お仕事辞めて、推しごと解禁!

桜乃

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「ネームプレート置いていったまま、外へ出ちゃったんですか? そういう時は携帯に連絡ください」

 彼女のニコリと笑った顔に覚えがあった。

 ああ……私、この子、知ってる。

「あ、あの……」
「あ、すみません! まだ解体は待ってください。上からの指示が出てないんで。聞いてみます」

 彼女は忙しそうにインカムで話していて、私の困惑した様子に全く気づいていない。

「えっと……」
「あーすみません、解体、始めていいですか? 今回、時間がないんで!」
「あのー」

 腕時計をチラチラ見ながら、スタッフ同士でやり取りをし続け、私の声は耳に入らないようだ。

 わかります。わかりますよ? 忙しいのは。
 でも、私の話を聞いてくださいな。

 見覚えのある部屋の前に立つと、彼女はノックをし、ガチャリとドアを開けた。

「輝良君! マネージャーさん見つかりましたよ!」
「ありが…………えっ? 月子さん?」

 部屋の中には、先程までキラッキラの笑顔でステージに立っていた推しの驚いた顔……

 ある単語が私の脳裏をよぎる。


 オワッタ。


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