83 / 116
陶也side1
81
しおりを挟む
4歳くらいの頃のイザヤは、まだ母親を憎む事もなく、寧ろ、普通の子供たちと同様に、母親の事が大好きだった。母親の存在がこの世で一番の、心の拠り所であり、一番の安心であり、一番、大好きな存在だった。
だが、同時にイザヤは2歳の妹、リサの事も大好きだった。リサは利発な子どもだった。リサは2歳にしてイザヤと同じように喋れるし、知的好奇心も旺盛だった。とても仲の良い兄妹だった。リサもイザヤの事が大好きで、イザヤの回りをうろちょろし過ぎると、母親に、邪魔!と言われ、怒られた。そして、大声で泣く事が多かった。すると、母親はイライラして、更にリサに対し、厳しく叱咤した。イザヤはその様子を見て、母親の怒りを宥めようと間に入った。しかし、 母親はリサに怒りをぶつけるばかりで、宥めるイザヤを無視し続けた。その挙げ句、遂にはイザヤも怒鳴られたのだ。その瞬間、イザヤは泣いた。それが、とてもショックで悲しかった。だが、母親は泣いているイザヤに更に追い討ちをかけた。
『泣くんじゃないよ、その程度で!あたしは、ピーピー泣く、弱っちい奴は嫌いだよ!』
大好きだった母親に言われた、『嫌い』の言葉は、イザヤの『悲しみ』を麻痺させる土台を作った。加えて、自分の中の『弱さ』を認められない素地を作った。
だから、イザヤはいつも1人で闘うのだ。
母親に、自分の中の『悲しみ』と『弱さ』を絶対に見せてはならない、そう幼いイザヤは、自分の心にインプットしたのだ。
始まりは本当に些細な出来事から始まっている。
こんな日常的な出来事は直ぐに忘れてしまうか、思い出したとしても、人によっては単なる苦い思い出の1ページとして刻まれるだけだろう。だが、幼い子供にとって、その時に受けた心の傷と、インプットされたキーワードは、ずっと人の潜在意識に残り、無意識にその後の行動に影響を与えるのだ。
陶也の時と同じなのだ。
それはまるで、蝶の羽ばたきが、遥か遠くの天気を左右するという、バタフライ効果のように、時間の経過と組み合わせによっては、とんでもない嵐を巻き起こす可能性を秘めている。
イザヤの母親の記憶を見ていないから、予測でしかないが、きっとイザヤの母親にも、そういう心の傷があるのだ。
イザヤと同様、怒りの発露が安易で、中々収まりがつかないのが、その証拠ではないのか?
イザヤの母親も『悲しみ』が抜けているのだ。
きっとあの母親にとって、憎しみこそ愛情の証しに変容しているのだ。そして、二人の愛憎に巻き込まれ、飛び火し、亡くなったのが、イザヤの兄弟達だ。
だから、彼ら二人を引き合わせてはいけない。
会えば必ず、また誰かが犠牲になる。
それを止めるには、 初期に受けた、その心の傷を、イザヤにはっきりと再認識させることだ。それが元となり、イザヤはあの母親にずっと縛られているという事を、イザヤ自身が実感しなければ、母親から解放される日は来ない。
だから、イザヤの目を何としても覚まさなければ、悲劇は収まらない。
それは、イザヤにとって、かなり酷な事だけれども、イザヤに『悲』の感情を取り戻してもらわなくては、母親から救う事は出来ないのだ。
陶也はアクセルを踏んで、イザヤの元に急いだ。
だが、同時にイザヤは2歳の妹、リサの事も大好きだった。リサは利発な子どもだった。リサは2歳にしてイザヤと同じように喋れるし、知的好奇心も旺盛だった。とても仲の良い兄妹だった。リサもイザヤの事が大好きで、イザヤの回りをうろちょろし過ぎると、母親に、邪魔!と言われ、怒られた。そして、大声で泣く事が多かった。すると、母親はイライラして、更にリサに対し、厳しく叱咤した。イザヤはその様子を見て、母親の怒りを宥めようと間に入った。しかし、 母親はリサに怒りをぶつけるばかりで、宥めるイザヤを無視し続けた。その挙げ句、遂にはイザヤも怒鳴られたのだ。その瞬間、イザヤは泣いた。それが、とてもショックで悲しかった。だが、母親は泣いているイザヤに更に追い討ちをかけた。
『泣くんじゃないよ、その程度で!あたしは、ピーピー泣く、弱っちい奴は嫌いだよ!』
大好きだった母親に言われた、『嫌い』の言葉は、イザヤの『悲しみ』を麻痺させる土台を作った。加えて、自分の中の『弱さ』を認められない素地を作った。
だから、イザヤはいつも1人で闘うのだ。
母親に、自分の中の『悲しみ』と『弱さ』を絶対に見せてはならない、そう幼いイザヤは、自分の心にインプットしたのだ。
始まりは本当に些細な出来事から始まっている。
こんな日常的な出来事は直ぐに忘れてしまうか、思い出したとしても、人によっては単なる苦い思い出の1ページとして刻まれるだけだろう。だが、幼い子供にとって、その時に受けた心の傷と、インプットされたキーワードは、ずっと人の潜在意識に残り、無意識にその後の行動に影響を与えるのだ。
陶也の時と同じなのだ。
それはまるで、蝶の羽ばたきが、遥か遠くの天気を左右するという、バタフライ効果のように、時間の経過と組み合わせによっては、とんでもない嵐を巻き起こす可能性を秘めている。
イザヤの母親の記憶を見ていないから、予測でしかないが、きっとイザヤの母親にも、そういう心の傷があるのだ。
イザヤと同様、怒りの発露が安易で、中々収まりがつかないのが、その証拠ではないのか?
イザヤの母親も『悲しみ』が抜けているのだ。
きっとあの母親にとって、憎しみこそ愛情の証しに変容しているのだ。そして、二人の愛憎に巻き込まれ、飛び火し、亡くなったのが、イザヤの兄弟達だ。
だから、彼ら二人を引き合わせてはいけない。
会えば必ず、また誰かが犠牲になる。
それを止めるには、 初期に受けた、その心の傷を、イザヤにはっきりと再認識させることだ。それが元となり、イザヤはあの母親にずっと縛られているという事を、イザヤ自身が実感しなければ、母親から解放される日は来ない。
だから、イザヤの目を何としても覚まさなければ、悲劇は収まらない。
それは、イザヤにとって、かなり酷な事だけれども、イザヤに『悲』の感情を取り戻してもらわなくては、母親から救う事は出来ないのだ。
陶也はアクセルを踏んで、イザヤの元に急いだ。
0
あなたにおすすめの小説
真空ベータの最強執事は辞職したい~フェロモン無効体質でアルファの王子様たちの精神安定剤になってしまった結果、執着溺愛されています~
水凪しおん
BL
フェロモンの影響を受けない「ベータ」の執事ルシアンは、前世の記憶を持つ転生者。
アルファ至上主義の荒れた王城で、彼はその特異な「無臭」体質ゆえに、フェロモン過多で情緒不安定な三人の王子たちにとって唯一の「精神安定剤」となってしまう。
氷の第一王子、野獣の第二王子、知略の第三王子――最強のアルファ兄弟から、匂いを嗅がれ、抱きつかれ、執着される日々。
「私はただの執事です。平穏に仕事をさせてください」
辞表を出せば即却下、他国へ逃げれば奪還作戦。
これは、無自覚に王子たちを癒やしてしまった最強執事が、国ぐるみで溺愛され、外堀を埋められていくお仕事&逆ハーレムBLファンタジー!
記憶を無くしたら家族に愛されました
レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない…
家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる