どこまでも近くて遠い君

蓮華空

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摩矢episode2

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◇◇◇

 俺は家に帰ると真っ直ぐ2階へと上がった。そして、妹の部屋の前にある鍵棒を手にし、天井の鍵穴に引っ掻け扉を開けると、そこから釣り梯子を下ろした。

 俺はこの梯子を上がった屋根裏部屋に棲息している。
 屋根裏部屋に上がると、俺は釣り梯子を収納した。こうすれば家族ですら入って来れない静寂で神聖なの空間が産まれる。

 屋根裏部屋だから天井は三角形になっていて狭いのだが、この空間が俺にとっては最高の環境だった。

 俺は身を屈め制服のブレザーを脱ぐと、そのまま寝台に横たわった。

 頭の中で桜木とあの女の姿が過り、胸が傷んだ。



 ──そう

 俺は保育園時代から桜木が好きだ。

 好きで好きでどうしようもないほど、好きだ。

 どんなに否定しても、諦めようとしても、この気持ちだけは餓鬼の頃から決して変わらない。

 もしも、明日、世界中の人間が抹消されたとしても、俺は桜木さえ居ればそれでいい。

 このまま誰にも会わず、接することもなく一生涯を過ごせ、と言われたら喜んで出来るが、桜木と会えなくなるのだけは耐えられない。そんな事になったら、生きてる意味もない。

 いつでも俺の側に居て、頼んでもいない世話をせっせと焼いて、ずっと構っていて欲しい。
 俺がどんなにそっけない態度を取っても、悪態を吐いても、はいはい、わかった、わかった、と言って優しく笑っていて欲しい。

 だが、俺は男だ。奴の恋人になんかなり得ない。出来て友人。しかし、友人という居場所はかなり過酷で残酷な居場所だった──。

 俺は何度、あいつの恋話を聞かされた?

 あいつが初めて彼女とキスした時のこと。手を繋いだ時のこと。彼女と初体験した時のこと。

 幼なじみという、友人よりも更に近いような関係が、あいつと彼女の詳細な出来事を聞かされる羽目になる。
 そして、これからはまたあの女との話を聞かされるのだ。

 そう思うと俺の心臓は、深海3000kmの底に沈ずむのと同じ苦しみに陥った。

 あの時──、何で俺はあんなことを言ったんだ?

 『付き合えば』なんて心にもないことを……。

 たが──。







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