【R18】男装がバレましたが、媚薬のせいでそれどころではありません。

綿垂桃譜

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男装がバレましたが、媚薬のせいでそれどころではありません。

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 バタッ!!!!
 派手な音を立てて、私は崩れ落ちるように倒れた。
 「だ、め……。」
 知ってはいたが、耐性がないと辛いものだ。
 『テオ?!大丈夫?!』
 扉の向こうから一人の男の声が聞こえる。その瞬間、お腹の下のほうがきゅうっと、苦しくなる感覚がした。
 「随分と派手な音がしたけど、怪我、は、ない、……?」
 ガチャリ、と扉を開けて男が部屋に入る。
 「どう、して……。」
 ここにはいないはずなのに。私がお部屋までお送りして、就寝の挨拶をしたはずのご主人様。
 「……様子が変だったから心配になって。」
 そう彼が言うやいなや、自分の意思とは関係なく身体がぎゅっと縮こまり、ビリリと電流が通されたように体中を甘い感覚が駆け抜けた。
 「あぁんっ」
 「……。」
 「……。」
 私達の間に沈黙が訪れた。
 心臓が止まるような感覚。否、本当に止まってしまったのかもしれない。
 息が苦しく、呼吸は浅くなっていた。身体は何処かおかしくなってしまったように熱く、倒れたまま起き上がることがままならない。
 私の目には見目麗しい男が一人映っている。
 整った容姿のみならず、公爵令息という身分をも誇る男。年齢も身分も問わず、多くの女性からうっとりとした眼差しで見つめられ、黄色い歓声を浴びる彼は、私の忠誠を誓うべきご主人様でもある。
 そうだ、ご主人様の前だ。
 それにも関わらず、私の今の姿はショーツ一枚きり。こんな失礼なことがあってはならない。
 私は再度身体を起こそうとしたが、全身に全く力が入らなくなってしまっていた。悔しくて、辛くて、涙が出てきた。
 普段はミステリアスで色っぽい微笑を浮かべている彼だが、今はそれとはかけ離れた表情を浮かべている。サファイアの如く鮮やかな彼の瞳は大きく見開かれ、眉毛も上がっている。ランプに照らされてツヤを放つ、腰の半ばまで伸ばした長い銀髪は、黒いリボンで束ねられているにも関わらず、心なしかとても乱れて見えた。ひと目で動揺が見て取れる。
 きっと、私もそんな顔をしている。
 「…………君は……女」
 「……っ」
 唇はわなわなと震えるだけで、全く使い物にならなかった。
 「テオ?」
 そう静かにつぶやくと、彼はフラフラ歩き出した。彼の脚は止まることなく、ゆっくりではあるが、部屋の入り口から着実に私に向かっていた。
 彼が私に触れられる距離に至った時、流石に危機感を覚えた。一つは女だとバレてしまった動揺から。もう一つは肌をさらけ出してしまっている羞恥心から。他にも何か理由があるのかもしれないが、よくわからなくなってきていた。ただぼーっとした熱っぽさがある。
 ああ、バレてしまった。これで終わりになってしまう。
 「ごめ……なさ……」
 騙して、本当にごめんなさい。
 ふわりとお酒によったような心地の良い感覚。それに近いはずなのに、つーんと鼻は苦しくて、涙も出てきて。そんな辛い気持ちのはずなのに、自分の意思とは関係なくショーツに濡れが広がり続けている。
 ぐちゃぐちゃと意識は遠くなっていく。

***********
 
 私には、誰にも言えない秘密がある。
 私は、アルバータ王国の第三王女だった。
 そうだ。「だった」なのだ。これはもう過去の話になってしまっている。もうアルバータ王国なんて国は存在しない。
 アルバータ王国の南は海に面し、小国ながら恩恵を授かっていた。だが、問題は他の方角。北は大国、東と西は内陸の国で、三つの国はさらなる国土拡大と海外進出を目指し、土地と海を求めていた。そんな時、彼らの目に止まったのが我が国だった。海に面し、広い平原地帯の国。資源にも恵まれていた。そんな要地さえおさえれば、海外進出も、戦争のための物資の運搬も楽々と進む。三国は同盟を結んで我が国に攻め入り、滅ぼし、最終的にアルバータを仲良く三等分した。
 父も、正妃の母も、側妃も、三人の兄も、異母姉妹の二人の姉も、みんな殺された。
 私だけが無事だった。
 ちょうど病の治療のため、隣国のそのまた隣国の、腕の良いお医者さまにかかっていた。そのお医者さまはとても良いおじいさんだった。あの時、あのおじいさんに出会っていなかったら、私は自害するか殺されるか、まあ今頃死んでいただろう。
 病気が無事に治ると、さらに三つ国境をまたいだ国で私は孤児院に入った。当時九歳。
 それからずっと必死だった。
 ―――お母様とお揃いの金色の長い髪はバッサリと肩のうえで切りそろえた。商人から髪染めを買い、栗色に染めた。剣術を男の子に混ざって習った。最後には誰も私に勝てないようになった。口調を変えた。馬鹿みたいに丁寧なお嬢様言葉から、砕けた言葉を使うようになった。勉学にさらに打ち込んだ。就職に便利だと思ったから。――――
 六年前、十二歳の時に今のご主人様の専属執事になった。自分の過去を隠蔽するため、性別さえも偽った。
 ご主人様……フェアナンド様は同い年の私から見ても気高く美しく感じられた。
 ミステリアスと称されるが、実際はただ可愛いお人。苦いものより甘いものが好きで、狩りをするよりも動物を愛でるのが好き。剣術の筋は良いし苦手ではないが、ゆったりとピアノを弾くほうが好き。偽物の笑顔の評判はとても高いけれど、くしゃっと笑ったお顔はもっと魅力的。努力家で、だけど少しだけおっちょこちょいが抜けなくてそれがちょっとした傷。だけどそんな人間味がまた可愛らしい。
 私しか知らない彼が増えていくたびに、彼への尊敬とは少し違う気持ちが芽生えだした。
 そして私はその気持ちにつけるべき名前を既に知っていた。
 知っていて、気が付かないふりをした。こんな気持ちを抱き続けても苦しくなるだけだから。
 叶うはずがない。私はもう女ではない。ティアラ・アルバータはもういない。いるのはテオという使用人だ。私はこの思いをぎゅと、何回も何回も何回も何回も押しつぶした。
 フェアナンド様は成長するに従い、ますます麗しくなり、より多くの女性の瞳を独占するようになった。
 「もってもてですね、ご主人様。女性だけじゃなくて男性からも熱い視線を感じますよ。」
 ある日の学園からの帰り道、あたりを見渡して私は言った。からかうように言った自分の声になぜかチクリと胸が痛んだ気がした。
 「……視線の半分くらいはテオへのものだと思うけどね……。」
 「ん?申し訳ありません、よく聞こえず……。もう一度仰って頂けますか?」
 「いいや、大したことではないよ。」
 ご令嬢方の熱い視線にも頷ける。公爵家で、美系で、恋愛結婚重視で未婚約。狙いたくもなる。
 十七歳を迎えると、夜会では媚薬を盛られることも少なくなくなってきた。既成事実を作ってしまえばこっちのものだという話なのだろう。強すぎるものや成分が大きく異なるものは除き、私にはそういった薬への耐性がある程度あったため、私は毒見役も率先して行うようになった。侍女が一度、媚薬をティータイムの紅茶に盛った。そのときは薬の分量があまりにも多く、溶けきっていなかったため気がつくことができた。それ以来、どんな飲食物も私がまず毒味をするようになった。
 
 そして、今日の就寝前のハニーホットミルク。私に耐性のない媚薬がもられていた。そのくせ、即効性がある薬ときた。ご主人様の前ではなんとか意識を保っていたが、部屋に着いて身体が熱くなり、服を脱いでいた。そして情けないことに倒れてしまったのだ。

***********
 
 ところで、少しボーッとしていた間に大変なことになっていた。
 「んっ……!ふっ…………はっ、」
 床に転がった生まれたままの姿の私を押し倒して、ご主人様が私の唇を塞いだ。
 どうしてこうなったのだろう。
 意味がわからず、混乱したが深く考えることは下がっていく酸素濃度と上がっていく体温のせいでできなかった。
 「っ、はぁ、はぁ、………」
 長い間塞がれた唇がやっと空気に触れ、私は浅い呼吸をする。
 「ああ、可愛い……。」
 静かな彼のつぶやきが、耳元でよく聞こえた。どきんっ、と心臓が大きく脈を打つ。
 「ンンンっ!?あ、ぁっ!」
 そのまま彼に耳を舐められる。彼の舌は耳から首筋、胸元までどんどん下がり、私の肌の上を走る。慣れない感覚になんどもキュンっと、身体の硬直を感じる。
 「ど、どうして、こん、ぁぁんっ!」
 彼の細くて長い指先が右胸の頂に触れた。
 「今まで、気がついていないとでも思ってたの?……これでも我慢したほうなんだから、褒めてほしいんだけれど。」
 彼の言葉に、先ほどまでとは少し違った動揺が広がる。
 気がつかれていた?
 いつから?
 どうやって?
 我慢していたって、どうして?
 考えたいことは山ほどあるのに熱を持った身体のせいで頭が思うようにまわらない。
 胸に触れている方とは別の手で、彼が私の膝から上を優しくなで上げた。
 「あっ……!らめっ!」
 そんなことを言ったって、彼はとまらなかった。ついにはショーツの上から私の小さな実に指で何度も刺激を与えてくる。
 「あ、あ……アッ!…………!!!」
 これがイク、ということなのは未経験者の私にもわかった。頭がほわほわする。身体は痙攣を続けていた。
 「……ここじゃダメ、だよ?まだまだこれからなんだから。テオ、君のベッドを使ってもいい?」
 熱のこもった声。ああ、ちがう、私は、
 「……ティアラ。」
 「……?」
 私は彼の肩へとゆっくりと手をまわす。 
 そしてもう一度、今度は耳元で囁いた。
 「テオじゃない、です。ティアラ……。」
 「!!!」
 彼の目がより一層大きく見開かれた。
 この人になら、もうどうされても良いと思った。自分が今どんな状態か、これからどうなるか、そんなことはぼーっとしてたってわかった。だったらいっそのこと名前で呼ばれたかった。たとえ体の良い一夜の夢だったとしても。いいえ、それならなおさら。
 次の瞬間、ベッドに移されるのかと思ったらショーツを降ろされた。
 「ひゃんっ?!!」
 敏感な私の身体は、彼の指が軽く掠っただけでピッんっと、波打ってしまう。
 びっくりして、暗闇の中、自分のものを見下そうとした。よく見ると、私の茂みだけでなく、彼の茂みも顕になっている。男性の太くなり、熱を持ったそれを初めて目にした。はずかしくなって、顔はただでさえ熱いのに、湯気が出そうなくらいに赤面した。
 「もう、我慢できない……っ!受け入れて、ティアラっ!」
 彼の苦しそうな声。
 大きくてあつい彼のものが私のナカに入り、一気に貫き上げた。
 「んンあっ!あああああああアッ!!!!!!」
 痛みなのか、喜びなのか。私の目からは涙が一つこぼれ落ちた。

***********

 「おとーさまとおかーさまは、どうやって出会ったの?」
 私と同じ金色の髪に、彼と同じサファイアの瞳を持つ、愛しい子が言った。
 「お父様はね、お母様のご主人様だったのよ。」
 私の膝の上に陣取り、離れようとしない我が子の温もりを感じながら、私もまた離すまいと抱きしめながら言う。
 「今もご主人様だけどね。」
 夫が茶化すように言った。なんだか可愛くて、ついつい笑ってしまう。
 「ふーん?」

 何度も諦めようとした幸せ。その中に自分がいるだなんて人生わからないものだ。
 あれから夫の両親や国王への説明なり、身分戸籍を作り直したりなり、とてつもなく忙しくって大変だったけれど。
 今私はここにいるのだ。誰よりも幸せな一人の女性として。
 窓から見える木々は青々と茂っていた。
 今日も、何気なく過ぎていくこの平穏な日に感謝した。
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