異世界で婚約破棄されましたが隣国の獣人殿下に溺愛されました~もふもふ殿下と幸せ子育てパラダイス~

mochizuki_akio

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13.気持ちの変化

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 ティメオとぐっすり眠った夜、マルべーは爽快な朝を迎えた。相変わらず一線を越えられていないが、なんとなくティメオの不器用な愛情は伝わっていた。

「でもこのままじゃな~」
「なにが」

 朝食を食べて、ラファイエットとぷらぷら庭を散歩した。

「童貞だから、守りが固すぎるんだよ」
「……それはお前が、どうにかするべきだろ」
「うーん……」

 何百坪あるのか分からない壮大な庭は、常に数百人の使用人達が動き回る。今日はあまり人気の無い、畑などが作られている裏庭を歩いていた。

「俺さぁ、モテなかったじゃん。相手いつも玄人だったから、こんな時どうすればいいのか、分かんないんだよね」

 隣を歩く騎士が、ため息をついた。マルべーと違って、普通の恋愛経験を済ませてきたラファイエットに、助言を仰いだ。

「素人で童貞だろ。どうしよ~」
「でもそこそこ上手くいってるんだろ」

 聞くと城ではティメオとマルベーの、夫夫仲が噂になっているらしい。ティメオ殿下の雰囲気が最近柔らかくなった、仲睦まじい様子。子どもももうすぐできるんじゃないか……

「いや、全然そんな気配ないよ」
(ストーリー展開でも、死んだ悪妻との間に子どもがいたとか、ナレーションも無かったし)
「じゃあ、そこはどうにかしないとな」
「もう発情期の時、こっちから押し倒すかぁ」
(あの堅物王子も、フェロモンでイチコロだな)

 ティメオが気に入っていた、あの半透け寝間着を用意しておこう。死亡フラグ回避!と意気込んでいたら、畑に人影があった。

「お、つかれさま―!」
「……奥様」

 ラファイエットに足を蹴られたが、無視する。使用人達に、気軽に話しかけるのは、親しみやすさアピールだった。
 畑にいたのは料理人長だった。確か勤務年数が長く、マルべーよりも城の内情に詳しい人物だが、わざわざ畑の作物を取る立場ではない。珍しいなと思い「なにしてんの~?」と話しかけた。

「はい、殿下に安眠袋を……作ろうと思いまして、薬草を摘んでおりました」

 マルべーは咄嗟に、ラファイエットに目配せをする。料理長の手元を見ると、薬草が集められていた。マルべーは薬草に詳しくない。なんとく、摘まれた葉っぱの形状などを記憶するよう意識した。

「あぁ~。そうだった、そうだった……ティメオ様も大変だったしなぁ……頑張ってね~」
「ありがとうございます」

 60過ぎの、白髪交じりの料理長が頭を下げる。畑から数百メートル離れたところで、騎士に話しかけた。

「知ってた? 殿下が不眠症って」
「いや……俺も薬草には詳しくないからなんとも言えないが……料理長はここに勤めて長いだろう。本当の話なんじゃないのか」
「えー……」
(眠れないってあいつが? 俺の部屋ではよく寝てるよ)
「あー、だから目の下のクマ、酷かったのか」
「そう言えば……」

 ラファイエットも納得したように頷いた。長年の戦場暮らしから、睡眠不足にでもなっているのかもしれない。

(睡眠は大事だよ。肌の調子も悪くなるし……)

 ふと、将来起こる皆殺しと関係が……首を捻った。マルべーと一緒にいるティメオは、身内をぶっ殺すようには見えない。何がきっかけになったのか、決定的な原因を見つけられないでいた。

(まだ皆殺しは起きないけど、多分どっかに原因というか、予兆みたいなのはあると思うんだよなぁ)

 最初は自分とラファイエット、それに自国が滅びなければ、他はどうでも良かった。ティメオの頭がおかしくなろうが、それに神子とか言うチート主人公はちょっとぐらい――痛い目にあったら良いのになと、思っていた。

(でも頭がイかれないで済むなら、その方が良いよな)

 将来、狂王となる人物を思い浮かべる。昨日も部屋に来たが、相変わらずマルべーとは距離を取ってくる。その癖、尻尾だけは雄弁で、腰に絡みついてきた。
 美しい彫像のような顔を真っ赤にして、部屋をうろうろする大男。可愛いなと、胸が疼いた。

(いや、なんで俺がキュンとしてんの)

 キュンとさせないといけない。それが将来の死亡フラグ回避のため――また胸が痛んだ。死にたくないのは本当。でももっと、心の底から望んでいるものが、ある気がした。
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