らえん……?」
龍一はこの名でやっとピンと来た。
「らえんとは紅砂のことか?」
「そうだよぉ~、おまえたちが紅砂とよぶ、あのあんぽんたんのおっぺけぺーのぷよぷよぷーのすっとこどっこいな奴だよ~」
(ひどい言われようだ……)
「なあ~、りゅういち~、おまえのじょしゅせきにいる娘がけっきを産んだ娘かぁ~?」
(けっき? ……なんだか分からないがジーナの事だろう……)
「ああ、そうだが……」
龍一がそう答えた途端、フロントガラスに張り付いていた幼児が泣き出した。
「うわぁ~ん……きんぱつじゃないよぉ~~! らえんのやつにまただまされたぁ~~!」
(一体何の事だろう……? そういえば、紅砂はこっちに技術者を送ると言っていたが、まさかこの子の事ではないだろう……)
龍一は疑いの目を幼児に向けながら問いかけた。
「君は一体、何者だ? 紅砂とはどういう関係だ?」
「おでは、らえんの父親だ」
「……は?」
言ってる事、悉く理解が出来ない──。
どうみても3歳くらいの幼児にしか見えない子供が紅砂の父親になり得るのか……?逆だったら話は分かる。龍一はそう思って、もう一度訊いてみた。幼児の言い間違いかもしれない。
「紅砂…『が』父親か?」
「ちがう! ……まあ今はそででもいいけどな……みたかんじ、どうしたってそうなるわな! あいつはいやがるけどな
~」
そう言って、きしし…と意地悪く笑い、するりと車の中に入ってきた。
車の中に入るなり、龍一の膝の上に乗るとジーナに向かって指を曲げたり伸ばしたりしている。
先ほどからジーナも目を覚まし、ヴァンパイアの子供を抱きしめ不思議そうにその様子を見つめていた。
「さぁ~、ぱいぱいちゃん、おっぱいをだしなさい! おではそのためにはるばるフランスまできたのだぁ~! あんしんしたまえ、おでのごぉるでんふぃんがぁーにかかったら、すぐにぼにゅうーがでるからな~、さぁ! さぁ! さっさとだしたまえ~~」
そう言ってジーナに迫る姿はさながら亡者の様相を呈していた。
ジーナも薄気味悪そうに身を引いてゆく。
さぁ!さぁ!と、なおもパイロット帽の幼児が迫り、ジーナに触れた瞬間──ぎゃぁぁぁー!という悲鳴と共に幼児は飛び上がるなり龍一の首にしがみつく。
「高位けっき!」
ジーナの腕に抱かれた赤子が目を真紅に染め、牙を剥いて威嚇している。
その赤子が口を開いた。
「この娘の母乳の出は良い。お陰で既に平均的な新生児の大きさに成長できた。マッサージは不要だ」
と言った。
幼児は、え───!!と落胆の声を上げるなり、へなへなとその場に崩れ折れた。
「おではいったいなんのためにここへ……」
それを聞きたいのはこっちである。
「紅砂はこちらに技術者を送ると言っていたが……」
龍一が答える。
幼児は恨みがましく龍一の顔を見ると、
「らえんがそういっていたのか?」
「ああ…」
「あのやろうぉ~、さいしょからそのつもりで、おでをおいやったな~。くっそー! こうやっておではいつも悲惨な目にあわされるんだ! こんどというこんどは、あいつとおやこの縁をきってやる!」
と憤っていた。
紅砂がそれを聞いたら、紅砂のほうこそきっと、こっちの台詞だ、というだろう……。
幼児は突然、しんみりとした様子になり、力なくうな垂れるとゆっくり話し始めた。
「もうよ~、あいつとはかれこれ1800年の付き合いだ。そろそろ、愛もさめてきたようだな~」
と、随分哀しそうに呟いた……。
1800年?
こいつら一体何年生きているのだ?
「もうさ……最近では、ぬくもりってのがねぇ~んだよ……おやこのさ、あったか~いぬくもり……おもいやりってのがかんじられなくなっちまったんだ……。かなしいね~、さみしいね~、…うぅ…」
そう言いながら、ひっくひっくと鼻を啜り上げる。
「きいてくれるかぁ~、りゅういち~、あいつはな~、凝固体期からふっかつしたばかりのあかごのおでを、こともあろうに、ほにゅうびんでそだてたんだぞ! いいか! ほにゅうびんだぞ!! そんなの……あいがなさすぎるだろぉ~!」
おおぅ……と言って泣き崩れた。
(……やっぱり意味が分からない……)
言ってる内容が理解出来ないから、何が悪いのかも分からない……。
「むかしは良かった~。ほにゅうびんなどというのもがないから、ぼにゅうの出るわかいおっかちゃんをさがし、うまうま飲むんだ~。あぁ~、あの頃にもどりてぇ~な~」
と、言った後、あぁ~おっぱいに触りたい……と呟く。
とどのつまりは、そういうことか……、と龍一は聞くだけ面倒と思い放って寝る事にした。とりあえず、敵ではないようだ。
この島は一切、人の気配がしない。それもそのはず、父島は年に何度か高い噴煙を上げ続けている活火山だ。
コンラッドが上陸した地は、500年ほど前の大爆発で溶岩が流れ出し、子島と陸続きになってできた新しい大地であった。
彼は辺りを見回して紅砂の気配を探るが、居所が掴めない。この陸地に居ることだけは分かるが、この地の風は読みにくい。本来なら結鬼の鋭敏な神経を尖らせ、集中すれば風の動きから距離的にも容易に居場所が確認できるはずだ。しかし、分からない。
溶岩原が続く地を歩きながら、コンラッドは前方の噴煙を上げている丘をみた。
憤怒嶽と呼ばれる父島の怒れる丘。
今は静けさを保った憤怒嶽の裾には、黒々とした溶岩がしばしばガラスのような光沢を放ち、月明かりを反射して神秘的な青白い世界を作り出していた。
この月明かりが齎す蒼の世界と、潮騒の音が穏やかに木霊する自然に、コンラッドは自分の居場所を見失った。
自分は何のために、この地を訪れたのか?
アドリエンの目的など、自分はどうでもいいことなのだ。
珍しく一人、アドリエンの目の届かぬ辺境の地まで来たのだ。だったら、アドリエンの命令を無視し逃げても良いのだ。
そんな思いが脳裏を過ぎる。
だが、体はそんな自分の意に反して父島の風をコントロールしようと集めていた。
コンラッドの口元に笑みが浮かぶ。
自身の矛盾した行動に思わず自嘲したのだ。
前方に聳える憤怒嶽から吹き降ろしてくる風を掴み、海から引き寄せた湿度の高い風と混ぜ合わせ、身の回りで回転を加えながら、一気に上昇する。
コンラッドは上空から紅砂の姿を探した。
憤怒嶽を超えると次に聳えるのは、父島の最高峰、花之悲壮岳だ。標高1995mに達し、冬には南国に位置しながら積雪も見られ、島の雨量も多いことから亜熱帯から冷帯まで多種多様な植物が息づいている。加えて、ここは神の地として神聖視された島のため、人の出入りはほとんどない。お陰でありのままの自然が壊されることなく今も温存している。
コンラッドは花之悲壮岳も超え、その麓に降り立った。
父島には四つの山々が対角を為す様に聳えている。
コンラッドが降りた地は、その山々に覆われた中心部、原生林と深い谷が特徴的な地であった。
彼は谷の中央に出来た黒く輝く池のほとりをしばらく歩いてみた。
山々に囲まれ、麓から見上げた空は、四方からの圧迫により興醒めするほど狭くつまらない空だと彼は思った。
コンラッドは苛立たしげにブーツの刃物を飛び出させると、辺り一帯の木々を切り付け始めた。 自然のままに伸び行く木々が鬱陶しいのだ。
すると、紅砂の気配を乗せた風が南から吹きつけた。
コンラッドの眉根が寄り、彼の内部から黒い霧が立ち上る。
紅砂に対して恨みがあるのは、アドリエンであって彼自身ではないはずだ。それなのに何故、自分の内部で紅砂に対する憎しみが膨れ上がるのか、疑問に思いながらもコンラッドは、風に誘われるまま地を蹴り、紅砂の気配の元へと飛び立った。
フランス──パリから東へ30kmほど離れた、公園を思わせる住宅街にやって来た龍一は、ジーナという名の少女と、彼女が産んだヴァンパイアの子供を連れ、弟子であり大切な友人であるルークの家に転がり込んだ。
幸いな事にルークは開業医をやっている。
そこでジーナの容態を診てもらった後、早々に龍一はルークの家を後にした。
彼はしきりに、「何があった?この娘の両親は?子供はどうした?」と色々質問してきたが、何も聞かずに診てくれるよう頼んだ。本当の事を大切な友人に話すわけにはいかない……。この娘とヴァンパイアの子供を狙っているのは、これもまたヴァンパイアなのだ。
アドリエンは銃も持っていた。彼を危険に巻き込むわけにはいかない。
龍一はルークから車を借り、ジーナとヴァンパイアの子供を乗せ、パリ郊外の田舎町を走っていた。とりあえず、ジーナは子供を大事そうに抱えながら安心したように寝息を立てていた。
もうすぐ、夜が明けようとしている。辺りはまだ薄暗かったが、龍一は何も無い農地の横にある木の下に車を止めると、自身も少し休息を取るためシートを横に倒した。
腕時計を見、今から1時間ほど眠れたらいいだろう……。そんな事を考えながら、目を閉じる。
すると突然、──ベタ!という何かが車に張り付く気配を感じ、龍一は目を開いた。
車のフロントガラスにニットのパイロット帽を被った3歳くらいの幼児が張り付いている。
「うわぁぁ!!」
思わず驚きの声を出す。
幼児は、じっと車内を見ている。
幼児の独特な色合いの瞳に、懐かしさを感じたが、誰だったか思い出す間もないまま、ふくよかで小さな口から不思議な呪文が聞こえてきた。
「りゅういち~~、高位けっきを産んだ、きんぱつへきがんの超絶美少女ぱいぱいちゃんはどこだ?」
「は?」
言ってる意味がさっぱり分からない……。分かる事は、この子は何故、龍一の名前を知っているのかという疑問だ。
「らえんが言ってたんだぞ~、きんぱつ美少女ぱいぱいちゃんが、おでを待ってるてぇ~」
「らえん……?」
龍一はこの名でやっとピンと来た。
「らえんとは紅砂のことか?」
「そうだよぉ~、おまえたちが紅砂とよぶ、あのあんぽんたんのおっぺけぺーのぷよぷよぷーのすっとこどっこいな奴だよ~」
(ひどい言われようだ……)
「なあ~、りゅういち~、おまえのじょしゅせきにいる娘がけっきを産んだ娘かぁ~?」
(けっき? ……なんだか分からないがジーナの事だろう……)
「ああ、そうだが……」
龍一がそう答えた途端、フロントガラスに張り付いていた幼児が泣き出した。
「うわぁ~ん……きんぱつじゃないよぉ~~! らえんのやつにまただまされたぁ~~!」
(一体何の事だろう……? そういえば、紅砂はこっちに技術者を送ると言っていたが、まさかこの子の事ではないだろう……)
龍一は疑いの目を幼児に向けながら問いかけた。
「君は一体、何者だ? 紅砂とはどういう関係だ?」
「おでは、らえんの父親だ」
「……は?」
言ってる事、悉く理解が出来ない──。
どうみても3歳くらいの幼児にしか見えない子供が紅砂の父親になり得るのか……?逆だったら話は分かる。龍一はそう思って、もう一度訊いてみた。幼児の言い間違いかもしれない。
「紅砂…『が』父親か?」
「ちがう! ……まあ今はそででもいいけどな……みたかんじ、どうしたってそうなるわな! あいつはいやがるけどな
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そう言って、きしし…と意地悪く笑い、するりと車の中に入ってきた。
車の中に入るなり、龍一の膝の上に乗るとジーナに向かって指を曲げたり伸ばしたりしている。
先ほどからジーナも目を覚まし、ヴァンパイアの子供を抱きしめ不思議そうにその様子を見つめていた。
「さぁ~、ぱいぱいちゃん、おっぱいをだしなさい! おではそのためにはるばるフランスまできたのだぁ~! あんしんしたまえ、おでのごぉるでんふぃんがぁーにかかったら、すぐにぼにゅうーがでるからな~、さぁ! さぁ! さっさとだしたまえ~~」
そう言ってジーナに迫る姿はさながら亡者の様相を呈していた。
ジーナも薄気味悪そうに身を引いてゆく。
さぁ!さぁ!と、なおもパイロット帽の幼児が迫り、ジーナに触れた瞬間──ぎゃぁぁぁー!という悲鳴と共に幼児は飛び上がるなり龍一の首にしがみつく。
「高位けっき!」
ジーナの腕に抱かれた赤子が目を真紅に染め、牙を剥いて威嚇している。
その赤子が口を開いた。
「この娘の母乳の出は良い。お陰で既に平均的な新生児の大きさに成長できた。マッサージは不要だ」
と言った。
幼児は、え───!!と落胆の声を上げるなり、へなへなとその場に崩れ折れた。
「おではいったいなんのためにここへ……」
それを聞きたいのはこっちである。
「紅砂はこちらに技術者を送ると言っていたが……」
龍一が答える。
幼児は恨みがましく龍一の顔を見ると、
「らえんがそういっていたのか?」
「ああ…」
「あのやろうぉ~、さいしょからそのつもりで、おでをおいやったな~。くっそー! こうやっておではいつも悲惨な目にあわされるんだ! こんどというこんどは、あいつとおやこの縁をきってやる!」
と憤っていた。
紅砂がそれを聞いたら、紅砂のほうこそきっと、こっちの台詞だ、というだろう……。
幼児は突然、しんみりとした様子になり、力なくうな垂れるとゆっくり話し始めた。
「もうよ~、あいつとはかれこれ1800年の付き合いだ。そろそろ、愛もさめてきたようだな~」
と、随分哀しそうに呟いた……。
1800年?
こいつら一体何年生きているのだ?
「もうさ……最近では、ぬくもりってのがねぇ~んだよ……おやこのさ、あったか~いぬくもり……おもいやりってのがかんじられなくなっちまったんだ……。かなしいね~、さみしいね~、…うぅ…」
そう言いながら、ひっくひっくと鼻を啜り上げる。
「きいてくれるかぁ~、りゅういち~、あいつはな~、凝固体期からふっかつしたばかりのあかごのおでを、こともあろうに、ほにゅうびんでそだてたんだぞ! いいか! ほにゅうびんだぞ!! そんなの……あいがなさすぎるだろぉ~!」
おおぅ……と言って泣き崩れた。
(……やっぱり意味が分からない……)
言ってる内容が理解出来ないから、何が悪いのかも分からない……。
「むかしは良かった~。ほにゅうびんなどというのもがないから、ぼにゅうの出るわかいおっかちゃんをさがし、うまうま飲むんだ~。あぁ~、あの頃にもどりてぇ~な~」
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