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摩矢episode2
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「この食虫花野郎。新しい獲物はどうした?もう食ってきたか?」
突然の俺の言葉に桜木は柳眉な眉を歪めた。
「相変わらず酷いなあ、その言い方。食べるわけないでしょ、初日だよ」
桜木は体を曲げて室内に侵入してきた。
俺より頭一つは背が高く、そして、顔のパーツはどれをとっても美しく惚れ惚れするバランスだ。
「その言い方だとやっぱり付き合うのか?」
こんな男と付き合える女が本当に羨ましい。
「うん。まあ、不安要素もあるけどね」
桜木は肩を竦めてみせた。
「不安要素?」
「だってさあ、俺って今まで長続きしたことないだろ?」
「そりゃそうだ」
即座に言うと桜木は指を指し、──それそれ!!と言った。
「何で秋ちゃんはそんな当たり前のように言うの?!俺の何がいけなかった?」
──全くだ。あの糞女共め!
これだけハイレベルの男と付き合うんだ。だったら初めからそれだけの覚悟と度胸を持て!みんな努力と根性が足りなすぎる!
……とは言っても、桜木と付き合う事に耐えきれず別れを切り出す女達の気持ちも俺は分からないでもない。
「お前が鈍感だからだろ?」
俺が吐き捨てると、桜木はぎゃふんとなって、力なく床に座り込んだ。
──いけね……、はっきり言い過ぎたか?
「あのさー、俺が鈍感って……どこがどんな風に鈍感なの?
俺はいつも出来る限り努力してきたよ。気になる事や嫌な事があったら話してくれっていつも言ってきたし……なのにみんな何も言ってくれず、傷付いた顔をして別れを切り出すんだ。一体、何なんだよ。
ねえ、秋ちゃん。分かってるなら教えてよ。俺はもう、あんな思いをするのは嫌だよ……」
半顔を掌で隠した状態で、苦し気にこちらをチラリと覗いてくる。その表情がまた俺の心臓をざわめかせた。
俺は本当に嫌な奴だ。
好きな奴が苦しんでいるのに、それでも教えてやるとは言えない。寧ろ俺は桜木が破局するのを待っている最低な野郎だ。
「なんかさあ……俺のやることって、いつも裏目に出てる気がする」
桜木は頭を抱えて落ち込んでいた。
こういうとき友達なら、お前は何も悪くない、と言ってやるところなんだろうが、俺は何も口には出さなかった。
どんなに桜木が苦しんだって、俺からしたら彼女と別れてくれた方が嬉しいのだから仕方がない。
桜木は俯いたまま、俺が床に倒したギターを力なく爪弾いた。
不安定で悲しげな音が切なく部屋に響き渡る。
(──なんて音を出しやがるんだ……。これがこれから交際をスタートさせようという男が出す音か?)
桜木は中学の頃から合わせて6人の女と付き合ってきたが、そのどれもが相手から告白してきて、2カ月くらいで別れを切り出されている。
これだけ重なると、例え大雑把でおおらかな桜木でも流石に辛かったとみえる。
ギターを見つめる臥せた横顔がとても寂しげに見えて、俺の胸ははち切れるような痛みが走った。そして、気が付けばまた余計な言葉を紡ぎ出していた。
「……だから、前々から言っているだろう。お前は優し過ぎるんだ。優し過ぎるのも相手からは重荷になるんだよ。たまには女に甘えて駄目男を演じてみろ。そうすりゃ女の方も自分が居なくちゃ駄目なんだと思うようになって、早々別れたりはしないさ。恋愛に相互依存は必要だぞ」
俺は慌てて自分の口許を押さえた。
ぽかーんと桜木がアホ面ぶら下げてこっちを見ている。俺は桜木と目を合わせたくなくて、何気無い素振りで自分のデスクに戻った。そして、刺繍にまた意識を集中した。
その間、桜木は何かを考えているようだったが、やがてブツブツと、「甘える……甘える……」とひとつの単語を呟き始めた。
ここまで言ってもこいつにはその感覚が分からないようだった。それも仕方がないのかもしれない。
突然の俺の言葉に桜木は柳眉な眉を歪めた。
「相変わらず酷いなあ、その言い方。食べるわけないでしょ、初日だよ」
桜木は体を曲げて室内に侵入してきた。
俺より頭一つは背が高く、そして、顔のパーツはどれをとっても美しく惚れ惚れするバランスだ。
「その言い方だとやっぱり付き合うのか?」
こんな男と付き合える女が本当に羨ましい。
「うん。まあ、不安要素もあるけどね」
桜木は肩を竦めてみせた。
「不安要素?」
「だってさあ、俺って今まで長続きしたことないだろ?」
「そりゃそうだ」
即座に言うと桜木は指を指し、──それそれ!!と言った。
「何で秋ちゃんはそんな当たり前のように言うの?!俺の何がいけなかった?」
──全くだ。あの糞女共め!
これだけハイレベルの男と付き合うんだ。だったら初めからそれだけの覚悟と度胸を持て!みんな努力と根性が足りなすぎる!
……とは言っても、桜木と付き合う事に耐えきれず別れを切り出す女達の気持ちも俺は分からないでもない。
「お前が鈍感だからだろ?」
俺が吐き捨てると、桜木はぎゃふんとなって、力なく床に座り込んだ。
──いけね……、はっきり言い過ぎたか?
「あのさー、俺が鈍感って……どこがどんな風に鈍感なの?
俺はいつも出来る限り努力してきたよ。気になる事や嫌な事があったら話してくれっていつも言ってきたし……なのにみんな何も言ってくれず、傷付いた顔をして別れを切り出すんだ。一体、何なんだよ。
ねえ、秋ちゃん。分かってるなら教えてよ。俺はもう、あんな思いをするのは嫌だよ……」
半顔を掌で隠した状態で、苦し気にこちらをチラリと覗いてくる。その表情がまた俺の心臓をざわめかせた。
俺は本当に嫌な奴だ。
好きな奴が苦しんでいるのに、それでも教えてやるとは言えない。寧ろ俺は桜木が破局するのを待っている最低な野郎だ。
「なんかさあ……俺のやることって、いつも裏目に出てる気がする」
桜木は頭を抱えて落ち込んでいた。
こういうとき友達なら、お前は何も悪くない、と言ってやるところなんだろうが、俺は何も口には出さなかった。
どんなに桜木が苦しんだって、俺からしたら彼女と別れてくれた方が嬉しいのだから仕方がない。
桜木は俯いたまま、俺が床に倒したギターを力なく爪弾いた。
不安定で悲しげな音が切なく部屋に響き渡る。
(──なんて音を出しやがるんだ……。これがこれから交際をスタートさせようという男が出す音か?)
桜木は中学の頃から合わせて6人の女と付き合ってきたが、そのどれもが相手から告白してきて、2カ月くらいで別れを切り出されている。
これだけ重なると、例え大雑把でおおらかな桜木でも流石に辛かったとみえる。
ギターを見つめる臥せた横顔がとても寂しげに見えて、俺の胸ははち切れるような痛みが走った。そして、気が付けばまた余計な言葉を紡ぎ出していた。
「……だから、前々から言っているだろう。お前は優し過ぎるんだ。優し過ぎるのも相手からは重荷になるんだよ。たまには女に甘えて駄目男を演じてみろ。そうすりゃ女の方も自分が居なくちゃ駄目なんだと思うようになって、早々別れたりはしないさ。恋愛に相互依存は必要だぞ」
俺は慌てて自分の口許を押さえた。
ぽかーんと桜木がアホ面ぶら下げてこっちを見ている。俺は桜木と目を合わせたくなくて、何気無い素振りで自分のデスクに戻った。そして、刺繍にまた意識を集中した。
その間、桜木は何かを考えているようだったが、やがてブツブツと、「甘える……甘える……」とひとつの単語を呟き始めた。
ここまで言ってもこいつにはその感覚が分からないようだった。それも仕方がないのかもしれない。
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