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3話 狩猟者の村
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「本当にメデュアを一人で倒したのか?」
狩猟者たちが営んでいる大森林の中の村。そこの魔物素材を換金する店で中年の男が驚きの表情を見せながら黒のロングコートの男に話しかけていた。
「ああ、本当だ。この通り、冒険者手帳には俺以外のパーティメンバーはいない」
男は胸ポケットから小さな手帳を取り出す。革製の表紙で一角獣のエンブレムが施されている。店主は紙をいくらかめくると男のプロフィールが載っているページに着く。ページ上部には「レイン・エルガル」のプロフィールと書かれてある。
「所属ギルド……なし。所属パーティもなし。本当に一人で冒険者やってるんだな」
レインは無言で頷く。
「レイン……かぁ。メデュアを一人で倒すようなやつだから名前は知っているかと思ったけど残念ながら知らなかったよ」
店主は「世の中は広いものだ……」と独り言を呟く。
「名声には興味がない。それよりメデュアの素材はどれくらいになりそうだ?」
「まあ大きさもかなりあるしな。一千ネビが妥当だろう」
店主はカウンターの奥にある部屋の中に入っていく。数十秒後店主は重そうな布袋を持ってきてカウンターの上にぶっきらぼうに置く。ジャラジャラと音が鳴り、それだけで中に入っている金貨の量をうかがえる。レインはその袋をハンドバッグの中にしまう。店主は、明らかに容量を超えているものをしまえるバッグに対して驚愕の色を浮かべる。
「それ魔法で作られたバッグか?」
「そうだ。知人の魔法使いが俺のために作ってくれたものだ。容量的に馬車の荷台三つ分は入る」
途方もない収容量に店主は思わず口を開いてしまう。レインはそういえば、と何かを思い出しのかバッグの中からメデュアの黒色の心臓を取り出す。
「この心臓はなんで黒いか分かるか?」
「なんだこれ……」
店主は異様な心臓を目にして真剣な目つきになる。カウンターに置かれた心臓を店主は虫眼鏡で調べ始める。数分間レインは熱心にメデュアの心臓を調べる店主を無言で眺めていた。店主は顔を上げて一息ついて眼鏡を外す。
「これは俺も分からん。だが、この心臓に埋め込まれている宝石からは濃縮された闇の魔力が血管を通して体全部に行き渡っていたようだ。他の内臓の色は黒くなってないがおそらく侵食されている。つまり毛皮以外売り物にはならねぇってことだ」
「そうなのか、なら金は返したい」
レインはハンドバッグから先ほど受け取った金貨の詰まった袋を取り出そうとするが、店主がそれを制止する。
「いいや、闇に侵食されたメデュアを討伐してくれただけでもありがたい。あいつはここの近辺にいたんだろ?」
「そうだ」
「ならお礼の金だと思って受け取ってくれ。村の連中が束になっても勝てない相手を倒してくれたからな」
そう言われてレインは金貨の袋をハンドバッグの中に戻す。
「話が変わるのだがこの村に宿屋はないか?」
「ない。悪いがうちの村に宿を経営できるほどの財力はないんだ。みんな自給自足で生きている。野営のための道具なら俺の店の正面の店にあるからそこで布団とかを適当に買ってくれ」
「そうなのか。親切にどうもありがとう」
レインは紳士のような綺麗なお辞儀をした後に後方にある扉から店の外に出る。村の様子はとても静かで、今は老人と子供しかいない。狩猟をして生きるという文化から、大人たちは今村の外で狩をしているとレインは予想した。レインは早速正面にある店の中へ入る。
「いらっしゃい」
出迎えてくれたのは元気そうに笑みを浮かべている老婆であった。背筋はまっすぐでこの気温の中で半袖。見ただけでも健康的であることがわかった。
「こんにちは。最近木炭を切らしてしまったので買いたいのですが」
「木炭ならあっちにあるよ」
老婆が指差したのはレインから見て右奥の棚だ。棚には黒色の木が隙間なくびっしりと並べられている。レインは近くにある木炭の断面を指でなぞってみると、触れたところは闇のように黒くなっていた。
「それじゃあこの中から十五本ほどください」
「あいよ」
老婆はなにかをぶつぶつと詠唱するとフワッと地面から体が浮く。そのまま棚の一番上から木炭を何本も抱き抱えれば下に戻る。
「浮遊魔法使えるのですね。すごいです」
「なーに、老人だから無駄に魔法を知っているだけさ。さ、カウンターへ行くよ」
老婆は何本もの木炭を抱えても苦しそうな顔一つ見せずに進む。カウンターに到着したレインは指定された通り四十五ネビを払う。
「ありがとさん。そういえばあんた一人かい?」
「ああ」
「そうかい。気をつけるんだよ」
レインは老婆のさりげない気遣いに無言でお辞儀をする。外に出るとまたもや寒い風がレインの顔に吹き付ける。レインは太陽が沈んでいくのを見てハンドバッグからマフラーを取り出す。スムーズにマフラーを首に巻いたレインは白い息を吐きながら村の外へ出る。
狩猟者たちが営んでいる大森林の中の村。そこの魔物素材を換金する店で中年の男が驚きの表情を見せながら黒のロングコートの男に話しかけていた。
「ああ、本当だ。この通り、冒険者手帳には俺以外のパーティメンバーはいない」
男は胸ポケットから小さな手帳を取り出す。革製の表紙で一角獣のエンブレムが施されている。店主は紙をいくらかめくると男のプロフィールが載っているページに着く。ページ上部には「レイン・エルガル」のプロフィールと書かれてある。
「所属ギルド……なし。所属パーティもなし。本当に一人で冒険者やってるんだな」
レインは無言で頷く。
「レイン……かぁ。メデュアを一人で倒すようなやつだから名前は知っているかと思ったけど残念ながら知らなかったよ」
店主は「世の中は広いものだ……」と独り言を呟く。
「名声には興味がない。それよりメデュアの素材はどれくらいになりそうだ?」
「まあ大きさもかなりあるしな。一千ネビが妥当だろう」
店主はカウンターの奥にある部屋の中に入っていく。数十秒後店主は重そうな布袋を持ってきてカウンターの上にぶっきらぼうに置く。ジャラジャラと音が鳴り、それだけで中に入っている金貨の量をうかがえる。レインはその袋をハンドバッグの中にしまう。店主は、明らかに容量を超えているものをしまえるバッグに対して驚愕の色を浮かべる。
「それ魔法で作られたバッグか?」
「そうだ。知人の魔法使いが俺のために作ってくれたものだ。容量的に馬車の荷台三つ分は入る」
途方もない収容量に店主は思わず口を開いてしまう。レインはそういえば、と何かを思い出しのかバッグの中からメデュアの黒色の心臓を取り出す。
「この心臓はなんで黒いか分かるか?」
「なんだこれ……」
店主は異様な心臓を目にして真剣な目つきになる。カウンターに置かれた心臓を店主は虫眼鏡で調べ始める。数分間レインは熱心にメデュアの心臓を調べる店主を無言で眺めていた。店主は顔を上げて一息ついて眼鏡を外す。
「これは俺も分からん。だが、この心臓に埋め込まれている宝石からは濃縮された闇の魔力が血管を通して体全部に行き渡っていたようだ。他の内臓の色は黒くなってないがおそらく侵食されている。つまり毛皮以外売り物にはならねぇってことだ」
「そうなのか、なら金は返したい」
レインはハンドバッグから先ほど受け取った金貨の詰まった袋を取り出そうとするが、店主がそれを制止する。
「いいや、闇に侵食されたメデュアを討伐してくれただけでもありがたい。あいつはここの近辺にいたんだろ?」
「そうだ」
「ならお礼の金だと思って受け取ってくれ。村の連中が束になっても勝てない相手を倒してくれたからな」
そう言われてレインは金貨の袋をハンドバッグの中に戻す。
「話が変わるのだがこの村に宿屋はないか?」
「ない。悪いがうちの村に宿を経営できるほどの財力はないんだ。みんな自給自足で生きている。野営のための道具なら俺の店の正面の店にあるからそこで布団とかを適当に買ってくれ」
「そうなのか。親切にどうもありがとう」
レインは紳士のような綺麗なお辞儀をした後に後方にある扉から店の外に出る。村の様子はとても静かで、今は老人と子供しかいない。狩猟をして生きるという文化から、大人たちは今村の外で狩をしているとレインは予想した。レインは早速正面にある店の中へ入る。
「いらっしゃい」
出迎えてくれたのは元気そうに笑みを浮かべている老婆であった。背筋はまっすぐでこの気温の中で半袖。見ただけでも健康的であることがわかった。
「こんにちは。最近木炭を切らしてしまったので買いたいのですが」
「木炭ならあっちにあるよ」
老婆が指差したのはレインから見て右奥の棚だ。棚には黒色の木が隙間なくびっしりと並べられている。レインは近くにある木炭の断面を指でなぞってみると、触れたところは闇のように黒くなっていた。
「それじゃあこの中から十五本ほどください」
「あいよ」
老婆はなにかをぶつぶつと詠唱するとフワッと地面から体が浮く。そのまま棚の一番上から木炭を何本も抱き抱えれば下に戻る。
「浮遊魔法使えるのですね。すごいです」
「なーに、老人だから無駄に魔法を知っているだけさ。さ、カウンターへ行くよ」
老婆は何本もの木炭を抱えても苦しそうな顔一つ見せずに進む。カウンターに到着したレインは指定された通り四十五ネビを払う。
「ありがとさん。そういえばあんた一人かい?」
「ああ」
「そうかい。気をつけるんだよ」
レインは老婆のさりげない気遣いに無言でお辞儀をする。外に出るとまたもや寒い風がレインの顔に吹き付ける。レインは太陽が沈んでいくのを見てハンドバッグからマフラーを取り出す。スムーズにマフラーを首に巻いたレインは白い息を吐きながら村の外へ出る。
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