異世界で婚約破棄されましたが隣国の獣人殿下に溺愛されました~もふもふ殿下と幸せ子育てパラダイス~

mochizuki_akio

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18.招待

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「……マルー?」
「!!……はーい♡ちょっと待ってぇ」

 大急ぎでゴシップ誌をキャビネに突っ込む。閉めようとしたら、何か引っかかって閉じない。

 醜聞紙なんて、ティメオが見たらなんて言うだろう。俗世と無縁そうな雰囲気が漂う男から隠したかった。

(あ、これ……)

 図書室から借りてきた、薬草学の本だった。侍女を使いに出さず、マルベー自身が借りたものだった。新聞を綺麗にたたんで、キャビネを閉じた。

「いらっしゃーい」

 ドアを開けると、制服姿のティメオだった。うっきうきで抱きつくと、すぐにキスをされた。立派な体躯に、しなだれかかるよう甘える。ティメオは嬉しそうに、マルベーを抱き抱えた。

「ベッドまで連れてって♡」
「……まだ、日が高いですから」
「じゃー、昼寝。昼寝しようー?」

 頬を擦り合わせて、額にキスをする。ティメオは照れながら、ベッドまで運んでくれた。寝具に降ろされるのかと思ったら、そのまま膝に乗る形になった。
 至近距離で見つめ合う。どちらからともなく、キスをしていた。庭にいた小鳥みたいに、じゃれ合うようなキスを続ける。
 べたべたして、やっと気が済んだところで「実は……」とティメオが切り出した。

「どうしたー?こんな時間に珍しいじゃん」
「舞踏会の誘いがありまして」
(げぇっ! 最悪!)
「行く行くー♡」

 笑顔で即答する。ティメオはほっとしたように、微笑んだ。

「ありがとうございます。再来月、王都で行われるものでして……隣国の要人も出席されるということで、私達も出席を求められました」

 日にちを聞くと、ちょうど発情期には被っていない。しょうがないので、笑顔で頷いた。

「楽しみだなー。舞踏会―。正装はティメオとお揃いにしたいな♡ 宝石の色、一緒にしたい♡」
「良いですね」
「やったー」

 長くてしっかりした首に巻き付いて、鎖骨辺りにキスをした。時々動く喉仏とか、血管の見える太い腕。全てが理想的で、どこか野性味まである。

(最高~。あとはやらせてくれたら完璧~)

 喉仏にキスをすると、肩が揺れた。

「大好き♡」
「……」

 静かになったので、顔を上げる。気遣うような表情に「どした?」と聞いた。

(やりたくなったとか?)

 まだ日は高いが、いける気がする。制服がぱっつんぱっつんの股間に手を伸ばした。

「なんか体が熱く――」
「ラファイエット殿もいらっしゃらないので……不安になられてはいないか、心配でした」
「え、全然」

(神子がいないのは気になるけど……)

 手を止めた。さりげなく背中を撫でて、首筋の匂いを嗅ぐ。清潔で清楚な感じがする匂いを思いっきり吸い込んだ。
 ティメオを見ると、心配だと言いながら、彼の方が不安げな顔をしていた。

「ラフィーはちょっと頼みごとしててさ……騎士として優秀だって分かるだろ? 心配ないよ」
「……そうですね」

(なんだ? なんだ?……あ!)

 マルベーは体を支える尻尾に触れる。不安そうに垂れているのを、元気付けようとキスをした。フワフワしていて気持ちが良い。
 頬に押しつけながら「大丈夫だよー」と、笑った。

「なにも心配しなくていーよ。うざい継母と父親なんて、気にしなくて良いから」
「……」
「貴方は周囲に認められてる。堂々としていれば良い」
「……私は良いのです……もう今更何を言われても……貴方に何か言ってくるのではと……」
「俺が何か言われて気にするように見えるの?」

(気にしてたら娼館遊びもやってないし、ギャンブルもやってない。散財もしない、真面目で誠実な息子になってるよ)

 さきほど読んでいたゴシップ誌を思い出し、マルベーは噴き出した。だけどティメオは沈んだままだった。こうやって離れていても、ティメオは親の呪縛から逃れられない。幼い頃から宮殿で虐げられてきたトラウマだろう。

 元気付けるように肩を叩いたが、夫の表情は暗いままだった。本当に舞踏会に行きたくないのは、こちらの方だったのだ。

(俺と家族になったのに、どうして親のことなんか気にすんだろ)

 マルベーは子を粗末に扱う人間が分からない。だからティメオの痛みにはどこまでも鈍感で――それが救いになっていた。

「ティメオ」
「……はい」
「何か言われたら、俺に言えよ。俺が(虚言で)貴方を守ってやるから」

 抱きしめて、キスをした。頬を重ねると、ぐっと抱きしめられて、腕の力に息苦しくなる。

「苦しいって」
「っ……」

 腕の力はますます強くなる。頬が濡れていたが、マルベーは気にしなかった。
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