推し活、始めました。

桜乃

文字の大きさ
上 下
7 / 29
再会

綺良くん 2

しおりを挟む

「お疲れ様でーーす!!」
「はーい、お疲れ!」
「おっつかれさーん」

 無事に終わった事に安堵の顔をし、やり遂げた達成感、頑張ってきた満足感に盛り上がっていた舞台裏。皆で、労いの声を掛けながら、笑顔でハイタッチをし合う。

 3日間のライブも今日がファイナル。無事に終わった安堵で僕、葉月はづき輝良きらは、はぁぁと大きく息を吐いた。

「綺良くん、お疲れっ」

 スタッフリーダーが僕の背中をポンッと叩き、僕は笑顔を向ける。

「お疲れ様です」
「綺良くん、ラストの挨拶、よろしくぅ! おーい、みんな、注目!! 主役から挨拶もらうぞーー」

 スタッフリーダーの男性の声に皆が話すのを止め、僕に注目をする。マイクを渡され、僕は声を出した。

「あーあーあー……えっと……皆さん、お疲れさまでした。皆さんがいてくださったから、3日間を乗り切る事ができました。ファンの皆さんに、こんなにも素晴らしいライブをお届けできたのは、スタッフの皆さんの力があってこそです。本当に皆さんのお陰です。ありがとうございました」

 感謝の気持ちを伝え、頭を下げると拍手が巻き起こり、歓声が上がった。

「綺良くーん、成功おめでとう!」
「綺良くん、頑張った!!」
「ちょー良かったっすよ!」
「サイコーでした!」
「あと、もうひと踏ん張りーーー」
「解体作業するぞー」
「おーーー!」

 掛け声とともにスタッフは、それぞれの仕事に取り組み始める。僕はペコリともう一度お辞儀をして、控室に向かって歩き始めた。忙しそうに動きながらも、お喋りしている女性スタッフの声が耳に入ってくる。

「綺良くんって、今をときめくトップアイドルなのにさ、礼儀正しいよね」
「そりゃ、そうよ。なんてったって月子さんの秘蔵っ子ひぞっこだもの」
「月子さんの担当アイドルは、みんな、いい子だよね!」
「うん。月子さん、すごいよねー」

 僕はそのお喋りにこっそり顔をほころばせた。

 そう、月子さんはすごいのだ。月子さんが褒めらるのは嬉しい。

 五十嵐月子さん……

 僕に芸能界のノウハウを教えてくれた人。
 僕の人生を変えてくれた大切な人。
しおりを挟む

処理中です...