上 下
73 / 125
婚約者が口説かれました

5

しおりを挟む
「なんで、婚約破棄しなくちゃならないんだよ」
「噂によると、お二方とも愛のない婚約で破棄を望んでいると聞きました」

 はあ? 噂? 何だそれ?
 それに、俺の方には愛はあるぞ。俺の方には……な。

「アルベルト王子はたくさんの婚約者候補がいらっしゃって、毎日、令嬢たちを選り好みしてるとか……」

 はい!? 
 それはジェスターが送りつけてきている、婚約者候補リストのことかぁ!?
 選り好みなんかしてねーよ。俺はクラリス一筋だってーの!

「そんなの、クラリス嬢がかわいそうです。ぜひ早く婚約破棄を!」

 俺が呆れて何も言わないのを肯定と取ったのか、それとも調子づいてきたのか、矢継ぎ早に話すカール。

 誰だよ、こんな噂流したの……いや、わかってる。間違いない、ジェスターだ。こういう裏工作はジェスターの得意分野だ……あいつ、覚えてろよ。

「それはあくまで噂だ。婚約破棄は絶対しない。絶対だ。だが、なんでお前が婚約破棄しろって言いに来るんだ? お前、関係ないだろ?」
「愛に目覚めたからです!」
「はっ?」
「最初は、よこしまな気持ちがありました。SSランク魔道士の公爵令嬢、僕の格が上がる最高の結婚相手です」

 まぁ……な。意識してなかったけれど、クラリスのステータスは令嬢の中でもトップクラスだ……で?

「そんな浅はかな僕をクラリス嬢は心の底から心配してくれました」

 はぁ……クラリスは優しいからな。超鈍感だけど……で?

「僕を心配してくれた姿は天使です。あんなに気にかけてくれるなんて、きっとクラリス嬢も僕のことを……」

 こいつ、やっぱりアホの方だったな。
 クラリスが天使……は否定しないけど。

「僕のことを想いながら、アルベルト王子と結婚なんてクラリス嬢がかわいそうです」

 だめだ、こいつ。頭の中で花が咲いてる。

「王子は婚約者を選り好みしてる方、クラリス嬢でなくてもいいわけで……」
「ちょっと、まて」

 俺はイラッとして、カールの勢いを止めた。

 聞き捨てならねーことばかり言いやがって。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

あなたならどう生きますか?両想いを確認した直後の「余命半年」宣告

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:1,242pt お気に入り:37

トラブルに愛された夫婦!三時間で三度死ぬところやったそうです!

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:894pt お気に入り:34

孤独なまま異世界転生したら過保護な兄ができた話

BL / 連載中 24h.ポイント:62,359pt お気に入り:3,675

親友と転生したら兄弟になった!しかも獣人王の息子!?

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:301

双子と三つ子のお話

キャラ文芸 / 完結 24h.ポイント:63pt お気に入り:5

処理中です...