暗い記憶が導く場所へ

蓮華空

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陶也side1

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 翌朝の事だった。まだ、ベッドで二人、抱き合って眠っていた所に、陶也の携帯が鳴った。

 通知を見ると、非通知だった。時間はーー、ベッドに埋め込まれたデジタル時計を見たら、8時10分だった。

 通話ボタンを押すと、女の声で、『初めまして。如月陶也くん。昨日は自転車をどうも有り難う』と英語で言われた。イザヤの母親。サラ・フォスターだ。何故、陶也の番号を知っているのか?嫌な予感がした。

「は、はい、あの……どちら様ですか?」

 陶也は緊張を抑え、わざと惚けた返事をした。

『取り敢えず、今すぐ朝のニュースでも観てくれる?』

 陶也は慌ててテレビのリモコンを探し、電源をオンにした。そして、チャンネルを漁ると、あった!

 嫌な予感が的中した。

 テレビに映った将太の顔写真と誘拐の文字。

 昨夜、将太と小川さん親子が陶也の家を訪ね、小川さんが何者かに暴行を受けた。その後、犯人は将太を連れ去ったと報道していた。

 陶也は蒼白となった。

「肉団子……?」

 テレビの音で起きたイザヤも隣で蒼白となっていた。

 液晶画面には、陶也の家が映り、警察が現場検証をする、物々しい様子が流れていた。

「おい!陶也、これは一体、どういう事だ!肉団子に何があった!」

 イザヤが跳ね起き、テレビを指差しながら陶也を捲し立てる。

 だが、陶也はイザヤを制止して、通話相手に話しかけた。

「将太は無事ですか?」

 陶也の言葉に、目の前のイザヤが素早く反応する。怒気を孕んだ鋭い視線で、低く唸った。

「おい、陶也。相手、誰だよ?」

 殺意がただ漏れだ。

『そこにイザヤがいるんでしょ。代わってくれる?』

 面倒臭そうに母親が言う。
 陶也は毅然とした態度で答えた。

「いいえ、代わりません。お話は僕が聞きます」

 その瞬間、母親は豹変した。

『いいから、言う通りにしなっ!!お前みたいな餓鬼と話す気なんかねぇよ!とっととイザヤを出せぇ!!!さもなきゃ、まん丸の餓鬼に風穴開けるよ!!』

 母親が怒鳴ると、近くで将太の鳴き声が聞こえた。

 ーー落ち着け、落ち着け。動揺したら、この女の思うツボだ。

 隣ではイザヤが、肉団子はどうなってるんだ!と怒鳴り立て、電話を代われ!と陶也の携帯を奪おうとする。

 陶也は部屋中を、イザヤの手から逃げながら話を続けた。

「僕と将太を交換して下さい。あなたの目的はイザヤでしょ。イザヤを取り戻せばいいんでしょ。だったら、そこに僕も付けて下さい。ーー僕の方が利用価値、絶対に有ると思います」

「何言ってるんだ!陶也!!電話の相手は糞女だろ?!その女の相手なんかするな!俺と代われ!!」

 イザヤが無理やり陶也から携帯をもぎ取ろうとする。 イザヤに代わった所で、この親子では、話にならない。だが、力ではイザヤに敵わず、陶也は電話を奪われそうになった。陶也はイザヤに向かって怒鳴った。

「イザヤこそ、黙って!!無茶はしないと約束したでしょ!!!」

 イザヤの動きがピタリと止まった。

 通話口に耳を当てると、向こうから『ふんっ!あんたに一体、何の価値があるの?』と吐き捨てる声が聞こえた。

 陶也は一か八か、言ってみることにした。並々ならぬ執着をイザヤに抱いている母親だ。きっとこの言葉は効果があるだろう。

「僕はイザヤに愛されてます」

『ーー?!』
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