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第2話 友達作りはまずトイレから ~3年A組 西川杏子の場合~
「西川さん! 今年も同じクラスだね! 今年もよろしくね!」
始業式の直後、クラスの何人かの女の子が私のところに駆け寄っては挨拶をしていく。
「杏子ちゃん、今年も、その、お願いしても、いいかな?」
時には、こんな風に私に話しかける女の子もいる。
もともとあんまり他の子に話しかけるのが得意じゃない私でも、みんなの方から話しかけてくれるのは、この学校の校則のおかげだった。
この学校に入学して少し経った頃から、私は校則のことで少しだけ困っていることがあった。
私、こんなにたくさんコインいらないんだけどな……。
昔からトイレにあんまり行かない私は、もともと中学生の頃から学校のトイレをほとんど使わなかったせいで、入学してからずっとコインが貯まっていた。ちょっと興味があって文芸部に入部したのもあって、1日に3枚コインが貯まるのに対して、私のおしっこは1日学校にいても満杯まで貯まらない。
そのせいで、制服のポケットに入れていたコインが段々と重くなってしまったのだ。
1年生の2学期が始まってすぐのある日のことだった。確か5時間目の後の休み時間、クラスで1番みんなと話してて、1番明るい子が私のところに来た。
……なんで私のところなんかに来るのかな……? 他の子と一緒にいた方が楽しいはずなのに……。
そんなことを考えていると、その子が私に「ちょっと着いてきてくれない?」と言って、私はその子に着いていった。
そうしてトイレの前に着いたところで、急にその子がちょっぴり恥ずかしそうな顔をしながら、
「ねえ西川さん、その、トイレのコイン、使わせてくれない……?」
と聞いてきた。
「うん、いいよ。私、たくさん持ってるし」
そう言ってその子にコインを渡すと、その子は急いでトイレに駆け込んでいった。
「ふぅ~~、間に合った~~。ありがとう西川さん!」
トイレから出てきたその子は、教室に戻るまでの間、私とたくさん話してくれた。
「あたし、なんか最近ちょっとトイレ近くてさ~、他の子に聞いても、みんな余裕ないみたいで、そういえば西川さんがトイレ行ってるところ見たことないなって思ったの。西川さんがいなかったらあたし、もしかしたらおしっこ漏らしちゃってたかも」
「そ、そうなんだ……」
「西川さん、いっぱいコイン持ってるみたいだけど、普段はあんまりトイレ行かないの?」
「あ、うん……。家で朝トイレに行ったら、学校終わるまでトイレに行きたくならないんだよね……。だから、コインが貯まりすぎちゃって……」
「そうなんだ~。それじゃあ、しばらく西川さんのこと、頼りにしてもいいかな? 普段話してる子たちに頼むの、ちょっぴり恥ずかしくて……」
「う、うん、いいよ。たくさんあるから、遠慮せず使って」
そんな感じでその子にコインをあげるようになってから、他にもトイレが近い子や調子が悪くて早めに自分の分を使い切っちゃった子が私のところに来るようになって、私はいろんな子と仲良くなった。
そのうちに、私も他の子のトイレ事情を助けてあげるのが楽しくなって、休み時間はトイレのことで困ってそうな子に自分から話しかけるようになった。
そんな経緯があって、今ではみんなに頼られる私になっている。私のおかげでお漏らししちゃう子が減ってるのは確かだと思う。
始業式から1週間が経って、丸1日の授業の日課に戻った。いつもこんな時はみんな午前授業で余った分を使うから、普段私のところに貰いに来る子はあんまり来ない。だから、休み時間はクラスを見渡して、使いきっちゃって困ってる子がいないか探すのが私の楽しみだ。
5時間目が終わって、クラスを見渡すと、教室の真ん中のあたりの席で、眼鏡をかけたちょっぴり内気そうな女の子がもじもじしながら座っていた。
確か丸山さんっていったっけ。初めて同じクラスになるけど、もしかしてトイレ近いのかな?
そんなことを思って、私は丸山さんに話しかけた。
「丸山さん、なんかもじもじしてるけど、大丈夫?」
「ふぇっ!? だ、大丈夫……じゃ、ないかも……」
「もしかして、トイレ行きたいの?」
「あ……うん……。でも、もう、コイン持ってなくて……」
「よかったら、私の分使う?」
「え、いいよ……。私、頑張って授業終わるまで我慢するから……」
そう言って丸山さんは片手を股のあたりに軽くあてて押さえる。
「無理しないで。私、全然使わなくてまだいっぱい持ってるから」
「……そうなの……?」
「うん。それに、授業中にお漏らししちゃったら大変でしょ?」
「……うん……」
「ほら、一緒に行こ?」
私が手を差し出すと、丸山さんは私に着いてきた。
丸山さんにコインを渡して、せっかくならと思って私も丸山さんが入った隣の個室に入る。隣からちょっぴり勢いの強いおしっこの音がして、私もおしっこし始めるけれど、やっぱり全然出ない。
「……西川さん、ありがとう……」
トイレから出ると、恥ずかしそうに顔を赤くした丸山さんが小さな声で言った。
「ううん、全然大丈夫だよ」
「……実は、私、結構トイレ近くて……。その……、これからも、西川さんのこと、頼ってもいいかな……?」
丸山さんが耳打ちをするように顔を近づけて言う。答えは1つだ。
「もちろん! 私のこと、たくさん頼ってよ!」
私がそう言うと、丸山さんは笑顔になって、
「えへへ、これからよろしくお願いします、西川さん」
と言った。
もちろん、その後丸山さんととっても仲良くなったのは言うまでもないかな?
─────────────
今回の話は以上です!
感想や書いてほしいシチュエーションなどお待ちしています!
それではまた次回!
始業式の直後、クラスの何人かの女の子が私のところに駆け寄っては挨拶をしていく。
「杏子ちゃん、今年も、その、お願いしても、いいかな?」
時には、こんな風に私に話しかける女の子もいる。
もともとあんまり他の子に話しかけるのが得意じゃない私でも、みんなの方から話しかけてくれるのは、この学校の校則のおかげだった。
この学校に入学して少し経った頃から、私は校則のことで少しだけ困っていることがあった。
私、こんなにたくさんコインいらないんだけどな……。
昔からトイレにあんまり行かない私は、もともと中学生の頃から学校のトイレをほとんど使わなかったせいで、入学してからずっとコインが貯まっていた。ちょっと興味があって文芸部に入部したのもあって、1日に3枚コインが貯まるのに対して、私のおしっこは1日学校にいても満杯まで貯まらない。
そのせいで、制服のポケットに入れていたコインが段々と重くなってしまったのだ。
1年生の2学期が始まってすぐのある日のことだった。確か5時間目の後の休み時間、クラスで1番みんなと話してて、1番明るい子が私のところに来た。
……なんで私のところなんかに来るのかな……? 他の子と一緒にいた方が楽しいはずなのに……。
そんなことを考えていると、その子が私に「ちょっと着いてきてくれない?」と言って、私はその子に着いていった。
そうしてトイレの前に着いたところで、急にその子がちょっぴり恥ずかしそうな顔をしながら、
「ねえ西川さん、その、トイレのコイン、使わせてくれない……?」
と聞いてきた。
「うん、いいよ。私、たくさん持ってるし」
そう言ってその子にコインを渡すと、その子は急いでトイレに駆け込んでいった。
「ふぅ~~、間に合った~~。ありがとう西川さん!」
トイレから出てきたその子は、教室に戻るまでの間、私とたくさん話してくれた。
「あたし、なんか最近ちょっとトイレ近くてさ~、他の子に聞いても、みんな余裕ないみたいで、そういえば西川さんがトイレ行ってるところ見たことないなって思ったの。西川さんがいなかったらあたし、もしかしたらおしっこ漏らしちゃってたかも」
「そ、そうなんだ……」
「西川さん、いっぱいコイン持ってるみたいだけど、普段はあんまりトイレ行かないの?」
「あ、うん……。家で朝トイレに行ったら、学校終わるまでトイレに行きたくならないんだよね……。だから、コインが貯まりすぎちゃって……」
「そうなんだ~。それじゃあ、しばらく西川さんのこと、頼りにしてもいいかな? 普段話してる子たちに頼むの、ちょっぴり恥ずかしくて……」
「う、うん、いいよ。たくさんあるから、遠慮せず使って」
そんな感じでその子にコインをあげるようになってから、他にもトイレが近い子や調子が悪くて早めに自分の分を使い切っちゃった子が私のところに来るようになって、私はいろんな子と仲良くなった。
そのうちに、私も他の子のトイレ事情を助けてあげるのが楽しくなって、休み時間はトイレのことで困ってそうな子に自分から話しかけるようになった。
そんな経緯があって、今ではみんなに頼られる私になっている。私のおかげでお漏らししちゃう子が減ってるのは確かだと思う。
始業式から1週間が経って、丸1日の授業の日課に戻った。いつもこんな時はみんな午前授業で余った分を使うから、普段私のところに貰いに来る子はあんまり来ない。だから、休み時間はクラスを見渡して、使いきっちゃって困ってる子がいないか探すのが私の楽しみだ。
5時間目が終わって、クラスを見渡すと、教室の真ん中のあたりの席で、眼鏡をかけたちょっぴり内気そうな女の子がもじもじしながら座っていた。
確か丸山さんっていったっけ。初めて同じクラスになるけど、もしかしてトイレ近いのかな?
そんなことを思って、私は丸山さんに話しかけた。
「丸山さん、なんかもじもじしてるけど、大丈夫?」
「ふぇっ!? だ、大丈夫……じゃ、ないかも……」
「もしかして、トイレ行きたいの?」
「あ……うん……。でも、もう、コイン持ってなくて……」
「よかったら、私の分使う?」
「え、いいよ……。私、頑張って授業終わるまで我慢するから……」
そう言って丸山さんは片手を股のあたりに軽くあてて押さえる。
「無理しないで。私、全然使わなくてまだいっぱい持ってるから」
「……そうなの……?」
「うん。それに、授業中にお漏らししちゃったら大変でしょ?」
「……うん……」
「ほら、一緒に行こ?」
私が手を差し出すと、丸山さんは私に着いてきた。
丸山さんにコインを渡して、せっかくならと思って私も丸山さんが入った隣の個室に入る。隣からちょっぴり勢いの強いおしっこの音がして、私もおしっこし始めるけれど、やっぱり全然出ない。
「……西川さん、ありがとう……」
トイレから出ると、恥ずかしそうに顔を赤くした丸山さんが小さな声で言った。
「ううん、全然大丈夫だよ」
「……実は、私、結構トイレ近くて……。その……、これからも、西川さんのこと、頼ってもいいかな……?」
丸山さんが耳打ちをするように顔を近づけて言う。答えは1つだ。
「もちろん! 私のこと、たくさん頼ってよ!」
私がそう言うと、丸山さんは笑顔になって、
「えへへ、これからよろしくお願いします、西川さん」
と言った。
もちろん、その後丸山さんととっても仲良くなったのは言うまでもないかな?
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今回の話は以上です!
感想や書いてほしいシチュエーションなどお待ちしています!
それではまた次回!
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