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2章 

七話 灯台

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歩くこと一キロ弱。
坂道の中潮風が心地よい感じに吹いている。
ちなみに天羽は未だスーツを着ているため、スーツ姿の男とレザーアーマーとプレートアーマーのハイブリットのような鎧を着た兵士4人が付き従うシュールが光景がそこにあった。

このまま無事にたどり着けばいいな

そんなことを思った矢先だった。
海から岩に波が当たった音が聞こえたかと思うと先導していた兵士の一人である一八歳の青年兵に水が掛かったのである。
海からは十メートルほど離れているため波など掛からないはずである。

掛かった水を拭い始めて数秒後、青年兵から煙が上がり始め悶絶の声が上がる。
水は何者かからの攻撃なのは明白であった。
街に戻るにも遠すぎる上に坂道がある。
灯台まで残り二百メートルほどであり今もなお水を掛けられる恐れがあった。

「走れ!灯台まで走るんだ!」

天羽が大声で叫ぶと一行は一目散に灯台に向けて走りだす。
元いた場所に水が落ちる音がした気がする、危機一髪だったのかも知れない。

灯台に辿り着く前、一八歳の青年兵の肩を抱え走っていた兵士の足にも水が掛かる。
わずか二十メートル手前である。
彼からもやはり煙を上げつつ悶絶し青年兵と一緒に転ぶと青年兵の頭の皮膚という皮膚がズルリと溶け落ちた。
無事だった兵士の一人が足に水が掛かった兵士の肩を担ぎ灯台へと走っていった。

無事辿り着いた天羽と兵士二人、片足の膝より下が溶けグズグズになり金属プレート部分と骨しか残っていない兵士、二十メートル手前であちこちの骨が見え倒れ伏している青年兵が天羽には聞こえないぐらい小さな呻き声を動かなくなった。

その光景を見た天羽は昼に食べたパンや干し肉、スープ全てを吐き出してしまいそれ以上のものを吐き出してしまいそうな勢いで嘔吐する。
つい先ほど出会い弟のように感じた十八歳の兵士の死とは発狂しないまでも強烈に感じるのである。
発狂しない、それはただ発狂しないだけで発狂に達しない感情は全てその身に降りかかってるのであった。


灯台に辿り着いた天羽たちは直径二十メートルほどの円柱状の灯台の内部にいた。
兵士は出入り口の扉を内部にあった机や棚などで塞ぎ、誰も入ってこれないようにしている。

「あれは半魚人の仕業だと思います。」

兵士の一人が答えた。

「我々の灯台を占拠し魔物が此処ら近辺に侵入出来るようにしたのはこの半魚人のせいなのです。」

灯台のとある機構が魔物を五キロ四方寄せ付けなくしていたのだが、魔物によってその機構を壊されたため魔物が侵入してきたと城で説明を受けたが魔物がまさか海からやってくるだなんて天羽は全く想像していなかった。


暫くして落ち着いたからか周りの状況を鮮明に理解し始める。
壁はよく見るとフジツボのようなものがこびり付いており微かに魚が腐ったかのような匂いがする。
明るさはまだ昼過ぎということもあり採光用の窓が各所空いていて薄暗くはあるが別段問題はなかった。
壁に張り付けて作られた螺旋状の階段が上と下に伸びている。

魚の腐ったような臭いはどうやら下階から来ているようだ。
先ほどの光景がフラッシュバックする。
天羽は深層心理の部分で未だ拒否反応が出ているためか下階へと繋がっているであろう下への階段を下っていく気が起きなかった。

今解決しなければ自分たちもあの青年兵のようになってしまうかもしれないという恐怖に駆られ下は怖く見に行けないが上階を見に行くことに決めた。

「上階を確認してくるからこの場所で待機していてくれ。」
「分かりました。」

階段を登っていく。
内側につけたれた手すりは潮風で錆びてしまっておりザラザラとした感触が手に伝わる。
その感覚だけが今自分をこの世界に繋ぎ止めているような気さえする。

階段の終点が見えた。
興奮しているせいか僅かしか登った気がしないが下を見るとそこそこ高いことが分かる。
慎重に階段を登り切るとそこには更に上へと続くハシゴ、机とイスが1つ、明かりを灯すカンテラがいくつか、それと薄暗くも周りを照らす採光窓がいくつか空いている。

ここには別段異常が見られるわけではなく机の上に日誌が数冊置かれている。
アーケロン公からハシゴを登った先にその機構の大部分があり地下部分で調整するだけだと聞いていた。

天羽はハシゴを登る。
ハシゴの先は雨風を防ぐハッチになっており押し上げ頭を出すと海が一望できた。

外は見当たる限り危険が感じ取れず灯台の足元からはしゃがんでさえいれば見えずに移動出来るため登った後しゃがみつつ移動する。
ハシゴを登った後灯台の中央部分には投光機がありそれを囲むよう窓のついていない窓枠が四方を八角形に覆っていた。
入り口らしき場所が見当たらず窓を乗り越え入ることにする。

少し立ち上がったが海の魔物には気づかれなかったらしい、攻撃が来なかった。
投光機を素人目ながら調べてみたが異常はなく発光部分に馬鹿デカい宝石の原石みたいなものが取り付けられたままで問題はないように感じる。


登ってきたハッチから救援を呼ぶ声がする。
何か問題が発生したらしい、天羽は急いで灯台入り口へと向かった。
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